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「価格変動と景気循環」そして「信用創造」不全について
http://www.asyura2.com/0406/dispute19/msg/295.html
投稿者 あっしら 日時 2004 年 9 月 04 日 15:22:18:Mo7ApAlflbQ6s
 

(回答先: 粕の突込み 投稿者 baka 日時 2004 年 9 月 04 日 11:37:55)


bakaさん、どうもです。
鋭い洞察で突っ込みをいただいて感謝しています(笑)

【bakaさん】
「>[直接消費しない生産手段の生産に従事する人たちが手に入れた所得を需要に回すことで財の価格を上昇させる。]

あっしらサンは、需要と供給のバランスで財の価格が決るという説を支持されているのでしょうか?」

「供給→需要」論理と同じように、労働価値説も理に適っていますから、需要−供給バランスの前に労働価値による基本価格があると考えています。

労働価値的価格からの乖離を誘発するのが需給バランスの変動です。

「現実価格−労働価値」が、プラスであれば粗利益を得ることができ、マイナスであれば損失を被るという論理です。


>増加した需要を賄いきれるだけの生産手段が存在すれば、その財の価格は低下する場
>合(量産効果)もあるのではないでしょうか? そして、それが廻り回って、全ての
>財の価格を最終的には低下させることにはならないでしょうか? つまり、一時的に
>は価格上昇する財もあるでしょうが、最終的な平衡状態があるとすれば、その状態で
>は、全ての財の価格が以前よりも低下することになる、と考えるのですが。」

その通りです。

説明されている内容が、景気循環として不況に陥る論理であり、“定常状態”での価格変動論理です。

「好況」は生産手段などの固定資本形成が増加することで起き、その成果で財の産出量が増加すると財の価格が下落することで「不況」に移行します。
価格の下落で債務履行ができなくなった企業が撤退したり外需が増加することで、再び緩やかに「好況」(物価水準上昇)に向かうというサイクルです。

純理論的な“定常状態”では、純投資が増加しないので物価変動は基本的にありませんが、生産手段の技術的な改良で生産効率(一人当たり労働者の同一時間当たりの産出量)は上昇するので、その分物価水準は下落します。

そして、この物価下落分がGDPの実質成長率になります。
GDPの成長が生産性の上昇であることが明確にわかるようになるのが“定常状態”です。

【bakaさん】
「>{意図的ではない”インフレは、固定資本形成の純増加によって起きるものだから、実質賃金が維持されている限り、生産性の上昇がもたらす財の価格下落のおかげで手に入れられる財の量は増加する。]

あれっ。ここでは、「生産性の上昇がもたらす財の価格下落」と仰っている!???」


物価上昇圧力と物価下落圧力のせめぎあいが「近代経済社会」の基本変動論理です。

名目物価上昇率は、「投資増加による物価上昇率−生産性上昇による物価下落率」という論理で決定されるものです。


【bakaさん】
「>[国民のほとんどは空虚な言葉で称揚されるはずのこのような「社会主義」の実現に歓呼するだろうが、それは、国家債務を履行するための奴隷になることを意味する。
所得の多くが政府の債務履行のために徴税され、日々の生活に必要なものは高値で買わされることになる。]

今のロシアは、こんな状況でしょうか?」

欧米諸国や日本もその一歩手前です(笑)


【bakaさん】
「>[世界最強の産業国家である日本は、「信用創造」機能を回復させれば自律的に復活する。
そこから自国破壊政策でしかない「構造改革」ではない構造改革や「社会主義」ではない新しい社会の模索も可能になる。]

再び、あれっ。あっしらサンは「信用創造」を詐欺と断じて、あってはならないものと主張されていたと、bakaは思っていました。」


「信用創造」は詐欺でありあってはならないものです(笑)

それを大前提としつつ、「信用創造」の果実を誰が手に入れるか管理すれば、過渡的には利用できると思っています。

“毒物”だと承知しながらうまく使うという考えです。


【bakaさん】
「>[バブル崩壊後の日本は、消費も緩やかに減少してきたが投資の減少でデフレに陥った。
その最大の要因は、投資がほとんど借り入れで行われていることでわかるように、銀行の「信用創造」が機能不全に陥ったことにある。]

この部分をもう少し御解説下さい(「信用創造」の機能不全について具体的に)。」


銀行は、可能な限りのお金をできるだけ安全で有利な相手に貸し出してより多くの利息収入を得ようとする存在です。
そのような銀行の“衝動”を法的に制限するのが、公的準備率であり、自己資本比率規制です。

公的準備率が10%であれば預金増加の10倍までの貸し出しができ、公的準備率が20%であれば5倍までの貸し出しができます。(準備率の逆数倍)

これにさらにタガをはめる規制が、自己資本比率規制です。
自己資本比率が8%であれば、自己資本の12倍までがリスク債権の量的範囲になります。(自己資本が1単位で増えれば、12単位の「信用創造」ができる)


公的準備率と自己資本比率規制それぞれの貸し出し規制の小さいほうが貸し出しの最高額、すなわち「信用創造」の限度額になると考えればいいのでしょう。

日本の銀行は、バブル期まで自己資本の拡充に励むというより預金と準備率に依存して貸し出しを増大させていましたので、89年のBIS新規制で路線変更を迫られました。

そして、路線変更を迫られた途端にバブル崩壊です。
ただでさえ、貸し出し資産の構成を変更したり自己資本の拡充をしなければならないのに、利息の受け取りができない貸し出し債権や元本の全額回収さえできない貸し出し資産の比率が高まりました。
(貸し出しの担保物件が下落しているので、担保権を実行しても、貸し出しの70%といった水準でしか回収ができない。それどころか担保権を実行すれば、さらに地価を下落させてしまうという身動きできない状況に陥った)


BIS規制への対応は、貸し出し債権は約定があるわけですからすぐに減らすわけにはいかないし大手貸出先には枠を設定しているので減らしにくい性格をもっているので、自己資本を増強するのが合理的な選択肢です。

仮に、ある銀行のB/Sが、

自己資本:5兆円 預金:100兆円 貸し出し債権:90兆円 不良債権:30兆円

※ 貸し出し債権90兆円のうち70兆円がリスク付き


準備率規制はクリアしているとすれば、貸し出し債権のなかのリスク債権は自己資本5兆円の12倍である60兆円まで縮小するか(残りは国債などリスクゼロの資産にする)、自己資本を5.83兆円にしなければなりません。

まず、不良債権は全額を回収できないものですから、銀行が稼いだお金でその差額を償却するしかありません。不良債権を抱えていなければ自己資本増強に使えるお金が償却原資になってしまうわけです。

さらに、不良債権は利息も得られません。利息収入の30%以上が途絶える状況になると、経費を賄うのがぎりぎりになり(日本の銀行の経費率は当時70%程度、今は60%強)、自分の存続が危ぶまれる状況になり資本増強どころではなくなります。
株式市場の低迷で保有株式も簿価を割り込むものが出始めます。


自己資本が増強できないのなら、BIS規制を達成するためにはリスクがある貸し出し債権(正常債権)を減少させるしかありません。
このため、新規貸し出しはほとんど行われず(企業に対する貸し出し枠の非拡大と考えたほうがわかりやすい)、逆に、リスク資産減少のために貸し剥がしが行われたわけです。

企業のほとんどは借り入れで投資(資本蓄積)を行っていますから、これでは、追加的な投資ができないわけです。(大手企業には貸し出し枠が維持されているので、設備の更新はできます)

★ 参照書き込み

『「産業資本主義」の終焉:日本の銀行業が置かれている修羅場:銀行の利潤(粗利益)とは何か?』
http://www.asyura2.com/0403/dispute18/msg/855.html


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