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ユーロとドル--今日の世界資本主義の安定化しえない構造:ミシェル・ユソン氏  [かけはし]
http://www.asyura2.com/0406/dispute19/msg/309.html
投稿者 あっしら 日時 2004 年 9 月 06 日 03:33:51:Mo7ApAlflbQ6s
 

(回答先: 【推奨書籍】リチャード・ダンカン「ドル暴落から世界不況が始まる」 投稿者 あっしら 日時 2004 年 9 月 05 日 04:35:42)


★ 内容的にはこの(下)に集約されているので、ユーロ圏問題中心の(上)と(中)については、末尾にURLを示して省略します。

 「ドル暴落から世界不況が始まる」のリチャード・ダンカン氏もそうですが、ドルを下落させても米国の経常収支は改善しない(それどころかより悪化する)ことに気づいていないのは不思議です。


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ミシェル・ユソン

グローバル資本主義の競争

 資本主義は、現在の機能モードに適した世界経済を構築することを必要とする。グローバリゼーションは、相対的に新しい言葉でこの要求を提起しているのであり、エルネスト・マンデルが約三十年前に提案した類型論を取り上げることが恐らく有益であろう。彼は三つの可能な構成を区別した。すなわち、ウルトラ帝国主義(超帝国主義)、スーパー帝国主義、および帝国主義間競争の追及である。
 最初の仮説、すなわちウルトラ帝国主義(超帝国主義)の仮説は、明確に拒否されるべきである。このようなシナリオは、すでにかってカウツキーによって想定され、マンデルの指摘しているように、資本の国際的相互浸透が進み、国籍の違う資本所有者間の経済的利害の決定的な違いが完全に消滅するようなった状態に対応している。
 明らかに、われわれはこのような状況からはるかに離れており、このことからわれわれは教訓を引き出す必要がある。「三極構造」(米国、欧州、日本)の三極間のバランスを取る共同管理の幻想が漂ったのは、「トヨタ方式」と「仕事の新しいモデル」がもてはやされ、日本産業の生産性の新しい方法に対するエクスタシーが存在したときだった。米国が、自らの支配の基盤がゆっくり侵食されていくのを、手をこまねいて見守るだろうと考えられていた。
 また、マイケル・ハートとアントニオ・ネグリは『帝国』のテーゼを提起した。これは現在、巨大な事実による反論を受けている。このテーゼの核心を思い起こすだけで十分である。ネグリは次のように要約している。「現在の帝国段階においては、もはや帝国主義は存在しないか、あるいは、それが生き延びているとしても、それは帝国規模における価値と権力の循環に向かう過渡的現象である。同様な意味で、もはや国民国家は存在しない。主権の三つの実質的特性、すなわち軍事、政治、文化は、帝国の中心権力によって吸収されるか置きかえられる。元植民地諸国の帝国主義的国民国家への従属は、大陸と国民の帝国主義的階層とともに、消滅または衰退する。すべては帝国の新たな一元的な地平の機能として再編成される」。
 ハートは帝国のテーゼを維持することを追求している。最近の論文の中で、彼は米国および他の諸国の「エリート」の共通の関心事、特に経済的局面についての関心事について次のように主張している。
 「地球上のビジネス・リーダーは、ビジネスにとって帝国主義は悪であることを認識している。なぜなら、帝国主義はグローバルなフローを阻害する障壁を設けるからである。資本主義的グローバリゼーションの潜在的利益は、わずか数年前には、いたるところでビジネス・エリートの食欲を刺激していたが、生産と交換の開かれたシステムに依存する。これは米国の資本の指揮官にも等しくあてはまる。石油に酔っ払っている米国工業資本でさえ、彼らにとって真の利益は資本主義的グローバリゼーションの潜在的利益の中に存在する」。ハートはさらに踏み込んで、アメリカ帝国主義に対するオルタナティブとして「帝国」を提出し、「自らの利益に沿って行動することができない」エリートたちを非難している。
 世界の強き者に対してお説教した後、ハートは続いて反戦運動に対して忠告した。彼は言った。確かに、ブッシュ政権の単独行動主義と反ヨーロッパ主義が反アメリカ主義を助長している。だが、それはあまりにも二極主義的な、あるいはもっと悪いナショナリスト的な世界観に導くワナである。ハートは、グローバルな正義運動の洞察力に対するこのような偏狭な見方に反対し、グローバルな正義運動は「国民または国民のブロック間の対立」を基礎とする政治に近づかないことに成功している、と言う。このような分離には根拠がなく、ハートの態度は、今日極めて明白な現実である帝国主義間矛盾の復活を否定する驚くべき理論的主観主義を示している。
 スーパー帝国主義のシナリオとは何か。マンデルの定義によれば、この構造においては、単一の強大な帝国主義国がヘゲモニーをふるい、他の帝国主義国家はこの強大国に対して真の自律性をすべて失い、下級の半植民地的権力の状態に陥る。EUは明らかに「下級の半植民地的権力」として特徴づけることはできないとしても、この図式は帝国主義列強間で再確認されている階層構造によくあてはまるように思われる。そこでは米国が経済、技術、外交、軍事のすべての部門で支配的役割を与えられている。
 しかし、この図式は現在の世界経済の二つの際立った特徴を説明していない。第一は、米国の支配の脆弱性である。この支配的帝国主義は資本の輸出者ではなく、その優位性は反対に、資本の流入の恒久的なフローを吸い込む能力を基礎としており、それによって自己の蓄積をまかない支配の技術的基礎を再生産する。したがって、それは寄生的というより略奪的な帝国主義であり、その大きな弱点は、家臣にとって安定した体制をもたらすことができないことである。
 今日達成されている資本の大陸を超えた統合の度合いから、第二の新しいことが派生する。米国・欧州による共同管理、すなわちG2を形成して、最近ドイツ財務大臣カイオ・コホヴェーザーが提唱した方式を取り上げることが必要とされる。
 統合された経済領域を規制するには、ブルジョアジーの十分了解された共同利益の観点から見れば、政治的協調組織が客観的に必要になる。しかし、ジョーレスにならえば、嵐の雲が雨を運んでくるように、資本主義は競争をもたらす。グローバル化した帝国主義間の協調は蜃気楼である。協調を強制するのに十分な優越性を備えたスーパー帝国主義が存在しないのであれば、世界支配の第三の構造に目を向けるしかない。すなわち、帝国主義間競争である。
 マンデルが与えた定義は、現在の状況によくあてはまる。資本の国際的相互浸透が十分進めば、多数の独立した大帝国主義列強は、少数の帝国主義超大国に取って代わられるが、グローバルな資本の利益共同体の設立は、資本の不均等発展によって強く阻害される。欧州と米国の解決されない矛盾は続き、世界経済の不均衡の上に永続的にのしかかる。

世界経済の「片肺飛行」

 この表現はクリントン政権の財務長官だったローレンス・サマーが作り出したもので、「エコノミスト」の最近の重要な論文のタイトルである。一つの数字が世界経済の非対称的な機能を物語っている。一九九五年以降、世界の経済成長の六〇%近くが米国によるものであるが、米国は世界経済の「わずか」三〇%しか代表していない。「エコノミスト」の一般的テーゼは、「世界はアメリカの支出にいつまでも依存し続けることはできない」というものである。
 この問題を取り上げているほとんどすべてのエコノミストは、「ニュー・エコノミー」の開始以来米国が取っている成長モードは、持続可能ではないと考えている。ワイン・ゴッドレーは以前の研究の数字を新しくして、次のように指摘している。もし何も変わらなければ、すでにGDPの五%に達している貿易赤字は、GDPの六・四%になるまで増大を続け、これに米国が支払わなければならない対外債務の多額の利子が加わるだろう。彼は、利子の純フローを二〜三千億ドルと見積もっているが、これは経常収支赤字の八・五%に相当する。もし個人貯蓄が新たに下落すれば、収支均衡のためには財政赤字の大幅な増加が必要になる。
 貿易赤字を単純に安定化させるには、いずれにせよ外国資本を引きつける米国の魅力を絶えず再生産することが必要である。そうしなければ、世界情勢の不安定が外国資本の意欲を失わせる恐れがある。外国資本は労働生産性と高いレベルの利潤率に引きつけられているが、これらの望ましい展望は今日脅かされている。エコノミストのキャサリン・マンは、次のように主張している。「いつの日にかは、……世界の投資家にとって望ましい対米国資産投資比率に達し、それを超えてしまう時が来るだろう」。したがって、ドルの下落に依拠して経常収支赤字を減らすことが必要になる。
 しかし、大きな景気後退なしにこれが可能かどうかを問うてみる必要がある。実際、ドル切り下げの道は危険で一杯である。赤字を目に見えて減らすには、約四〇%の切り下げが必要であると専門家は主張するが、ドルは未曾有の低さまで下がることになる。考えられるとしても、このようなシナリオはいくつかの障害にぶつかる。
 第一に、このような切り下げは、ドル建てで保有している資産のユーロ価値を下落させることになる。外国の所有者はそれらの資産を損失の限界まで売り払おうとするだろう。このような売却は新たな下落の動き解き放すことになり、成長に影響を与えるような強烈な利上げによってしか対処できなくなる。
 ドルの攻撃的な切り下げは貿易戦争の火ぶたを切ることになるだろう。米国の貿易赤字を部分的に吸収することができるが、それは主要パートナー、すなわちEUと日本に不利益を与えることによってである。この場合、米国は不況を輸出することになるが、その程度が十分大きくて世界経済の力学を破壊するほどであれば、あるいは他の帝国主義の報復的保護主義的処置を解き放すようなことになれば、ブーメランのように戻ってくるだけである。これが来るべき緊張の経済的基礎である。
(*)ミシェル・ユソンはエコノミストで、フランスATTACの科学評議会のメンバーである。(「インターナショナルビューポイント」04年2月号)

http://www.jrcl.net/web/frame04531g.html

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