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とりあえず<前編>? ソシュールについて >ジャックどんどんさん
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投稿者 バルタン星人 日時 2004 年 7 月 27 日 21:48:00:akCNZ5gcyRMTo
 

(回答先: コージブスキー「一般意味論」は、ご存知でしょうか? 投稿者 ジャック・どんどん 日時 2004 年 7 月 26 日 23:00:15)

ジャックどんどんさん バルタンです。

また長口舌になりそうなので前後二篇に分けます。(ってもういいよ とか言われそうですが)

>ソシュールの言語理論にお詳しいバルタンさんなので、「一般意味論」についてご存知であれば、ご教示ください。

それは大変な誤解でしょう。記号論理学を学問としてきっちり修めた方から見れば、まるで
噴飯もののことしか言っていません。
開き直って言えば、言語学や「ソシュール学」には興味がないというか、残り少ない人生での
プライオリィは低いわけです。

以前笠井潔が朝日新聞の書評で「木田元さんの『現象学』や『ハイデガー』が無ければハイデガー
読解は不可能だった」と書いていて「だよねー、いえてる、こういう人は好きだなぁ」と一人で
盛り上がったのですが、ソシュールについても言えますね。丸山圭三郎の『ソシュールの思想』が
無ければソシュールは読まなかった、あるいは読めなかったと思います。ですから分岐スレでの
南青山さんとのやりとりで「既に情報としての構造主義から見ている」と書いたのですが、
ソシュール、ソシュールと言っても本当にソシュールなのか、丸山やアルチュセールなのかよく
判らないわけです、自分でも。ハイデガーの『講義録』はある意味で平明で明快ですがソシュール
の『講義』は非常に難渋です。つまり悪く言うと『経済学哲学草稿』や『ドイツイデオロギー』の
様な「寄せ集め」なわけです。これも「丸山本」からの後知恵ですが弟子たちが本人が言っていない
事まで書き加えて「創造的に」編集してしまった、つまり『講義』の成立自体が解釈を巡る言説の
闘いであったということです。(現在『一般言語学講義』と呼ばれるものは1972年のイタリア語版
が元になっているようです。)

編集における恣意性の問題ですね。見るに見かねた広松渉が『ドイツイデオロギー』を再構成して
対訳を起こし直したような。
特に日本では1928年の小林英夫氏の有名な「誤訳」問題があって時枝誠記が「誤訳」されたソシュール
を「誤読」してソシュールを批判したつもりでソシュールと同じことを言っていたという笑うに笑えない
話があるわけです。(ちなみに吉本隆明も誤読した時枝をそのまま通してソシュールを見ています。)
分岐レスで「アメリカではソシュールは流行らなかった」というのはドクサだろう、と言ったわけです
が、アメリカで「構造主義」が流行らなかったのは事実でしょう。そのへんは凄く疎いので全くの
推測ですが、たぶん全然別の文脈で理解されたんじゃないか。ヨーロッパで構造主義が出てくるのは
レヴィ=ストロース(本人は構造主義と言われると怒ったそうですが)やヤーコブソン、メルロ=
ポンティらが「誤読」して勝手に作ったんじゃないかということです。もちろん180度全く違ったもの
が出てきたといっているわけじゃないですが、『講義』自体には「意味論」らしき「意味論」は無い
にも関わらず常に「意味論」との兼ね合いで語られる事実があるわけだし。
丸山さん自身もメルロ=ポンティマンセーの人なんで『ソシュールの思想』なのか『丸山の思想』
なのか良くわからない。(笑)
少し古めですけど柄谷行人の『丸山本』の批評を引用します。
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『言語という謎 丸山圭三郎「ソシュールの思想」』 柄谷行人 1982 中央公論3月号
丸山圭三郎は本書において「ソシュール現象」の必然性を示すとともにその神話性を明るみに出し、「原資料」
にあたることによって、矛盾撞着しているかにみえる「ソシュールの思想」に一貫した整合性を与え、同時に
それによって世界的に混迷している言語論・記号論に明確な方向を与えている。今日ひとびとはこぞって
ソシュールに言及する。丸山氏がいうこの「ソシュール現象」にはいくつか奇妙な点がある。それは、たんに、
それほど大量なソシュールへの言及・引用にも関わらず「原資料」が読まれていないことや、『一般言語学講義』
による誤読とその批判が二重三重に増幅されているということではない。
むしろ、ソシュールという名に帰せられる知的革命が、決して著作を書こうとしなかった人の"著作"に発して
いるという現象が奇怪なのである。私の考えでは、丸山氏のいう「ソシュール現象」はソシュールが生み出した
ものではなくて、たぶんソシュールがいなくても実現されたであろうような事態が形成した神話である。
つまり、私は情報理論やサイバネティックスのことをいっている。たとえば情報理論は、物質と観念という
二分法に対して、ある形式(フォルム 差異=情報)というレベルを見出しているし、また関係システムという
考えをとっている。記号論理学やコンピューター科学の発展はソシュールとまったく無関係に生じており、
ソシュールに言及するにもかかわらず、ヤコブソンの音韻論やレヴィ=ストロースの構造人類学はむしろ前者
に根ざしているといってよいし、チョムスキーの言語学は翻訳機械の研究に発している。例えばヤコブソンが
遺伝子の文字(エクリチュール)が二項対立の組み合わせによっているという発見を、自らの理論を補強する
ものとして歓迎しているように、彼らはみな現代の自然科学の成果に依拠している。−−中略−−
しかし、「意味」を「情報」に、言い換えれば差異・対立に還元する情報理論がもたらした様々な認識を
ソシュールの何おいて語るべきではない。重要なのはソシュールがなにを書いたかではなく、何故本を
書かなかったかということであり、むしろこの不可避的な"沈黙"に、楽天的な構造主義者への批判をみる
べきであろう。かれの沈黙は資質や認識的な「限界」(ヤコブソン)によるものか。それとも、そこに
何か途方もない困難があるのか。だとすれば、その困難はいかなるものなのか。丸山氏が追求するのはその
ような問いのはずである。肝心なのは「ソシュールの思想」であって、言語学あるいは「ソシュール学」なる
ものではない。−−後略−−
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すこし話がずれますけど以前雑談板で「日本語とどこかの言葉がこんなに似ている(単語が共通
している)というスレがありましたが、勝手にお名前を出して本当に心苦しいですが竹中半兵衛
さんが「共時、通時」という文脈で批判されていたのを拝見して、本当に感服したわけです。
「日本語と**個単語が似ている。偶然ではありえない」とか、ありえますよ「世界交通」だから。
そういうのは「通時的」な話なんですよね。
私の同居人が「ヨン様」のファンで「愛の群像」という全15巻!のビデオを借りて見まくっている
んですが、私も日本語吹き替えでなければ気にならないので、本を読みながら「ユンソナの若い時
はホントに可愛いな、オーラが出ている」とか見るとはなしに見ていますが、急に同居人が素っ頓狂
な声を出して「ねぇ、おでんは韓国でもおでんって言うみたいよ」
というので「あったりまえじゃん。日本から持っていったんだろう、日帝37年の恨(ハン)を忘れ
ちゃいけない」とか漫才やってますけど、辛淑玉の『愛と憎しみの韓国語』(平凡新書)を見ると
日本語がそのまま「外来語」として定着したものは沢山あるわけです。(逆に「けつを割る」は
ケッチョガリ=逃亡とかもありますが)
つまり「万葉集のなんとか」みたいにコンピューターで統計処理して何%にているから有意味だとか
言ってるのはポパーが批判した「占星術」みたいなものですね。
「共時態」というのは差異の体系=関係性ですから個々の単語が似ているとかいう話じゃない。
ある単語とある単語の間にある関係性=変換規則がある、その変換規則が二つ「ラング」の間で
似ているかどうかということです。単語自体が音声的に同じかという問題じゃないわけです。
「実証的に演繹された理論より、より説明価値の高い数学的変換規則」ですね。そういう無邪気な
理論まがいが「日鮮同祖論」みたいなトンデもないイデオロギー装置になる。私はそういう文脈
でソシュールを考えているわけです。まぁこれも柄谷が批判したレヴィ=ストロース的ソシュール
なわけですが。

本題?の「一般意味論」の方はあっさり終わりますが(苦笑)一応後日ということで。

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