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深まる謎 イラク・邦人外交官殺害【東京新聞】一般紙でもじわじわ疑惑が拡がり
http://www.asyura2.com/0403/war50/msg/238.html
投稿者 クエスチョン 日時 2004 年 3 月 30 日 23:17:29:WmYnAkBebEg4M
 

深まる謎 イラク・邦人外交官殺害【東京新聞】
http://www.tokyo-np.co.jp/00/tokuho/20040330/mng_____tokuho__000.shtml


消えない「米軍誤射」説 軍の発表一転訂正

 イラク現地での自衛隊による「復興支援」態勢が整った。「文民による活動は危険」という判断が自衛隊派遣の背中を押したが、その根拠になったのは日本人外交官殺害事件だった。だが、発生から四カ月、事件の真相は依然、謎に包まれている。「米軍誤射」説が消えないためだ。国会では与野党から真相究明の声が挙がっているが、政府は現在も情報開示を拒んでいる。 (田原拓治)

 昨年十一月二十九日。駐バグダッド日本大使館の奥克彦参事官と井ノ上正盛三等書記官(肩書はいずれも当時)、現地職員で運転手のジャルジース・ゾラ氏の三人は、イラク北部の連合国暫定当局(CPA)ティクリート事務所での「復興協力会議」に向かった。

 「なぜ、会議を最も危険なティクリートで」という疑問が事件当初から浮かんでいた。この月、米軍の死者は前月からほぼ倍増の八十二人。「もう、この地域すら平定した、という米軍の宣伝に尽きます」と政府関係者は明かす。

 「加えて、この会議直後に日本政府の高官がイラク北部を訪れる予定だった。その行路が安全か否か、その下見も兼ねていた」

 事件が「テロ勢力」によるものとしてよいのか、という疑問は米軍の不可解な発表から端を発した。

 外務省によると、米軍からの事件第一報は同日午後六時四十分(現地時間、以下同)。発生時刻は午後五時ごろ、と伝えられた。だが、同会議を取材したフランス通信(AFP)記者は「(午後二時の)会議直前、米軍第四歩兵師団のビル・マクドナルド報道官が食料と飲み物を買おうとした日本人二人とレバノン人が銃撃を受け、ティクリート病院に搬送されたと発表した」と報じていた。

■目撃者が証言「米車列通った」

 肝心なのは「レバノン人」と名指しした点だ。三人の乗っていた車はレバノンの日本大使館から運んだトヨタ「ランドクルーザー」の防弾仕様車。ナンバーは治安上の理由で外され、座席の下に置かれていた。

 ナンバーを見れば、レバノンからの外交官の車とすぐ分かる。イラク人ではなく、レバノン人とした理由がそれなら、「午後三時四十五分に部族長から米軍に事件の通報があった」(外務省)という情報と矛盾するばかりか、米軍は発生直後から日本人外交官と気づいていた疑いがある。

 外務省は「第一発見者は不明」としているが、最も早く報道された目撃者の食料品販売業ハッサン・フセイン氏は、ほぼ同時刻に米軍の車列が通り過ぎていった、と証言している。

 一方、路上で襲われたという当初の内容は後に米軍が自ら否定するが、会議での発表時間についても外務省は「二日間の日程中にはさまざまな会議プログラムがあり、どの会議の冒頭を指しているのかは明らかでない」と反論している。

 被弾車両は今月四日、ようやく日本に運ばれた。それ以前に十一枚の写真が米国から送られたが、政府は八枚を公開していない。公開写真では、弾痕は車両の左側に集中していた。

銃撃「前方高い位置から」高機動装輪車 屋根に機関銃

 事件の翌日の報道では、別の「目撃者」が「並走した数台の車に襲われた」と証言した。しかし、奥さんらの車は銃撃後、道路右の畑に突っ込み、車の後部はほぼ無傷だった。仮に左を並走して銃撃していれば、右に曲がっていく車両の後部に傷があるはずだ。

 むしろ、注目されるのはボンネットからエンジンに達した弾痕と後部座席の奥さんの左胸下にあった斜め上から撃たれた傷跡だ。

 事件後、上村臨時大使は少なくとも一部が「入射角度からみて車の前方の高い位置から撃たれた」との内容を記者団に明かした。

 「テロ集団」が時速約百キロで走る車高の高いトラックの荷台から立ったまま、標的を撃てたのか。一方、米軍はパトロールや護衛などの最後尾に、屋根に機関銃を装着した高機動装輪車(ジープのようなハンビー型)を走らせている。これだと高さは納得できる。

銃弾口径米製とも一致

 ただ、肝心なのは弾丸そのものだ。殺人容疑で警察庁が捜査しているが、現場には薬きょうが不自然にも残されていなかった。同庁は遺体から検出した破片から口径七・六二ミリと発表したが、成分は「鑑定中」としている。

 この口径は旧イラク軍が使用し、今も「テロリスト」に出回る自動小銃AK47(カラシニコフ)と一致するが、米軍が搭載するM240B機銃なども同じだ。どちらの銃なのか。

 ある銃砲業者は「弾がひしゃげても底部があれば分かる。加えて、この二つの銃では弾のジャケット(被覆)は同じ銅だが、成分組成を分析すれば、違いが判明する」と指摘する。

 気になるのは、遺体から検出された五発の破片のうち、一発の口径が不明な点だ。ドイツ国家弾道学研究所によると、この防弾車は重装備に当たる「レベル6」とされる。

 これは十メートル離れれば、双方の銃とも貫通できない強度だ。それでも三十八発が当たり、十数発が貫通しており、捜査関係者は「車の速度と銃の性能を考慮すると、複数の銃で撃たれたのは確実」と語る。米軍の場合、ハンビー型の座席部分から撃つ兵士の小銃はM16など口径が五・五六ミリである可能性が高い。そのため、残る一発の口径が重要なのだ。

日本政府情報開示拒む

 事実上、CPAの付属機関で、テロリスト説を採るイラク警察は十二月八日、「ゾラ運転手の胸を貫通した」カラシニコフ用と思われる銃弾を発表したが、事件直後にロイター通信の撮影した映像にはゾラさんの胸に傷はなかった。ゾラさんの致命傷はフロントガラスを破った弾丸を右こめかみに受けた傷だった。

 さらに「テロリストがCPAの情報収集のため、現場から奪取した」と憶測の飛んだ奥さんのパソコンは「すでに日本側に回収されたうえ、解析済み」(政府関係者)だという。

 米軍第三歩兵師団についての報告では、交戦規定として不審車両に対しては上空さらにエンジン部分への射撃の後、乗員への射撃が記されている。軍事専門家の一人は「状況からは米軍車両に後方からナンバーなしで近づき、不審車とみなされエンジンへの警告射撃後、撃たれた可能性は否定できない」と推測する。

 米軍の文民への誤射については例がある。昨年九月十八日、ティクリート周辺でイラク文化省顧問のイタリア人外交官が乗った車が撃たれ、通訳が死亡。南部ルメイサ市では今月一日、米軍車両を追い越そうとしたイラク人の車が撃たれ、一人が死亡している。

 この問題を追及する首藤信彦衆院議員(民主)は「誤射とは断定しないが、それを否定する証拠を政府は出していない」としたうえで、こう語気を強める。

 「まるで架空の大量破壊兵器を理由としたイラク戦争の遂行と同じだ。仮に誤射の可能性をあの当時、政府が示していれば、自衛隊派遣もなかったはずだ」

■事件発生時点の経過(時間は現地時間)

2003年11月29日 午前10時すぎ 日本人外交官2人とイラク人現地職員がバグダッドの日本大使館をティクリートに向け出発

同11時ごろ 途中、バラドの果物店に立ち寄る

同正午ごろ 日本大使館に定時連絡。その直後、ティクリート南方で事件発生

同午後2時ごろ 参加予定の会議場で、米軍報道官が外国通信社記者に「2人の日本人とレバノン人が銃撃を受けティクリート病院に搬送」と発表(外務省は未確認)

同3時45分 外務省によると、この時間に部族長から米軍に事件の第一報

同5時ごろ 当初、米軍が日本大使館に連絡した事件の発生時刻

同6時40分 米軍から日本大使館へ「路上の売店に立ち寄り、襲撃された」と事件の第一報

同7時30分 公邸の小泉首相に事件の連絡

12月3日 米国から外務省に電子メールで被害車両の写真を送付

同4日 イラク暫定内閣外相、旧政権の情報機関による犯行と言明

同5日 米軍が当初の連絡内容を「車で走行中に襲撃された」と訂正

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