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死者4万人のイラン・バム地震から、大阪上町(うえまち)断層を想う【ないふる】
http://www.asyura2.com/0403/jisin11/msg/230.html
投稿者 エイドリアン 日時 2004 年 6 月 10 日 12:51:09:SoCnfA7pPD5s2
 

 2003年12月26日午前5時26分(現地時間)、イラン南東部のオアシス都市バムは強い地震動に襲われました。これにより、日干しレンガの建物等、耐震性のない住宅が破壊され、12万人の住人のうち40000人(注)以上が崩壊、倒壊した家屋の下敷きとなって亡くなりました。これを単純に割り算しても、致死率が30%になるので、1995年兵庫県南部地震時の神戸市致死率約0.3%と比べると、その致死率の大きさに驚かされます。地震の規模はモーメントマグニチュード 6.5で、中規模と言えます。このように、2003年バム地震は地震規模の割に極めて人的被害の大きかった地震といえます。われわれはこのような甚大な被害をもたらした地震の実態を究明するため、文部科学省から科学研究費補助金を受けて、 2004年1月から3月にかけて、イランの研究者と一緒に断層調査・余震観測・被害調査・災害救助の調査を実施しました。本稿では、バム地震調査の速報として断層調査と余震観測について紹介します。
(注) 脱稿後、確実ではないが、死者は2万6千人程度との情報もある。

地震国イラン
 イランはアルプス・ヒマラヤ地震活動帯に属し、北方のユーラシアプレート、南方のアラビアプレートと南東のインドプレートで挟まれています。そのため、イラン南西部のザグロス山脈、イラン北部を東西に横切るエルブールス山脈、イラン中央部の主要構造帯が存在しています。そこでは、ペルシア帝国以来の長い歴史記録に、何万人もの犠牲者を出す大地震が数多く発生したことが記されています。また、1970年代には活断層の調査が進められ、国土の大部分に活断層が分布し地震の危険が存在することも知られています。特にエルブールス山脈の南に位置する首都テヘランには活断層が存在し、過去に被害地震が起こっていることから、大地震の再来が心配されています。また今回の地震はイラン中央構造帯の南で起こったものです。


バム地震で破壊されたアルゲバム城塞遺跡。
(広島大学奥村晃史撮影)

バム市とバム断層
 バムには、日干しレンガで作った世界最大の建築物であるアルゲバムの城塞遺跡があります。この城塞はおよそ2000年前に建設が始まり、2003年まで地震により破壊されることはなかったといわれます。 現存する歴史記録でも過去3000年間バムに大きな被害を与えた地震はありませんでしたが、今回の地震で壊滅的な被害をうけました(表紙写真左)。活断層としてのバム断層がバムから南方へ100 km余り連続し、バム市街のすぐ東には明瞭な断層崖が存在することは早くから知られていました。また、バム断層の北には、ゴウク断層、ネイバンド断層など500 kmも断層が続き、そこでは1981年、1998年にマグニチュード7クラスの地震が発生して死傷者もでていました。しかし、バムでは2003年の災害が起こるまで地震対策は進んでいなかったようです。バムの周囲に広がる緩傾斜の扇状地面を切って、比高20m前後のバム断層崖は10 km余り南北に続いています(表紙写真右)。平坦な地形の中でこの断層崖はとても目立ちます。断層崖を浸食する谷に沿って崖の斜面と同じ傾斜で東に傾き下がる第四紀の地層が露出し、この崖が断層活動にともなってできたことを示しています。この断層は東傾斜撓曲崖を形成して、西側は堆積物でおおわれているため、台地を形成しています。このような活断層による撓曲崖と台地の形成は大阪上町断層帯を想い起こすものです。


バム断層崖とそこに露出する第四紀の堆積物。
(広島大学奥村晃史撮影)

2003年地震による地表変位
 2003年地震では、バム市街南東の断層崖付近に、崖と平行な多数の開口割れ目が生じました。この割れ目群は地震動によってできた方向性のない地割れとは違い、断層の食い違いが地表まで届かなかったものの、浅い地下まで達して地表を変形させた結果と考えられます。また、バム北方では、約4kmの長さにわたり、第四紀に繰り返し活動した断層に沿って、右横ずれ1〜2cm、彡型の雁行を示す連続的な割れ目が形成されました。この割れ目も地下での断層の動きを反映しているものと思われます。しかし、今回の地震による地表変位は非常に小さく、このような地震が繰り返し発生しても、バム断層の断層変位地形を形成することは不可能です。従って、この地震では、バム断層の地下の断層面の一部か、またはそれと平行する副次断層が食い違ったと考えることができます。したがって、バム断層の全体で食い違いが起こる、地形として残るような明瞭な変位をつくる固有地震(ch aracteristic earthquake)が将来発生する可能性があります。その時期や規模について確かなことはわかりませんが、バム断層が100 km以上の長さをもつことからみて、マグニチュード 7.5前後の地震となるかもしれません。バムの復興や今後の地震防災にとって、長期的な地震危険度の評価は重要な課題となります。


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図1 バム地震の余震分布(日本・イラン共同地震観測班による)。左図中の矢印はプレートの収束方向とその速度。

2003年地震の余震分布
 今回の地震の震源断層が地下のどこで起こったかを調べるために、日本から10台の地震計をもって行き、現地で余震を観測しました。その結果、現在解析を進めていますが、現時点では図の右側に示したような余震分布が得られています。これによると余震分布の中心は、地表に現れているバム断層より3-4 km西側に離れていて、被害が最も大きかったバム市東側半分の人口密集地の下を南北に存在し、その南方に伸びていることがわかりました。これから推定する本震の震源断層は、南北に約20 k m、深さ約15 kmの大きさを持っていて、その面は垂直か、やや東に傾いています。図のように震源断層の北端がアルゲバム城塞(丸印の位置)のほぼ真下を走ったと推定されます。また余震分布の中央部の浅い領域に分布の空白域があることから、そこが主要破壊部であると考えられます。そこで、バム市の人口密集地の直下で、かつ浅い部分から大振幅の地震波が出たことが、被害を大きくした原因になったと推定されます。

大阪上町断層を想う
 イランのバム断層が撓曲崖による台地を持つということから、日本の主要都市大阪のど真ん中を走る上町断層帯の被害地震のことを想いました。前者は右横ずれ断層(が主要)であり、後者は逆断層であるという違いはありますが、この数千年間、地表地震断層を形成する固有地震は両者とも発生していないのです。地震調査委員会は最近、上町断層帯の長期評価を発表し、断層帯全体が一つの区間として活動した場合、マグニチュード7.5程度の地震が発生すると推定しています(http://www.jish in.go.jp/)。このように地表地震断層を形成する固有地震に注目することは最も重要ですが、今回のバム地震のように、マグニチュードが6クラスの地震でも都市直下であれば大きな被害をもたらす可能性があり、また発生頻度が高くなることが予想されるので、防災の面から充分注意する必要があると思います。

 (九州大学・鈴木貞臣、広島大学・奥村晃史)

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