＜エディトリアル＞
「小泉年金詐欺を調査せず」決定は国家公務員法違反

小泉首相と年金官僚は≪総理大臣の犯罪≫を封印することで手打ちをした。証拠文書がある。

　去る６月８日、小泉首相は自分の厚生年金違法加入疑惑に関する一つの答弁書を閣議決定した。民主党の内山晃代議士が小泉首相のこれまでの国会答弁をもとに、不動産会社での勤務実態がないことは明白であり、違法ではないかと質した。

　答弁書は内山氏の質問主意書への正式な政府回答であり、「内閣総理大臣　小泉純一郎」名で衆院議長に提出されたが、文案をつくったのは社会保険庁である。答弁書にはこう書かれている。

＜御指摘の「首相答弁」をもって、お尋ねの点について判断をすることは困難であると考えている＞

　なんとも奇妙な回答だ。小泉首相は国会で何度も「太っ腹な社長が『君の仕事は当選することだ』といってくれた」と繰り返し、出社もせず、不動産会社の社員としての仕事もしていないことを認めている。

　社会保険庁医療保険課の説明は苦しい。

「あの首相答弁では国民が納得しにくいことは承知している。確かに、当庁には調査権があるが、３０数年前の資料が会社に残っている可能性は極めて少ない。立ち入り調査はしないことになっている」

≪調査せず≫は既定方針なのだ。だが、厚生年金保険法では調査権は社会保険庁長官に与えられている。

小泉首相の“犯罪”を見逃した場合、当の年金官僚たちにも責任が生じる。
　刑事訴訟法２３９条の２には、＜官吏又は公吏は、その職務を行うことにより犯罪があると思料するときは、告発をしなければならない＞――と定めている。国家公務員の告発義務規定だ。

　元最高検検事の土本武司・筑波大学名誉教授は、保険金殺人の例を引いて小泉首相の年金違法加入問題にズバリ切り込んだ。

「保険金殺人の場合、殺した直後は殺人罪だけだが、保険金を請求した段階で詐欺容疑が発生する。年金詐欺も、受給資格を得るために不正に年金加入した時点で詐欺未遂が発生し、受給すれば詐欺容疑になる。現在いえることは、小泉総理の答弁を聞くと、勤務実態がなかったと認識した上で年金に加入していた疑いが強いから、詐欺未遂の状態にあると考えられる。社会保険庁の職員だけでなく、あの答弁を聞いた議長や国会議員は特別職公務員であり、詐欺未遂で告発できるし、受給したら告発しなければならない。犯罪を知って告発しないなら、国家公務員法で職務を怠っていたとして懲戒処分の対象になる」

　小泉首相と一緒になって疑惑に頬かむりすれば、議員も役人も“詐欺共謀罪”になる。

http://www.weeklypost.com/jp/040625jp/edit/edit_1.html

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