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【「続・憂国呆談」番外編】今こそ問われる「脱出戦略」(人質事件、米大統領選挙など)浅田彰X田中康夫
http://www.asyura2.com/0406/bd37/msg/842.html
投稿者 バルタン星人 日時 2004 年 11 月 11 日 12:45:42:akCNZ5gcyRMTo
 

連載 第二十六回「続・憂国呆談」番外編Webスペシャル
http://dw.diamond.ne.jp/yukoku_hodan/200411/index.html

今こそ問われる「脱出戦略」

●イラクでの日本人人質殺害

浅田彰 イラクで日本人の若者がザルカウィ系のテロリストと言われる連中に誘拐され、自衛隊の撤退要求を突きつけられた事件は、人質が首を切られて殺されるという最悪の結末になっちゃった。もちろん、いまのイラクに物見遊山で行った若者が無謀に過ぎたのは事実だろうけど、イラクをむしろテロの温床にしちゃったブッシュ、そして、アメリカの大義なきイラク攻撃を支持し、イラク占領に協力して自衛隊まで送ることで、せっかくのアラブ人の親日感情を逆転させ、結果的に国民の命を守れなかった小泉にも、大きな意味での責任はある。
 われわれは最初から自衛隊のイラク派遣に反対だったし、一刻も早い撤退を主張してきた。むろん、テロリストの要求に屈することはできないってのは正論だよ。それでも、似た状況であえて軍を撤退させ、「国民の命を守ったのだからいささかも後悔することはない」と言い放ったフィリピンのアロヨ大統領のような例もある。今の日本じゃ、それは無理かもしれない。だけど、前に三人の日本人が人質になったときも、直前に自衛隊の宿営地近くに初めて砲弾が打ち込まれたわけで、これをもって非戦闘地域という条件が崩れたという理由で撤退を決めてもよかったわけでしょ。今回も、最初に決めた駐留期限が12月に迫ってるからそれをもって撤退すると言ってもいいし、サマワの治安維持を担当してるオランダ軍が来年3月に撤退するようだから、オランダ軍の保護下で活動してる自衛隊もそれと同時に撤退すると言ってもいい。テロリストの要求とは関係なく撤退すると言えるきっかけはあったわけだし、このきっかけを逃すと次はなかなかないよ。オランダ軍のかわりにイギリス軍が来るらしいけど、オランダ軍と違ってイギリス軍はアメリカ軍なみにイラク人から憎まれてるから、かえって厄介な状況になりかねない。いずれにせよ、イラク情勢は泥沼化する一方なんだから、それこそ「脱出戦略」を考えとかなきゃ。

田中康夫 日本国籍の人物を切り捨てるが如き発言を政府がする日本って何なの?どんなに彼に非があろうとも、国民を守るのが国家の役目でしょ。国家を解散する心算なのか、って嘆きたいね。しかも一方で、次回の対談で扱うけど、自衛隊の炊事車が163台も地震で被害を受けた新潟県に入りながら44台しか稼働していない。ところが、この事実が発覚した翌日にマスメディアは小泉にぶら下がりもせず、官房長官や幹事長の会見でも、中越地震に関する質問すら皆無なんだよ。この国のメディアは、一体誰のために存在するんだ。まさに戦前と一緒。で、自衛隊の50周年の観閲式が11月8日に挙行されるんで、関東地域の自衛隊は、その準備で新潟に殆ど派遣されていないという説もある。国破れて山河在り、ではなくて、山河壊して国民滅ぼして国家が残ると思ってるのかな。

浅田彰 それにしても、ブッシュのおかげで、イラクがザルカウィ・グループのようなテロリストの温床になっちゃったってのは、皮肉だね。しかし、ザルカウィの実像がつかめない。ザルカウィ派のアジトを叩くと称してアメリカがファルージャで空爆を繰り返しても、民間人の犠牲者が増えるばかりで、肝心のテロリストはぜんぜん出てこないじゃない? ザルカウィなんてのはある種の捏造じゃないかって勘ぐるやつがいても、おかしくないね。そういえば、オサマ・ビンラディンのヴィデオ・メッセージがアメリカ大統領選挙直前にアル・ジャジーラで放映された、あれもいったいどういうことなのか。「ブッシュが再選されたらテロが続くぞ」っていう脅しとも取れなくないけど、むしろ、ああやって恐怖を煽ると、アメリカの有権者は何が何でも戦うリーダーっていうイメージをふりかざすブッシュの方に傾きかねない。実際、本誌でも言ったように、ブッシュは恐怖を煽ることでほとんど独裁的な強権支配を敷いてきたわけだし、ブッシュが戦争を続けることでテロリストの活躍の場も増えるわけで、結果的に一種の共犯関係が成立してるとも言えるわけだ。まあ、この辺の問題については、大統領選挙の結果も踏まえて、次回に議論しないといけないね。とにかく、繰り返すけど、オサマにせよザルカウィにせよ、いったいどこのだれかもわからない、普通のマスメディアの報道なみのウラさえ取れてないってのがひっかかるんだな。もちろん陰謀説はとらないけれど、ハリウッド映画なら、今回のヴィデオ・メッセージをオサマがペンタゴンかどっかのスタジオで収録してる、なんていうシーンがあってもおかしくないんじゃない?


●ブッシュ米大統領再選

浅田彰 そう言ってたら、本誌で予想したとおりのドタバタのあげく、ブッシュが再選を決めちゃった。まったく信じがたいよ。たとえば、ケネディからヴェトナム戦争を引き継ぎ、冷戦下ってこともあってエスカレーションを繰り返さざるをえなかったジョンソンでさえ、最後には出馬を断念せざるをえなかった。それが、勝手に始めたイラク戦争で出口の見えない惨状を招き、他方で巨大な双子の赤字を積み上げてるブッシュが、平気で出馬して再選されるんだからね。しかし、ケリーも実は僕が予想してたより善戦したな。東海岸と西海岸、それに五大湖周辺の州を、ほとんど取ったでしょ。ただ、南部出身のエドワーズを副大統領候補にしたのに、彼の地元のノース・カロライナをはじめ南部を完全にブッシュに取られたのが痛かった。民主党でも、カーターやクリントンみたいな南部出身の候補が、かつては民主党支持だったのにレーガンに奪われた南部の票を取り返して当選してきたわけだけど、今度はそれがうまくいかなかったってわけだ。
 こうしてみると、アメリカは地理的にも完全に分断された感じがするね。ジョージ・ソロスなんかと一緒にケリー支持にまわった事業家・慈善家のジョン・スパーリングが「The Great Divide」(PoliPoint Press)って本でアメリカはレトロとメトロに分断されたって言ってるの。大都市的(メトロポリタン)な、多少とも文明化されたアメリカでは、だいたいケリーが勝ってる。ところが、田舎にいくと昔ながらの宗教的保守主義に回帰したレトロな世界が広がってて、そこはブッシュが完全に押さえてるわけだ。ここまで分断が進んじゃうと、メトロアメリカがレトロアメリカなんか放っといて独立したほうがいいような気さえするけど。ま、この件については次号で本格的に議論しなくちゃいけないね。

田中康夫 そうかぁ。長野県の場合は、県庁所在地の長野市では既得権益を失うのが怖い経済界や労働組合や補助金団体や地元メディアが僕の改革に抵抗し、逆に農山村では、巨大な農協をはじめとする鋳型社会では地域の元気がなくなる、と危機感を持つ一般県民が僕を支持する現象が起きているんだけどね。まあ、ベネズエラの大統領ウゴ・チャベスの構図にますます、近付きつつあるね(笑)。この辺りも、長野県の震災対応と並んで次回に詳しく(http://www.pref.nagano.jp/keiei/kouhout/chuetsuj/kenshien.htm)。

●高知県知事の出直し選挙

浅田彰 高知県知事の橋本大二郎が、選挙資金をめぐる疑惑で県議会が辞職勧告決議案を可決しちゃったんで、それを受けて辞職したね。出直し選挙であらためて県民の信を問う、と。何やら以前どこかで聞いたような話(笑)。もちろん背景も理由も異なるけど。


田中康夫 彼が初出馬したとき、当時の後援会事務局長が後援会長から借りた一億円を選挙に使い、その返済を県のダム工事を受注した建設会社からの資金でまかなったとされる疑惑なんだけど、もちろん本人は関与を真っ向から否定してる。
 4年前の僕の最初の知事選直前に彼と対談した際、こう言ってたのが印象的だな。田中さん、最初に足を引っ張るのは一見、熱心に応援してくれたように見える人々ですよ、って。それは凄く実感するねぇ。無論、私利私欲とは無縁の多くの市民は変わらない。ところが、前の県政には入り込めなかったり、入り込まなかった地元の主要人物は、今度は自分が新しい知事を遠隔操縦出来る立場になれる、と野心を抱いちゃうんだね。ところが、橋本は公正な判断で物事を選択していく。おいおい、こんなに応援したのに、という展開になっちゃう。そうしたなかで起きた、けっこう根の深い政争みたいだね。

浅田彰 高知県議会も、長野県議会の田中康夫不信任決議の顛末をぜんぜん学習してないんだなあ。橋本の電撃辞任を予想せず、選挙の用意もしてないんだから。むろん、橋本大二郎や田中康夫を知事に選びながら、県議選では結局もとの守旧派に投票しちゃう県民も困ったもの。そういうところから変えていかなくちゃ。

田中康夫 そのあたりに関して、くしくも橋本への辞職勧告が可決された日に彼自身のインタビューが中日新聞の長野版に載ったんだ。これがなかなか鋭いの。この一〇年くらいでいろんなタイプの知事が出て、都道府県の執行部はずいぶん変わった。だけど、そういう知事を選ぶ県民の意識がまだ議員選挙までは及ばない。まさに過渡期であり、今こそ県民の力が問われている、とね。

浅田彰 そういう意味じゃ田中さんが橋本大二郎を応援せざるを得ないのもわかるよ。

田中康夫 何と言っても彼は改革派の先駆けだし、総務省出身者が三分の一以上、霞が関出身者が半分を占める全国知事のなかでは数少ない例外だからね。

浅田彰 11月28日投票の出直し選挙の見通しはどうだろうね。去年の選挙で4万票差だった前高知市長の松尾徹人が対抗馬みたいだけど。

田中康夫 橋本も勢いよくすぐ辞職しちゃったけど、それが吉と出るかどうかでしょ。ある意味じゃ千両役者として県民の同情はあるかもしれない。でも、金の疑惑に関してはしっかりと辞職する前に説明をするべきだったかも。いずれにせよ頑張ってほしいよ。


●迷走する越権合併問題

浅田彰 長野県の山口村と岐阜県中津川市の越権合併が話題になってるね。田中さんは合併反対ってことなんでしょ。

田中康夫 うん。都道府県内の合併であれば、そこの住民が納得すればいいんだけど、このケースは県境が変わるし、議会と僕が総務大臣に申請しなきゃいけない。だから、県全体の問題として県民の意向を聞くべきだと僕は思ってるわけ。それで、一万人規模の世論調査をして、それを前提として県議会に議案を提出すると言ったんだ。ところが、調査は不要だと議会は調査費900万円の予算を否決した。他の予算の流用も認めないと。では、どうやって県民の意向を把握するのか。地域の寄り合いなんぞで、その地域の職員が聞けば事足りる、と言うんだけど、それって根拠が乏しいでしょ。

浅田彰 越県合併って、全国でもこの事例だけなんでしょ。それが長野で起きるというのがなんともね(笑)。

田中康夫 だから、総務省も困惑してるんじゃないかな。岐阜県はすでに申請を出したんだけど、長野県が書類を出さない限り前に進まないから。世論調査という前提が満たされない場合、一二月議会で僕はどういう決断をすればいいのか(苦笑)。
 だいたい、地元メディアの信濃毎日も、本来だったら県から出ていくなと主張するはずなのに何も特集を組まない。越県合併の是非よりも、とにかく田中の施策に反対するってスタンス。もし、九月県会で何も調べず普通に議案を出してたら、「県民の声は聞いたのか」ってことになってたと思うよ。「ああ言えば上祐」状態だから(笑)。


浅田彰 いやはや、この問題ももつれそうだね。


●熊と牛の問題

浅田彰 全国的に熊がやたらと出没してるみたいだね。猛暑と台風でエサが不足したんだろうってことで、自然保護団体が山の熊にドングリを贈るなんて話もあった(笑)。長野県はどうなの?

田中康夫 熊はいっぱい出るよ。ただドングリ不足もさることながら、やっぱり人家に近い森林の下草を刈って整備してないのがまずいんじゃないかな。熊も腹が減って歩いてたら、急に森が途切れてそこに畑があったりする。うまいもの見つけたってんで食っちゃう。で、トラブルが起きる。人が住んでることをもっと早めにわからせなきゃダメなんだよ。だから長野では下草を刈る事業をやるために補正予算を付ける予定。

浅田彰 愛知万博でも里山がテーマって言ってるけど、昔は人里の周囲には人が入ってきれいにしてる里山があり、下草も刈ってあるから熊は怖がって入ってこなかった。つまり里山が人里と深山の緩衝地帯になってたんだよ。

田中康夫 物の怪のいる境界だったわけだよね。

浅田彰 だから、愛知万博なんかやるぐらいなら、日本中で里山を再生するのにお金を使ったほうがいい。

田中康夫 だと思う。

浅田彰 熊はそうやってやたらと姿を見せてるわけだけど、アメリカ産の牛もそろそろ再び日本に出没しそうな流れになってきたね(笑)。日本は、生後20か月以下の若い牛ならBSE検査をしなくてもいいという方針をほぼ固めた。その条件にあった牛肉なら輸入解禁ってことになりそう。まだ、月齢を判別するのが難しいって問題はあるようだけど。

田中康夫 でも、長野県も含めて日本の都道府県レベルでは自主的に全頭検査を続けるんだよ、生後20か月以下でもね。それに対して、国も今後3年間は検査費用を補助することを決めた。矛盾した措置ではあるけど、それはそれで決断だと思う。だから、和牛は全頭検査する、米国産は検査はしないけどBSEの恐れのない生後 20か月以下しか輸入しないってことにすりゃいいんだよ。そしたら牛丼を食べたい連中は食べられるしね。逆に、和牛だと偽って出した焼き肉屋は厳しく処罰するという前提を付けてね。

浅田彰 まさに自己責任による選択ってことだね。ただ、プリオンについては感染メカニズムも発症メカニズムもわかってないんだから、やっぱり全頭検査するに越したことはないと思うけどな。むろん若い牛は検査してもひっかからないから無意味だって議論もわかるけど、それなら危険部位の除去を徹底する必要がある。ヨーロッパなんかはBSEでひどい目に遭ったから、脊髄とかを完全に取り除くってことで、抜き打ち検査もやって、ものすごく徹底してるわけ。日本の場合、全頭検査をしてきた半面、危険部位の除去が万一そこまで徹底されてないとすれば、そっちのほうが問題でしょう。とにかく食の安全は人間の安全保障の根幹にかかわる問題なんで、妥協のない対応を望みたいね。


●文藝賞とドゥマゴ賞

田中康夫 今日はこの対談の前に、僕が24年前に『なんとなく、クリスタル』でもらった文藝賞の今年の授賞式があったんだ。今は僕も選考委員をやってるんで顔を出してきたんだけどね(http://www.kawade.co.jp/bungei/bu41.htm)。

浅田彰 受賞作は二つあったけど、あの女の子のほうの作品はちょっと面白かった。

田中康夫 そうそう、山崎ナオコーラの『人のセックスを笑うな』ね。いやぁほんと素晴らしいんだ。彼女は才能あるよ。

浅田彰 少なくともペンネームとタイトルが面白い(笑)。白岩玄っていう若い男の子の『野ぶた。をプロデュース』もそれなりに面白いんだけど、やっぱり世界が狭くて、学校の域を出ないんだな。その点、ナオコーラは、狭い世界に自閉した文学少女の自意識をまったく感じさせない広がりが強み。それなりに書ける作家になるんじゃないかな。
 他方、僕のほうもドゥマゴ文学賞の選考委員をやって、田口賢司の『メロウ 1983』(『メロウ』と改題)って作品を選んだの(http://www.bunkamura.co.jp/bungakushou/bungakushou.html)。

田中康夫 知ってるよ、田口は僕に私淑していた時期もある。

浅田彰 まったく空っぽなアメリカン・ポップそのものの小説。日本にも、「邦楽」を言い換えたJ-POPとか、そこから派生したJ文学とかいうのがあるわけだけど、ああいうのって、欠落感を音や言葉で癒すって感じで、どこかウェットで貧乏くさい私小説的な感覚がつきまとうんだよね。田口賢司にはそれがまったくない。欠落感を埋めるもなにも、最初からまったく空っぽなんだから。その空っぽの世界がただただ明るい光に照らされてる、その残酷な晴れやかさっていうか、それはうまく表現されてると思うよ。そこをJ-POPとは違う純正ポップとして評価したわけ。社会性は皆無だから今の田中さんの気に入るかどうかは別として、なかなか見事に書かれた小説だし、とにかくドゥマゴ文学賞にふさわしいおシャレな作品だし、よかったと思う。
 思い出してみると、渋谷のBunkamuraにドゥマゴができてすぐ、フランスの『フィガロ・マガジン』が日本の若い文化人の特集を組むっていうんで、田中さんとあそこのカフェでツー・ショットの写真を撮られたじゃない? そのときから、田中さんは消費社会のフラットな表層に身を沿わせ、そこから微妙な陰翳を掬い取るって感じだったのに対し、僕は、ハイ/ロー、シリアス/ポップを問わず、どこかとんがったものに眼を向けてきた(僕が80年代にはポップ・カルチャーにも眼を向けてたのに、90年代を通じてハイ・カルチャーに撤退したっていう見方があるけど、主観的にはぜんぜん当たってないと思うんで、当時も今もとにかくとんがったものに眼を向けてきただけ)。その意味では、完全にフラットな世界を描いてる田口賢司は、田中康夫の一面をラディカル化しつつ受け継いでると言えるかもしれない。


田中康夫 なるほど、僕にとっても田口にとっても、最大級の賛辞だ。田口といえばかつては新人類の旗手って感じだったけど、今はどうしてるの?

浅田彰 昔は中森明夫・野々村文宏と『卒業』なんて本も出してたけど、今はスカパーでチーフ・プロデューサーとしてサッカー番組なんかを統括してて、けっこう偉いみたい。
 そういえば、東京オペラシティ アートギャラリーでヴォルフガング・ティルマンス(http://www.operacity.jp/ag/exh55.html)、ワタリウム美術館でラリー・クラーク(http://www.watarium.co.jp/museumcontents.html)の写真展をやってるのね。ティルマンスは『i-D』なんかでクラブ・シーンを撮ってきただけに、いかにもおシャレって感じだけど(ただしセックスやドラッグに関するあぶない写真は今回は除外されてる)、動物的なまでにぶっこわれたラリー・クラークのアメリカ的世界(ワタリウムではけっこうやばい写真も大胆に出してる)と比べると、所詮はヨーロッパのスノッブって感じだな。『メロウ』はああ見えて実はクラークのアメリカにまで届いてると思うよ。
 そうそう、ティルマンスは今度オープンした金沢21世紀美術館(http://www.kanazawa21.jp/ja/index.html)のオープニング展にも出てるけど、必要な部屋を積み木みたいに並べた上でガラスの円で囲うっていうコンセプトゆえにヴェネツィア・ビエンナーレでグラン・プリをとったというふれこみの建築(妹島和世+西沢立衛)は、今風のブランドのショップかクルマのショールームをぐっと安物にしたような、コンセプト倒れの失敗作だし、コレクションもオープニング展も最近の美術界によくある学芸会なみのしろもので、ある意味では21世紀の建築や美術の追い込まれた一見華やかな袋小路を見事に体現してはいる。しかし、あれで結構観客が入ってるっていうんだから、いったいどうなってるのか。日本の観客のテイストもぶっこわれちゃったのかもしれないね。

田中康夫 で、公立だから、そこには巨額の税金や起債が投入されている訳だ。困った存在はゼネコンだけでなく、文化の「匂い」ならぬ「臭い」を漂わせるフォニー(紛い物)な連中もだね。

(了)
●次回更新は12月中旬の予定です!

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