イラク基本法：カイロ大学教授に行方を聞く

　【カイロ小倉孝保】８日調印されたイラク基本法（暫定憲法）について、アラブ地域の憲法に詳しいカイロ・アインシャムス大学法学部のラビア・ファタハバブ教授（５３）に聞いた。

　――イスラムの位置付けは。

　◆エジプトの憲法がそうであるように、アラブの多くの憲法はイスラムを「法の主要な源」と規定しているが、イラク基本法は「源」としか規定していない。つまり、この点では、他のアラブ諸国に比べ、ややイスラム色が弱まっているといえる。しかし、具体的な法律作成段階で、イスラム系組織はイスラムを基本とした法律の制定を要求してくるだろう。どんな法律が制定されるかは、今後のイスラム・グループと世俗派グループの力関係にかかっているといってよい。

　――女性の権利については。

　◆国民議会の議席を女性に割り当てる（２５％）というのはアラブでは初めてのことだ。男女同権ということなら、男女に平等の選挙権、被選挙権を付与すれば良く、エジプトなど多くのアラブ諸国がそれを実施している。しかし、女性にだけ一定の議席を与えるのは、「アラブでは、女性は力の弱いマイノリティー」との西側の考えからきている。これは、基本法に西側の圧力がかかったことを物語る。

　――独裁体制を回避する方策について。

　◆大統領と２人の副大統領で大統領評議会を作ることになったが、これは極めて新しいシステムだ。アラブの共和制国家では、法律的には権力を分散する方策が採られているが、実際にはあらゆる力が大統領一人に集中する傾向にある。フセイン政権による独裁を経験したことから今回のシステムが生まれたと考えられるが、これがうまく機能すれば１０〜２０年後には、他の中東諸国にもこのシステムが普及する可能性もある。また、一種の集団指導体制であり、過度に外国の圧力がかかることを回避する効果も期待できるかもしれない。

　――連邦制の導入に関して。

　◆アラブで連邦制を規定しているのはアラブ首長国連邦（ＵＡＥ）だけであり、それだけ、珍しいものだといえる。区割りは今後、協議されるが連邦制の採用自体、クルド組織の主張が受け入れられたことを意味し、クルドは独立国家の足がかりを得たことになる。トルコなどが神経をとがらせることは確実で、連邦制導入は紛争の種をまいたことになるといえる。

［毎日新聞３月８日］ ( 2004-03-08-20:45 )
http://www.mainichi.co.jp/news/flash/kokusai/20040309k0000m030056000c.html

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• 署名されたイラク基本法の写真【ロイタ−】 どさんこ 2004/3/09 11:55:37 (0)

　

　

　

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