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破産の危機に直面するユコス(IDCJ)
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投稿者 エンセン 日時 2004 年 8 月 08 日 06:30:39:ieVyGVASbNhvI
 

(回答先: ユコス社追及 露経済に影 プーチン強権嫌い資本流出(産経新聞) 投稿者 エンセン 日時 2004 年 8 月 08 日 06:28:13)

 
破産の危機に直面するユコス−原油価格は43ドル台に上昇−
(2004年8月3日掲載)


1. ユコス問題の背景
 1990年代初めの冷戦終焉後、国際石油産業において大きな変化が生まれたが、その最大のものは世界最大の原油生産量を誇った旧ソ連の石油産業の崩壊・再編であったといえよう。冷戦時、旧ソ連は、石油埋蔵量や原油生産量に関し石油大国であったが、石油供給は旧コメコン諸国への供給を中心とする体制を講じ、国際市場への参入は限定的であった。冷戦終焉後、こうした態勢は根本的に変わったのである。

 その点からは、現在のロシアの石油会社はどれもソ連邦の崩壊(1991年)に生まれたものである。まず、冷戦時代にソ連の石油産業の各分野を管理していた地質省、国家鉱量委員会、石油化学・石油精製省、国家供給委員会は、1991年12月、ロシア連邦燃料・エネルギー省に統合、次いで、92年11月、石油の生産、精製、販売各企業を統括する垂直統合会社が、当初はロシア政府が100%保有する国営会社として設立された。

 1993〜95年においてはロスネフチの持株を引き継いで設立された垂直統合企業(ルクオイル、ユーコス、スグルトネフテガス、シダンコ、スラブネフテなどの14社)の下に、各部門(生産、精製、販売)の企業が編入された。1995年以後、再編の第2段階として政府保有株式の売却という形での垂直統合企業の民営化が始まり、現在に至っている。

 こうした過程の中で、1995年以後の垂直統合企業の原油生産量の推移をみてみると、図のとおりであり、最大の伸びを示したのがユコスである。ユコスは、金融系新興財閥(メナテップ銀行グループ)が経営する民間企業であり、1990年代は中小企業の買収・合併で規模を拡大し、1990年代以後は欧米流の経営手法を導入して経営を行い、成功を収めてきた。1990年代後半のロシアの増産の原動力はユコスであった。

 しかしながら、2003年7月ユコスの筆頭株主であるメナテップ銀行のレベデフ会長が公金横領の容疑で逮捕、さらに10月ホドルコフスキー社長が逮捕されるという事件が起きた。ここ数年、ロシア石油産業の基本的な潮流は、「民間垂直統合石油企業優位」から「連邦政府の統制・規制強化」という流れに転じており、これら一連の逮捕はこうした流れの中で位置付けられる。連邦政府は、今後ロシアの石油企業に課税の強化・ライセンス規則、運用の厳格化等の手段を通じて、統制・管理を強化していくとみられる。

 

2.ユコス問題の現状
 ユコスは、脱税に対して、2000年、2001年の追徴課税として約70億ドルを課されたが、既に支払期限が過ぎたにも拘わらず、2000年分の34億ドルを納入できていない。このため、ロシア法務省は、7月20日ユコスの主要子会社であるユガンスクネフチガスの株式を売却する方針を発表した。

 同子会社はユコスの原油生産量の約60%を占める。同社の資産評価(時価総額)は304億ドルと算定されるが、売却価格は右を大幅に下回る可能性があることをユコス幹部は懸念している。売却先としては政府系一貫操業石油会社であるスルグトネフチ等の名前が挙がっている。

 こうした動向の中で、23日、5月にABN AMRO社との間で5億ドルの融資枠について合意しているロスネフチ社は、これにより資金を調達し、ユコス社資産の一部を買収する可能性があると報じられた。また25日、ユコス社Misamore社長は、ユガンスクネフチガスの買収価格は適正なものとはいえないとして、売却先に対して法的措置を執る可能性を示唆した。こうして、26日、ロシア株式市場では、経営破綻に対する懸念から、ユコス社株が21.5%急落、4.20ドルとなった。これは、政府当局がユガンスクネフチガス社売却の意向を明らかにした21日時点から比較すると50%近い下落である。

 28日、ユコスは、凍結された銀行口座の利用許可を当局側に求めていることを明らかにした。一方、同日、ロシア政府法務当局は、ユガンスクネフチガスを含むユコスの生産子会社に対して所有資産の売却停止を命令した。

 一方、29日、ユコス社スポークスマンは、同社生産子会社に対して発出された石油を含む資産の売却停止命令をロシア法務省が公式に撤回したことを発表した。

こうしたロシア法務当局の資産売却停止命令を背景とする、ユコス破産の危機により、NYMEXでのWTI先物相場はさらに上昇、29日史上初の43ドル台(43.05ドル/バレル)を突破し、終値でも史上最高値となる42.90ドル/バレルを記録した。

 こうした一連のユコス社問題に対する関係者の反応としては、ロシア石油産業との関係が深い石油会社の一つであるBPのジョン・ブラウンCEOは、29日「ユコス問題はTNK-BPに何の影響もない」と発言した。TNK-BPは、BPとロシアのチュメニ石油等の合弁で昨年設立されたものであるが、同CEOによれば、「BPの存在はロシアでは歓迎されている」由である。28日、ロシア法務当局がユコス社の生産子会社に対して石油を含む資産売却の停止命令を出したことに関して、米国エイブラハムDOE長官は展開を注視している旨発言、国際エネルギー機関(IEA)は、国内及び世界に対してロシア原油が引き続き確実に供給されるよう、ロシア政府及びユコス社が必要な措置を行うことを確信している旨発表した。

 

3.ユコス問題の国際石油情勢に対する影響

 図からも明らかなとおり、ロシアの石油会社の操業規模に関してはユコスとルクオイルは1社で160〜170万B/Dという産油規模に達している。OPEC加盟国との対比でいえば1社でイラク(170万B/D)やリビア(150万B/D)1国並みの規模である。ユコスの産油量は2003年にルクオイルを凌駕し、以後第一位の産油規模を誇っている。スグルトネフテガス、チュメニオイルが原油生産、輸出では3位、4位の会社であるが、それでも80万B/Dの規模であり、オマーン(90万B/D)やカタール(74万B/D)、あるいはアルジェリア(85万B/D)1カ国の規模である。

 
 8月1日、NYMEX(WTI)の終値は、先週末よりも2セント高の43.82ドル/バレルで引けた。

 中国・米国を中心とする石油需要増、昨年よりは増えたとはいえ依然低水準にある石油在庫、中東リスクプレミアム、米国のガソリン需給など原油価格押し上げ要因にロシア(ユコス)ファクターが加わった。磐石化したプ−チン政権基盤と連邦政府の統制・規制強化という流れに転じた石油政策の潮流を押さえれば、ロシア連邦政府は、ロシア石油企業への課税強化・ライセンス規則・同運用の厳格化等の手段を通じて、統制・管理を強化してくることは明らかであり、ユコス問題の落とし所がどのようなものになるかは予断を許さないところに来た。

 現行のイラクやリビヤ1国と同規模の産油水準を有するユコスが破産の危機に瀕していることの国際石油供給に及ぼす影響には大きいものがある。

(エネルギー・環境室 主任研究員 須藤 繁)

http://www.idcj.or.jp/1DS/11ee_josei040803_3.htm

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