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【エルサレム樋口直樹】「好ましくない展開を待つよりも、イラクの安定と統一に力を合わせるべきだ」。毎日新聞との書面インタビューに応じたトルコのエルドアン首相は、戦後イラクの復興にも言及し、独立を目指す北部クルド人勢力の意向を色濃く反映した、連邦制によるイラク再建策にこう苦言を呈した。
「我々はイラクの領土的一体性と政治的統一の重要性を強く訴えてきた。イラクの分裂はこの地域全体に不安定化をもたらすからだ」。トルコに隣接するイラク北部でのクルド人国家の建設により、自国のクルド独立運動が刺激されることを恐れるエルドアン首相は、「クルド人」との表現を慎重に避けながらこう繰り返した。言外に、米国の要請でイラクへの派兵を断念し、北部クルド人地域への影響力を行使できないことへの焦りがにじんだ。
イラク移行期の土台となる暫定憲法「イラク基本法」は連邦制の導入を認め、同地域を自治権の強い特別な「地域政権」として認めた。隣国シリアでは先月、こうした動きに触発されたとみられるクルド人勢力と治安当局が衝突したばかり。エルドアン首相は「イラク基本法に基づく政治プロセスがそのような危険性（地域の不安定化）を生み出さないよう願っている」とコメントした。
一方、イラク経済の回復が対トルコ貿易の再活性化につながるとの期待感を示し、特にイラク北部の油田地帯キルクークで産出される原油の輸送ルートについて「地中海沿岸のトルコの港町ユムルタリクに至るパイプラインが極めて望ましい」と具体的な地名を挙げて要望した。
キルクーク産原油の輸送ルートをめぐっては国際的な利権が絡み合っているが、９１年の湾岸戦争と昨年のイラク戦争で経済的痛手を負ったトルコには、イラクの復興事業を通じて経済再建を図る腹づもりがある。
エルドアン・トルコ首相との書面インタビューの要旨は以下の通り。
◆欧州連合（ＥＵ）加盟交渉
トルコでは９９年にＥＵ加盟候補国となって以来、憲法の３分の１が改正され、新民法が導入され、死刑が廃止された。表現・言論・結社・宗教の自由に関する革新的な改革が実行され、（トルコ語以外の）伝統的な言語や方言を学び、放送する権利も与えられた。
我々は（ＥＵ加盟交渉開始の条件である）コペンハーゲン基準を満たしたと信じている。政府は最優先課題として今年１２月の加盟交渉開始を目標としている。交渉開始の決定は、トルコの政治・経済改革を一層強固なものにするだろう。
◆キプロス再統合
トルコは永続的で実行可能な解決を望み、国連事務総長による仲裁を支持している。国際社会がギリシャ系キプロス（キプロス共和国）とギリシャに対し、より建設的な態度を求めることを期待する。解決策には（当事者間の合意内容と異なる）国際裁判所の決定に対する法的な保護措置を含まなければならない。
◆イラク復興
イラクの生産力回復は世界市場への再統合を円滑化し、対トルコ貿易の再活性化が期待される。イラク・キルクークからの原油供給が、トルコ経由のパイプラインで再開されるよう強く望む。
イラクの分裂は地域全体の不安定化をもたらす。（イラク移行期の土台となる暫定憲法）「イラク基本法」に基づく最近の政治プロセスがそのような危険性を生み出さないよう願っている。
◆中東和平
トルコはイスラエルと近い関係にある半面、対シリア関係も確実に発展させている。トルコは両者の和平プロセスを再び軌道に乗せるための「世話役」として、いかなる役割も担うつもりだ。
◆対日関係
日本との良好な関係をあらゆる分野で高度化し、多様化することを重要視している。日本は中東和平を積極的に推進し、これに寄与している。日本を含むすべての国と和平プロセスの回復のため協力したい。【エルサレム樋口直樹】
毎日新聞 2004年4月6日 23時57分
http://www.mainichi-msn.co.jp/kokusai/afro-ocea/news/20040407k0000m030129000c.html
題名には必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。