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2003年11月のグルジアの「薔薇の革命」を主導した米国のユーラシア戦略と米露冷戦の始まり
http://www.asyura2.com/0403/war53/msg/756.html
投稿者 かめはめ波 日時 2004 年 4 月 23 日 17:26:36:LtS6gmWcmm/g6
 

円・元・ドル・ユーロの同時代史 第18回〜米国のユーラシア戦略と通貨
2004年03月22日 17時30分 Chapter 3 通貨の政治性 日経BP

2 米国のユーラシア戦略と通貨

 前節までの流れを受け、グルジアから話を始めることにしよう。なぜならグルジアで2003年11月に起きたいわゆる「薔薇(ばら)の革命」は、米国や、米国で投機家として最も有名なジョージ・ソロス氏が、背後で演出したといっていいものだったことが時を経るにしたがい明らかとなってきたからである。

 あくまでも通貨を巡る議論を行うのが本稿の主旨だから、政治・軍事の向きへ深入りし過ぎることは避けねばならないかもしれない。しかしここでは、ある通貨がドルとの関係を重視し近隣国通貨との間柄を不当に軽視する場合、それは力のバランスを巡るなまなましい葛藤の反映であることを書いてみようとしている。

 極端にはどんな場合があり得るかについて、「革命」が、それも米国主導で起きたというグルジアの例は、一考を促す好個の材料を提供してくれる。なお同種の事例を見ておくため、日中戦争下における通貨の暗闘についていずれ補論を立てて紹介してみたいと考えている。

 加えてここでの問題は石油である。後の章で触れることになるだろうが、ドルの覇権を支えてきたのは次の一点、すなわち世界中でドルのみが石油を買える通貨だったという一事である。グルジアをケースに取り上げることは、「ドル・石油本位制」を支える政治(米国)の意図や動きを見るに格好の教材となるという事情もある。

グルジアはパイプラインの回廊

 グルジアはそれ自身、決して天然資源に恵まれた国ではない。化石燃料の供給は総じてロシアに頼っている。

 この関係をロシアは戦略目的に用い、供給の途絶をちらつかせるかまたは実地に途絶えさせるかして、トビリシ(グルジアの首都)に対する支配的影響力の保全を図ってきた。冬ともなれば電気が止まり、ひもじいうえに寒い思いをさせられるのがグルジアではほぼ年中行事化しているようだ。

 このことはしかし、グルジアが世界のエネルギー安全保障と資源戦略において価値の低い国であることを意味しない。

 事実はまったくその逆である。グルジアは、バクー(アゼルバイジャン)など一大油田を擁するカスピ海と黒海を結ぶ回廊上にあり、黒海をまたいで「西側」諸国に向け開いた窓である。パイプラインの敷設地として、石油輸送の頚動脈に相当する位置を占める国にほかならないからだ。

 グルジアはまた北大西洋条約機構(NATO)加盟国のトルコと接している。

 英BP、米資源探査大手UNOCAL、それに日本の伊藤忠商事などが連合を組み現在建設中の全長1760kmに及ぶパイプラインは、バクーとトルコの地中海岸港湾都市シェイハン(シリア国境に近い)を結ぼうとするプロジェクトである。

 このパイプラインがグルジアを通る。バクー・トビリシ・シェイハン(Baku-Tbilisi-Ceyhan)、または頭文字を取ってBTCと称されるパイプライン計画は、総投資額29億ドル*1。環境問題などが障害となり遅れ気味とはいえ、完工目標年は2005年とされている。

 石油を黒海経由で運ぼうとすると、ボスポラス海峡を抜けなければならない。狭過ぎて超大型石油タンカー(VLCC: Very Large Crude Carriers)が通れない海峡である。石油を追加的に1000万トン、それでも同海峡を通じて地中海側へ出そうとすると、その都度中型タンカー延べ800隻が必要となり、海峡は文字通りのボトルネックとなる。BTC計画に大きな期待がかかるゆえんだ。

 以上からうかがえる通り、パイプライン通過国として重要性をいや増すグルジアが再びロシアの衛星国となるか、ならないまでも民族的分離勢力を抱え国家の体をなさなくなったのでは、「西側」にとって安全保障上憂慮すべき事態となる。

 ちなみに石油専門家の一致した見方によるならば、パイプラインにとって最大のリスクは工事技術上のそれではない。通過国の政治的動乱である。石油を流し続けることの合理性を解さないような政権・集団の暴走するリスクこそが、真に恐れるべきものという。

 グルジアの安定とロシアからの独立がなぜ米国にとって国益に関わる問題と認識されるのか、以上で大まかな見取り図を得ることができた。

 ここにおいてグルジアの通貨ラリが、常にドルとの関係で自らを規定することの政治的意味合いが浮かび上がってくるだろう。ドルに自らを縛り付けられたラリが何かを語っているとするならば、それはグルジアの意思である。再びクレムリンの膝下(しっか)にひざまずくことはしないという意思であろう。

 ところがこれを、グルジアに仮託された米国の意思であると解釈することができそうなのである。

 シェワルナゼ政権が腐敗によっていずれは倒れると予想される状況下、国内が内戦状態に転じること、またその機に乗じてロシアがグルジアを事実上の保護国にしようとするシナリオだけは避けたいと考えた米国が、いわば予防的に現政権打倒に動いた。

 極めて親米的な開明政権とすげかえ、かついかにも、内発的・民衆主導的な政権転覆であるかの外観を作るのに成功した…。どうやらそれが2003〜2004年にかけ起きたことのようだ。


(出所:外務省 外務省の海外渡航安全情報はこのように、グルジアが事実上の内戦状態にあることを示している)

「薔薇の革命」は米国主導だった?
 2003年11月22日、グルジアでは議会選挙と大統領辞任を求める野党勢力が国会と大統領府を占拠した。この時警備に当たっていた兵士の銃口に、若者の手によって一輪の薔薇が差し込まれた。「薔薇の革命」という名はそこに由来する。

 旧ソ連でゴルバチョフ書記長の右腕としてペレストロイカ(改革)外交を担い、後グルジアで長期政権を率いていたシェワルナゼ大統領は、翌23日あっけなく辞任に追い込まれた。

 野党・国民運動党党首として反対派を束ねたミハイル・ニコラエヴィチ・サーカシビリ氏は一躍国民的英雄となり、続く1月4日の選挙で96%という圧倒的支持を得、正式に大統領となった。

 サーカシビリという人、67年12月生まれ、36歳と若い。キエフ大学を出たあと米コロンビア大学で法学修士号、ジョージ・ワシントン大学で博士号を得た。1919年創立の老舗法律事務所、パターソン・ベルクナップ(Patterson, Belknap, Webb & Tyler、ニューヨーク)に所属していたこともある。

 開明派というより、米国の「ポスターチャイルド」、または「ピンナップボーイ」という匂いを漂わせる経歴であり、人物である。

 1月25日、コウリン・パウエル米国務長官はサーカシビリ氏の大統領宣誓就任式に参列し、米国は引き続き支援を惜しまないことを明らかにした。2003年、米国はグルジアに1億1040万ドルの援助を与えた*2が、2004年にそれを1億6800万ドルに増額することを約束したらしい*3。

 米ロ間に立つ冷たいさざ波が、ようやく誰の目にも明らかとなったのはこの頃である。
 パウエル国務長官がグルジア訪問を先にし、モスクワへ立ち寄るのを後にした*4 のみならず、ロシアでイズベスチヤに寄稿し対ロ批判を公然と口にしたことは、現下の米ロ関係が「冷たい平和」としか呼べない状態になったことを多くの人に気づかせた*5。

 長官によれば、「ロシアは民主化しつつあるが、三権分立ができていない。政治権力は法に十分服していると言えない。報道の自由など市民社会を成り立たせる重要な要素ができていない」のだという。すべてその通りなのだとしても、言わずもがなのことばかりである。

 他方サーカシビリ大統領は1カ月後の2月26日、訪米してジョージ・ブッシュ大統領と会談した。このように経過をかいつまんで概観しただけでも、米国の肩入れぶりになみなみならないもののあったことが諒解できよう。

 実際ここに至るまでには米国の重層的な関与があり、まさしくそれが米ロ関係冷却化の大きな原因となっていた。一連の経過において決定的となったのは、「9.11」の後、テロリスト掃討を助けると称し、米国がグルジアに対して軍事顧問団を送ったことである。

ジョージ・ソロスの登場

 ここで話を少しさかのぼらせる。米国がグルジアにどう「重層的」な関わりを続けてきたか、アウトラインだけでも見ておきたい。

 ワシントンがグルジアの戦略価値を再発見したのは、冷戦終焉から数年たった1990年代半ばのことである。バクー油田を擁するアゼルバイジャンと西側巨大石油資本が、初めて「世紀の契約(Contract of the Century)」を結ぶに成功したころのことだ。

 ズビグニュー・ブレジンスキー氏(カーター政権の国家安全保障担当大統領補佐官)が98年10月に出した書The Grand Chessboard: American Primacy and Its Geostrategic Imperativesは、米国の目を改めてユーラシア地方に向けさせた功績をもつ。

 そして99年10月トビリシを訪れたブレジンスキー氏は、同年11月10日付ウォールストリート・ジャーナルでこう述べた。

 「(ロシアがグルジアを再び属国化しようとすることは)米国にとって憂慮すべき話になろう。グルジアがロシアの属国となれば、ロシアの力は既にモスクワの従属国となっているアルメニアに一気通貫する。アゼルバイジャンと中央アジアは西側陣営から切り離され、モスクワはバクーと黒海を結ぶパイプラインを政治的支配下に置くことができるようになる」。

 相前後して米国国防長官による史上初のグルジア訪問(99年8月)があり、UNOCALをはじめ米国石油企業の関係者がさかんにグルジアから中央アジア、アフガニスタン周辺を訪れるようになる*6。

 97年9月時点で既に、ブッシュ(父)政権で国務長官を務めたジェイムズ・ベイカー氏は「米国カザフスタン協議会」会長(無給)の地位にあり、「米国アゼルバイジャン商工会議所」の無給顧問にはベイカー、ブレジンスキー両氏のほか、ニクソン政権の国家安全保障担当大統領補佐官ヘンリー・キッシンジャー、現ブッシュ政権で副大統領を務めるリチャード・チェイニー、ブッシュ(父)政権で大統領主席補佐官だったジョン・スヌヌの各氏が名を連ねていた*7。

 ここで登場するのが投機家にして慈善事業家のジョージ・ソロス氏であり、彼の財団Open Society Institute(本部ニューヨーク)である。

 同財団の1997年版年次報告書によれば、オープン・ソサエティー・グルジア・ファウンデーションは97年、グルジアで合計269万ドルを使っている。メディア環境の整備や関係者の教育、非政府組織30団体の支援などが目を引く*8。

 そしてその驚嘆すべき成果は、カナダ紙Globe and Mail2003年11月26日付のスクープ記事によって知られるところとなった*9。
(この項続く)

谷口 智彦(編集委員室主任編集委員)
日経ビジネスEXPRESSで2001年10月以来毎週「On the Globe『地球鳥瞰』」を執筆、日経マスターズ誌では「Over the Horizon: 国境なき虫眼鏡」と題したコラムを連載中。国際金融と安全保障に関心。前日経ビジネス主任編集委員。米プリンストン大学ウッドローウイルソン・スクール国際問題研究所フルブライト客員研究員、上海国際問題研究所客座研究員、ロンドン外国プレス協会プレジデントを各歴任


*1 http://www.caspiandevelopmentandexport.com/ASP/BTC.asp
 40億ドルという見立てもある。http://www.wws.princeton.edu/~wws401c/1998/baku-ceyhan.htmlを参照。
*2 米国務省
*3 プラウダ(ロシア)Web英語版
*4 こういう順序について米国外交は自覚的である。クリントン大統領は東京をバイパスし、北京へ直に向かった。ブッシュ政権要人たちはこれに対し、主要目的地がたとえ北京でも、儀礼的にせよ東京にまず立ち寄る方針を堅持した。
*5 Cold Peace。「Cold War」ならぬ「Cool War」と呼ぶ向きもある(米国のロシア専門家Stephen Cohenによる。Defense & Security, 2003年9月5日所載インタビュー)
*6 “World Oil Giants Eye War-torn Afghanistan”, The Seattle Times, 21 September, 1997
*7 ibid.
*8 Open Society Institute, Building Open Societies: Soros Foundations Network 1997 Report, pp. 43-45
*9 “Georgia revolt carried mark of Soros”, Globe and Mail, 26 November, 2003

http://nikkeibp.jp/wcs/leaf/CID/onair/biztech/rep01/296932

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