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『週刊朝日』「自己責任」言いたてる 小泉政権の矛盾
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投稿者 なるほど 日時 2004 年 4 月 25 日 08:49:37:dfhdU2/i2Qkk2
 

件  名 : [紹介] 『週刊朝日』vol.109 ( No.22) 2004/04/30号「自己責任」言いたてる 小泉政権の矛盾より抜粋




送信日時 : 2004/04/24 19:10

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*** 「自己責任」言いたてる 小泉政権の矛盾 ***

最大の危機だったイラク人質事件に際し, 小泉政権が本領を発揮したのは, 人質救出より世論対策だった. 「自己責任」を声高に言う その戦略は的中し, 人質の家族は謝罪を繰り返した. イラクの混乱が続くなか, 小泉首相は 17日, 自らが主催する「桜を見る会」を敢行, カメラの前で思わず微笑みを漏らした.

[写真] 「桜を見る会」で笑顔を見せる小泉首相(上)と, 3人の解放後, 会見で喜ぶ福田官房長官(下右). 小泉首相は人質の家族(下左)との面会を拒み続けた.

「いま, 日本大使館に連絡しました. 私は仕事ではなくて, 人間のために……」

4月15日夜. イラク人通訳ディアさんのやや不自然な日本語が, 邦人3人の映像とともに日本テレビで流れた.

東京ではそのころ, 川口外相が記者会見で, 戸惑いを隠せずにいた.

「日本大使館に日本時間午後8時, あるモスクに日本人がいるので引き取りに来てほしいと連絡があった. だれからあったかは, よくわからない. イラクの人からだった. 名前は承知していません」

誘拐事件の表舞台に突如, 躍り出たディアさん. 彼とともに救出の主役となったイスラム宗教者委員会のアルクベイシ師は次のように語り, 日本政府からの接触はなかったことを明らかにしている.

「日本政府はわれわれを評価していないようだ. 解放が遅れた一因は日本政府の対応にある」

小泉首相はこの間, 人質の家族との面会を拒む一方, チェイニー米副大統領とは会談し, 誘拐事件への協力を求めた. 一方で, 逢沢一郎外務副大臣をアンマンに派遣. 年間30億円にのぼる外交機密費の一部を情報収集に投入したのは想像に難くない.

米国とカネ. それはどれほど役に立ったのか.

外務省幹部は人質解放を伝える映像を見て, 自分に言い聞かせるように語った.

「何が効いたのかわからないが, われわれはいろいろやった」

部族長や宗教関係者……. 政府高官たちは米国などの協力を得て, 犯行グループとのパイプを探った.

だが, 部族長らは対価を求め, 次々と仲介役に名乗りを上げた. 洪水のような情報が連日寄せられ, どれが正しい情報かを見極める作業は困難を極めた. アンマンの現地対策本部も「主な仕事はアルジャジーラを見ること」(大使館関係者)という有様だった.

結局, 犯行グループとのルートは築けず, 駆け引き上手のアラブ社会に翻弄されたとみていいだろう.

小泉首相はそれでも, 意味深なコメントをした.

「まだ明らかにできないこともございます. 各方面へのいろいろな働きかけが功を奏したんだと思っております」

首相は「役者」だ. 人質救出は筋書きどおりだったかのようなそぶりをみせているだけなのではないか.

人質解放後, 日本政府が救出の奔走した痕跡が次々に表面化し始めた.

「首相はチェイニー副大統領に米軍と武装勢力の停戦延長を要請していた」

「暫定占領当局 (CPA) の米国人を通して 15日夕に解放情報が入った」

救出活動について表ではノーコメントとしつつ, 思わせぶりな発言を続ける. 裏では政府の奔走が功を奏したかのような情報を流す - そんな疑念はぬぐいえない.

メディア論に詳しい精神科医の香山リカさんは, テレビで川口外相の会見を見て, こんな感想を持った.

「政府は救出直前まで何も知らなかったと感じました. アルジャジーラを見ていただけなのでしょう. なのに, 自分たちの手柄のように言っているのはおかしいですね」

事件発生から1週間, 小泉政権がその実力を発揮したのはむしろ, 国内世論対策だった.

当初, 首相官邸内では「想定外の事態. どうしていいのかわからない」と動揺が広がった. 犠牲者が出れば, 自衛隊派遣に踏み切った責任問題が浮上し, 政権の屋台骨は大きく揺らぐ.

さらに, 小泉首相の発言が人質解放を遅らせているとの観測も強まった. 軍隊撤退を拒んだイタリアの人質は殺害されてしまった.

小泉政権に向かう責任論をいかにかわすか. 側近たちがひねり出した戦略が, 人質の「自己責任」の強調だった.

その口火を切った形になったのは, 竹内外務事務次官だ. 12日の記者会見で,

「外務省のわれわれの同僚は命を懸けて治安情報を収集し, 危険情報を国民に周知している. イラクについては今年に入り退避勧告を13回出している. 自己責任の原則を自覚してもらいたい」

と「人質批判」を展開.

表で自己責任を強調するとともに, 政権内ではこんな見方があちこちでささやかれはじめた.

「今回の誘拐事件は自作自演かもしれない」

そういえば, 小泉首相が事件発生後, 最初に発したコメントはあまりにつれなく, 「事実」という言葉だけが強調されていた.

「まず事実確認ね. どういうことがあったのか. まあ事実であれば, 3人の無事救出」

>    遠くにかすむ 首相の自己責任

自己責任を強調した議論はマスコミにも目立ち, 読売新聞も社説で指摘した.

≪3人は事件に巻き込まれたのではなく, 自ら危険な地域に飛び込み, 今回の事件を招いた …… 自己責任の自覚を欠いた, 無謀かつ無責任な行動が, 政府や関係機関などに, 大きな無用の負担をかけている. 深刻に反省すべき問題である≫

自己責任 ----. その言葉の前に, 米国に追従した自衛隊派遣の是非はかすんだ.

だが, 人質事件とは別に考えたらどうだろうか. イラク国内の戦闘は現在, 停戦合意が必要なほど激化し, 当初言っていた「非戦闘地域」とはとうてい言える状況ではないことが明白になった. そんな中で派遣の責任をどう考えるか. こうした本質論からは, 「自己責任」を棚上げしたのは小泉首相のほうだともいえる. 誘拐事件発生後, 自衛隊派遣を決断した自身の責任を問われ, こう言っていた.

「私自身の問題じゃありません. 国全体の問題です」

前出の香山さんは言う.

「自己責任という言葉はもともと自己決定という言葉とともに消費者や患者の『権利』という文脈で使われたが, この2, 3年で相手に向けて使う言葉になった. 企業が消費者の自己責任と言いだし, 犯罪でも市民の自己責任と言われ始めた. 権力側の責任逃れという側面に加え, 異質な人を裂きに切り捨てて自分は正しい側だと確認したがる傾向が強まっています」

第二の標的は人質家族だった. 家族が真っ先に自衛隊撤退を求めたことへの世論の違和感を, 小泉政権は見逃さなかった. こんな見方も流された.

「家族は自分たちのことしか考えていない」

「政治性, 思想性を感じる」

確かに事件発生当初, 家族たちは興奮していた. 記者会見を開いたり, テレビ局を回ったりして,

「なぜ, 自衛隊撤退を選択肢から外したのか」

「犯人側の反感をあおることは絶対にしないでほしい」

と政府に激しく迫った.

今井紀明さんの実家の留守番電話には「死ね」という脅しや, 仏具の「チーン」という音が残された. 高藤菜穂子さんの実家では誹謗中傷の電話が鳴り続けた.

だが, 家族の姿勢が手のひらを返したように変わったのは, そんな世論の圧力だけだったのかどうか.

14日午後, 東京・有楽町.

日本外国特派員協会であった家族の記者会見は, 異様な雰囲気だった. 「首相に伝えたいことは?」の質問に, 今井さんの父隆志さんが答えた.

「感謝と, 謝罪です」

すぐ隣にいた高藤さんの妹, 井上綾子さんは隆志さんに慌てて耳打ちした.

「いや, 反対です」

隆志さんが思い出したように言い直す.

「謝罪と, 感謝です. それ以上はノーコメントです」

会見場にいたバングラデシュ紙のモンズルール・ハック記者は, 気味が悪かったという.

「自衛隊撤退を望む気持ちは人質をとられた家族として自然なこと. 何かを怖がって, はっきり言えないような感じがした. 小泉さんを喜ばせたいのでしょうか」

前夜, 東京・永田町にある北海道東京事務所での記者会見でも, こんな場面があった.

「私たちが自衛隊撤退を考えているのは, ただ人命を尊重してほしいのが一番. 反対とか賛成とかじゃなくて」

隆志さんは感極まって言葉に詰まり, 高藤さんの弟修一さんに,

「おれ, 間違ったこと言ったか」

と小声で話しかけた. 修一さんが,

「何も間違ってないよ」

とそっと肩をたたいた.

[写真] 「自己責任論」が台頭し, 人質の家族はひたすら謝罪するようになった

>   人質家族に迫る救出費用の圧力

世論の追い風を受けて, 小泉政権は強気一辺倒だ.

解放後は自民党内から,

「自己責任だ. 救出費用は本人に負担させるべきだ」

との意見が噴き出し, 阿倍晋三幹事長は,

「費用を精査する」

と宣言. 福田官房長官も,

「もし政府が費用を負担するなら, 国民の税金であることも考慮しなくてはいけない」

と述べ, 本人負担を要求する可能性をちらつかせた.

小泉首相も例外ではない. 解放された邦人のなかに「イラクに残りたい」という声があることについて,

「これだけの目にあって, 多くの政府の人たちが自分たちの救出に寝食を忘れて努力してくれているのに, なおかつそういうことを言うんですかねえ. やはり自覚というものを持っていただきたい」

政治とメディアの関係に詳しい明治学院大の川上和久教授は,

「7月の参院選を控えた時期に, 小泉首相は傷口を最小限に抑えることに成功した」

とした上で解説する.

「メディアが自衛隊撤退を求める家族の不満を強調したことで, 家族は政治勢力になった. 小泉首相はその状況を利用し, 冷血とも言われかねない面会拒否を貫いても大きな批判を呼ばなかった. 逆に『自己責任論』を少しずつ引き出すことで, 自らの責任が吹っ飛んでしまった」

小泉首相は「抵抗勢力は協力勢力」と豪語してきた. 今回の政権最大の危機でも, 人質の家族を「抵抗勢力」に仕立て, ついには「協力勢力」に変えてしまったのである.

小泉政権は人質3人の出国先をマスコミが待ちかまえていたアンマンではなく, ドバイに変えた. 病院の個室に入院させ, 政府高官がひとりずつ順に面会したという.

高藤脩一さんら家族は16日, 川口外相を訪ねた後,

「自己責任という言葉の重さ. 当然, 責任はあると思う」

「今後のことも考えないといけない, と外務省から指摘された. 発言は慎重にするよう本人に伝える」

と言い残し, 外務省がすかさず手配した飛行機でドバイへ飛んだ.

3人は17日に帰国する予定だったが, 18日に延びた. ドバイで3人の肉声を聞きたいという報道陣の要望を小泉政権は拒んでいる.

「イラクの人を嫌いになれない」

解放直後, バグダッドでアルジャジーラのインタビューに涙ぐんでこう答えた高藤菜穂子さんらの思いは, どこへ向かうのか.

本誌・飯島浩, 藤田知也

【出典】『週刊朝日』vol.109(No.22) 2004/04/30号 (発行 朝日新聞社 \286+税)

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