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実のところは蓄蔵されていない「貨幣蓄蔵」=貯蓄:それどころか「マイナス貨幣蓄蔵」が近代経済社会
http://www.asyura2.com/0406/dispute19/msg/203.html
投稿者 あっしら 日時 2004 年 8 月 20 日 16:00:31:Mo7ApAlflbQ6s
 

(回答先: Re: 米国が優っている“経済力”が金の公的保有量しかない:話が金につながっていくわけ 投稿者 健奘 日時 2004 年 8 月 19 日 16:41:51)


健奘さん、どうもです。

>私も、同じことに、たどりついているのですが、これからの世紀、

>   ”お金から「蓄蔵手段性」をなくしてしまうこと”

>を、どのように実現するか、が、大きな課題なんでしょう。

>そして、これができるには、思想的に、かつ、経済学的にも裏付けられた、一つの体
>系として、実現されるのでしょうね?


『「産業資本主義」の終焉:「金融資産」という大いなる“幻想”:フロー(所得)とストック(資産)について』( http://www.asyura2.com/0403/dispute18/msg/833.html )で説明したように、近代産業主義経済社会では「貨幣蓄蔵」が実質的になくなったどころか蓄蔵された貨幣量を超えて使われ「マイナス貨幣蓄蔵」になっていると考えています。

前近代では確かに「貨幣蓄蔵」があったが、「近代」では、貨幣を蓄蔵しているという“幻想”があるのみで実際には貨幣は蓄蔵されていないという理解です。

前近代は、貴金属貨幣が貨幣であり紙幣は中国など一部地域を除いて使われていませんでした。
(為替証書は、貴金属貨幣の移動(輸送)を省略するのみならず貨幣的機能を果たしましたが、あくまでも金属貨幣の実存に依拠したものです。為替証書の代わりに金属貨幣を使ったとしても同じです)

当座使わない貴金属貨幣は、現物のまま蓄蔵されるか、盗難の危険を避けるために預金されていました。
金属貨幣を受け付けた銀行家(両替商)や金細工職人は、その一部を貸し出しに使ったりしていましたが、それも基本的には現物の貴金属貨幣を貸し出すかたちのものです。(預り証書が取引に使われていましたが、金属貨幣の移転を意味しているので現物を使ったのと同じで、便宜的手段です)
銀行家は、自己資本(金属貨幣)も統治者や商人さらには銀行家仲間に貸し出していました。(貨幣需要者は限られた層である上に、貸し出しに値する信用を持つ層(相手)も限られていました)
前近代では、使われない貨幣はまさに「蓄蔵」として現物のまま保存されていたわけです。


「近代」になって中央銀行制度が確立し、金属貨幣(素材である地金を含む)の2.5倍だとか4倍に相当する額面総額の紙幣が同一額面の金属貨幣と同じ価値を持つ貨幣として発行されるようになりました。
蓄蔵した貨幣を元にその数倍の貨幣(紙幣)を発行する「信用創造」が合法化されているのが近代経済社会の基礎です。
そのような“詐欺”が通用した支えは、貨幣を蓄蔵しようという意識が希薄化したことにあります。
貨幣蓄蔵を希薄化したのは、多くの人が生きるためにお金を使わざるをえない状況に置かれ、贅沢に生きてもなお余剰のお金を持つひとも蓄蔵するより使ったほうが保有貨幣量が増えるという経済社会の現実です。

(不況に陥れば兌換請求が増えたように、貨幣を使う機会が少なくなれば、払い戻しが不能になるかもしれない預金や究極的には紙切れでしかない紙幣ではなく、蓄蔵手段として金属貨幣を選択するのは自然です。「大恐恐」時代の米国では、現金/預金が16%から38%に急上昇しました)

使ったほうが保有貨幣量が増えると考えたのは、近代産業の発展という現実があり、借り入れをしてでも産業活動に投資すればより大きな利益を手にすることができたからです。
中央銀行が「信用創造」するだけではなく、銀行も「信用創造」で貸し出しを増大させて“資金需要”に応えます。(蓄蔵(預金)された貨幣は、剽a金/準備率の等比級数的連鎖で貸し出しの増加につながります)
銀行の「信用創造」は、同時に銀行の債務(預金)増加を意味しますから、貸し出しの増加で「受け取り利息−支払い利息」の利鞘を拡大するための手法が「信用創造」です。

このような「信用創造」は、あるひとの「貨幣蓄蔵」が、膨大な貸し出しになり、実物資産や消費に変わることを意味します。

たとえば、あるひとが1億円の「貨幣蓄蔵」をしたら、準備率が10%であれば、連鎖的な貸し出し→預金→貸し出し→・・・というかたちで10億円の貸し出しになります。

これでわかるように、「新規蓄蔵」の1億円は、前近代のように蓄蔵されたり、銀行家のリスクで貸し出しに使われるわけではなく、貸し出しを通じてその10倍もの支払い手段として使われているのです。

国民経済が順調に拡大しているときはこのような「マイナス貨幣蓄蔵」が問題視されることはありませんが、この間の日本のように、「マイナス貨幣蓄蔵」(=「信用創造」)がバブル形成に使われて崩壊したり、国民経済がデフレ・スパイラルに陥ると重大な経済問題を引き起こします。


「マイナス貨幣蓄蔵」=「信用創造」が行われているので、借り入れ債務者の破綻増加と大元の蓄蔵者の払い戻し請求増加が重なると、銀行が連鎖的に破綻する恐慌が起きます。
不況になれば、借り入れ債務者の担保物件の価値も下落し、貸し出し元本を回収できなくなります。「信用創造」は、貸し出し元本と回収額の差の累積を大きくします。
企業も売掛金・買掛金という取引形態で「信用創造」を行っているので、売掛債権の未回収も債務履行を困難にするため、不況期は連鎖的な債務不履行を引き起こします。

現時点で日本経済の債権(貨幣蓄蔵:預金)・債務(実物資産)を清算すると債務オーバー(「マイナス貨幣蓄蔵」になっているはずです。
(デフレは実物資産の価額を低下させます)


ご期待に沿えるかどうかはわかりませんが、「貨幣蓄蔵」の不要性や「マイナス貨幣蓄蔵」という実状を経済論理や価値観で説明していきたいと考えています。

これまで「近代産業資本主義」の終焉シリーズで説明した内容を経済学的手法で体系化する試みにも着手していますが、マクロ経済学の本を1冊書くようなものなので、一日二日では無理なようです。(数学にも強くないし、経済学的概念や説明体系とすり合わせながら体系化するというのがいちばん面倒な作業です)


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