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マスコミも尻込みの発言に拍手 社会派ドタバタ劇?『東京原発』[映画の鏡]
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投稿者 なるほど 日時 2004 年 5 月 09 日 04:51:10:dfhdU2/i2Qkk2
 

珍作だが、原発問題の核心を衝く(2004.4.19)
マスコミも尻込みの発言に拍手
社会派ドタバタ劇?『東京原発』


知事が「東京に原発を」と発言
 東京都知事(役所広司)が、東京都の局長会議で、「東京都に原子力発電所を誘致する。電気を最も使っているのは、東京都民であり、発電のリスクを、地方に押し付けてはいけない。おまけに、国からの補助金や、固定資産税収入、送電コスト削減、原発の廃熱の二次使用による冷暖房ドリーム都市の建設など、原発誘致による経済効果は計り知れず、東京都の財政赤字も、一挙に解消する」と発言して、局長たちを驚かす。こんなシーンで始まるこの映画は、いったい何が目的で作られ、以後のドラマの展開は、いったいどういうことになるのかと、一瞬観客をも戸惑わす、ゲテモノ映画的雰囲気でスタートする。しかし、映画を見て行くにつれ、いささか理屈っぽい、原発を巡る考え方や立場の違いを、応酬しあう室内ドラマに終始はしているものの、今考えられる限りの原発の危険性と不用論を、堂々と開陳して、政治もマスコミも避けて通って、一般に知らそうとしない事実を暴露して行き、原発問題に一石を投じようとする、この映画の作者たちの誠実な姿勢が、浮かび上がって来ることになる。珍作ながら、埋もれさせてしまってはいけない日本映画である。
俗物ばかりの都幹部、専門家呼ぶ
 議論に参加するのは、副知事(段田安則)、政策報道室長(田山涼成)、都市計画局長(菅原大吉)、財政局長(岸部一徳)、環境局長(吉田日出子)、産業労働局長(平田満)といった東京都の幹部6人だが、どの人物も不勉強な俗物ばかりという風に描かれていて、知事の暴論に、いささか小首をかしげながらも、誰もまともに反論できないで、知事のペースに巻き込まれて行く。そんな中、一番慎重な人物と設定されているは副知事が、もっと専門家の意見を聞いて議論をしようと提案し、原爆の危険性についていつも吹聴している、御用学者ではない東大教授(綾田俊樹)を引っ張ってくる。この映画では、この教授の発言が、最も重要なポイントになっていて、この映画の脚本・監督の山川元が、最も言いたい事柄が、教授の発言に凝縮されている。
安全神話崩壊、地震・廃棄物策なし
 この東大教授が明らかにするのは、政治家や役人、原発推進派の御用学者が、絶対安全と保証する原発の安全神話を、突き崩す事実である。まず地震への耐震性だが、関東大震災とか、阪神淡路大震災とかしか経験していないわが国では、それらと同規模の地震への対応が考えられているだけで、それ以上の地震に対しては、何ら保証されていない、同規模のものでも、局所的な強震に対しては、想定されていないということを、明らかにする。また使用済み核燃料の処理が問題で、再使用するウランと、また、再使用を研究中の、毒性の強い自然界にない物質プルトニウムを、他の核分裂生成物(少量ながらこの処理も問題)から、分離処理するのだが、その処理が日本では出来ず、現在はフランスなど外国に運んで、やってもらっている。それを国内でやるための、再処理施設を、実験用は茨城県東海村に、商業用は青森県六ヶ所村に作られ、六ヶ所村の商業用は、2006年夏に完成することになっているが、完成しても、日本中の原発から出る使用済み核燃料の処理を、すべてまかなう能力はなく、各原発で、20年〜30年という長期に亘って、貯蔵するしかない状況になっている。現在すでにどんどん貯蔵されており、もう限界に近づいている原発も多いという。おまけに、分離されたプルトニウムの再使用は、研究中だった福井県敦賀市の高速増殖原型炉“もんじゅ”の火災事故で、研究が大幅に遅れており、分離されても、即再使用の目途は、全く立っていないのである。こうして、核廃棄物は、各原発でどんどん貯まって行くだけ、その処理に往生した世界各国は、原子力発電転換の方向を打ち出し始めているが、日本はまだ推進だと言っている。
国民知らされず、原発問題の核心
 以上が、映画の中で東大教授が明らかにする、日本の原発政策のおよその問題点であるが、この程度の問題点の整理すら、日本ではほとんど行われておらず、一部の専門家だけの周知の事実となっていることを、この映画は明らかにする。誰かが本気になって始めない限り、政府も電力会社も建設会社も、自分たちの立場や利益に抗ってまで、原発反対を打ち出したりはしない。マスコミもまた、影響力の大きさに尻込みして、原発問題を深く追及することを、タブー視している。そして国民は、なにやら難しい言葉が飛び交うだけの原発問題という印象を持って、耳の不自由な人と同じような、何も聞かされない差別的状況に置かれてしまう。教授の説明に、局長連もまた、初めて聞かされたという顔をし、慌てて知事の提案に反対する者、それでもなお、経済効果や財政再建を優先して、原発誘致には頑固に賛成する者など、局長会議は混乱の様相を呈し始めるが、そうした混乱を演じる俳優の演技は、いささかステロタイプで、山川元の演出も無骨である。しかし、日本の原発政策の転換は、もはや緊急の事態になっているという、この映画のスタッフたちの思いだけは強く押し出され、小さな欠点は乗り越えて行く骨太さが、この映画にはある。
高速道路を走る、放射性核物質
 映画はさらに、現在日々の問題として、国民が危険にさらされていながら、情報としては、全く隠されたままとなっている問題にも言及する。それはフランスなどで再処理されたプルトニウムなどの放射性核物質が、船で大洋を運ばれ、日本各地の港から密かに陸揚げされ、タンクローリーのような簡便な輸送車で、高速道路をぶんぶん飛ばして、各地の原発や東海村の施設などに運ばれているという事実である。輸送情報を明らかにしたり、大げさな警備をしたりすると、よけいにテロリストらの標的になるという考えから、すべては秘密裏に運ばれ、原子力安全委員会の管理者など、関係者以外には、何も知らされていない。しかし、高速道路などでの、石油のタンクローリー事故はしばしば起きており、一般車に混じっての輸送は、いつ衝突事故に巻き込まれるかも分からない危険性を孕んでいる。事故が起きれば、その瞬間から、チェルノブイリ事故の二の舞となることは必至で、日本中の高速道路が、すでにその危険にさらされていると言える。映画はこうした事実も明らかにするため、東京のお台場に到着したプルトニウムを、塩見三省演じる運転手の輸送車が、福井の原発まで、一般道路を運んで行くという挿話を作り、局長会議の合間に、挿入して行く構成をとっている。核問題の議論と、現実の核の姿とを、並行して描いて行くこの構成自体は、核への多角的なアプローチとして、納得出来るものである。
核物質輸送車がカー・ジャック
 しかし、運転手が東京の地理に不案内で、ターミナルの繁華街に紛れ込む挿話とか、爆弾マニアの若者に、輸送車がカー・ジャックされて爆弾を仕掛けられ、カー・ジャックの模様をテレビ放送しないと、爆発させると東京都庁が脅されるという終盤の展開は、いささかパニックものの、活劇的要素を加味した映画に変質し、面白く見せようという魂胆が前面に出て、結末を安っぽいものにしてしまった。
 さらに終盤、原発の東京誘致を唱える知事の真意は、一種の都民に対するショック療法で、核汚染が避けられない原子力発電の将来について、都民自身に自主的な議論を巻き起こさせるために、「誘致したい」などと言い出したことが分かってくる。やがて、安全なエネルギーである水素燃料について、知事が秘書に特命を与えて、調べるように要請していたことも分かり、さらにその予算措置を、国に要請するためにも、原発誘致を考えるほど、東京の財政は逼迫していると、見せつけねばならなかったことも、分かってくる。しかし、こういう都民を人質に取ったような政策は、まともな政治家としてはやるべきではなく、東京都知事を、冒頭の否定的人物から、肯定的人物へと変質させて行く映画の展開も、いささか無理がある。だから、核輸送車がカー・ジャックされる展開も、世間が大騒ぎになることで、原子力政策転換が真意の知事にとっては、追い風が吹いたのも同じことだという風に描かれる。

生活の見直しも、原発問題の原点
 このようにこの映画は、終盤、娯楽活劇調や、知事の真意の逆転などがあって、珍作と呼ばざるを得ない出来ばえなのだけれど、中盤の局長会議のシーンで、教授が縷縷説明する原発の危険性や、原発からの撤退が世界の趨勢になりつつある事実などは、一般国民のレベルでは、あまり知られていない事柄であり、そこを知らしめるところに、この映画の真意があるとする、山川監督らスタッフたちの強い意志は、十分に感じられる映画になっている。今後の原発問題を考える上でも、参考資料に出来る映画だといえる。
 因みに、危険と知りつつも、電力不足の前には、原子力に頼らざるを得ないのではないかという疑問に対して、教授がはっきり答えるセリフ、つまり「貯蔵できない電気が最大使用量に達するのは、夏の猛暑の日で、かつ高校野球のテレビ中継が最高に盛り上がる日だ。そんなとき、ほんの少し、国民が節電する習慣を身につけたら、発電能力は、一段下げても大丈夫ということになります。」というセリフを、今われわれは、吟味してみる必要があろう。われわれ一人一人の生活習慣の見直しが、原発の危険性回避の、原点にもなり得るのである。
 脚本・監督の山川元は、鈴木清順、降旗康男、崔洋一、伊丹十三、周防正行らの助監督を経て、94年に監督デビューした47歳で、すでに4本の長編劇映画があるが、『卓球温泉』(98年、寂れた温泉復興のため、卓球大会を誘致する主婦の奮闘を描いたもの)が、最も印象に残っている。そして本作では、いろいろ破綻はあるものの、自らの思想を、初めてスクリーン上に、たたきつけている。(上映時間1時間50分)

(木寺清美)
■東 京 新宿武蔵野館 上映中(〜4月23日)
■札 幌 大通 シアターキノ 5月29日〜上映
■旭 川 ディノス・シネマズ旭川 6月12日〜上映
■八 戸 八戸フォーラム 6月12日〜上映
■仙 台 仙台セントラル劇場 近日上映
■山 形 山形フォーラム 5月29日〜上映
■新 潟 ユナイテッド・シネマズ新潟 上映中
■上 田(長野県) 上田でんき館 5月29日〜上映
■太 田(群馬県) 太田コロナワールド 5月8日〜上映
■国府津(神奈川県) 小田原コロナワールド 5月8日〜上映
■名古屋 中川コロナワールド 5月8日〜上映
■豊 橋 AMCホリディ・スクエア18豊橋 5月15日〜上映
■真 正(岐阜県)AMCリバーサイドモール真正 5月29日〜上映
■大 阪 十三 第七藝術劇場 6月19日〜上映
       動物園前シネフェスタ 6月19日〜上映
■福 井 福井コロナワールド 5月8日〜上映
■広 島 シネ・ツイン 上映中
■大 洲(愛媛県)大洲シネマ・サンシャイン 近日上映
■福 岡 地行 ユナイテッド・シネマ福岡 上映中
■中 間(福岡県)AMCなかま16 4月24日〜上映
■小 倉 シネプレックス10小倉 近日上映
■佐世保 佐世保エクラン東宝 近日上映
■配給社 ザナドゥー 03−3288−3300
《公開サイト》

http://www.jcj.gr.jp/cinema.html



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