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９・１１検証 ムーア監督新作なぜ配給ストップ メディアvs政権 先鋭化の象徴 イラク泥沼で批判モード【東京新聞】紙より
「恥を知れ。おまえの時代は終わった」とブッシュ・米大統領を激しくなじったことで知られる米映画監督、マイケル・ムーア氏の新作の配給に"待った"がかかった。製作した映画会社の親会社に当たるウォルト・ディズニーが圧力をかけたためだ。映画は米社会の自由の象徴のはず。配給中止という尋常でない手段をとった事情とは――。
「一部の人はその内容ゆえに私の映画を恐れるかもしれない」ムーア監督は自らのホームページ上に新作「華氏911」についてこう書いたうえで「にもかかわらず彼らになすすべはない。今年の夏に映画は公開される。結局、自由な国だからだ」となおも公開に自信を示す。
再選へ締め付け強化
映画は9・11テロヘのブッシュ政権の対応を検証した内容で、ブッシュ家とサウジアラピア有カ者一族との石油利権での結びつきなどをドキュメンタリータツチで描いている。
ディズニー傘下のミラマックスが制作費を出資、配給する予定だった。
ディズニーは何を恐れたのか?ニューヨーク・タイムズ紙によると、アイズナー最高経営責任者(CEO)がムーア氏の代理人に対し、「(大統領の弟の)ジェブ・ブッシュ氏が州知事を務めるフロリダ州で、ディズニーのテーマパークやホテルについて受けていた免税措置が、映画のため危険にさらされることに懸念を示した」という。年間免税額は数百万ドルに上るとされる。
映画評論家の佐藤忠男氏は「ディズニーはバラ色の夢を振りまく保守的な企業。しかもあれだけの巨大企業になると、政治家を通じて便宜を図ってもらっているはずだ。それだけに映画で政権と事を構えるのを望まなかったのだろう」と読む。
同時テロ以後、娯楽施設への集客力が弱まり、経営的にも苦しい立場に置かれているディズニーにしてみれば、物議を醸しかねない映画にコミットするのはリスクが大きすぎると判断したともいえる。しかし、一方で、ディズニー一社の事情という以上に、イラク情勢が泥沼化する中、ブツシュ政権が国内メディアの締め付けを強めているという背景も見逃せない。
検閲的排除の雰囲気じわり
国際政治学者の浜田和幸氏は、「ABCやNBC、CNNなど当初はイラク戦争に理解を示す報道をしていた米メディアも、情勢悪化を機に批判的なトーンに変わっている。これに対し再選を目指すブッシュ政権はイラク問題に否定的な報道に圧力をかけている。ムーア作品の配給中止に政治的圧力があったかは分からないが、政権批判を極力排除しようとするホワイトハウスとメディアのせめぎ合いが先鋭化する中で起こった出来事だ」と指摘する。
ムーア作品を排除しようとする雰囲気が、米国社会の中に醸成されているのは確かなようだ。
カンヌ受賞ならまたも米欧対立
米国の銃犯罪を描いた前作「ボウリング・フォー・コロンバイン」はアカデミー賞長編ドキュメンタリー賞を受賞した。新作の「華氏911」も今月、カンヌ映画祭に出品される。「カンヌでムーア作品が賞をとったりしたら、イラク戦争をめぐる米欧の対立が再び浮かび上がる。日本はその間でまたオタオタするんでしょうね。今や現実そのものがパロディーみたいなもの」とパロディストのマッド・アマノ氏は皮肉る。
ちなみにアマノ氏は来年の原爆投下六十年にあわせ、ムーア監督に広島、長崎の原爆記録映画の製作を要請しようと署名活動を続けている。
では、実際の上映はどうなるのだろうか。前出の佐藤氏はこう話す。「米国内で、ディズニーが押さえている大きな配給網に乗せることは無理でも、マイナーな配給網で上映される可能性はあるでしょう」
題名には必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。