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【JMM】from 911/USAレポート 「分裂の果てに」 冷泉彰彦
http://www.asyura2.com/0406/bd37/msg/780.html
投稿者 愚民党 日時 2004 年 11 月 09 日 00:35:27:ogcGl0q1DMbpk
 

                             2004年11月6日発行
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JMM [Japan Mail Media]                No.295 Saturday Edition
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                        http://ryumurakami.jmm.co.jp/
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▼INDEX▼
■ 『from 911/USAレポート』 第171回
   「分裂の果てに」

 ■ 冷泉彰彦   :作家(米国ニュージャージー州在住)

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 ■ 『from 911/USAレポート』 第171回
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「分裂の果てに」

大きな選挙が終わりました。そして明確な結果が出ました。次の時代へと明らかに歴
史の歯車は回ったと言って良いのでしょう。ですが、これからの時代がどう進むのか、
アメリカ社会の方向性は見えないままです。株価は大きく上げていますが、これは不
透明感から抜けた効果ですから驚くには値しないと思います。とにかく、ここ数日、
社会は停滞したままと言って良いでしょう。誰も「元に戻って淡々と仕事をする」と
いう雰囲気はありません。

「支持してくれた全国の人々を、一人一人抱きしめたい」ジョン・ケリーの涙ながら
の敗北演説から二日が過ぎましたが、ここニュージャージーなど、東部を中心にケリー
候補を選択した「ブルー・ステート」は、敗北のショックに沈滞しています。ケリー
候補自身が狙ったであろう「政治空白を起こさない」という判断も、これでは効果な
しと言わざるを得ません。

4日のNBCの朝のニュース・ショー『トゥディ』では、キャスターの全員が沈滞ムー
ドを隠していませんでした。特にメイン・キャスターのケイティ・コリックは、パー
マをあてて髪型を変えており、「髪型でも変えないとやっていられないよね」という
相棒のマット・ラウアーのコメントにひたすら苦笑していました。

その翌日5日の同じ番組では、長く激しい選挙戦を戦ったエドワーズ副大統領候補の
奥さん、エリザベス夫人に乳ガンが見つかったというニュースを沈んだ調子で伝えて
いました。「家族はみんなスピリットはハイです。とにかく、病気を克服するために
気力は充実しているんです」とご本人は語っているのですが、長男の事故死を乗り越
えて政界に挑戦、併せて高齢出産もして核家族の危機を乗り越え、負けたとはいえ大
きな仕事を果たしたこの一家に、こんな試練というのは何とも不公平な感じがする、
民主党支持者はそんな感慨を抱いているようです。

呆れた話としては、5日のNYのCBSニュース(ラジオ)が伝えたところでは、カ
ナダ政府の移民受け入れ関係のホームページがここ数日記録的なヒット数になってい
るというのです。アメリカとカナダの間では、米加条約の規定によって、お互いの市
民には自動的に永住権を与えることになっているのです。その手続きを説明したペー
ジが注目を集めているというのは、要するに「アメリカに絶望したリベラル」が「カ
ナダに亡命しようとしている」というのです。勿論、興味本位にHPを覗くだけで、
実際に移民する人は少ないのでしょうが、ここ数日の「ブルー・ステート」の気分を
語るエピソードではあるのでしょう。

負けたショックを癒すには、とにかく敗因を納得するしかない、民主党関係者は「ど
うして負けた?」という犯人捜しに躍起です。中でも大きな問題になっているのは
「出口調査」結果ではケリー優勢だったのに、全国の単純獲得票数(ポピュラー・ボー
ト)でどうして51%対48%などという大差がついたのか、という問題です。

例によって陰謀説は絶えず、問題のオハイオで導入された電子投票機の納入業者が、
納入決定の瞬間に「これで共和党の勝利は間違いないですよ」と言ったとか言わなかっ
たとか、投票の不正を匂わすような議論が出たり入ったりしています。これなどは、
典型的な「負け犬」心理とでも言うべきでしょう。

一応「定説」となりつつあるのが「道徳論争」の結果だというものです。特に激戦と
なったオハイオでの選挙運動では、各地の宗教指導者を動員して、「モラル」のブッ
シュ、「反モラル」のケリーというイメージを浸透させた、そのある種熱狂的な雰囲
気が、高齢者を投票所に行かせ、結果的にケリーに大きな差をつけた、というもので
す。

そうした筋書きは、大統領顧問のカール・ローブがきめ細かく練ったそうで、ブッシュ
の勝利宣言の中で、ローブのことを「アーキテクト(名匠)」と言って持ち上げてい
たのには、そんな事情があるのだそうです。その「モラル」論争の中では、例えばこ
の2月の「ジャネット・ジャクソンの胸ポロリ事件」なども大げさに取り上げられて
「民主党的なメディア産業の退廃」として攻撃されたり、それこそ同性愛者の結婚問
題などでは、リベラルを悪魔のように罵るような形で、「草の根集会」が進められた
のだと言います。

では、この「モラル論争」にみられるような中西部の「草の根保守」というのは、一
体何なのでしょう。私は、「時代に取り残されていく不安心理」であったり「世界の
中で孤立している恐怖感」であると思います。例えば、今回の選挙戦で辛うじてケリー
が勝ったペンシルベニア州では、大都市圏は民主党が取りましたが、地方はほとんど
が共和党でした。

私の住むニュージャージー州から、西の州境であるデラウェア川を越えますと、そこ
はペンシルベニアです。そこからは風景が一変するのです。なだらかなアパラチアの
丘陵が波打つ中に、延々と牧草地が広がり、その中に本当にポツリ、ポツリと酪農家
のサイロや牛舎が点在する、季節によって色を変える風景、雄大ということでは日本
の北海道などはとても太刀打ちできないスケールです。

その豊かな自然に育まれて、人々は静かに働き、農業の生産性を享受してきました。
家族は夫婦を軸に核家族として団結し、教会での社交などでゆるやかなコミュニティ
を形成し、静かではあるが落ち着いた人生を人々は送ってきたのです。ある時代まで
は、そんな人々の精神生活には穏やかな均衡があったのでしょう。

ですが、時代の変化は否応なしにそうした丘陵地帯や大平原にも浸透していきます。
人々の生活の中に様々な形で波風が立ちはじめ、それが時代の流れを色濃く反映した
ものとなるのでしょう。変化の痛みとでも言いましょうか。痛みは様々な形で現れる
のでしょう。親に背いて大学に進み、やがて都会で就職した子は、故郷を省みなくな
る・・・それだけなら、過去百年以上続く家族のドラマと変わりません。

ですが、農業はまだ良いのです。問題は製造業です。ペンシルベニアを例に取れば、
ここは元来は製鉄州でした。USスチール華やかなりし頃は、河川による水運や鉄道
網で五大湖地方と一体化しながら、地元の石炭エネルギーを生かして、繁栄を極めた
のでした。その面影は見る影もありません。製鉄が斜陽となった後には、NYなどの
大消費地を背景にした様々な軽工業が繁栄しました。ですが、それも全国的な物流網
の整備と共に、更に人件費の安い西や南に集約されていきました。今は、更に中南米
や中国に「アウトソーシング」されているというわけです。

そんな中で、人々の精神には不安や恐怖が忍び寄ってきているのでしょう。そうした
「変化への恐怖」は様々な形を取って現れます。その中でも大きいのが「変わらない
価値観」への強いこだわりなのでしょう。産業や生活の変化はどうしようもないとし
て、何か心のよりどころが欲しい、その心理が「変わらないもの」を追い求めるので
しょう。

「同性愛者の結婚」や「TVでの性表現」などに信じられないほどの反応が出る、あ
るいは演出できる背景にはそんな心理があるのではないでしょうか。足元を見れば、
子供達は自分に背いて都会に行き、独身生活を謳歌したり、外国人と結婚したりして
いる、そうした現実の中での「取り残され感」というのもあるのでしょう。ある意味
で、「同性愛者の結婚」というのは、自分たちの共同体から子供を奪った「東の都会」
の「退廃した文化」を象徴する、そんな意識もあるのではないでしょうか。

では、それに対して「東の都会」でケリーに投票した「リベラル」の側には問題はな
いのでしょうか。せいぜいが「草の根保守の心の傷」を理解しない無神経さがあるぐ
らいで、そのあたりの「度量」がつけば再びアメリカの理想主義を取り戻せるのでしょ
うか。いま正に「ブルー」になって「カナダへでも逃げようか」と言っている層は、
それだけ「アメリカに毒されていないピュアな心情」を維持している、そう評価して
良いのでしょうか。

私はそうではないと思います。今回のケリーの敗北はもっと冷静に考えるべきだと思
うのです。まず、政策の具体的な中身がやはり足りなかった、これはどうしようもな
い事実だと思います。例えば雇用問題があります。製造業の「アウトソーシング」と
いう現象を克服して、国内に雇用を取り戻す、そのために「アウトソーシング企業の
法人税率を上げる」というのでは、やはり余りにお粗末でした。具体的に国内労働力
の生産性を高めるか、あるいは国外に出せないアメリカならではの高付加価値の製造
業を立ち上げるか、税制などというのはあくまでそうした改革のための助走であって、
それだけでは改革は進まないはずです。

テロの問題もそうです。他でもない「9/11報告書」にあるように、世界各地で反
米活動グループがテロ行為を匂わせているのには、それぞれに理由があるのです。ア
メリカの存在感が、明らかにある地域で貧富の格差を助長する勢力と受け止められ、
社会的不安定の元凶がアメリカにあるように受け止められているのなら、その問題を
直視すべきでしょう。そして、具体的に世界各地での反米感情の元凶を一つ一つ潰し
てゆく、テロの問題はそうした努力の積み重ねでしか克服できないはずです。

それ以上に、「反ブッシュ」という情念に民主党の支持者達は、自分自身が我を忘れ
て舞い上がり結果的に「草の根保守の情念」と同じような感情論に流れていった、そ
のことも今から思えば行き過ぎでした。勿論、イラク先制攻撃に反対の立場からは、
米軍の作戦それ自体が殺人行為に思えてしまいます。事実、今回の先制攻撃が国際法
違反という立場であれば、米軍の爆撃による死傷は平時の殺傷行為と同じ凶悪犯とい
うことにもなるのは自然なのでしょう。ですが、法理を考える場は別に設けるべきで
あって、感情論で相手に対して拒絶反応の応酬をしていては、社会は分裂し、社会全
体の意志決定能力は「劣化」します。

ただ、戦争と平和に関わる問題はどうしても「人の生き死に」に関わってきますから
妥協のない対立になるのは仕方がないとも言えるでしょう。問題は、今回の選挙戦の
場合、一事が万事となって、内政や価値観論争を含めたありとあらゆる問題について、
感情論が全てを支配し、まさに「パルチザン(党派)」的な賛否の応酬が続いたとい
う点です。

この党派的な感情の応酬は、結果的に政策論争の質をずいぶんと落としたと思うので
す。例えば、財政不均衡の問題があります。ケリー陣営は、ブッシュの作った財政赤
字をさんざん非難しました。ですが、その批判は「借金のツケを孫子の代に残すな」
というまるで、一時の日本の野党のような中身のない感情論だったのです。これでは、
ブッシュに「2000年の時点では不景気だった、そこへテロが起きて景気が更に落
ち込むと同時に、軍事や治安維持のコストがかさんだ。それ以外の点では私の財政運
営には問題はない」と居直られてしまえば、返す言葉はなくなります。

今から思えば、ケリー側の作戦ミスもかなりありました。第一回の大統領候補討論で
「イラク問題」が論戦となってケリーが優勢になった、そこに落とし穴があったので
しょう。優勢になったのをいいことに、二回目や三回目の討論でもかなりの時間が
「イラク」に費やされました。そのために、内政問題でブッシュを追い詰めることが
できなかったとも言えるでしょう。

選挙結果の話題に戻りますが、大統領選挙の「敗因分析」とりわけ「出口調査の外れ
た原因」には、どうやら複雑な事情があるようです。投票日の夕方(東部時間)7時
前ごろから流された「出口調査速報」を振り返りますと、今から思うと奇妙なデータ
がありました。NBCのブライアン・ウィリアムスが伝え、私が臨時号でお伝えした
のは「アメリカは誤った方向に進んでいるか?」という質問でした。この質問に対し
ては「イエス」が50%、「ノー」が47%というのが「全米」のデータだったので
す。その時は、間接的にケリー有利の雰囲気を伝えていた、NBCの扱いは確かにそ
うでした。

ですが、その時点で同時に「全国出口調査におけるブッシュ大統領の支持率」という
データも出ていました。それは「51%」だったのです。漠然とした「ケリー有利」
というムードの中で無視されていましたが、実はこの「51」という数字は、その1
0時間後に明らかになるブッシュの全国得票率をピタリと当てていたのです。

どうやらブッシュに投票した層は「イラクやテロの問題では、ケリーの批判にも一理
ある」としながらも「自分たちの心理にあるどうしようもない不安心理」や「道徳論
争」などを自分への言い訳にしてブッシュに票を投じていった、そんな理解ができる
のではないでしょうか。そこでは、やはりケリー陣営からの具体的な政策提案が弱かっ
たということが大きな影を落としていると言えます。少なくともオハイオで起きたこ
とは、そのように理解するしかないように思います。

今回の結果を踏まえて「米国民はイラク戦争を信任」という文字が、ワシントン発の
日本のメディアからは散々流されています。ですが、今回の選挙戦を、とりわけ3回
のTV討論の結果から投票日までの流れを見ていますと、とてもイラク問題が信任さ
れたとは言えないのです。

今回の選挙結果について、更に日本の反応を見ていますと、これでアメリカはブッシュ
に強大な権限を与えた、とか、過去の「反テロ戦争」の「強硬路線」がエスカレート
する、とか、財政も経済運営も変化なし、などという宣伝がされていますが、それは
全く違うと思います。

ブッシュを選んだ今回の選挙は、考えられる選択肢をキチンと並べた上で、今後の方
向性を堂々と選択した、そんな選挙ではありませんでした。まず両陣営の感情的な対
立が続き、具体的な政策論争は希薄なままでした。そして、最終的なブッシュの勝因
もこれまで述べてきたように、複雑な要素の絡み合った不明確なものなのです。

さて、そんな選挙を勝ったブッシュの「2期目」に対して日本はどうすれば良いので
しょう。日本は、少なくとも小泉政権は「強気に」出るべきです。まず、イラクへの
自衛隊の派遣は、ブッシュが勝ったからこそ「これ幸い」と引くべきです。「コアリ
ション(有志連合)の数合わせで再選に協力したのだから、もう良いでしょう」と言っ
て、ポーランド、スペイン、オランダと歩調を合わせて「ここはお役ご免とさせても
らう」べきでしょう。

イラクに関しては、ブッシュが勝ってしまった以上、益々アメリカは後へ引けなくな
りました。同時に、新たな国際的な枠組みのないまま、1月の選挙実施へと危険な日々
が進むことになるのでしょう。自衛隊の危険は増すばかりです。ならば引けば良いの
です。ブッシュが勝ったから、その威光にひれ伏す必要はゼロなのです。仮にケリー
候補が勝っていたとして、「だからすぐに自衛隊を引きます」ということを考えれば、
そっちの方が余程二国間関係として失礼だし、イラクの人々のことを考えても失礼で
す。

BSE問題などもそうです。この問題でも、選挙に勝ったブッシュの言うことを聞く
必要などないはずです。少なくとも、ブッシュは「選挙に負けると怖いから全頭検査
を拒否してきた」のです。ですから「勝った以上は負ける恐怖がないのだから」改め
て「全頭検査」で押すべきでしょう。ブッシュはアメリカの国内の選挙で勝っただけ
です。その勝利に対して、別の国である日本の外交当局が低姿勢になる必要は全くな
いのです。

アメリカがキリスト教的な狂信に支配されて、日本には理解できない「強さ」を持っ
た、そう考えるのは誤りだと思います。既成の価値観が相対化し、社会を束ねる理念
が脆弱となり、細かな意志決定が利害の調整に流される、そんな「近代の崩壊」がア
メリカでも起きています。だから感情論に流れるのです。不安心理から保守化するグ
ループも、保守を嫌う余りに感情的にエキサイトするグループも、感情論に流されて
いるだけであって、気がつけば「世界を指導する」ような崇高な一貫性など持てなく
なっているのです。

今回明確になったアメリカの「保守化」とはそのようなものです。日本としては、既
に経験済みのあるパターンにアメリカも入りつつあるということなのでしょう。ただ、
問題があるとすれば、そのように「弱く不安を抱いたアメリカ」が人類社会において
突出した軍事力を持ってしまっているということです。

とにかく、ブッシュとしてはこれからの政権運営は大変です。大統領を取り、上下両
院を制した以上は何をやっても大丈夫?それどころではないのです。これからは、何
もかもが守勢になるのでしょう。負けた民主党は今は「ブルー」かもしれませんが、
考えてみれば何も怖がる必要はないのです。

2006年の中間選挙での「一気挽回」を目指して、様々な攻撃を仕掛けてくるでしょ
う。共和党内も、再選のために団結するのではなく、次のリーダー探しのために混乱
するに違いありません。財政問題は待ったなしとなります。

先ほどお話ししたイラク情勢に関して言えば「テロが横行しつつ、治安悪化の責任は
米軍に」という悪循環の中で、益々出口は見えにくくなってきています。北朝鮮問題
も、イラン問題も、原油高も、ロシア情勢も、これからは「大きく変えられない」中
で現実に対処しなくてはなりません。政治権力とは不思議なものです。大勝した政治
家は勝手な権力を振るえるわけではないのです。むしろ与えられた権力を人間社会の
常識にしたがって中道的な、あるいは現実的な判断基準で、地に足のついた方向へと
「着地」して行かねばならないのです。

ブッシュにとっては、3日の勝利演説が権力の絶頂で、こらからは「おごる平家」で
はありませんが、ジワジワと任期切れまで権力は混乱し疲弊し続けるでしょう。すで
に多くの主要閣僚が「今が潮時」とばかりに退任の意志を匂わせ始めています。

そうは言っても、ある保守的な気分がアメリカを覆っているのは事実です。そして、
マイケル・ムーア的な、あるいはハワード・ディーン的な「反骨精神」では対抗でき
ない、そんな空気も出てきました。民主党も、そして東部とカリフォルニアの「自由
人という特権階級」による「リベラル文化」も壁に突き当たりました。そのことは悪
いことではないと思います。良い意味でアメリカが再生する方向へと、これからの
「4年間」に新しい流れを待ちたいと思います。

その2008年に向けて、着々と地歩を固めている政治家もいます。ヒラリー・クリ
ントンなどは、正にその一人でしょう。同じNY州で民主党の上院2議席を守ってい
る僚友のチャック・シューマー議員の今回の改選(圧勝でした)に当たっても、州を
駆け回ったヒラリーの存在感は格別だったと言います。

国政選挙は初挑戦ながら、イリノイ州で70%を越える票を集めて圧勝した黒人のバ
ラク・オバマ上院議員(民主)なども、新しい時代の風をもたらしてくれるでしょう。
「党派の争いには興味はないです。医療保険も税制も、政策の何もかもは極めて複雑
で実務的な作業を通じて決定されるべきです。その仕事を担っていきたい」そう語る、
目は野心を隠していないにもかかわらず不思議に澄んでいました。

これからの二年、2006年の中間選挙まではとりわけ大切です。上下両院ともに少
数野党に転落した民主党は「反ブッシュ勢力」として感情論を強めていっては全く勝
ち目がなくなります。あくまで政権との粘り強い対話を通じて、具体的な政策を練り
上げてゆく、そうした作業を通じてしか、今回の敗北から蘇る道はないと知るべきで
しょう。カナダへ亡命など、もってのほかと言わざるを得ません。

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冷泉彰彦:
著書に
『9・11(セプテンバー・イレブンス)ーあの日からアメリカ人の心はどう変わったか』
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