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平らな国デンマーク/子育ての現場から 青少年クラブ
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投稿者 てんさい(い) 日時 2004 年 10 月 08 日 01:12:02:KqrEdYmDwf7cM
 

■ 『平らな国デンマーク/子育ての現場から』 第16回
  「青少年クラブ」

 ■ 高田ケラー有子 :造形作家 デンマーク北シェーランド在住

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■ 『平らな国デンマーク/子育ての現場から』            第16回
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「青少年クラブ」

 前回デンマークの学童にあたるフリティズイェムのお話を書きましたが、今回は同
じように放課後の活動として青少年が有効に利用している、青少年クラブについて書
きたいと思います。

 この青少年クラブですが、基本的には7年生から18歳までの青少年が、夕刻から
自由に出入りできるクラブとなっています。活動内容はというと実に様々で、その豊
富さに驚いてしまうほどです。定期の講座は基本的に無料ですが、週末の特別プログ
ラムや長期休暇中のサマーキャンプやスキーツアーなど週単位で行われる特別講座は
実費がかかります。私の住む地方自治体(以下、Helsinge)では、7年生以上の通常
の青少年クラブのなかに、6年生を有料で受け入れる(保育師がいて講座というより
クラブ活動のようなもの)コースもあります。これはフリティズイェムが5年生まで
の対応となっているためで、こうした対応年齢は住んでいる地方自治体によって、多
少の違いがあります。

 Helsingeでは、町の少し外れたところにこの青少年クラブがあり、活動日は火、水、
木のウィークデイと土日で、様々な講座(活動)が用意されています。町外れではあ
りますが、無料の送迎バスも用意され、青少年のほとんどがなんらかの講座を受けて
活用しているようです。講座の総数は80もあり、そのすべてを紹介する訳には行き
ませんが、ユニークなものを中心に紹介して行きたいと思います。

 まず、カテゴリーとして、クリエイティブ、身体と心理、週末活動、ロールプレイ、
語学、PC、芸能、モトクロス、数学物理、特別プログラムの10項目があり、その
なかにそれぞれユニークな講座があり、趣味に終わらずかなり学ぶところの多い、や
りたいことのきっかけをも掴めるような講座や、実生活上役に立つ講座などさまざま
です。青少年がこうした講座を無料で有効利用していることに改めて驚きますが、そ
の多くがクリエイティブな活動であることと、自由に選択して受講できることに提供
する側の懐の深さというか、青少年への可能性に期待する姿勢が伺えます。日本でこ
の年齢層の青少年が塾に通う姿を思うと、受験システムのないことと手でものを作っ
たり、体を動かすことをこの年齢層に期待するデンマークの教育方針の違いに、カル
チャーショックを覚えます。

 こんなふうに18歳までの多感な時期を、ある意味で自由奔放に過ごし、そして更
なる高等教育を受けたいものには、平等にその機会が与えられるなかで、本当に勉強
したい者だけが大学などの高等教育機関に進む。そこではしっかり遊んだ実績を糧に、
しっかり勉強する。日本の現状とはまったく逆の現象が目に見えて、考えさせられて
しまいます。遊びたい時期に、将来のために遊ぶ時間を制限して、その分大学へ入っ
てから思いっきり遊んでしまう日本の学生像がフラッシュバックして、日本の子供た
ちにももっと遊ぶ(体を動かし、手を動かす)時間を豊富に与えてあげたい、と願う
気持ちがこみ上げて来たりします。

 話を戻してその具体的な講座ですが、まずクリエイティブの中には18もの講座が
あります。フラワーアレンジメント、絵画、コスチューム、自分のための洋裁、ジュ
エリー、ガラスペインティング(ガラスの上に絵を描く講座)、編み物、ディスプレ
イ、クリスマスクラス(期間限定のクリスマスを楽しむための講座)、お菓子作り、
写真、ビデオ、ニュースレター書き方講座、照明と音響(劇場などでの照明や音響効
果を学ぶ)、ディスクジョッキー、ギター、若者のためのクッキング、ポートレート
絵画の18講座で、それぞれに専門の講師が配置されていることに、やはり驚きを隠
せませんが、それだけ多くの大人たちもまた趣味に才長けているというか、若いとき
から手で何かをすることに時間をかけて来たのだな、という伝統も伺えます。多くの
講師は、その専門家ではありますが、専門を生かした仕事を昼間はしつつ、夜や週末
の時間をサイドワークとして教えている場合も多いようです。

 身体と心理のカテゴリーでは、救急応急処置(デンマークではファーストエイドに
関する講座は幼少児向けにも消防署などでよく行われており、ごく一般的です)、手
話、スキン&ネイルケアー、スタイリスト、振り付け(舞踏)、ブレイクダンス、ス
タントマン、スコアリング(ボーイフレンドやガールフレンドをゲットする方法を学
ぶ講座)、ベビーシッティング、ロッククライミング、X-files (ミステリーサーク
ルなどこの世の不思議を探る講座)、ハンティング(16歳以上受講可)、女子のた
めのセルフディフェンス、禁煙講座(もちろん青少年のための禁煙講座です)、など
など思わず笑ってしまう講座もあり、習慣と文化の違いが一目瞭然、という気がして
しまいます。

 これらの講座は、たいていが週に一度、夜7時から2〜3時間を単位として開講さ
れており、もちろん複数の講座を受講することも可能で、趣味と実益を兼ねて、ある
いは専門意識を持って受講している青少年が多いようです。日本の中学校や高校にあ
るようなクラブ活動そのものが存在しないということもあるとは思いますが、こうし
た施設を有効に利用できることは本当にうらやましい限りです。ちなみに、日本のよ
うに学校に属するクラブ活動はないのですが、例えばサッカーの好きな少年たちは、
学校とは関係のない私設のサッカークラブで活動をしています。こうしたスポーツク
ラブ(水泳、自転車、柔道、空手、スケートなど)は各地に程よく存在し、私設とは
言え公的機関の支援を受けているので、経済的に大きな負担もなく自分の好きな活動
に参加している青少年も多いようです。

 その他、週末活動の実費のかかる講座として、フライフィッシング、カヌー、「針
の穴」と称するアドベンチャー講座(バンジージャンプやパラシュートなど)、リバー
ラフティング、「ロビンソン」と称するサバイバル講座、遊泳ツアー、アイススケー
トツアー、スケートボードツアーなどが週末を利用して開講されています。これらの
講座では「保険はかけておりませんので、個人の責任で参加するように」という但し
書きが入っています。怪我や事故などを伴う可能性のあることでも、公的機関がその
責任をあくまでも個人だと公言することで、自己責任の意味を自覚でき、またそうす
ることで公的機関がこうした活動をしやすくしていることに、転ばぬ先の「杖」の使
い方の違いを感じます。どんな場面でも多くは自分で決めたことに責任を持つという
ことがいつもベースにあるように思います。もちろん学校行事中の事故などには、地
方自治体による保険事項が定められていますが、青少年クラブの週末活動に関しては、
保険事項は定められていません。いずれにしても、提供する大人も(公的機関)いっ
しょに楽しもうというような気持ちが感じられ、企画する側が楽しければ参加する側
も楽しいという好循環を感じます。

 カテゴリーの中でロールプレイというのがあるのですが、これは大人になってから
も友人同士などで、独自のロールプレイを趣味で続ける人もあるようで、デンマーク
ではやったことのある人が多いようです。ようするに、何かの役になりきって他人を
演じる中で自分の内面を考えたり、気付くきっかけになるようですが、精神的な問題
をかかえる青少年にとって、よくも悪くも影響することがあるため、講師の役割が非
常に大切になるようです。そのため、最近ではフィジカルな活動を伴う(森の中でロー
ド・オブ・ザ・リングのようなロールプレイを展開するなど)ものに人気が集まり、
青少年の間ではよりポリュラーになってきているようです。

 語学と数学物理に関しては、いわゆるお勉強の時間ではありますが、学校の授業に
遅れをとっている青少年が積極的に講座を受講したり、またテストの前には集中で補
習する講座もあるようです。語学は、英語、フランス語、ドイツ語、スペイン語、そ
してデンマーク語と開講されており、特にデンマーク語の講座は難民や移民の子供た
ちを対象とした講座もあり、そうした子供たちのほとんどが受講しているようです。
お勉強の時間というふうには書きましたが、フランス語の講座の中には、フランス文
化を学ぶという視点からの講座もあり、そこではフランス料理を食べたり、フランス
映画を鑑賞したり、また最終的には学んだことを実感するためにフランス旅行に出か
けるという内容のものもあります。PC講座も3つ開講されていますがひとつは女子
のための講座で、一般的に女子が苦手とする理論的なことも含めて学ぶようです。

 残るは芸能とモトクロスですが、芸能の中には演劇、手品、大道芸、ミュージカル
&ドラマというような講座があり、独自の劇団を結成して町の文化祭などでその成果
を披露したり、老人ホームなどへの慰問などもその活動の一部として行っているよう
です。

 もうひとつ講座ではないのですが、Helsingeの青少年クラブは32年の歴史を持つ
サーカスも持っており、さまざまな活動もしているようです。サーカスといっても、
動物を使うようなものではなく、アクロバットや道化の領域で、年に数回、学校のグ
ラウンドにテントを張って、フリティズイェムの子供たちにも演技を披露したりして
います。もちろんサーカスを持っているような青少年クラブは珍しいと思いますが、
他の青少年クラブでも講座だけでなくダンスパーティーなどが頻繁に行われるなど、
青少年の社交の場としても活用されているようです。

 夫が青少年クラブに通っていた頃には、動物の剥製を作る講座もあったようで、つ
い最近まで聞きもしなかったので知らなかったのですが、我が家にも夫が施した野鳥
の剥製があります。先日、義母が死んですぐの野鳥を冷凍庫に保存していたのですが、
いきなり出して来て、夫に息子と一緒に剥製を作ってはどうかとくれたのですが、冷
凍庫からまさかそんなものが出てくるとも思わず、また夫にそんなことができるとも
思っていなかったので、かなり仰天いたしました。青少年クラブの恩恵というか、多
くの大人たちを見ていても、なにかスペシャルにできることを持っている人が多いの
で、あらためてなるほどと思うのでした。

 青少年クラブの講座リストを眺めながら「私もこんな講座うけてみたいなあ」とつ
ぶやいていたら、すかさず「歳とり過ぎ」と夫に言われてしまった薹のたった気持ち
だけ青少年の筆者でありました。

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高田ケラー有子/Yuko Takada Keller:造形作家
京都市立芸術大学大学院修了。日本在住時よりヨーロッパ、アメリカなどで作品を発
表。1997年よりデンマーク在住。近年はデンマークを中心にヨーロッパ、日本で
作家活動。キューレータとしても、日本のアーティストをデンマークに紹介している。
コミッションワークとして、東京都水道局「水の科学館」、岡山県早島町町民総合会
館「ゆるびの舎」に作品を手がけている。個人サイト: http://www.yukotakada.com/

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JMM [Japan Mail Media]                No.291 Thursday Edition
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こんな風なのがあれば、いいですよね。

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