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新聞社はダブルスタンダードがお好き?【佐々木俊尚の「ITジャーナル」blog】
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投稿者 クエスチョン 日時 2004 年 10 月 09 日 08:05:03:WmYnAkBebEg4M
 

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新聞社はダブルスタンダードがお好き?【佐々木俊尚の「ITジャーナル」blog】
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 読売新聞東京本社というのは、取材に対して非常に変わった対応をする会社である。

 以前、ある月刊誌に記事を書くため、同社広報室に取材を申し込んだことがある。取材の内容を聞かれ、「企画書を出してほしい」と言われた。ここまではごく普通の対応で、雑誌の取材といえばたいていの企業広報は企画書の提出を求めてくる。私は取材の趣旨と内容、雑誌の名前とどのようなページにどのような記事を書く予定なのかを記し、自分の住所と電話番号、ファクス番号、メールアドレスなどを添えてファクスで広報室に送った。

 なんだか奇妙な対応になってきたのは、その後からだ。企画書を送ったのにもかかわらず返答がないため、広報室に電話をかけてみると、担当者は「面会での取材には応じられません」という。

 「どうしてですか?」
 「取材には、文書で回答することになっているのです」
 「お会いしてお話をぜひ聞きたいのですが」
 「申し訳ないのですが、ちょっと無理なんですよ」
 「じゃあ文書での回答をお待ちするしかないとうことでしょうか」
 「そうですね。回答が用意できたらお送りしますので」

 担当者は決してヘンな人ではなかった。電話での対応自体はとてもきちんとしていた。しかしそうして一週間以上も待っていたのに、返答がない。どうしたんだろうとやきもきしていたところに、当の月刊誌編集部の担当者から電話がかかってきたのである。

 「読売新聞からファクスで回答が来てるんすけど、そちらに転送しましょか?」

 私は読売広報には、月刊誌編集部の連絡先もファクス番号も伝えていない。伝えてあるのは、私個人の仕事場の電話番号とファクス番号だ。読売広報はそれを承知のうえで、わざわざ月刊誌編集部の電話番号を調べ、そしてわざわざ電話をかけてファクス番号を聞き出し、「回答書」を送りつけてきたらしい。私の仕事場のファクス番号に送れば済む話なのに、なぜわざわざそんなことをするのか。不審に思っていたが、後に読売社内のある関係者に聞いて、ようやく理解できた。

 「うちの会社はね、フリーライターみたいな権威のない一個人には正式回答は行わない、っていうスタンスなんだよ。いや佐々木さんのことをバカにしてるっていうわけじゃないんだけどね、そういう基本方針なの」

 思わず私は、「ずいぶん変わった基本方針ですね」と嫌みを言ってしまったのであった。そもそも「夜討ち朝駆け」といわれる取材手法を駆使し、寝ている取材相手を叩き起こしてでもネタを取る新聞記者の会社が、「文書で回答しない」「個人の取材には対応しない」というのは、何ともダブルスタンダードに過ぎるのではないか。

 話を少し戻そう。

 先に書いた読売新聞への取材というのは、「見出し引用裁判」についてのコメントを求めるものだった。この裁判は、読売新聞が2002年12月、神戸のデジタルアライアンス社を相手取って起こした。同社はYahoo!がポータル上で提供しているニュースの見出しとリンクを、バナーの上に電光掲示板状に流すというサービスを提供しており、読売側は「見出しにも著作権があり、勝手に利用するのは著作権侵害である」と見出しの使用差し止めを求めたのである。

 実は読売が小規模なベンチャー企業を相手に裁判を起こした背景には、Googleニュースへの恐怖があったらしい。Googleニュースというのはご存じのように、さまざまなニュースサイトの見出しとリンクを自動収集し、カテゴリ別に並べてひとつの大きなニュースサイトのように見せてしまうGoogle の新サービスである。当時は英語圏だけでこのGoogleニュースは提供されていた。「もしこんなものが流行してしまうと、新聞社のニュースサイトの価値がどんどん下がってしまう」――読売はどうもそう考えたらしく、何とかGoogleニュースの上陸を阻止しなければならないと考え、その牽制球として「見出しには著作権がある」という裁判を起こしたのだ。

 スケープゴートにされたデジタルアライアンス社もたまったものではないだろうが、しかしこの裁判は今年3月、読売の敗訴で終わった。東京地裁は「見出しは客観的事実を記述したか、ごく短い修飾語を付けたもので、創作的表現とは言えない」「ヨミウリオンラインの見出しは全体としてありふれた表現であるから、創作性を認めることはできない」と請求を棄却したのである。

 社内の関係者によれば、この判決に対して、読売社内では「創作的表現ではないとは何ごとだ!」「『ありふれた表現』とは失礼な」と怒りの声が渦巻いたという。そしてその余勢を駆ったのかどうかはしらないが、9月1日からGoogleニュース日本語版がとうとうスタートしたのに対しても、「読売新聞は早速 Google日本法人に文句を言ってきて、Google側に見出しとリンクの使用停止を求めたらしい」(検索エンジン業界関係者)という。

 この読売の対応に、全国紙では毎日新聞と産経新聞も追随した。だからGoogleニュース日本語版には、全国紙は朝日新聞と日経新聞しかリンクされていない。英語版のGoogleニュースが主だったニュースサイトのほとんどをリンクしているのと比べれば、かなり物足りない内容になってしまったのである。

 さて、これらの新聞社の対応には、ふたつの問題があると思う。まず第1に、こうした新聞社は、著作権というもののあるべき姿をかなりねじ曲げて理解しているように思えることだ。

 もちろん、「見出しには著作権がない」と断じた裁判所に対する読売の怒りはわかる。新聞社には記事に見出しをつけ、レイアウトを決める「整理部」と呼ばれる部署があり、プロフェッショナルな整理記者は日々、〆切間際に一刻一秒を争いながらも、スマートでわかりやすく、そしてキャッチーな見出しをつけることにこだわっている。その仕事に対して「ありふれた表現」というのは失礼だと思うし、私自身も見出しには著作権があるように感じる。

 でも著作権があるからということと、それを他者に絶対に無料で使わせないように守るというのは、まったく別の話ではないか。言い方を変えれば、著作権があるからといって、必ずしも無断使用を禁じなければならないわけではないだろう。著作権にはフェアユース(公正使用)という概念があって、著作権は守るだけでなく、みんなの共有財産として有効活用していかなければならないという面もある。著作権をガチガチに守るだけというのは、明らかに間違いだ。

 ビートルズだって、50年代のロックンロールの曲を勝手にコピーしまくったから、あれだけいい曲を書けるようになった。プログラムだって、他人の素晴らしいコードを盗んで学んでこそ、次世代の優秀なプログラマーが育ってくるのである。そして日本のいまの著作権の枠組みには、こうしたフェアユースの考え方が徹底的に欠如していると言われている。

 「著作権がある」となったとたん、なりふり構わず「無断利用は許さない」「勝手に使うな」と声高に叫ぶ。そんなスタンスは、絶対に間違っている。著作権があっても、無断利用が許される――そういう考え方がどうして欠如してしまっているのだろう?

 第2の問題は、新聞社は他人のウエブサイトの画面や見出し、リンク、URLについては何のことわりもなく紙面でさんざん引用しているということだ。新聞社のサイトには、「このホームページの記事、写真、図表などを無断で転載することは著作権法違反になります」と警告文が書いてある。でも新聞紙面には、企業や個人のサイトの画面がひんぱんに無断で転載されている。私の知る限り、ウエブ管理者に許可を得るようなことはいっさい行っていない。

 結局のところ、ダブルスタンダードの問題ではないかという気がする。新聞社は、ダブルスタンダードが大好きなのだ。冒頭に紹介した読売新聞の取材対応を見ても、彼らがいかにダブルスタンダードを愛しているかということがよくわかる。そういえば私が新聞社に勤めていたころも、月に200時間以上の残業時間を強いられながら、眠い目をこすりなが日々の紙面を開くと、「労働時間短縮を」「ゆとりのある生活」なんていう見出しが躍っていたのだった。
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