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3.11再検討(分析編、そして結論)
http://www.asyura2.com/0403/war50/msg/261.html
投稿者 バルセロナより愛を込めて 日時 2004 年 3 月 31 日 09:52:29:SO0fHq1bYvRzo
 

3.11再検討(分析編、そして結論)


私がこの投稿を書く以前に田中宇氏の「スペイン列車テロの深層」と題される文章が発表されました。さすがに豊富な情報収集量を誇る田中氏だけあって、さまざまな角度から今回逮捕された「犯人」たちについての説明を非常に具体的になされ、昨年5月に起きたカサブランカでの爆破事件と比較しての相違点を鋭く指摘しておられます。

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http://www.tanakanews.com/e0330madrid.htm
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この間ほとんどスペイン語の資料と取っ組み合いをしてきた私ですが、はるかに幅広い地域と分野からの英語の資料による貴重な情報を目にして、さすがだな、と思います。願わくはぜひこの「続編」を出していただきたいと思っています。

また「テロの政治利用」について言及しておられますし、ETAの中に諜報機関員が紛れ込んで(私から見ればアルカイダも諜報員もいっしょですが)ETAを動かしていた可能性も指摘しておられます。さすがです。ただ「深層」と題された割には肝心の「誰が何のために」に関しては用心深く触れておられず、また少しですが事実誤認もあるようです。

たとえば、『投票日前の段階で「ETAではなくてアルカイダがやった」と考えられる「証拠」は、コーランのテープの存在だけだった』と書いておられるのですが、投票日前日の13日の夜には5名の逮捕者(インド人2名、モロッコ人3名)が逮捕され、少なくとも投票日の朝には総ての報道機関がそれを流していたはずです。また『社会労働党がETAと接触していることをマスコミにリークしたのは・・・』と書いておられるのは明らかに誤りで、(事実関係編 その1)でも申し上げたとおりカタルーニャ左翼共和党(ERC)です。

また、
『確証はないが、スペイン政府の当局者の中に、ETAを使ったアスナールのテロ戦争戦略に反対している勢力があり、彼らが動いたのかもしれない。』
『国防総省の特殊部隊は、アルカイダをひそかに支援しているのではないかとも勘ぐれる。ETAを使ったアスナールのテロ扇動作戦は、彼らによって支援されていたのかもしれない。だとしたら「アルカイダとETAが(米の国防総省の援助のもとに)共同してテロをやった」という見方が当たっていることになる。その場合、スペイン当局内の反アスナール派に入れ知恵してコーランのテープを置かせたのはCIAかもしれない、ということになる。』

ともおっしゃっておられ、なんだか私が以前にやけくそで打ち出した「珍々説」を髣髴とさせ「オヤ、オヤ!」と思ってしまいました。
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http://www.asyura2.com/0403/bd34/msg/492.html
投稿者 バルセロナより愛を込めて 日時 2004 年 3 月 21 日 01:55:35
あっしらさん、HAARPさん、「珍々説」なのですが・・・・
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では(分析編)の本文に進みたいと思います。まだお読みではない方はぜひ私の投稿

3.11再検討(事実関係編 その1):そのフォロー(事実関係編 その2)
http://www.asyura2.com/0403/war50/msg/223.html
日時 2004 年 3 月 30 日 10:47:02:

をお読みください。(ただ、事実関係編その1で、ETAの鉄道爆破未遂事件を「大晦日」と書いてしまいましたがこれは「クリスマスイブ」の誤りです。訂正してお詫びいたします。スペイン語では大晦日が la Noche Vieja 、またクリスマスイブは la Noche Buenaで、V とB の発音の区別がありませんからとちってしまいました。)


これら事実関係から、いくつかのほぼ明らかになった点があると思います。

(1) 国民党とアスナール政府が「ETA(テロ)への恐怖」を、マスコミを動員して、政治的に利用しようとしていたこと。またそのために数ヶ月前から具体的な作業を行っていたこと。
(2)ETAには国家中央情報局(CNI)のスパイが紛れ込み、国民党の意図に沿って操っていたこと。
(3)アスナール政権はイラク問題に関しては「逃げの一手」で、一方的な声明だけを出して議論を避けつづけたこと。つまりそれだけ恐れていたということ。
(4)アスナール政権幹部にとって「アルカイダ」の犯行は全く寝耳に水だったこと。むしろETAがやるものだと信じきっていたふしがあること。
(5)CNIの、少なくともある部分が、アスナール政権を「ある意図を受けて」「意識的に裏切った」こと。

しかしアスナール政権を「裏切った」CNIの背後に何があるのか、誰が具体的にそこに関与しているのか、までは、今まで挙げた事実関係からは出てきません。(いろんな想像はできますが。)

ただ、田中宇氏の文章でも明らかなように、また私が阿修羅投稿でお知らせしてきたように、最初から「誰を逮捕するか」を決めておいて逮捕者を出していき、「テロリストへの恐怖」を段階的に盛り上げようとする演出が鼻が曲がるほど臭くなされています。

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http://www.asyura2.com/0403/war50/msg/192.html
日時 2004 年 3 月 29 日 18:25:29
スペイン、アフガン派兵を倍増」「サパテロ、反テロに向けて政党の結集を呼びかけ」その他のニュース
http://www.asyura2.com/0403/war49/msg/1349.html
日時 2004 年 3 月 27 日 10:45:01
3.11の爆発物の「使い残し?」発見:アルカイダって本当によく証拠を残してくれるもんだ!
http://www.asyura2.com/0403/war49/msg/1325.html
日時 2004 年 3 月 26 日 23:15:38
「アスナール、ブレアと口もきかず」「新たに4名逮捕」「犯行声明のビデオは」その他
http://www.asyura2.com/0403/war49/msg/1089.html
日時 2004 年 3 月 24 日 09:03:08
スペイン警察のデタラメ逮捕!(それともアルカイダはETAよりドジで弱い?)
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また、田中氏が指摘しておられなかった点ですが、例の不発弾はやはり「7時40分」のタイマーセットを間違えて「19時40分」つまり午後7時40分にしてしまったため爆発しなかった、という「犯人のドジ」が本日のエル・パイスで再度報道され、これが「定説」となっていることを確認しました。それにしてもこんな「ドジ」、ありますかねえ。見え見えの「証拠顕示」としか思えません。

以上の点からも、「アルカイダの犯行」は明らかに「創作劇」であり、その「演出家」は誰なのか、を正確に推測する時点には未だ来ていないのですが、はっきり「テロ」を利用した政治意図があったでしょう。

ただ、今回の3.11事件にはどうやら2つの異なった政治意図が絡んでいるようです。
(1)まずアスナール政権の、ETAへの恐怖を利用した野党追い落とし策
(2)ある勢力による、「アルカイダ」を使ったアスナール政権追い落とし策、言ってみれば「箸を右手から左手に移す」作業
この2つが同時進行したために、複雑な様相を示しているのではないでしょうか。
ただしこの(2)に関しては、そこまでの意図は無く単なる『テロへの恐怖を利用した支配の貫徹』で、結果として「右」でも「左」でもよいのかもしれませんが。

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ここで、3月14日の選挙結果と「テロ」との関係を考えてみたいと思います。私のこの3部連作「3.11再検討」の目的はここにあるのです。

以下、PPは国民党、PSOEは社労党、CiUは「集中と連合(カタルーニャ民族主義右派)」党、ERCはカタルーニャ左派共和党、PNVはバスク民族主義党、IUは統一左翼(共産党系)を表します。

スペイン全体の主要政党の当選議員の数、前回2000年の選挙と比較すると、
PP:183→148、 PSOE:125→164、 CiU15→10、 
ERC:1→8、 PNV:7→7、 IU:9→5、 その他

投票総数と得票数を万単位で見てみますと、
全体:2318(68.7%)→2573(+255:77.21%)
PP:1032→963(−69)、 PSOE:792→1091(+299)、 
CiU:97→83(−14)、 ERC:19→65(+46)、 
PNV:35→42(+7)、 IU:138→127(−11)、 その他

こうしてみますと、国民党の得票数は減ってはいますが、議員数の減少ほどには減っていなく、逆に社労党は投票者総数の上昇以上に得票を伸ばしています。上記の党以外の地方政党、弱小党派は現状維持か議席を失っていますので、投票総数の上昇と他の政党からの鞍替え分が社労党に乗っているようです。統一左翼が減った分は恐らくほとんどが社労党に流れているでしょう。しかし国民党から社労党への鞍替えはさほど多いとも思えず、他の小政党に流れたことも考えられず、国民党が失った69万人の過半数は棄権または白票の可能性が高いと思われます。(白票総数は約41万。)

なお「集中と連合」カタルーニャ左翼共和党の二つの地方政党が3,4位につけていますが、これはスペインの選挙制度が、各州を単位にした「大選挙区比例代表制」だからで、各地方で万遍なく得票を集めている統一左翼は得票数の割には当選議員は少なくなります。この点はやはり日本共産党と似ています。

ところでこれを地方別に見てみますと、また異なった姿が現れてきます。スペインの土地勘の無い人には理解が難しいのですが。

最も変化の激しかった地方が北東部カタルーニャ、アラゴン、南部アンダルシア、北西部ガリシア、そして北部のバスクの各州です。
カタルーニャでは投票率が13%も伸び、保守系総崩れです。
PSOE:17→21、 CiU:15→10、 ERC:1→8、 PP:12→6、
ICV,EUiA(IU系):0→2
アラゴンは元々国民党の票田ですが
PSOE:4→7、 PP:8→5
アンダルシアは元々社労党の地盤ですが、今回は特に
PSOE:30→38、 PP28→23
ガリシアは元々国民党の絶対的牙城なのですが、
PSOE:6→10、 PP:16→12、 BNG(ガリシア民族主義):3→2
バスクは民族主義勢力のほかに国民党も強かったのですが
PNV:7→7、 PSOE:4→7、 PP:7→4、 EA(民族左派):1→1

といった具合で、首都のマドリッドでは国民党が何とか勝ったのですが、
PSOE:12→16、 PP:19→17、 IU:3→2
で、やはり国民党が減り社労党が伸びています。他の地方でも社労党が伸びて国民党が減る例が多いのですがほとんど変化なしという地方もかなりあります。

こうしてみますと、国の周辺部、特に中央のカスティーリャ民族と異なる少数民族の地域ほど激しい変化が起こっています。アンダルシアは言語はカスティーリャ語の方言なのですが歴史的な成り立ちも人の意識も文化も中央部とは全く異なり「少数民族」と言っても良いでしょう。またアラゴンは中世はカタルーニャと連邦を築いておりこれも中央部とは歴史基盤が異なります。

したがって今回の選挙はアスナールが推し進めた中央集権的な方向に対する「周辺部・少数民族の反乱」という面も見逃せず、もしも一体感の強い日本のような国で全く同じような事態が起こったとしても、同様の結果が出るとは思われません。

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ここで、よく問題にされる「13日の国民党本部前のデモ【事実関係編その2をご覧ください】」についてですが、確かに、映画監督のアルモドバルが「国民党がクーデターを起こそうとしている」という噂にひっかかったほど左翼的な人々は興奮し、インターネットと携帯電話で扇動された人が無届デモを行い、ラジオやテレビが率先して取り上げ、警察もあまり強い態度には出ずに、「演出されたショー」の臭いがはなはだ強いように思われます。最初に扇動したものが誰なのかは分かりませんが、「政府は嘘をついている」「イラク出兵のためにテロが起こった」という「情報」が駆け巡ったことは事実です。確かに「デマクラシー」の実験が行われた可能性があります。

しかしこの現象はマドリッドの一部で起こったくらいで、他の地方にはさほど影響しなかったと思われます。もちろんテレビニュースでも流されましたから緊張感は高まったでしょうが、周辺部の少数民族地区で一気に地殻変動を起こすたちのものではありません。むしろヨーロッパの他の国々向けの「ショー」の要素が強いと思います。

そして、ここが肝心なのですが、果たして「イラク出兵のためにテロが起こったという国民の意識」がこの「地殻変動」の最大の原因か、という点です。日本も含めて世界の報道はどうやらその辺に落ち着いているようですが、私はそれには強い反発を感じます。「3.11以来の政府の対応がまずかった」というような報道も的が外れていると思います。

むしろ、アスナール政権が数ヶ月かけてETAを出汁にして「臭い演出」を行ってきたことが3月11日から13日の間に一気に暴露されてしまい、それまで中央集権的な国民党政府に対して押さえに押さえていた民族感情・地方感情と合わせて、「そこまで俺たちを馬鹿にするのか」という憤りを爆発させた人が大挙して投票所に向かい、国民党No!の票を社労党に入れた、というのが真相ではないでしょうか。国民党支持者にしても社労党支持者にしても、「槍が降ろうが刀が降ろうが」無条件に投票所に向かうような基盤を持っており、要するに有権者全体の20%程度の移動があれば十分この程度の結果は出るわけです。

何よりも「イラク出兵のためにテロが起こったという国民の意識」を強調するような人は、要するに「テロは怖い」論に手を貸しているようなもので、テロへの恐怖で世界を動かそうという連中に始めから負けているのではないでしょうか。わたしが先日、阿修羅投稿にあった革マル派の新聞の論調を即座に撥ね付けたのも、「コイツらこれで『反体制』のまねをしているのか!」という怒りを感じたからです。

「アルカイダのテロ」を仕組んだ奴らが何者か、まだ明確にできる時期ではありませんが、彼らが、長期間かけてスペイン国民の、反戦意識との矛盾を感じながら国民党を支持してきた複雑な意識と、特に周辺部の人間の民族的・地域的な反発が限界に近づいていたことまで見抜いて仕掛けたのなら、ある意味で「立派」です。でなければ単なる「まぐれ」でしょう。「恐れ」をバネにさせようとしたところが、もっと深いところにあるものまで出てしまい、予想以上の効果を得たわけですから。

ですから、「テロは怖い」「怖いから反対する」論を煽り立てるような論調や報道のされ方に対しては、決してその欺瞞を見逃したり許したりしてはならないでしょう。「スペイン国民は『イラク出兵がテロの原因』と考えて社労党に投票した」というような、最初から敵の論理に屈服し、他の国々で「合法的なクーデター」をやすやすと成功させる基盤を作ってしまう論調を、私は決して許さない。これがこの再検討の結論です。

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