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【森田実の時代を斬る】 2004.5.10
民主党の最大の問題は「三党合意」を認めるか否かにある
――菅代表の辞任問題はもはや些細な問題である
「小を専らとして大を失うこと莫（なか）れ」（『金言童子教』〈江戸時代の道徳の教科書〉）
今日５月10日は、民主党にとって非常に大事な日となるだろう。
マスコミは菅代表が辞任するか否かを注目しているが、菅氏のクビの問題は些細な問題である。極論すれば、もはやどうでもいいことである。菅氏を代表に据えつづけるような民主党なら国民から見捨てられてしまうだろう。なぜなら菅氏を政治家としてだけでなく人間として信用する国民は、今の日本にはほとんどいなくなってしまったからだ。菅氏を大切にしようとしているのは今では小泉政権と自民・公明両党の側だけである。小泉自公連立政権の手先のごとき存在になってしまった菅直人のクビにはほとんど価値がなくなっている。
本当に重要なのは、「三党合意」である。５月６日に行われた自民・公明両党と民主党の三党幹事長、国対委員長、政審会長の会談においての「合意」である。五月一〇日の民主党議員懇談会において、これに承認を与えるか拒否するかが、最も大事な問題なのである。
「三党合意」は民主党が従来強く主張してきたことを曖昧にしただけではない。捨てたのである。「三党合意」を承認すれば、民主党は政党として国民を裏切ることになってしまう。拒否すれば菅・岡田執行部は総辞職に追い込まれるが、民主党は筋を曲げずに政党の大義を守ることになる。どちらを選ぶべきか。民主党内は受諾の方向に動いているが、正しい選択は「拒否」でなければならない。「三党合意」を認めたら、民主党は支持者を裏切り、自公両党の軍門に下ることになる。民主党の敗北である。
「拒否」すれば執行部総辞職となり、党内は混乱する。当然のことながら、菅氏も一緒に辞任することになる。この場合は新たな執行部づくりが次の課題となる。同時に、当面の間、自公両党の「約束違反」の攻撃にさらされることになる。党組織の再建と出直しまで少し時間はかかるが、国民への裏切りを阻止したために参院選は戦いやすくなる。
菅氏ら主流派が狙っているのは、菅代表の辞任と引き替えに「三党合意」を承認させることにある。国民の注目を菅氏の辞任問題に集め、その間隙をつくように「三党合意」を認めさせようとしてきた。
菅氏は５月６日から４日間にわたってテレビのニュース番組の時間を独占した。これは政府・自民党の暗黙の支援のもとに行われた。もしも菅氏が自民党と公明党への批判をつづけていたら、自民党は黙っていなかっただろう。
昨年11月総選挙を前にしてテレビ朝日の「ニューステーション」が民主党のネクスト・キャビネットを30分間放送したことがあった。このとき、自民党は怒り、テレビ朝日への党幹部の出演を拒否し、ついにテレビ朝日をして関係者を処分させるまで追い込んだ。テレビ朝日側が譲歩したことは明らかであった。この譲歩によって自民党はテレビ朝日を許した。
しかるに、今回、菅氏は民放キー局の報道番組を独占した。これに自民党は何も文句をつけていない。むしろ喜んでいた。テレビで見ると、菅氏はあたかも自公両党の同志のような立場に立っていた。小泉首相支持者の評論家や解説者が菅氏を擁護した。テレビ局が自公連立体制の意向に沿って、菅氏を出演させたことは否定できないことである。
民主党が「三党合意」を受け入れれば、年金問題は７月参院選の中心テーマではなくなる。菅氏や岡田氏がやったことは参院選の争点から年金問題を外すことだったのである。これにより菅代表、岡田幹事長らは民主党主流派が自民党のパートナーになった。もしも「三党合意」が承認されたら、自民、公明、民主の協調体制ができることになる。これは政権交代可能な二大政党制の否定である。
民主党議員が道を誤らないことを強く求めたい。年金問題で国民の多くは民主党案の方を支持している。国民の期待を裏切ることは民主主義の政党としては自殺行為に等しい。
民主党は、自殺するような愚行は止めて、本道に立ち返るべきである。「三党合意」拒否こそが民主党が進むべき唯一の道である。
ここまで書いたとき、旧友から電話があった。「民主党はやはり“第二自民党”だった。今まで民主党に期待してきたが、その気持ちが薄れてしまった。残念だ」。
“民主党は第二自民党なのか”――この声は何人からか聞いた。二大政党制への国民の期待を裏切り、第二自民党の道を進むとすれば、小選挙区を導入したこともまったく無意味になる。
民主党議員の大勢は「三党合意受け入れ」の方向に動いている。だが民主党の言行不一致は、夏の参院選できびしい批判を受けることになろう。
http://www.pluto.dti.ne.jp/~mor97512/
題名には必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。