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11世紀前後には磁北が西に約15度ずれていた←タイの古寺遺跡から過去千年間の偏角永年変化が判る?!:考古磁気学的手法
http://www.asyura2.com/0403/jisin11/msg/213.html
投稿者 エイドリアン 日時 2004 年 6 月 02 日 13:54:33:SoCnfA7pPD5s2
 

 京都大学21世紀COEプログラムの一環として、タイ・チュラロンコ−ン大学理学部(橋爪道郎教授・他)と共同で、2004年1月末および3月末に、タイ中部にあるPhimai(ピマーイ)観測所(Royal Rain Making 所属)に磁力計およびGPS受信機を設置して試験観測を開始するとともに、9−17世紀に建設された数カ所の古寺遺跡の方位測定を行いました(*1、*5)。これは、中国(西安)における偏角測定記録(*2)によると、11世紀前後には磁北が西に約15度ずれていましたが、たまたま訪れたPhimai観測所近くの同時期に建設された大規模な古寺が、同程度西にずれた方向に建てられていることから、我が国のいくつかの歴史的建造物(*3,*4)同様、タイでは大規模な古寺の建設にコンパスを用いて方向を決めていたのかもしれないと考えたからです。

 もしそうであるならば、タイ国内に多数存在する同様な遺跡を調査すれば、過去1000年間以上に亘る東南アジア地域の地磁気偏角永年変化を明らかにすることができるかもしれません。1月末は観測所に装置を設置することが目的だったので、Phimaiの遺跡の他には、その近くのPrasat Muang TamとWat Phra Si Ratana Mahathatをバンコクへの帰路に立ち寄っただけでしたが、3月末の観測出張では当初から他の主要な数カ所の遺跡調査を予定に組み込み、タイ国内を5日間で約1500km以上走り回るという強行軍でした
(図1)。

図1

<図1>

シーサッチャナーラ付近にある窯跡

<シーサッチャナーラ付近にある窯跡>

日本からは、私と能勢正仁助手(1月末)、及び私と齊藤昭則助手(3月末)、タイからは橋爪教授とチュラロンコ−ン大の学生さんが同行しました。スコータイ(Sukhothai)やアユタヤ(Ayutthaya)は日本からも多くの観光客が訪れるところですが、スリ・テップ(Sri Thep)などは非常に大規模な遺跡であるにもかかわらず、まだそれほどは観光地化してなくて、広大な敷地の中に多数の遺跡がひっそりと佇み、1000年前の栄華と動乱の世を偲ばせていました。しかし時間的制約から、ゆっくり観光を楽しむ余裕はなく、私たちは貸し自転車に乗って、コンパスグラスと携帯型GPSを片手に、遺跡公園内に点在する寺院跡の方向と位置をひたすら測り続けました。その結果をまとめたのが図2で、各遺跡で測定した値(平均値)を短い横棒で示してあります。もちろん、全ての遺跡の方向が意味があるというわけではなく、中には、例えば Kamphaeng Phet 遺跡公園のように、多数の遺跡がバラバラな方向を向いて建っている場合は除いてあります。


<図2>

 この図には、西安における偏角の測定値(破線)と、考古磁気学に基づく我が国における偏角の推定値(実線、*3)もプロットしてあります。地磁気分布の西方移動とその緯度による違いなどを考慮に入れると、中国で測定された偏角の永年変化(破線)とかなりの類似性が見られます。現時点では、コンパスを用いたという証拠はどこにも見つかっていないので断定することはできませんが、古くからコンパスが使われていた中国とは盛んに交流があったこと、また、建物の方位が真北(真東)からずれた状態でよく揃って
いること、変動の様子が西安と類似していることを考え合わせると、タイでは古くから方位決定にコンパスが使われてきた可能性は高いと考えています。

 このような推測の真偽は、今後、考古学だけではなく、スコータイをはじめ各地に残る焼き物の窯跡に記録された当時の地磁気(残留磁気)を測定する考古磁気学的手法を通して明らかになると期待されます。
さらに、タイ近隣諸国やインドネシアにも多数の遺跡が残されていますので、これらも調べれば、より地球物理学的に価値の高い情報が得られるものと期待されます。

ロッブリーにある遺跡

<ロッブリーにある遺跡>

アユタヤの遺跡

<アユタヤの遺跡>

(*1) 家森俊彦、橋爪道郎、小田木洋子、能勢正仁、D.-S. Han、Heather McCreadie、齊藤昭則、Nithiwatthn Choosakul、Praon Silapanth、AkkaneewutChabangborn、タイにおける磁場観測と考古磁気学的調査 −古寺遺跡の方位と偏角の永年変化−、地球惑星科学関連学会2004年合同大会、2004年5月12日、千葉幕張メッセ.

(*2) Smith, P.J. and J. Needham, Magnetic declination in mediaeval China,
Nature, 214、1213、1967.

(*3) 広岡公夫、古寺伽藍中軸線方位と考古地磁気−日本における磁石使用の起源について−、考古学雑誌、Vol.62, 49-63, 1976.

(*4) 堀貞雄、『北極星』と『磁北』、地磁気世界資料解析センターニュース、No.10、1991.

(*5) http://kagi.coe21.kyoto-u.ac.jp/jp/tidbit/tidbit20.html ,古代クメール遺跡が指し示す1000年前の地磁気偏角?

(家森俊彦)


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