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諫干工事差し止め命令 漁業被害への影響認める 異例の判断、国は異議申し立てへ 佐賀地裁、仮処分決定(西日本新聞)
http://www.asyura2.com/0403/ishihara8/msg/407.html
投稿者 シジミ 日時 2004 年 8 月 26 日 19:08:16:eWn45SEFYZ1R.
 

http://www.nishinippon.co.jp/news/2004/isahaya/

有明海沿岸四県の漁業者百六人が、国営諫早湾干拓事業(長崎県)の工事差し止めを国に求めた仮処分の申し立てに対し、佐賀地裁(榎下義康裁判長)は二十六日午前、「事業が漁業被害の唯一の原因とはいえないが、少なくとも法的因果関係があると推察される」として、工事続行の差し止めを命じた。原告弁護団によると、進行中の国の大型公共事業の差し止めを認めた決定は初めて。

 国は佐賀地裁に異議を申し立てるが、同地裁の判断が出るまで工事は中断される。差し止めの仮処分決定が確定した場合、本訴訟の一審判決まで工事は止まる。国は「事業の約九割は終わっており、実質的な影響は薄い」としているが、国が実施を見送った中長期開門調査を求める声が原告らから高まるのは必至だ。

 榎下裁判長は、原告が証拠として提出した二〇〇三年の農水省ノリ不作第三者委員会の結論を重視。「事業は有明海の潮流に変化を与え、諫早湾の締め切りによる干潟喪失は、湾奥部での環境悪化の進展と無関係ではない」とする同委員会の最終報告を「極めて信頼に値する」と評価した。

 そのうえで「漁民の多くも潮の流れが弱まったと実感しており、事業後、諫早湾外の有明海の潮流に変化がみられるとの実測データも得られている」として「同事業と漁業被害との因果関係が推察できる」とした。

 また、第三者委員会が提言した長期開門調査実施を国が実施せず、調査データが得られていないことから、原告に、事業と漁業被害との詳細な因果関係の証明を求めるのは「不公平」と判断。同事業の現状にも触れ「漁業被害は深刻であり、事業全体を再検討し、必要に応じた修正を施すことが肝要」と指摘した。

 これまでの審尋で原告らは「潮受け堤防を閉め切ったため、有明海全体の潮流が変化するなどして漁獲量が減少した」と主張。国側は「工事は潮受け堤防内で行われており、潮受け堤防外で漁業を営む原告らに著しい損害を与えないことは明らか」などと反論していた。

   ◇  ◇

 長崎県諫早市の九州農政局諫早湾干拓事務所(梅川治所長)は二十六日午前十一時前、工事差し止めの仮処分決定を受け、工事業者に作業の中止を指示した。

■諫早干拓仮処分決定骨子

 一、有明海の漁業被害と諫早湾干拓事業の因果関係は、法的には経験則上高度の蓋然(がいぜん)性があればよく、現段階では法的因果関係の疎明がある
 一、事業開始前の環境影響評価の予測範囲を超える地域に深刻な被害が及んでおり、事業全体の再検討と修正が肝要
 一、見直しには時間を要し、その間事業が着々と進行すれば再検討自体がより困難となり、一時的な現状固定が重要
 一、国は本訴の一審判決まで干拓事業の工事を続行してはならない

■諫早湾干拓仮処分決定要旨

 佐賀地裁が出した国営諫早湾干拓事業の工事差し止めの仮処分決定の要旨は以下の通り。

 【権利侵害の有無】

 有明海での漁獲高の減少は経済面で重大で深刻な影響を与えている。

 民事保全手続きにおいては、暫定性、迅速性という手続きの特性に基づき、因果関係の立証については、人が一応確からしいという心証を持ち得るものか否かということで判断すべきだ。

 (有識者、漁業者などからなる)ノリ不作等検討委員会は、国および長崎、佐賀、福岡、熊本県などから提出された資料を多大な時間と労力を使って分析し議論をした上で見解を示したものであり、その見解の内容は裁判所の審理においても極めて信頼に値する。

 このノリ不作等検討委員会が「諫早湾干拓事業は諫早湾のみならず有明海全体の環境に影響を与えていると想定され」と指摘し、最終報告でも「諫早湾干拓地全面の水質、底質、生物の変化は有明海全体に影響を及ぼしたことが想定される」などとしている。本件事業が有明海で生じた漁業被害の唯一の原因とまでは言えないが、一定程度の因果関係は認められる。

 漁業者らと国の間には資料収集能力に差があり、この能力差を無視し、漁業者らに高度の立証を求めるのは民事保全手続きにおいて公平の見地から到底是認し得ない。また、国は同委員会が事業の検証に役立つとした中・長期開門調査も行っていない。現段階においては、少なくとも法的因果関係の疎明はある。

 【保全の必要性の有無】

 本件事業が、潮受け堤防の閉め切りなどによって有明海の環境悪化、漁業被害の発生に寄与していること、環境影響評価で予測された範囲を超える地域にまで被害が及んでいることが一応認められる。漁業被害の程度も深刻で、本件事業による漁業者らの損害を避けるためには、完成した部分も含めて事業全体を精緻(せいち)に再検討し、必要に応じた修正を施すことが肝要となる。

■【解説】行政優位からの転換

 諫早湾干拓事業の工事差し止めを命じた佐賀地裁の判断は、大型公共事業と環境異変の因果関係の解明を国側に迫っており、今後の、公共事業の在り方にも影響を与えそうだ。

 公共事業をめぐる訴訟は、原告側が事業と被害の因果関係を証明するのは困難なことなどから、行政側が優位に立ち、公共性の「乱用」を裁判所が認めることはほとんどなかった。しかし、最近は、公共事業の違法性を問う判決も出されており、全体的な風向きの変化を指摘する専門家もいる。

 例えば、今年四月、東京都内の道路建設に伴い、土地収用に向けた事業認定などの取り消しを求めた訴訟の東京地裁の判決では、「大気汚染被害発生の疑念をぬぐえない」として事業認定を違法と判断(東京高裁に控訴)。今回の決定も、「公共性」の是非を厳格に判断する新たな潮流に沿い、既に着工している事業にも厳しい目を向けた形となった。

 審尋の中で国は「干拓工事が異変をもたらしたと断定する根拠はない」と主張したが、榎下義康裁判長は準備協議で「『消極的根拠』ではなく『積極的根拠』を示してほしい」と要求。決定書では「国が設置した委員会で長期の開門調査を提言したにもかかわらず実施していない」と厳しく批判した。

 因果関係の立証を国側に求めた意義は大きく、「環境悪化の原因が特定されていない」として、あいまいな状況の中で工事を進めてきた国側に猛省を促す決定といえる。 (佐賀総局・川野恵理)

■「宝の海再生へ一歩」 歓喜の漁民

 「宝の海の再生に向けて大きな一歩だ」。佐賀地裁前では、有明海沿岸から集まった原告の漁業者や支援者約二百五十人が集まり、こぶしを突き上げ「歴史的な勝利」(原告団)を喜んだ。止まることがないと半ばあきらめかけた公共事業に「待った」がかかり、漁業者らは「万歳」を繰り返し、喜んだ。

 午前十時すぎ、弁護団数人が「勝訴」「農水省を断罪」と書かれた紙を持って裁判所から駆け出すと、漁業者らは「すごい」「やったー」の歓声。お互いに握手したり、感極まって涙ぐむ姿もあった。

 「待ち望んだ歴史的な勝利」。地裁前で弁護団の報告を聞いた原告団長で佐賀県川副町の川崎直幸さん(54)は、大きくうなずいた。額に吹き出す汗をぬぐおうともせず「次は干拓事業の中止だ」と力を込めた。

 福岡県大和町でノリを養殖している石川誠さん(37)は「仲間に自殺者が出るなど、漁業者の生活は極限まできている。やっと漁民の本当の気持ちが届いた。有明海再生に希望が見えてきた」と、言葉をかみしめた。

 佐賀県太良町でアサリやノリを養殖している大鋸武浩さん(34)は、先日、赤潮でアサリが全滅したばかり。「国にたてつくなといわれるなど、しがらみの中で戦ってきた。やっと努力が報われた」と興奮気味に話した。

■「大変なショック」 長崎県

 長崎県諫早湾干拓室の鶴田孝広室長は長崎県庁で緊急記者会見。「午前十時半前に農政局から工事差し止め決定の連絡が入った。正直、大変なショックを受けている」と紅潮した顔で語った。

 今後の見通しについて「工事中止が長引けば、二〇〇六年度の事業完成にも当然影響が出るだろう。県としては大問題だ。知事や国と相談して今後の対応を決めたい」と説明。決定が工事と漁業被害の因果関係を認めていることについては「詳しい決定内容が分からないのでコメントできない」とかわした。

 また、鶴田室長は、二十六日午後に開催予定だった諫早湾干拓の調整池の利活用策を検討する協議会が中止されたことを明らかにした。

 一方、諫早湾沿岸の漁協幹部(66)は「ただびっくりしている。工事が長引けば、漁場の安定が遅れるのではないか」と困惑していた。

■諫干農水省反応 「信じられない」 予想外の決定に戸惑い 農水省

 諫早湾干拓事業を進める農水省農村振興局では午前十時すぎ、工事差し止めの一報が入ると、「大変だ」「信じられない」と驚きの声が上がった。

 事業自体は二〇〇六年度完成を目指して今年三月まで93・6%完成。現在、内部堤防や農地整備の工事を進めている。詳しい内容が入っていないこともあり、担当者は「いま実施している工事は大半が陸上工事。直接、有明海の環境に影響を問われるような工事ではない。何を止めろというのか」と戸惑いを隠せない様子。

 省内には、今年一月に福岡地裁で前面堤防工事差し止めの仮処分申請が却下されたため、佐賀地裁でも同様の決定が出るとの見方もあった。ただ、仮処分申請から決定まで一年以上かかっており、差し止めを懸念する声も出ていた。

 川村秀三郎局長も「正式な理由を見てからでないと…」と繰り返したうえで、「(諫早市周辺の)防災工事などに一定の効果があるなど諫早湾干拓事業の必要性には変わりないし、関係省庁と協力して有明海再生に向けて努力していく農水省の基本的スタンスは変わらない」と強調した。

■諫早湾干拓事業の経過

 86年12月 防災干拓事業計画を決定

 97・4・14 潮受け堤防閉め切り

 2000・12 有明海でノリ色落ち被害始まる

 01・12 農水省の調査検討委員会が開門調査を提言

 02・4 短期開門調査で、5年ぶりに海水導入

 11 漁業者らが工事差し止めを求め佐賀地裁に提訴。同時に仮処分申請

 03・4 漁業者らが公害等調整委員会に原因裁定申請

 11 短期開門調査で九州農政局が、有明海全体への堤防閉め切りの影響は「ほとんどない」と結論

 12 仮処分申請の審尋が終了

 04・5 亀井善之農相が中・長期開門調査の実施見送りを表明

 8・26 佐賀地裁が工事差し止めを命じる仮処分決定

■諫早湾干拓事業工事差し止め訴訟
 2002年11月、国営諫早湾干拓事業の前面堤防が完成すれば有明海再生は不可能になるとして、沿岸四県の漁業者らが工事差し止めと損害賠償を求めて佐賀地裁に提訴。同時に、漁業者の原告が工事差し止めの仮処分を申請した。その後、前面堤防の完成に伴い、事業全体の工事差し止めに訴えの趣旨を変更。仮処分の審尋は03年12月に終了。本訴の原告団は現在約860人で、審理が続いている。福岡県有明海漁連も福岡地裁に前面堤防工事差し止めの仮処分を求めたが、福岡地裁は今年1月に却下した。


[2004/08/26]

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