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「産業資本主義」の終焉:日本が「世界同時デフレ不況」をかろうじて押しとどめている:対米金融35兆円の意味
http://www.asyura2.com/0403/dispute18/msg/831.html
投稿者 あっしら 日時 2004 年 7 月 22 日 16:39:11:Mo7ApAlflbQ6s
 


日本政府は、ブッシュ政権のイラク軍事侵攻が眼前に迫った03年初頭から今年4月まで総額35兆円(約3200億ドル)もの「円売り・ドル買い介入」を行い、手にしたドルで米国財務省証券(米国債)を購入した。

米国連邦政府の赤字財政支出は5000億ドル程度だから、赤字の40%(2003暦年分の対米金融額)から64%を日本政府が融通する資金で補っていることになる。
また、米国の貿易収支赤字も5000億ドル程度だから、連邦政府の赤字財政支出が貿易収支の赤字を形成しているとも言える。
“分不相応”の消費が連邦政府の赤字支出で行われていると考えればよい。ということは、日本政府が、米国民の“分不相応”の消費の40%から64%を支えているということになる。

この対米金融は、日本の資金が800億ドルと言われているイラク軍事作戦経費を賄うに足るものではあるが、その4倍もの規模だからそれだけの役割であったわけではない。

これまで何度か説明してきたように、日本政府の対米金融は、日本の対米輸出ならびに対米輸出の増加で成長を続ける中国への輸出の維持(増加)に貢献している。
米国民の“分不相応”の消費がなければ、日本の対米輸出が大きく減少するのみならず、対中輸出も大きく減少し、日本経済の「デフレ不況」はさらに悪化するからである。

日本の対米貿易黒字は600億ドル(約6兆6千億円)で中国の対米貿易黒字は1000億ドルだから、日中合わせた対米貿易黒字は1600億ドル(約17兆6千億円)である。
2003年の対米金融21兆円はそれよりも大きい金額だから、その他のアジア諸国や欧州諸国などの対米貿易黒字にも貢献していることになる。

論理的には、日本政府の21兆円の対米金融がなければ、米国の貿易収支赤字が2690億ドルになり、日本の対米貿易黒字が277億ドル(約3兆5百億円)、中国の対米黒字が462億ドルになっていたと言える。
そして、重要なのは、国際的な産業連関(社会的分業)状況から、日本の対中貿易収支もその比率に近いレベルで落ち込む可能性があることである。

このようなことから、日本政府が対米金融で作り出した“電位差”が、世界の貿易(財の国際取引)を支えていることがわかる。

(米国政権は日本政府の金融がないからといって赤字財政支出を大きく減らすことはないが、赤字分を通常の金融市場から調達していれば、米国の貸し出し金利は上昇し、株式市場に流れ込む資金も減少し、米国経済のみならず世界経済が大きなダメージを受けることになる。不動産バブルも終焉し、株式市場も下落圧力に晒される)

貿易収支の変化は、黒字か赤字かとか外貨準備の増減に主要な意味があるわけではなく、国民経済の成長に及ぼす影響に重要な意味がある。
貿易収支の黒字増加は、生産性の上昇がもたらすデフレ圧力を財の国外流出で抑制し、輸出で稼いだ外貨が国内通貨に転換されることで生じる貨幣供給量の増加がインフレ圧力を生む。
適正なインフレは産業が成長する必須条件だから、そのような経済条件を生み出す貿易収支の黒字増加は、生産性を上昇させながら国民経済を成長させていくための第一の牽引力なのである。

2003年初頭以降の日本政府による対米金融がなければ、現時点の世界経済は、デフレで苦悩していた可能性もある。

2002年から2003年にかけて、忍び寄る“デフレの脅威”が世界で語られていた。
日本・中国・台湾・香港は既にデフレに陥り、米国や欧州諸国といった先進国もディスインフレ(低インフレ率)状況にあった現実を反映した動きである。

35兆円という金額は、日本のGDPの7.7%であり、米国のGDPでも3.5%の重みがある。

刹那的な効果しかないが、35兆円を期限付き商品券のかたちで日本国民に配っていれば、2003年度の日本のGDPは、名目で7.7%拡大したのである。(対米金融をしなければ輸出が減少するから、実際は3%から4%の成長になればいいほう)

発展途上国で自国通貨人民元のレートが低く押さえられている中国のGDPはおよそ151兆円(11兆7千元)だから、35兆円はGDPの23.2%に相当する。
(GDPには帰属家賃(自宅のみなし家賃)や帰属食糧(農民の自家消費)なども含まれているから、通貨を媒介とした現実の取引により生まれる付加価値はもっと小さい)

日本や米国の産業の生産性上昇はわずかだが、中国のそれは急上昇している。
中国経済は、昨年秋にようやくデフレから脱し、今年になってからは“過熱”が心配される状況になっている。
しかし、日本の対米金融35兆円がなければ、中国経済は、デフレのなかで19世紀末の米国と同じような「繁栄感なき経済成長」を今なお続けていたはずである。

現代の産業は膨大な設備投資をベースに財の生産を行っているから、設備の償却をするためにも、稼働率をあるレベルで維持しなければならない。
生産した財が思うような価格で輸出できなければ安値でも輸出しようとし、それでも過剰に在庫が残るようであれば、国内市場でも安値で売りさばこうとする。

(中国の対米貿易黒字1000億ドルは、中国のGDPの7.3%に相当する。全体の貿易収支はトントンだが、輸入は対米輸出のための部品や外資の製造設備関連が主だから、対米輸出が減少すれば、その分GDPが減少すると考えることができる)


日本人までが米国を世界経済の牽引車と考えているが、今回の説明でわかるように、世界の「同時デフレ」を押しとどめ、世界経済の成長をかろうじて支えているのが日本であることがわかる。
連関的に言えば、米国の低金利・米国の株式市場活況・日本の株式市場活況を支えているのも、日本の対米金融がなせる技なのである。
(日本政府の「円売り・ドル買い介入」は、米国債の購入を通じて米国経済の購買力を高めるだけではなく、円売りで保有した日本円が日本の金融市場に流れ込むからである。ドルと円の購買力がともに増加するのがミソ)


米国政府の赤字補填や世界のデフレ化抑制に膨大な資金を投入している日本政府は、世界に対する日本の貢献の高さを胸に秘めつつ、日本経済に対する思い切ったデフレ脱却策を堂々と行ってかまわないのである。
日本政府は、自国民のために日本経済をデフレから脱却させる権利と義務がある。

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