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新潟県中越地震及び台風こよる災害復興に関する要望書[日本居住福祉学会(早川和男会長)]
http://www.asyura2.com/0403/jisin11/msg/1013.html
投稿者 なるほど 日時 2005 年 1 月 17 日 03:09:11:dfhdU2/i2Qkk2
 

(回答先: 問われる小泉内閣 新潟県中越地震の被災者支援 [JANJAN] 投稿者 なるほど 日時 2004 年 12 月 16 日 23:22:41)

日本居住福祉学会(早川和男会長)が自然災害復興支援について
内閣総理大臣に、11月28日、要望した。以下、全文。

新潟県中越地震及び台風こよる災害復興に関する要望書

 私たちはすべて、災害列島とも称される日本と言う国に身を寄せて生きてい
る。どこの町や村であれ、安全で安心して住み続けられるのでなければ、私た
ちは生きていけない。「安心居住」は生存と暮らしの基盤であり、とりわけ高齢
者障害者にとって住み慣れた家と町は生きる希望である。
 ところが本年は、集中豪雨、度重なる猛烈な台風の来襲、そして新潟中越地
震と次々と日本列島を自然災害が見舞った。そして何度も、あるいは引き続き
避難所・応急的生活を余儀なくされている多くの方が居り、大切な住居・家財
道具、さらには生業を失ってしまった方も多い。
 ところでこれまで私たちは、他分野の専門家や市民の参加のもとに、三宅島
避難者や阪神淡路大震災被災者と交流し、鳥取県西部地震や有珠山噴火災害
の復興過程などについて当事者の話を開きながら討論してきた(とりわけ、鳥取
地震11日後に打ち出された片山知事の住宅補償の英断は、当学会でも緊密な
連携をとりつつ、高く評価しているところである)。
 そこから次のことが明らかとなつた。すなわち、災害復興において、道路や
橋が復旧しても、住宅・生活のインフラや生計の基をなす地場産業が再建され
ず住民が居なくなれば地域社会は崩壊する。従つて、「居住福祉」は最も基本的
な人間の生存と地域を支える資源であり公共財的性格を有することに、災害時
にこそ配慮されるべきであろう。わが国では、住宅は私的所有の対象であり、
公的支援とは無縁と考えられやすいが、被災者の健康と命の尊さゆえに、その
基本的人権として、適切な居住ヘの権利、そして、生活を支える生業に従事す
ることの重要性に思い知らされるわけである(この点は、夙に国際人権規約(社
会権規約)11条に指摘されるところであるが、今尚わが国の住宅政策の弱点で
あることをこの際再認繊すべきものであろう)。
 それゆえに、住宅が壊滅状況に瀕した場合には、公的な責務として被災した
居住生活の保障に真摯に取り組まれるべきであり、また.それは、災害時に何よ
りも最優先されなければならないのが、被災者の健康と命であることとも密接
に関連している。故に、復旧時には、住宅補償はもとより、被災前の生活環境
を取り戻すことにも全力を挙げ、かつ、これまで培ったきたコミュニティーを
大切に守りながら復興を行うことが肝要である。そうしなければ障害者、高齢
者、乳幼児、子どもなどの災害弱者の暮らしを支えることができず、避難所や
仮設住宅、復興住宅での孤独.死を防げない。また、復興過程は決まった道筋だ
 私たち、日本居住福祉学会は、.居住の公的・社会的保障に政府・自治体が全
力を傾け、復興過程における犠牲者を1人も出さず、1日も早く被災者が安心し
て生きることのできる地域居住が確保されることを願う。
 以下に本学会の具-体的要望を列挙する。

 1〔住宅補償の充実〕
 従来、居住に関するナショナルミニマムの公的保障という発想が欠落してい
たためか、また、闇雲に住宅は私有財という発想が強固なためか、自然災害で
失っても、住宅の公的補償は貧しい状態である。激甚被害に見舞われた住民が
願うことは、ライフラインの回復とともに、各自の生活の再建、そしてその基
盤となる住宅の確保であることに、改めて思いを致すべきである(住宅は、基本
的人権として謳われる「幸福追求権」「生存権」と不即不離の関係に立つわけで
ある)。最も必.要とされている住宅再建支援が、災害復旧の過程で従来―いわ
ゆる公共工事との対比で|被災住民の意向とは裏腹に閑却されてきたことヘ
の謙虚な反省が必要なわけである。       '    .
 新潟県では、被災者生活支援法(後述するように最大300万円だが、制約が
ある)に上乗せ100万円の公的住宅補償が検討されているようであるが、実際
の被害は、それをはるかに超えている。半壊と躍定されても、今尚続く強度の
余震、震災ダムの決壊による洪水被害、冬季の豪雪のための二次災害などによ
り、全壊に近い状態になると.予想される場合もある。従って、当学会は、補償
額の増額(少なぐとも、国による補償だけでも500万円以上は必要である)と、
そのためにも全壊を広く認定するような法運用を求める(なおこのこと‐は、決
して当該家屋の廃棄を促すものではなく、むしろ逆に、できるならば従前の居
住生活の回復をねらい、そのための公的支援の促進を説くものであることを、
念のため申し添える)。また、こうした問題は、安易に地方公共団体の問題とせ
ず、全国レベルの支援の問題として、国の補償額を高める方向で考えられるべ
きである(なぜならば、前述の如く適切な居住による生存権は、基本的人権であ
り、その実現ヘ向けての国家的保障がまず求められるからであり、このことは、
国連の人権規約委員会がわが国に警告しているホームレスでの抜本的対策ヘの
取り組みの必要性と同様である)。
 なお、被災者生活再建支援法の支給額は本年4月に300万円まで引き上げ
られたが、その対象は、@建物の解体、撤去、A建物の新築・補修のための借
り入れローンの利息に限られている。しかし個人資産の形成となる住宅再建ヘ
の支援を行わないという立場に合理的根拠はない。生活再建には住宅そのもの
の再建が必要で、生活再建支援を建物補修そのものの支援にまで拡げることを
切に要望する。

2 〔とくに第一次産業従事者の産業損害救済〕
 本年の度重なる自然災害によっては、自然と向き合う第一次産業に従事する
ものには、莫大な農業・畜産業などの被害が生じており、また製造業などへの
打撃も大きく、雇用の場が失ゎれている。「居住福祉学」は、住宅のハードだけ
を切り離すのでなく、居住者の生活を総体的に考えている。産業被害の救済
は、住民の生活再建において、必須の要請なのであり、この点は中山間地を襲
った新潟県中越地震の場合には殊のほかクローズアップされている。例えば、水
没した山古志村では、錦鯉や闘牛、そして今まで築かれた棚田などに、壊滅的
な被害が生じている。こうした自助努力だけでは回復困難な、あまりに甚大か
つ破滅的な営業・産業損害をどのように補償していくかという問題は、被災地
域の再生において重要な問題であり、災害とリンクした損害である。既に被災
地での営農を諦めて他地に転出する例が続出していることは、この問題が、コ
ミニュティーの崩壊を防ぐためにも喫緊のことであることを如実に物語る。
 この面での救済に対して、安易に「不可抗力」論を持ち出し、また――住宅
問題の場合同様に――「私的問題」だとして消極的対応に終始するならば、「災
害支援」として住民サイドから一番求められることに目をつぶるという帰結に
立ち至る。既存の制度枠組みの延長線での雇用調整助成金とか農業災害補償と
かでは、なお保護は部分的なものに限られており、さらに激甚災害指定による
国の補助も含めて、より包括的.抜本的な産業補償が求められるのである。
 また、新潟中越地震は、傾斜地に大災害を与えるものであったことに注意が
必要である。山古志村は、10年越しの悲願であり、本年6月に45億円を
投じてようやく上水道が通じたが、その数ヶ月後に本地震により一夜にしてズ
タズタに破壊されるという悪夢的悲劇を経験している(それは「公共工事」と
はいえ、同村の井戸の枯渇を考えれば基本的な居住基盤の問題であることは
いうまでもないだろう)。 そうした場合に、万一、被災工事に要した費用の財
政面においては、地方自治体の債務を微求するということでは、災害救助のない
し激甚災害の災害対策と矛盾し、政策的分断も甚だしく、かかる事態に当たっ
ては、地方自治体の債務は免除されるべきであることも、この際求めておきた
い。さらに、棚田おける横井戸や用水路の壊滅的崩壊も、 生活インフラ基盤
の解体という意味では、水道の破壊とほとんど変わらない。これを、一方は公
的で、他方は私的な問題だと線引きして救済の有無を区別するならば、その非
現実性、恣意性に、謙虚に気づいて反省すべきである。 いわんや中越地方の
棚田が、わが国の貴重な農業文化や景観遺産の継承であり、また、21世紀社
会における中山間地農業の多面的機能(国土保全機能、保養、リアクゼーショ
ン機能、環境保護機能、食の確保機能など)の保護の必要性に鑑みて、それが
単にローカルな私的問題に止まらない公共的問題であることに思いを致すべき
であり、その壊滅災害に当たっては、公的救済に努めることは急務であろう。
その意味で、従来式の縦割り主義の弊害を排した、包括的・抜本的な生活基盤
災害保障こそが目指されるべきであり、「山古志特別法」などはきわめて注目に
値し、本格的な検討が求められている。
 以上、こうした産業損害救済の問題ま、居住福祉・災害福祉の一環をなす重
要課題として、そのビジョンの早急な提示を改めて促しておきたい。

三〔応急的居住福祉整備のあり方〕
 (1)(仮設住宅についての考え方)
自然災害により住処を失った避難住民に対して、安定生活書提供する仮設住
宅の意義が大きいことは言うまでもないが建設場所や存続期間などの規定は
検討を要する。被災地状況に合わせて、長期的な居住を可能にしたり、生活
に便利な地区に建設したりできるように運用すべきである。仮設住宅ならば
当然のことのように、2年の期間制限を考えるのが従来の習いであるが(建築
基準法85条項1号及び3項による、その合理性も再検討すべきである。す
なわち、一方で、折角こうした居住施設に1戸あたり200万ないし450万
円もの公費投ずるならば、長期的タイムスパンから、取り壌しではなく、被
災地整備後の集落再編成に再利用することも考えられてもよいし(またそうで
あれば、その分、さらにしっかりした仕様で、寒冷地対策・豪雪対策などを一
層充実させることがあってよい)、他方で、取り壌しが予定される仮設住宅とは
選択的に同額の公的住宅補償も考えるという柔軟性があってもおかしくない。
同様に、次述する如く宿泊施設の調達など、別の形で仮設住宅類似の居宅が提
供できるならばその分、本来の住まいの再建に向けての、公的補償に向けられ
てよい。
 さらに、神戸震災のときには、ケア付き仮設住宅が注目されたが、住宅を単
に入れ物的に考えるのでなく、ソフトの面も併せて考えるべきである。また、
高齢者・障害者の場合には、転居も容易ではなく、職業との関係で元の住居で
暮らさざるを得ない場合もあり、健常者であっても、従来の生業との関係で、
それまでの居住を絶つことの問題が省みられるべきであろう。
 要するに、仮設住宅の建設、損壌住宅の除却、復興住宅の建設という単純な
復興過程だけでなく、状況に合わせた様々な復興の道筋を用意すべきであると
いうことであり、「まず仮設住宅に入り、住宅復興を考える」ということは、一
般論としては当たっていても、豪雪の冬季に、本来の家屋を放置することのマ
イナス面、それならば、将来に活きる形での住宅ヘの公的投資に、もっと本格
的に取り組まれてもよいであろう。

(二)(避難所のあり方)
 とはいえ、今回の新潟中越地震の場合には、余震が長引き仮設住宅の建設も
ままならず、また土砂災害のために元の住宅に戻ることも危険が伴う状況との
ことである。こうした事態に至つては、避難所の環境整備に努めることが肝要
であろう。冬を控えて、インフレノエンザが蔓延する事態に至っては、なおのこ
とである。避難所の整備の留意事項として.(1)暖房、空調、加湿ヘの留意、
(2)プライバシーに配慮した空間作、(3)、トイレ、風呂など衛生面の整備・
充実、(4)飲料、食生活の安定、(5)医療・保健のサポート態勢の充実など
が、直ちに挙げられなければならないだろう。(6)障害者、高齢者、乳幼児‐子
どもなど災害弱者ヘの十分な配慮がなされなければならない。配慮とは、単に
優先的な避難所に収容や仮設住宅ヘの入居ではなく、暮らしが成り立つように
配慮することである。そのためにも、基本物資の充実に向けて、公的にも、私
的にも(すなわち、ボランティアの協力)努力が図られるべきものである。さ
らに、被災地域-体がいまだ居住不安定の状況にあるならば、広くネットワー
クを構築して、広域的に優良施設の提供ということがなされてよい。「エコノミ
―クラス症候群」による被害も出ているようであるが、狭隘な車両による継続
居住の異常性はもっと真剣に取り組まれてよく、広域的協力により、例えば、
近隣の温泉旅館・ホテルの借り上げ、保養所・研修施設、空き家の公共住宅の
総動員などという形で、より良好な場所の提供を、早急に進めるべきである。

四.〔コミュニティー維持〕
 被災者の復興には,避難所、仮設住宅、復興住宅ヘというパターンがあるが、
この過程で従来の居住コミュニティーが考慮されず、住民(とくに高齢者の場
合)の孤立化が進むならば、居住福祉の観点から、きわめて憂慮される事態と
なることが阪神淡路大震災の経験が教えてくれるところである(今でも、復興住
宅の高齢者の『孤独死」が跡を絶たなしことを想起すべきである)。居住には、
その継続性、居住環境、そこにおけるコミュティーが重要であり、避難民を
転居させる際には、くれぐれも留意すべきである。くじなどによつて'、今後の
居住場所をアトランダムに決めて避難民をばらばらにしていくことは決して望
ましいものではない。その意味で、長岡市で既に試みられている「コミユニテ
ィー入居」は貴重であるが、これを仮設住宅段階で終わらせてはならない。せ
っかく、仮設住宅で安定した生活が送れるようになったところで、取り壌し期
間(2年間)の墨守から、転居を余儀なくさせ復興住宅に移して避難住民の健康
を害してはならない。先に仮設住宅に関する理解の転換をお願いした所以であ
る。.

5、〔情報ネットワーク作りの重要性〕
今回の大震災のように、被害地域が広範囲に及び、しかも被災集落が散在す
る場合には、被災状況や被災住民の居住状況に関する情報に濃淡ができやすく、
またそれゆえに、支援状況の偏頗性ももたらされかねない。また、数多くの台
風による災害復興の問題も、地震のニュースの前に忘れ去られがちで'ある。こ
うした支援のアンバランスを避けて、過不足のない復興支養の前提としても、被
害情報のネットワークの充実にいっそう取り組まれるべきものである。今後
ともマスコミ‐は、災害問題の本質に光を当て、支援体制の充実に資するべく情
報提供の拡充をはかるべきものである。さらにインターネットなどを生かし
た情報完備:ボランティアの誘発、義援金誘引の充実に向けた努力も求められ
るであろう°

 急務事項としては、さしあたり以上であるが、今後とも本学会としては、住民
との対話集会を持つなどして、震災後の居住福祉の充実に努力していく所存
である、関係各位にたいしても、ここに述べたことの実現に向けて動かれること
をお願いする次第である。

2004年11月28日
 新潟県中越地震に襲われた山古志村の災害対策本部にて
                       会長 早川 和男

  (連絡先)〒466‐8666 愛知県名古屋市昭和区八事本町101−2
                        TEL052‐835‐7652
                        FAX052‐835‐7197
                        中京大学商学部岡本研究室気付
                        日本居住福祉学会

http://www6.ocn.ne.jp/~kouteki/kyojyuuhukusi-youbousyo.html
http://www6.ocn.ne.jp/~kouteki/newspage.html



「心の復興は、村に帰ること」 山古志村長が神戸で訴え [朝日新聞]
http://www.asyura2.com/0403/jisin11/msg/1012.html

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