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小沢一郎VS養老孟司:「ヒトとムシの日本改造計画」「カネ万能の時代」にどう生きるか [週刊ポスト・ドットコム]
http://www.asyura2.com/0403/bd35/msg/287.html
投稿者 あっしら 日時 2004 年 4 月 27 日 03:02:11:Mo7ApAlflbQ6s
 


(1)人が自然に死ねない時代


――日本住血吸虫の被害を防ぐために田んぼの側溝をコンクリートにしたら、住血吸虫の中間宿主であるミヤイリ貝とともにメダカが消えた。自然環境と農業について、どう考えますか。
養老 この間、(福井県の)武生へ行きまして、田んぼを見せてもらった。最近は冬は田んぼに水を張らない農家が多いんですが、そこは冬場も水を張ってるんですね。いかにいろいろな生き物が田んぼに発生するかというのがよくわかった。水田には本来、水を張ることで生き物が増えてそれが自然に土地を肥やすという役割もあるはずなんです。
小沢 今は何もいませんね。小川にフナやドジョウもいない。側溝をコンクリートにしたから。水田の貯水機能もなくなってしまいます。
――小沢さんは、21世紀は自然環境に取り組む正念場だということを常々いっている。そういう意味で農業問題を非常に重要視されている。
小沢 僕は、農業を国全体の社会政策から、自然環境の維持などの観点も含めていろいろな面から見ているんですけれども、これからは、産業としてもやる気になればかなりいい線いくんじゃないかという気がしていましてね。無農薬とか有機栽培とか、そういう形でかなり競争力も出てきている。だから、農業自体にとっても、本来の自然に帰ったほうがいいと思ってるんですね。
養老 農業の問題は日本の医療の問題とよく似ています。医療は基本的に完全に社会政策、要するに厚生省型の統一的な医療になったわけですが、そういうものじゃないだろうということを指摘する人がかつてはいた。農業も同じなんですよ。頭で考えたシステムに入れかえちゃっていいのかという話です。
 現在の医療制度には問題が多い。例えば老人医療。人が自然に死ぬということができなくなっている。徹底的に人工的な環境で死んでいるわけです。東京では9割以上の人が自宅で死んでいません。
 それに似た状況に農業がなるような危惧がある。農水省の役人が非常に印象深いことをいっていた。「日本で米を何回作ったかご存じですか」と。「有史以来、せいぜい2000回です」と。ところが、工業製品というのは桁違いなんです。車なんかこれまでに何千万回も作ってきたわけですからね。
小沢 なるほど。
養老 工業製品は作るのが簡単なんですね。そこで成功したから、医療や農業も同じように頭で作ったシステムで要領よくやれば成功すると思ってしまう。だけど、それはうまくいかないんです。生き物を扱う場合にははるかに気を長くして、それこそ努力・辛抱・根性が必要です。それを今の人は、電卓を机の上で叩くように、「こっちのほうが得だ」と考えてしまう。
小沢 そうですね。
――確かにあらゆるものが様変わりしていますね。
養老 食べ物の種類にしても、ものすごく減ったんですよ。縄文時代の研究によると、桁が2桁以上違うんですね。
小沢 そんなに多かったんですか。
養老 縄文人は1万種類。現代人はせいぜいのところ数十だそうです。


(2)「田舎へ参勤交代」の勧め


――約束事をいかに公平で平等に履行するかという点で政治や行政が生まれる。
小沢 人為的に作られたものは絶対にパーフェクトであり得ないし、人間の思惑や利害でもってどうにでもなるものですからね。米ドルだってある時、ただの紙切れになり得る。円だってそうです。だから、どれだけ自然やその法則を尊重しつつ、うまく調和させていくかが大事ですね。
――それは、政治が今までとは違った約束事を作り直すということになりますか。
小沢 結局、本質的には、なるべく人為的なものはなくしていくことですよね。約束事という言葉でいえば、それを減らせばいい。無為自然じゃないけれども、人間は、自分の利害やいろんな欲望のままに、作為的な、人為的なものを作り上げてきたけど、それによって自然環境を破壊した。今、そのしっぺ返しを受けていると思うんですよ。人間そのものも本来、単なる生き物の一つにしかすぎないんだから、その本来の姿を取り戻していくということじゃないかと思いますよ。
――国民は政治に豊かさをも求めたりする。
小沢 豊かさというのは、いろんな要素を含むわけでしょう。単にお札がいっぱいあれば豊かだということではないし、腹いっぱい食ったって限度はある。自分自身の精神的豊かさは、ほかのことにものすごく影響されるわけです。物質万能的な文明は地球環境の破壊という中で限界に達しつつあると思う。
――戦争やテロという殺伐とした問題もある。
養老 それはそうじゃない社会ができることを見せるしかない。できるはずなんです。現に日本は戦後、ずっと平和だった。僕の持論なんですが、日本国民は「参勤交代」すべきだと思うんです。どういうことかというと、現在、過疎地は国土の8割に及んでいます。だから、都会の人が、例えば1年に1か月でもいいから、そこで体を使って働くといい。そうすると、過疎になった地域がまず生き返る。それから、都会の人が、それだけの休みをとるようになる。今、日本の会社でも官庁でも有給休暇を完全に消化している人は、ほとんどいないでしょう。日本人は休むということに罪悪感を持ってますから。
――実践論は?
養老 霞が関からやったらいい。役人が1か月体使って、田んぼの手入れでも杉の間伐でも何でもやれば、そこで考え方が違ってくる。1か月なら1か月、田舎で働いて、また戻ってきて働くということは、再生産に対しても非常にいい。まさに日本全体の国土の再生につながる。
――身心一体で人が交流し合う社会は面白い。
養老 政治は人間集団の利害の調整だと考えられているけど、その手のビジョンが今までなさ過ぎたんじゃないか。利害調整じゃなくて、日本全体を考えたら、過疎地の問題は何とかしなきゃいけない。でも、どうしても人は都会に集まる。極端にいうと、全部都会に集めちゃっていいんですよ。そのかわり、一定期間農家を「兼業」する。
――いかがでしょうか。
小沢 とてもいいことだと思いますよ。かなりの強制力がないと、その政策の実行は難しいかもしれませんね。
養老 まず省庁とか会社単位でやったらどうですか。

(3)「エリート」をなくした戦後


 ――養老さんは、戦後日本の特徴の一つとして「ポピュリズム」を挙げています。
養老 あるお母さんが、子供が頭ぶつけたといって医者に電話した。医者は、「子供が泣いたのなら大丈夫ですよ」って答えたそうです。お母さんは、「あなた、それで医者として絶対に責任持つのか」と食ってかかったという。僕はそれを聞いた時に、「そんな人には医者をやらせてみたらいい」といったんです。
 僕は、戦後は基本的にエリートをなくしたと思うんです。例えばメディアは全部、被害者の気持ちを書き立てる。だけど、エリートというのは、実は加害者の気持ちを持ってるんです。
 医者は患者さんの命を預かる。だけど、自分が他人の命を預かったら、普通は手がすくむものなんです。それは私が医者になりそびれたからよくわかる。僕が解剖やってたのは、死んだ人なら心配ないからだから(笑い)。その気持ちからすると、やっぱりその辺の後ろめたさを、ちゃんと普通の人にも持ってもらいたいと思う。
 あいつらにはあいつらの仕事をやらせてるんだから、そのかわり、多少ぜいたくはさせてやろうというのが、本来のエリートに対する考え方だと思う。エリートのほうだって、別に必ずしもそんなことしたいわけじゃなくても、ほかの人ができないから、しょうがないからやろうという暗黙の了解があったと思うんです。それを戦後は消しちゃった。それで、お母さんがそんなこというようになっちゃったんですね。大体、子供が頭ぶつけたのは、おまえがよく見てないからだろうが、というのがそもそもの話です。後ろめたさを攻撃的な行動に変えちゃう庶民がいっぱい出てきた。それをポピュリズムといったんです。
――小沢さんのいうリーダー論にもつながる。
小沢 日本はもともとリーダーが出にくいコンセンサス社会ですが、特に戦後はリーダーの立場にある人たちが、それなりの汚れ役というんですか、指導性といってもいいけれども、それを全く果たさなくなった。今の例でいうと、「さぞや痛かったでしょう」と、リーダー自身が平気でいう。結局、みんな総無責任になった。
 社会のリーダーたる人たちがリーダーとしての責任を果たしていないし、国民もリーダーとしての厳しい職責を実行しているということを認めようとしない。それで両方とも無責任になっちゃって、混乱した社会になってるんだと思う。
養老 医者はどこの国でもエリートです。何をやっても人の命にかかわる。どうしても加害者になってしまう。人を殺してしまったという気持ちは、どんな医者でも持ってると思う。そこに患者が気がつかないと、医療訴訟だらけの世界になっちゃうんですね。

(4) 年金は「報酬制」にすべきだ



――参勤交代を実現すれば、社会に対する考え方が変わり、仕組みが変わる。
養老 税金の取り方が難しくなる。例えば国民の二重居住を許すなどということが必要になる。ただ、僕は案外みんな賛成するんじゃないかなと思うんです。サラリーマンをやってる人たちでも、やめた後どうするんだと聞かれると、「田舎に帰って百姓やりたい」という気持ちは、かなりの人が持ってるでしょう。都会で邪魔者扱いされるよりいいし、田舎で倒れるまで働くことができればそのほうがいいんじゃないですかね。
小沢 特に米作りなんて、お年寄りで十分なんですね。老齢人口を一番吸収するのは今まで、農業と零細小売りだったんですが、店番のじいちゃん、ばあちゃんは少なくなってきているし、農業のほうまでなくなりつつある。若い時はいろんな会社や工場で働いて、老後は農村で働くというのが理想的だと思う。
養老 僕は年金だって報酬として払うべきだと思います。社会に役立つような何かをしてもらって、それに対して払うという形にしたほうが、日本人らしい。
小沢 僕もそのほうがいいと思う。社会保障も、何でも金で解決しようという発想から切りかえないといけない。人間、最期まで一生懸命、家族のためとか地域のために働いて、役に立っているという意識を持って生涯を送れることが、金に代えられない幸せなんだから。
養老 タダというのは失礼なんです、日本人にとっては。
小沢 第2の人生が何十年も、20年、30年もあるというのは、容易なことじゃない。生きがいを持って満足してやっていくには、働く以外ない。
――森林の手入れをしたり。
小沢 今、多くの原生林は営林署が荒らしているし、里山は入る人がいなくなって、荒れ果てている。そこを、ちょっとずつみんなで手入れしていくようにすれば、お年寄りだってできる。山が荒れた原因の一つはプロパンガスと灯油の普及です。それまではみんな、薪を拾ったりしてたでしょう。それから炭を使うことも、茅葺き屋根にすることもしなくなった。山に入る人がいなくなった。それが自然といえば自然かもしれないけれども、人間と共生している自然ではなくなってしまった。
養老 原生林状態。
小沢 そうです。みんな原生林にしちゃえというなら、それも一つの考えですけどね。
養老 そういうものを相手にすると、人間はものを見るようになる。もう一つ、政治のことでいうと、どうしてこうも参議院がバカなんだろうと思ってしまう。
小沢 それは間違いない。
養老 あそこで議論することは、30年先、50年先のことでなくちゃいけない。そういうルールをつけたらどうかと思います。日本の国土をどうするとか、教育をどうするとか、長い目で見た話をする。そのかわり、そこで何かを本気で決めてきたら、衆議院は守らないといけない。そんなふうな制度に変えたらどうでしょうか。
小沢 そのためには、参議院は選挙をさせちゃいけないんですよ。選挙をすれば、議員は絶対的に利害の代表になっちゃう。今のような参議院はなくしてもいいんじゃないかと思います。置いておくのなら選挙をしないで、各分野の見識のある人に参議院議員になってもらったらいい。
――養老さんは環境省の依頼でロンドンの博物館の視察と調査に自費で行かれたそうですね。
小沢 ロンドンには世界中の文献があるでしょうね。
養老 ある意味ではそうでしょう。でも、イギリス人は現物ということに対して非常に強くノウハウを持っているんです。
小沢 彼らは利口というか、何というか。
養老 悪いやつなんだ、ほんとに。
小沢 世界中の植民地でさんざん悪いことをして搾取したのに、旧植民地は「宗主国は英国」といっている。エリートは英国に留学させる。
養老 アフリカの国境なんて、(英国が)まっすぐ線引いて、現地の人はそれを国境だと頑張っている。
小沢 イラクだって、イスラエルだって、全部イギリスが勝手に国境を決めた。
養老 全然責任とらないで。
小沢 イギリス人の悪いところは真似することないけど、あの知恵と手法はすばらしいと思う。
養老 イギリスの新聞に日本の記事が出ていたら、絶対悪口ですからね。いくら悪口をいってもいい国というのがあるなと。それが日本ですよ。
小沢 何をいわれても抗議しないからですよ。自己主張がないと見られてる。

(5)「自己責任社会」への転換


――昔からのコンセンサス社会の中で、個のあり方が問われている。
養老 そこは僕も小沢さんにお伺いしたいところです。日本には「公私」という言葉があるけど、「公個」という言葉がない。小泉首相が靖国神社に参拝すると、「公人としてですか、私人としてですか」と聞く。公私の別しかなくて、個がないんです。
小沢 「公」と「個」ね。
養老 ええ。公としての個がない。もともと日本で、「私」で「公」に認められたのは家です。私とは家単位だったんです。家の中では私人です。その家をばらしたら、本当は個が公にならなきゃいけない。「公の個」がなきゃいけない。公の個に対して、その範囲を指定したのが人権です。だけど、「人権」という言葉は結局、定着しない。なぜかというと、マスコミが個というものを公に認めていないんです。いわゆるグローバリゼーションの中で、外国の人を日本に入れた場合に、個の範囲が決まっていないとどうにもならなくなっちゃう。世間に迷惑をかけるなという話で、彼らが納得するかという話です。
 靖国の問題にしても、行くのは公か私かしかないということが変で、あれは個人で行ったんですよといえば、信教の自由は保障されているから問題ない。だけど、公に個を認めていないから、公でなけれは、私だという話になるんです。そうすると、公の人は実は私がないという議論が日本では出ちゃうんです。
小沢 個の自立が一番大切なことです。必ずしも2000年ずっとそうだったかどうかは別にして、日本の伝統的社会、何となく受け継がれている風土とか国民性においては、公を際立たせないことが美徳みたいにいわれてきたから、リーダーは認めないし、自己主張もない。みんな玉虫色で、難しいことは先送り。リーダーさえ一つも発言しないということがまかり通る。
 ずっと日本列島に閉じこもって暮らそうというなら、これまでのままでいいかもしれないが、否応なしにグローバル化は進んでいる。日本は特殊な国だといっていては付き合いもできなくなる。特に企業はね。
養老 自己責任の範囲ですね。それは別に世間的にわがままでも何でもないので、当然の常識としてあっていい。
――この国を自己責任社会に転換するのは、大変難しいと思います。
養老 難しいですね。
小沢 少なくともリーダーはそういう発想、意識を持っていないと共同体を運営していけなくなる。ほんの数%のリーダーの人たちには意識改革が求められている。
――リーダーのあり方によって社会はかなり変わるんじゃないですか。
養老 僕はなぜ日本発で世界の未来のビジョンが出てこないのかと思うんです。非常にいい位置にあるはずなのに。
小沢 そう思いますね。西洋のキリスト教的な哲学は、すべてのものが人間のために存在するという感覚でしょう。それに対し、我々の東洋思想は、自然の中の人間という捉え方をしている。今後、環境というものが最大の問題になった時には、自然あっての我々の存在、人間も自然の中の一つという考え方、思想が新しい時代の考え方としてアピールできると思うんです。

(6)「個」の教育を歪めた「バカの壁」



――「個」と教育はどう考えるべきでしょうか。戦後の教育は個人主義を尊重し過ぎたという指摘もある。
養老 『バカの壁』に書いたんですけど、日本人の多くはいまだに個というものを頭の中だと思っている。頭に個性があると思い込んでいるところがありますが、そうではないんです。個性はむしろ体にある。遺伝子はみんな違いますから。人はみんな顔つきが違うし、体つきも違う。ところが、意識、言葉がその典型ですが、これは共通。感情を含めて意識というものは、人間の間で共通であるのが原則で、むしろ共通にするために持つものなんです。こうやって話をする小沢さんと私をつなぐのが脳なんです。それを戦後、頭に個性があるといってきた。頭に個性があったら、実は精神科の病院に行くだけなんです。僕はそれをよく知っている。
 個が頭にあるということをいったのは西洋の19世紀です。「西洋近代的自我」といった。それは生まれてから死ぬまで、頭に個性があって、自分という人格が変わらずにずっと続くという考え方です。仏教はそんなことはいっていない。むしろ「無我」といいます。我なんていうものはない。生まれた時から死ぬまで、同じ自分なんかない。人間はひたすら年をとって、どんどん変わっていく。考え方だって変わっていくものですからね。
――どうして西洋人は頭に「個」があると考えたのでしょう。
養老 彼らはキリスト教ですから、「霊魂の不滅」というのが前提にある。最後まで自分というものがないと、神様が最後の審判に、おまえは地獄、おまえは天国とやられるから、その時まで自分が残っていなきゃ意味がない。そういう社会だったからでしょう。霊魂の不滅なんてことをいったら、19世紀のあの科学主義の時代に何を迷信的なことをいっているんだという話になってしまう。けれども社会というのはそう簡単に変えられるものじゃないですから「霊魂の不滅」のかわりに作ったのが「西洋近代的自我」。
 それを日本は明治時代に律儀に一生懸命取り入れた。だから、頭の中に「私」というものがあるという感じになっているんです。実際はそうじゃない。私の先生(中井準之助・東大名誉教授)は、亡くなられたばかりなんですけれども、よくいっていました。「人の心がわかる心を教養という」と。人の心がわかる心。教育の根本はそれでいい。僕もそう思います。一人一人は違うんです。けれど脳みそは共通。だから社会が作れる。
 戦後はそこを極めて誤解してきたんじゃないか。つまり19世紀に入れた西洋型思考の最大の悪影響はそこだったんじゃないか、と今思います。
――学校では、運動会のかけっこで順位をつけなかったりする。
養老 個性という意味では、当然トップからビリまで認めていい。それをいいか、悪いかという価値観は別です。全員一緒にゴールインなんていうのが民主的と思っているなら、いかに個性を尊重していないかということです。個性は体ですから。例えばイチローに会社勤めを強いたり、高橋尚子に、「女の子なんだからうちでお茶を淹れていろ」というのはよくない。日本型の教育というのはしばしばそれをやったんです。それぞれの能力、身体の能力というのはみんな違うので、それはそれで社会的に認めなきゃいけない。その上に個ができるわけですから。
小沢 お互いですね。
養老 そうです。それが個なんです。個をできるだけ理解しようという気持ちはかつての日本にあったと思う。それを心といった。それをひっくり返しちゃって、個性があるのは頭だと思い込んでいる人が議論するから、今いった話になる。そして、右も左もお互いに理解できるはずだという前提が欠けてきている。
小沢 先生の今のお話に尽きるんじゃないですか。要するに、相手の心を知る心を持つこと。国なり何なりがみんな強制してひとからげにしてやっちゃえという類いの感覚では、いつまでたってもダメですね。自分が大事にされたければ、相手も大事にしなきゃいけない。自分の国を認めてもらいたければ、相手の国も認めなきゃいけない。

(7)「現世否定」がテロにつながる


養老 日本には伝統的に、共同体のために身を犠牲にするという考え方があります。これはうっかりすると危ない。現世否定と、自分はどうせ死ぬということが結びつくとテロになる。あるいは池田小学校の宅間守被告のようになる。自分のような人間は入れない学校の子供たちに、自分のような人間がいることを教えてやる。それで自分は死刑になってもいい、と。
 人は必ず死ぬということと現世否定とが結びつくと説得がきかなくなるんです。そういう人をうっかりすると作っちゃう。そこが、死ぬことを考えろと普通の人にいう時に難しいところです。だから僕は、死んでも構わないという自己犠牲は基本的に認めない。根本には現世肯定がなきゃいけないと思う。
――テロの危機は内なる部分にもあるわけですね。
小沢 ほんとうにそう思います。テロが生まれる背景には、現世否定を現実に作り出しちゃうような社会の矛盾が存在している。例えば、アラブ社会の中にはものすごい貧富の差、階級差が存在していて、サウジアラビアなんかでは、金持ちは何十人もカミさんをもらう一方で、一生独身で過ごす人がいっぱいいるといった、信じられないようなことが現実にあるわけです。そういう社会は先生がおっしゃったように、どうせ神に召されるという思想と結びつくとテロに結びつきやすい。しかし、政治の場から考えると、そういう人をつくり出してしまう社会をどうすればいいのかということになる。
――一神教の、絶対神の強さは日本人には理解できない部分もある。
小沢 日本人はそんなに信心深くないから。ただ、ちょっとアブノーマルな状況と結びつくと、日本人は途端におかしくなっちゃうでしょう。戦前の五・一五、二・二六事件から戦争になった時は、国民みんながかなり異常になった。そうなった要因の一つは不況ですが、直接的な引き金になったのは東北の飢饉です。あのとき、僕の地元の役場は、「娘を売る時は役場に相談するように」という回覧板を農家に回した。そのぐらい厳しい、食うに食えない状況だった。その結果、「(青年将校たちは)おれが死んででも、あの悪いやつを倒してやる」と決起した。
 僕にいわせれば、信仰とは別に、日本人はヒステリー状況になっちゃうと、思いもよらない方向へ一気に動いてしまう。その意味では非常に危険です。だから、そういう食うに食えないような状況をどうするか、という根本のところを考えていかないと意味がないと思うんです。
――仏教的な死生観はなくなったのですか。
養老 根本はなくなっていないと思います。僕の本の隠し味は仏教です。
小沢 諸行無常という仏教の観念は、人間は大自然の中での一こまという「流れの世界」だから、キリスト教的世界とは根本的に違うと思うんです。人間も自然の中の一つである、一存在に過ぎないという仏教的な考え方は非常に有効だと思います。
養老 お釈迦さんは都市から出て田舎へ行った人です。だから、仏教は都市から出て田舎に入った宗教。今の世界、未来の思想に一番ぴったりのはずなんですね。イスラムとか、キリスト教、一神教は町の思想なんです。

http://www.weeklypost.com/jp/040514jp/index/index1.html

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