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(イラク日本人人質事件」「相互監視の網と化したネット掲示板:『人質』誹謗中傷の力学」(AMLより)
http://www.asyura2.com/0403/war53/msg/1204.html
投稿者 iraq_peace_maker 日時 2004 年 4 月 27 日 11:03:23:ukK/IM7rOz.KM
 

皆さん、こんにちは。
『「イラク日本人人質事件・被害者自作自演説疑惑」の「根拠」を検証するページ』http://www.geocities.jp/iraq_peace_maker/index.html というサイトを運営している者ですが、先のイラク日本人人質事件を取り巻く「ネット世論」の「本質」に鋭く切り込んだ投稿がありましたので、こちらでも紹介したく思います。


Subject: [aml 39255] to &「相互監視の網と化したネット掲示板:『人質』誹謗中傷の力学」
From: masaki inaba
Date: Sun, 25 Apr 2004 12:59:10 +0900
Seq: 39255

皆さま こんにちは。最近、長い投稿ばかりで申し訳ありません。

 「トロ」様:私が「一切無用」と書いたのは、リスクの問題への配慮からです。
 このAMLへの投稿はウェブで見ることもできます。また、「サヨ」のメーリングリ
ストや掲示板は、増殖するネットウヨどもの好奇心の対象です。
 「どの暦を用いるか」……これは、アイデンティティに関わる極めて重要な問題で
す。だからこそ、今井さんが「主体暦」を用いたなどという勝手な推定に基づく言説
が、今井さんへの誹謗中傷としてネット掲示板で繁殖するわけです。
 ネット上において、ありとあらゆるネタを使った攻撃や誹謗中傷があふれている中
で、そういった攻撃のネタをもう一つ提供することはできません。私たちがいろいろ
と想像したり読み込んだりするのはかってですが、ああでもないこうでもないという
議論をML上で行っては、今井さんへの攻撃のネタをばらまくようなものです。一方
で、「主体暦」などという典型的に政治主義的な誹謗中傷については、反論せざるを
得ません。そのために私はaml39162を投稿したのですが、高圧的という風に受け取ら
れた方がいましたら、申し訳ありません。もう一点、私の投稿は、彼の73という表記
を「既存の暦」にあてはめて解釈することしかできない想像力の貧困さを指摘し、も
っと広がりのある考え方が出来るはずだということを示唆したものです。

 さて、これに関連して、今回の人質事件に関してネット掲示板で起こった事件は、
現代の日本について考える上で多くのヒントを与えたと思います。若干分析をしてみ
ました。

**********

【相互監視の網と化したネット掲示板:「人質」誹謗中傷の力学】

 「イラク人質事件」に関連して、人質やその家族に想像を絶する誹謗中傷や言語的
暴力が行使されています。
 こうした暴力の一つの拠点を形成しているのが、ネット掲示板です。
 ネット掲示板における、これらの言説を分析していて気づくのは、、例えば「××
は共産党」「捕まっている人質のうち4人は『革マル派』」というようなレッテル貼
り言説が徹底して行われていることです。
 まず指摘しておかなければならないのは、これらのレッテル貼りは、全く事実に反
するということです。実際、名前の挙がっている組織について少しでも知っていれ
ば、これらのレッテル貼りはまったくの噴飯ものでしかありません。しかし、ネット
掲示板に顕著に見いだされる「レッテル貼り」という現象は、それが事実ではないか
らといって切り捨てていいものではありません。そこから、今回のネット掲示板にお
ける暴力の形成力学を見いだすことが出来るからです。

■「レッテル貼り」の「効用」

 誰かに××というレッテルを貼るという行為は、「自分は××ではない」ことを証
明する行為でもあります。自分が何ものでもない、ノーマルだ、ということを証明す
るためには、先に誰かにレッテルを貼ることが最も有効な方法です。
 ネットで右翼的言説を繰り広げる人間(=ネット右翼)が決まって言うこと:それ
は、「自分は一般の庶民」ということです。しかし、人質事件は明らかに政治的な事
件ですから、それについて論評すれば、その言説は当然政治的な文脈を含みます。政
治的な言説を発語すれば、その瞬間、人は「政治的人間」になります。
 これは、「政治や宗教と関わりのない一般庶民」という規範に照らせば、リスクの
ある行為です。いつ人から名指しされるか分かりません。「ネット右翼」は、こうい
うことに関しては動物的嗅覚が働きます。彼らはこのリスクを本能的に回避するため
に、率先して人にレッテルを貼り付けにかかります。ネット掲示板の投稿の多くが、
高遠さん、今井さんへの誹謗中傷だけでなく、投稿者同士でのレッテル貼りに関わる
悪罵の投げ合いになっているのはこういった力関係を反映するものです。

■「レッテル貼り」へのリスク回避戦略:論理的整合性の破棄と矛盾の増幅
 
 もう一つ。通常、自分の主張に論理的整合性があるものであることは、本来的に
は、望まれるべきことであるはずです。ところが、そのことは、「自分は一般の庶
民」という規範に照らすと、とたんにリスクへと変化します。そもそも、「一般の庶
民」には「論理的整合性のある主張」など似合わない(ことになっている)。首尾一
貫した主張を行うということは、すなわち自分が「(一般の庶民でない)何ものかで
ある」ということの表現に他なりません。つまり、首尾一貫した主張をすれば、人か
ら「××」というレッテルを貼られる危険性は増大します。
 この文脈に照らすと、首尾一貫した論理展開をすることは、マイナスの意味を持つ
ことになります。この規範から出てくる回答は、何かを主張する場合、「一般の庶
民」として、自己主張の内容を「そのとき思ったこと、感じたこと」として演出しな
ければならないということです。矛盾がないということは、思ったこと・感じたこと
が実は「何らかの(借り物の)体系」から生成しているとみなされ、レッテル貼りに
つながってしまうからマズイのです。これにより、「ネット右翼」は、自分がその時
々に発する言説がお互いに持つ矛盾を放置し、場合によっては増幅する、いう戦略を
とることになります。その時々の発言に矛盾があって一向に構わない。「一般庶民」
が、その時々に「思ったこと」を素直に発露しているに過ぎないのだから。逆に、矛
盾なく論理的なことを言う連中はアヤシイ、きっと「サヨ」(=左翼)に違いない。
こうしてネットウヨの世界では、発言の論理性の規範はその存立基盤を失うのです。

■引き受けられる唯一のアイデンティティ:「国家」

 では、こうした「ネット右翼」が、「自分は一般の庶民」という観念に基づきつ
つ、それと両立しながら一歩踏み込んで政治的なことを言いたいときにはどうするの
でしょうか。
 ここで見いだされるのは、許容されている言説の幅は非常に狭いということです。
ちょっと踏み込んで何か言うためには論理的整合性が必要になってきます。しかし、
下手に何か論理的なことを言うと、とたんに「お前は××か」と飛んできます。そこ
で、許容される「××」を選択し、その言説規範に従って言葉を組み立てることにな
ります。この場合、許容される「××」として選択できるものは、(小泉に一定の人
気があることと、北朝鮮問題や中韓・靖国問題などの存在によって形成されたもので
すが)「日本国」「国家」「政府」のみです。これに関しては、そのようにレッテル
貼りされても「政府に文句を言うお前こそ『サヨ』じゃないのか」「国に不満がある
なら別の国に行け」と反撃できるわけだから。つまり、選択できる言説の幅は「相手
への反撃可能性」の大小によって選択されることになります。これが「サヨ」や「宗
教」ならば、反撃可能性はないわけですから、選択できません。「××」として選択
されるのは「一般庶民」が「まつろうことのできる/まつろって不自然でない」対
象、すなわち、日本国、国家、政府です。「日本人たる者、日本を愛して何が悪い
/何がおかしい」。

■名指されることへの恐怖の裏返しとしての暴力

 この辺のことを考えると、掲示板におけるネットウヨの増殖という今回の現象は、
「自分は何者かである」というアイデンティティを引き受けること、および引き受け
る者に対する強い嫌悪感、および、「自分は何者でもない、自分は普通の一般庶民
(でなければならない、であるはずだ)」ということを繰り返し確認せざるを得ない
という強迫神経症的な社会意識がその基盤にある、ということができるのではないか
と思います。この病理は、60-70年代以降の「過激派」狩りや80年代以降の新興宗教
問題、とくにオウム真理教事件とそれに関わるメディアキャンペーン、さらに神戸事
件などの少年事件や外国人犯罪などの中で連綿と形成されてきたものです。自分では
ない「何者か」が事件を起こす。自分は「何者でもない」。(付記すれば、人々がこ
んなことを強迫的に確認しなければならないのは、もしかしたら自分が「何者か」=
それも、『サヨ』や宗教どころではない何者か=になってしまうのではないかという
背面の恐怖がその重みを増しているからです)
 このように考えると、一見、今井さん、高遠さんへの誹謗中傷と暴力一色に見える
ネット掲示板言説は、実は「レッテル貼り」をめぐるミクロな相互監視政治のおぞま
しい力学によってはりめぐらされた網であり、その「網」が全体としてとくに今井さ
ん、高遠さんに暴力として被さってきているのだということが分かると思います。こ
れは単純な「右傾化」などではなく、名指されることへの恐怖の連鎖反応であり、日
本社会に蓄積されたネガティブな力のダウンワード・スパイラルです。この意味で、
今回展開されたことは、ルワンダやボスニア・ヘルツェゴビナで起こったことのネッ
ト上でのシミュレーションであるとすら言いうるでしょう。日本で「虐殺を防ぐ」こ
とが喫緊の課題になる日も、実はそれほど遠くないかも知れません。
--

_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/
アフリカ日本協議会 幹事
HIV/AIDS・感染症分野担当
稲場 雅紀

http://www1.jca.apc.org/aml/200404/39255.html

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