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ビッグ・リンカー達の宴2−最新日本政財界地図(3)【園田 義明】
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投稿者 Q太郎 日時 2004 年 6 月 17 日 23:29:50:4V2zl9FyN7Ano
 

ビッグ・リンカー達の宴2−最新日本政財界地図(3)

2004年06月17日(木)
萬晩報通信員 園田 義明

 ■僧侶としての稲盛和夫発言

 「安全保障と防衛力に関する懇談会」の初会合での小泉首相発言と京セラ、カーライル・グループ、DDIポケットの関係から思い出した記事がある。米国最大の新聞USA・トゥデーに1ページを使って掲載されたもので、その日付は2003年4月20日、しかしインタビューが行われたのはイラク戦争が始まる前である。

 インタビューに応えたのは京セラの設立者で現在名誉会長、そしてKDDIの最高顧問も務める稲盛和夫であるが、日本の経営者が米国紙でこうした問題でこれだけ大きな扱いを受けたのは、ソニーの故盛田昭夫以来ではないかと思われる。このインタビューの冒頭で京セラが英フィナンシャル・タイムズ紙の世界企業ランキングで334位に位置づけられていることと、65歳で仏教の僧侶になったことなどが紹介されている。

 この僧侶としての稲盛名誉会長に大きな関心を寄せたようだ。「あなたは仏教の僧侶で哲学も学んでいます。なぜ、反米主義の根底に宗教的な原理主義があるように見えるのでしょうか」との質問に対して、稲盛名誉会長は次のように応えている。

「私は宗教的な原理主義が反米感情を駆り立てているとは思っていません。反米感情は大部分が貧困国で起きています。これらの国々は近代化と産業的な繁栄から取り残されたままです。毎日のように貧困と辛苦にもがいている中で、これらの国々の人々は少しでも希望を見出そうとしています。宗教だけが彼らにとってすべてなのです。宗教が反米感情の原因だと結論づけるのは簡単ですが、それは事実ではありません。宗教ではなく貧困こそが本当の原因です。」

 日本人であればテロの背景に貧困があることぐらい百も承知であるが、この稲盛発言は自国中心の独特な世界観を持つ米国人に強烈なインパクトを与えたようだ。もし次に紹介する「クローズアップ現代」が米国で放送されれば、テキサス州あたりでは映画『パッション』同様、心臓まひを起こして死んじゃう人が出てくるかもしれない。

 ■緒方貞子が語る国益論

「日本にとっての一番の国益というのは、多くの国々の多くの人々から信用され期待されるということだろうと思うんですね。そういう無形の大きな効果というものが、日本の国益を支えるんじゃないんでしょうか。」

 これは今年6月2日に放送された「クローズアップ現代」の最後に国谷裕子キャスターからの質問に応えて緒方貞子・国際協力機構(JICA)理事長(前国連難民高等弁務官)から発せられた国益論である。

 番組では76歳という高齢にも関わらず現場主義を貫き、「紛争のある所は貧困とつながっている。将来のテロの脅威に備えるためにも貧困対策が必要」との思いから、貧困とエイズに苦しむアフリカを訪れた緒方理事長の姿が映し出されていた。

 5月25日付け毎日新聞(朝刊)では訪問先の南アフリカでの会見内容が掲載されているので、ここでの緒方発言も紹介しておきたい。

「JICA理事長就任のため13年ぶりに日本に戻り、人々の思考が内向きになっていることに驚いた。50年前に米国で議論されていた古い国益論が、まことしやかに論じられているのは驚きとしか言いようがない。これを変えるにはどうすればよいかを考えるために今回アフリカを歴訪した。」

「紛争、エイズなどアフリカで起きていることは世界の平和にかかわるのに、日本人はそのことを理解していないからアフリカへの関心が低い。鳥インフルエンザウイルスや新型肺炎SARSを見れば分かるが、自国の利益ばかり追いかけて国を守れる時代ではない。日本は目先のことを追っている。アフリカの国が日本に大きな期待を寄せていることを、どうすれば日本の人々に分かってもらえるか考えている。」

 そして最後に、イラク人質事件で「危険地域に行った」として非難が集まったことに対してこう語っている。

「私も責任者として本当に危険な地域に人を出すことはできない。しかし、多様な人々が存在して、はじめて良い社会となる。危険地域に行かない人もいて当然だし、行く人もいてよい。どんな状況下でも国には救出義務がある。人質となった人々を村八分のように扱って非難した日本人の反応は、国際社会の評価をかなり落としたと思う。」

 個人的には別に良い格好をする気もないので、国際社会の評価などどうでもいいと思うが、なにやら現在行っている緒方貞子の活動はとっても注目されているようだ。ひょっとすると米国を巻き込んで一大ブームを巻き起こす兆候がある。

 ■バーネット教授のグローバリゼーション賛歌

 ここで前回紹介した米国海軍戦争大学のトーマス・P・M・バーネット教授の新しい地政学的な概念について簡単に触れておきたい。バーネット教授も緒方貞子と同じカトリックである。ふたりとも保守政権に近い存在にありながら、ネオコン同様に保守派から楽観主義者なり理想主義者なりのレッテルを貼られることもあるが、表面的なネオコンとの大きな違いはグローバル派の国際強調主義者である点であろう。

 バーネット教授は2001年10月から2003年6月まで国防総省本省(OSD)内で米軍再編成課の未来戦略担当補佐官を務め、国防総省や国家安全保障会議(NSC)や国務省、さらには英国にも招かれブリーフィングを行ってきた。重要な点は、米軍再編成課、即ち現在米国が世界的な規模で進める米軍の再編成(トランスフォーメーション)に関わってきた人物ということである。

 現在米国海軍戦争大学の教授を務めるトーマス・P・M・バーネットが雑誌「エスクワイア」に掲載された論文をもとに書き上げた「ペンタゴンズ・ニュー・マップ(ペンタゴンの新しい地図)」が世界的に話題になっている。

 バーネット教授は世界が大きく二分されているとして、一方を経済的に発展し、かつ政治的にも安定し、グローバリゼーションが機能している地域である「コア」、そしてもう一方を「コア」から切り離されてグローバル経済に組み込まれていない地域である「ギャップ」と定義付けしている。つまり世界を「コア」と「ギャップ」に大別したのである。

 「コア」には北米、南米、EU,ロシア、日本、中国とインドを含めたアジアの新興経諸国の多く、オーストラリア、ニュージーランド、南アフリカが含まれ、全世界60億の人口のおよそ40億が暮らす地域である。一方「ギャップ」にはカリブ海沿岸、アフリカ、バルカン諸国、コーカサス地方、中央アジア、中東、南西アジア、東南アジアが含まれ、この地域には残りの20億が暮らし、そのほとんどが世界銀行によって「低所得」あるいは「低中所得」に分類される第三世界である。

 そして、1990年から2003年の間に米国が人道的活動を含めた軍事作戦を行った場所を世界地図に落とし込みながら、「ギャップ」の地図を完成させている。従って、この地図は冷戦崩壊後の地政学とグローバリゼーションの進展(地経学)とを反映したものとなっている。

(注1)

 この「コア」内ではグローバリゼーションが連結を広げることで平和をもたらしており、平和を維持するためにはテロなどを引き起こす悪ガキがいる「ギャップ」を封じ込め、「ギャップ」を狭めていくことこそが重要だと主張している。

 日本にとって重要な点は、バーネット教授がこの著書やインタビューやワシントン・ポスト紙への寄稿などで米国が中国をパートナーとして迎え入れ、韓国、日本、中国、そしてインド、ロシアなどとともにとNATOのような安全保障同盟を結び、金正日政権を排除し、朝鮮半島を再統一すべきだとも主張していることである。

 稲盛和夫、緒方貞子、バーネット教授は、悪ガキどもと貧困との関係においては一致しているものの、その手法が全く異なっているように見える。緒方貞子は現場重視の人道支援活動を通じて「ギャップ」を狭めようとしているが、バーネット教授は金正日排除論に見られるように、「ギャップ」を狭めるためには時には武力行使も辞さずとしてイラク戦争も支持してきた。しかし、米軍を従来の部隊とペンタゴンでは民事と呼ばれる再建支援部隊のふたつに分けるべきだと主張するなど真意がつかみづらい点もある。

 ■シャングリラ・ダイアログでのラムズフェルド発言

 2004年6月5日、ラムズフェルド国防長官はアジア太平洋地域の国防大臣や担当閣僚などが集う「第三回アジア安全保障会議」に出席し演説を行う。この演説の中で、「将来の脅威は、大国間の戦争より、小さな支部に分かれて活動する敵になるだろう。その敵はおそるべき技術や武器を入手し、いかなる場所でも警告なしに突然攻撃を仕掛けてくる。」と強調した。

 ラムズフェルド演説では米軍の再編成(トランスフォーメーション)についても言及されているが、この再編がテロという新たな敵、つまり「小さな支部に分かれて活動する敵」に対処することを主眼においたものであり、バーネット教授の「ギャップ」封じ込め作戦と見事に一致する。また、ラムズフェルド国防長官は米国を「太平洋国家」と位置づけ、域内での近代的な抑止能力を持つ軍事展開を今後とも維持する方針を表明しているが、ここにもバーネット教授の影響が見てとれる。

 このラムズフェルド演説で注目したのは、ブッシュ大統領が国際社会の脅威である大量破壊兵器等関連物資の拡散を阻止するために2003年5月に発表した「拡散に対する安全保障構想(PSI)」に対して50を越える国々が支援を表明していることに触れ、「もっと先を行く日本とオーストラリアは、ミサイル防衛(MD)システムを通して、弾道ミサイルの脅威に大胆にも立ち向かうために米国に加わった」と語り、ちゃっかりミサイル防衛(MD)システムの宣伝を行っていることだ。

 というのもこの「アジア安全保障会議」は「シャングリラ・ダイアログ」とも呼ばれており、オーストラリア、日本、シンガポール、英国各政府から財政支援を受けた英国際戦略研究所(IISS)が主催し、後援企業として日本からは朝日新聞、そして世界を代表する防衛企業であるBAE・システムズ(英)、ボーイング(米)、ヨーロピアン・エアロノーティク・ディフェンス・アンド・スペース(EADS、欧州)、ノースロップ・グラマン(米)、タレス(仏)、シンガポール・テクノロジーズ・エンジニアリングなどがずらりと並んでいるのである。

 また、英国に本社を置く企業向けインフラソフトウェア会社であるオートノミーも後援しているが、このオートノミーの取締役会にはあのリチャード・パール元国防政策委員会委員長の名前がしっかりと刻まれている。また、これまで行われた2回の会議には米国からウルフォウィッツ国防副長官がいずれも出席しており、将来有望なアジアの防衛マーケットで米欧がしっかりと手を結んでいることがわかる。

 単独主導的な企業の代表であり、チェイニー副大統領に最も近いロッキード・マーティンの名前が後援企業に含まれていないことも注意を払うべきだろう。また「最新アメリカの政治地図」(講談社新書)で米・欧企業間のリムランドのような存在として紹介したBAE・システムズの存在を覚えておいてほしい。

 ■介入するビルダーバーグ会議

 前回のコラムで50周年となるビルダーバーグ会議が6月3日から6日までイタリアで開催されていたことをお知らせしたが、この会議の場でこの緒方貞子とバーネット教授の打ち出した戦略がオーソライズされた可能性が極めて高い。

 その根拠を以下に示したい。

 まず、6月8日にワシントンに本部を置く非営利のシンクタンクであるセンター・フォー・グローバル・デベロップメント(CDG)が、超党派のメンバーによって構成される「弱い国家及び米国国家安全保障における委員会」の報告書を発表している。このCDGの会長兼共同設立者はエドワード・スコットであり、スコットはBAE・システムズの共同創業者兼元社長であった。

 この報告書の中で「弱い国家」における「眠れる巨人」が国家安全保障を脅かしているとの警告を発している。「弱い国家」におけるセキュリティー、キャパシティー、レジティマシー(正統性)の三つの「能力的なギャップ」を確認しつつ、具体的な方法を示しながらこの脅威に早急に解決すべきであるとの勧告を行っている。

 このCDGの役員会には共同設立者の一人としてフレッド・バーグステン(国際経済研究所所長)、ジェフリー・サックス(コロンビア大学地球研究所所長)、ローレンス・サマーズ(元財務長官、現ハーバード大学総長)、アマルティア・セン(ノーベル経済学賞受賞、現ケンブリッジ大学トリニティ・カレッジ学長)、そしてジョセフ・スティグリッツ(ノーベル経済学賞受賞、コロンビア大学教授)など日本でもお馴染みの名前がずらりと並んでいる。

 また「弱い国家及び米国国家安全保障における委員会」の31名の委員の中で、これまでに少なくとも2回以上ビルダーバーグ会議に出席した人物は、フレッド・バーグステン、スチュアート・アイゼンスタット(元国務次官、元財務副長官、現コヴィントン・アンド・バーリング法律事務所所長)、トーマス・ピッカリング(元国連大使、元駐露大使、元国務次官、現ボーイング上級副社長)、クライド・プレストウィッツ(元商務省次官補、現経済戦略研究所所長)の4名である。

 この報告書に素早く反応したのがフィナンシャル・タイムズ紙のコラムニスト、マーティン・ウォルフである。6月8日同日にこの報告書を取り上げたコラムを掲載し、G8サミット(主要国首脳会議)でも緊急に対応すべきだと書いている。実はこのマーティン・ウォルフもビルダーバーグ会議のメンバーであり、記念すべき今年の50周年会合にも参加していたのである。

 そして迎えたG8サミットの場でまたしても点数を稼いだのは仏シラク大統領である。最終日の記者会見で冒頭発言の大半をイラク問題に割いたブッシュ米大統領に対して、シラク大統領は中東・アフリカ諸国との対話や途上国支援問題を会議の意義の筆頭に挙げている。また、来年のサミット議長国である英ブレア首相も次回のサミットではアフリカ問題や環境問題などを取り上げていきたいとの考えを表明した。

 このサミットの場で改めて京都議定書への署名拒否を表明したブッシュ=チェイニー政権とグローバル派との最終決戦の火蓋が切って落とされたようだ。今後国連と並んで「ギャップ」への取り組みを担う世界銀行の総裁就任が噂されているパウエル国務長官の政権離脱発表の日程が大統領選を大きく左右する可能性がある。あるいは、さらなるスキャンダルが準備されているのかもしれない。

 なお、ラムズフェルド演説が行われた「シャングリラ・ダイアログ」を主催する国際戦略研究所の副理事長には大河原良雄・元駐米大使の名前がある。退官後の1987年から2001年まで本田技研工業の取締役を務め、今なお本田財団の理事を務めている。現在、大河原元大使はトライラテラル・コミッションアジア太平洋委員会委員と世界平和研究所(会長・中曽根康弘元首相)の理事長、笹川平和財団(会長・田淵節也・野村証券元会長)の理事を務めているが、「首相を囲む会」のメンバーでは世界平和研究所に奥田、牛尾、山口、小林、秋山、森下の6名、笹川平和財団には小林、茂木、河野の3名が役員となっている。

 また、日米和親条約が調印されて今年がちょうど150年目にあたることから日米交流150年委員会が発足、大河原元大使はこの委員会の会長を務めており、「首相を囲む会」からも発起人として小林、茂木、宮内の3名が名を連ねている。この関連で2004年3月28日付け読売新聞(朝刊)が大河原元大使のコメントを掲載されているので紹介しておこう。

「米国の外交が国際的に難しい時、友好国として助言することが必要だ。米国内では、外交面で一国主義(ユニラテラリズム)と国際協調主義の対立がある。日本は、国際協調を主張するパウエル米国務長官らの政策を支持し、彼らの立場を助ける行動をするべきだ。」

 私は「後出しじゃんけん」はしたくない。何が飛んで来るかわからないので、米大統領選が終わるまで日本はしばらく表立った行動を慎むべきだ。などといいながら、黙っていても金融やらエネルギーやらの火の粉が飛んできそうな気配を感じる。日本政府は身を挺して守るべきだが、守るべき相手を間違えそうでちょっぴり不安なのである。

 □引用・参考

 共同通信他

(注1)「ギャップ」の地図は下記サイトから見ることが出来る。
http://www.thomaspmbarnett.com/published/pentagonsnewmap.htm

An outside view of U.S. scandal, sky-high pay
http://www.usatoday.com/money/companies/management/
2003-04-20-advice-inamori_x.htm

シャングリラ・ダイアログ
http://www.iiss.org/shangri-la.php

Commission on Weak States and US National Security
http://www.cgdev.org/Research/Index.cfm?Page=Commission%
20on%20Weak%20States%20and%20US%20National%20Security

Martin Wolf: We cannot ignore failing states
http://news.ft.com/servlet/ContentServer?pagename=FT.com/
StoryFT/FullStory&cid=1086445516255&p=1016652197036

Report Says Aid to Weak States Is Inadequate

http://www.nytimes.com/2004/06/09/politics/
09fail.html?pagewanted=print&position=

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