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ランドパワーとシーパワー
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投稿者 代理投稿1 日時 2004 年 2 月 04 日 01:32:49:IgficZuAves4c
 

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地球史探訪: ランドパワーとシーパワー

 日本の生きる道は、シーパワー(海洋国家)諸国
との「環太平洋連合」にある。
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■1.ランドパワー(大陸国家)とシーパワー(海洋国家)■

 世界の国々はランドパワー(大陸国家)とシーパワー(海洋
国家)に大別できる。この視点から地球史を眺めてみると、今
まで見えなかった側面が浮かんでくる。

 たとえば、米ソ冷戦は資本主義と共産主義の対立ではなく、
ユーラシア大陸のほとんどを占めた史上最大のランドパワー・
ソ連と、世界の貿易を支配するシーパワー・アメリカの対決だ
った。その最前線がユーラシア大陸のリムランド(外縁部)で
ある。リムランドはランドパワーとシーパワーが対峙する最前
線。東西ヨーロッパ、南北ベトナム、北朝鮮・韓国の間で冷戦
や熱戦が展開され、さらにその外側では、日本やイギリスがシ
ーパワー・アメリカの補給基地となった。アメリカの「封じ込
め政策」とは、まさにソ連をユーラシア大陸に封じ込めること
を狙いとしていた。

 ソ連が崩壊すると新たなランドパワーとして台頭してきたの
が、中国、イラク・イランなどのイスラム勢力、さらに独仏を
中核とするEUである。アメリカはイギリス、日本、台湾、オ
ーストラリアなどのシーパワー諸国を率いて対抗しようとする。

 今後の外交や防衛戦略を考える上で、シーパワー対ランドパ
ワーという視点は、西洋と東洋、ヨーロッパとアジアなどの地
理的区分よりは、より深い意味を持つと考えられる。この視点
から地球史を捉え直し、今後の我が国の進むべき道を説いたの
が、江田島孔明氏の「環太平洋連合」である。[1]

■2.それぞれの性格■

 ランドパワー(大陸国家)の代表は、古代ペルシャや元、近
代ではナチス・ドイツ、ソビエト・ロシア、中国の華北政権
(清、中華人民共和国)などである。主に大陸内部や半島部を
故郷とし、海から切り離された過酷な自然環境の中で、異民族
との生存競争を戦い抜く過程で、内には土着的、閉鎖的、専制
的となり、外には狡猾、残忍、獰猛さを身につけた。ユダヤ人
ホロコースト、ロシア革命、文化大革命など、歴史上の大流血
事件はランドパワーが引き起こしている。共産主義国はほとん
どがランドパワーである。

 ランドパワーは土地に執着し、さらに遮るもののない陸上で
他民族から身を守るために、少しでも国境線を遠くに広げよう
とする生存本能を持つ。そのために侵略的になりやすい。

 シーパワー(海洋国家)は、大陸の外縁部、島嶼部を生存圏
とし、土地所有よりも交易を重視する。古代ギリシャ、中国の
華中・華南政権(宋、明)、ベネツィア[a]、近代のオランダ
[b]、イギリス、アメリカなどがその代表である。海上交易を
生業とする所から、開明的、先進的、合理的、かつ自由主義・
個人主義的な性格を身につけている。交易は相互依存関係であ
るから、外交においても協調・同盟関係を志向する。ただしシ
ーパワー同士で海上の覇権を争うこともある。資本主義国は、
ほとんどがシーパワーである。

■3.日本におけるランドパワーとシーパワー■

 我が日本はどちらだろうか。縄文人たちは漁労や大規模交易
に長けており、シーパワーの性格を持っていた[c]。304号で紹
介した長江文明は明らかなシーパワーであり、その一部が縄文
人たちと混淆した可能性が高い[d]。大和朝廷の初代・神武天
皇は九州から船で近畿に進出しており、シーパワーたる性格が
見られる。しかし華北から半島経由で流入した人々は、濃厚な
ランドパワーの性格を持っていただろう。

 日本の歴史は、シーパワーとランドパワーの対立を軸として
眺めることができる。騎馬に強い源氏はランドパワーであり、
舟戦を得意とする平家はシーパワーであろう。明治維新は土地
支配を基盤としたランドパワー・徳川幕府を、シーパワー・
薩長が倒した政権交代劇である。

 明治となって、陸軍はランドパワー・プロシアをお手本とし、
海軍はシーパワー・イギリスから学んだ。それぞれ当時の最先
進国に学んだわけだが、日本軍全体としてはランドパワーとシ
ーパワーの両方の性格が入り込んだため、これが後の国論分裂
を生み出す原因となる。

 日露戦争は、太平洋進出を企むランドパワー・ロシアの南下
を、シーパワー・英国と組んで防いだ戦いである。この時には、
伊藤博文はロシアと組んで、英国と戦うという戦略を主張した。
日本列島はランドパワーとシーパワーの激突するリムランドで
あり、またその国内においても、ランドパワーと組むか、シー
パワーと組むかの議論が対立する。

■4.ランドパワーとなるのか、シーパワーとして生きるのか■

 日露戦争後、日本はしばし日英同盟によりシーパワーとして
安定的な時期を過ごす。しかし、大恐慌後のブロック化経済の
時代になると、シーパワーとして生きる道を閉ざされ、やむな
く満洲事変からシナ事変へと、ランドパワーとしての道を突き
進んだ。

 さらにドイツ、イタリアとの三国同盟にソ連を加えたランド
パワー同盟で、米英のシーパワー連合に対立する道を選んだ。
しかしソ連の策謀により、ランドパワーの最強国ソ連と、シー
パワーのリーダーであるアメリカを同時に敵に回す、という窮
地に陥いる。

 日本が敗れると、米ソはたちまちシーパワー対ランドパワー
の対決を始めるのであるから、我が国がシーパワーとしての確
固たる戦略のもとに大陸進出を諦め、日米同盟を結んで、ソ連
との対決に備える、という道もあったはずである。ランドパワ
ーとなるか、シーパワーとして生きるのかは、我が国の国家戦
略上の重大ポイントなのである。江田島氏は言う。

 日本の近代におけるこの(朝鮮)半島への容喙が、その
後の大陸内部への防衛線拡大そして中米ソとの利害対立か
ら破滅を生んだことを思い出す必要がある。さらに、古代
からの朝鮮半島の権益確保の苦悶(白村江の戦い、秀吉に
よる文禄・慶長の役)は全て悲惨な結果に終わっている。
このような歴史的視点から見て、朝鮮半島は日本にとって
まさに鬼門なのである。[1,p158]

 我が国は本質的にシーパワーとして生きていくべきであり、
それを忘れて狡猾なランドパワー同士の争いの世界に入ってい
くと、ろくな事はない、というのが、歴史的経験から得られる
鉄則である。この考察から江田島氏は今後の国際社会で、我が
国の歩むべき道を明確に提言していく。

■5.環太平洋連合■

 ソ連が崩壊した後、最大のランドパワーとしてのし上がりつ
つあるのが中国である。清や中華人民共和国などの華北政権は
歴史的に典型的なランドパワーである。着々と領土を広げてい
く膨脹主義はランドパワー本来の性格であるが、華北政権の場
合はさらに中華思想により、周辺の「野蛮国」を服属させ「文
明化」することが中華帝国の使命である、という文明観を持つ。

 こういう極端なランドパワーの膨脹主義をどう防ぐかが、日
本のシーパワーとしての最大の課題である。そのために江田島
氏は、日本、台湾、フィリピンやシンガポールなどの海洋アセ
アン諸国、オーストラリア・ニュージーランドからなるシーパ
ワー連合を提案する。これらの国々はユーラシア大陸のリムラ
ンドを構成し、中国の膨脹を防ぐ障壁となる。

 これにアメリカを加えると江田島氏の提唱する「環太平洋連
合」が実現する。これらのシーパワー諸国に守られた太平洋は
その名の通りの「平和の海」となって、諸国の交易と交流を通
じた繁栄がもたらされる。我が国にとっても、中東からの石油
輸入シーレーンを防衛するという安全保障上の課題が達成され
る。

■6.中国内部のシーパワーとの連合を■

 ここでさらに江田島氏は、中国内部をランドパワーとシーパ
ワーとに分けて考える事を提案する。北京を中心とする華北政
権はランドパワーであり、上海を中心とする華中地域や、香
港・広東省を中核とする華南地域はシーパワーである。そして
シーパワーを味方につけて、ランドパワーを牽制する戦略を提
案する。

 確かに中国は一枚岩ではない。華北と華中・華南、沿岸部と
内陸部、さらに漢民族に土地を奪われつつあるチベット・ウイ
グルなど、様々な文化的・経済的対立をはらんでおり、分裂の
可能性も少なくない。この点を考えれば、シーパワー華中・華
南と結んでランドパワー華北の膨脹主義を押さえ込むという江
田島氏の戦略は決して荒唐無稽なものではない。

 上海は一人あたりのGDPはおよそ4千ドルと、中国全体の
平均の5倍であり、現在のブラジルやポーランドなど中進国の
レベルに達している。隣接する江蘇、浙江省を加えた「長江デ
ルタ地域」は面積では中国全体の1パーセントしかないが、合
計GDPは18.5パーセント、輸出入総額の28.4パーセン
トを占める。('02年統計)

 華南地区の広東省は、貿易額のトップで、一省だけで中国全
体の約二分の一。経済圏としては香港と一体化して発展しつつ
ある。華中・華南地域は歴史的・文化的にもシーパワーであっ
たし、現代のように国際貿易への依存度が高まれば、必然的に
合理的、かつ自由主義的・個人主義的なシーパワーとしての本
性が発揮されていくだろう。

 一方、中国の北部は深刻な環境危機にさらされている。環境
問題こそが大陸内部に住むランドパワーのアキレス腱なのであ
る。すでに北京では59メートルも掘らないと地下水が出てこ
ず、さらに地下水位は年間約1.5メートルのスピードで低下
しつつある。また北70キロの所に砂漠が出現しており、年に
3.4キロメートルずつ近付いている。このままでは30年か
ら40年で北京は砂漠化するであろう。

 中国が分裂して、華中・華南地域がより民主的・開明的なシ
ーパワーとして環太平洋連合に参加し、逆にランドパワーの華
北の勢力が弱まっていくことになれば、太平洋が「平和の海」
で有り続ける可能性は高い。

■7.台湾と朝鮮半島、ロシア■

「環太平洋連合」構想の中で、台湾は重要なかなめである。地
理的には中国の太平洋進出を抑え、日本のシーレーンを防衛す
るための要衝である。また成熟しつつある民主主義と自由貿易
体制、高度に発達した産業構造から見ても、環太平洋連合には
不可欠のパートナーである。

 一方、朝鮮半島の位置づけは不透明である。朝鮮は歴史的に
中国を中心とする中華思想の優等生であり、小ランドパワーと
しての閉鎖性、通弊を色濃く持っている。韓国の反米・反日は
その現れであろう。しかも現在は、北朝鮮という鬼っ子ランド
パワーが何をしでかすか分からない状況である。

 地理的にも大陸と陸続きであり、防衛のためには多大の陸軍
をはりつけねばならない。シーパワーとしての防衛線を半島に
置くのは、戦略的に得策ではない。シーパワーがランドパワー
に対峙するには、海峡を挟んで、というのが鉄則である。アメ
リカも3万5千人もの在韓米軍をいつまで置いておくか、分か
らない。上述したように、我が国は歴史的に朝鮮半島に容喙し
て何度も失敗をしている。北朝鮮の無法に対しては圧力を加え
つつも、半島への積極的な関与は避けるべきであろう。

 台湾も朝鮮もともに我が国の隣国であり、かつては同胞であ
ったのだが、シーパワー/ランドパワーという視点から見ると、
戦略的にこれだけの違いが生ずるのである。

 もう一つの隣国ロシアはどうだろうか。ソ連崩壊後の混乱か
ら、アメリカと対立するスーパーパワーとしての立場から転落
したが、最近はエネルギー大国として急速にのし上がっている。
石油産出量は世界最大のサウジと並ぶ規模となり、また天然ガ
スの埋蔵量、生産量とも世界一である。現在、バイカル湖の西
から極東ナホトカまでパイプラインを敷設して、日本に石油供
給をするよう、日本政府は熱心に働きかけているが、中露の二
大ランドパワーが対峙する地域にライフラインを敷設すること
の危険を認識すべきだろう。

■8.シーパワー大国の夢■

 中国の膨脹に脅かされている石油輸入のシーレーンにしろ、
上記のシベリア石油パイプラインにしろ、安定的なエネルギー
確保に不安があるのが、近代日本の安全保障上の大きな問題で
あった。この問題は大東亜戦争において、連合国側の対日石油
禁輸から開戦に踏み切らざるを得なかった時から、少しも変わ
らない。

 しかし、シーパワーとして生きる戦略を固めれば、この問題
を根本的に解決しうる望みが生まれる。それは我が国が世界第
6位、451万平方キロに及ぶ200海里排他的経済水域(E
EZ)を持っていることである。この広大な海洋を開発するこ
とで、我が国は一挙に資源・エネルギー大国となりうる。

 海はエネルギーの宝庫でもある。波力発電、潮汐発電、海上
風力発電などは自然に優しいエネルギー源である。また海底に
眠るメタンハイドレートは天然ガスに替わるクリーンなエネル
ギーであり、日本周辺の埋蔵量は、日本の天然ガス消費量の約
100年分に相当すると言われている。これらを開拓すれば、エ
ネルギーの自立も夢ではない。海底にはマンガンやコバルトな
ど、近代工業に不可欠の戦略物資も豊富に存在している。

 また食料面でも、我が国の魚類養殖は世界で最も事業化が進
んでいるが、その技術をさらに発展させて人工的に孵化した稚
魚を海に放流して,自然界の生産力によって成育させる「海洋
牧場」が実現すれば、食料の自給率を大幅に上げることができ、
今後の食糧危機にも相当の対応ができるようになる。

 さらに海上に巨大な鋼鉄製ブロックをつなげて浮かべる「メ
ガフロート」により、海上空港や、海上都市の実現も実用レベ
ルに近づいている。これにより、国土の狭さも問題にならなく
なる。

 世界第六位の広大な経済水域に、我が国の先進的な科学技術
を適用すれば、資源・エネルギー・食料の豊富なシーパワー大
国としての未来が開けていくだろう。海こそが我らのフロンテ
ィアである。
(文責:伊勢雅臣)

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