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市民の力を結集する政治活動サイト『ムーブオン』(WIRED NEWS)
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投稿者 スタン反戦 日時 2004 年 8 月 03 日 16:25:35:jgaFEZzEmIsYo
 

http://hotwired.goo.ne.jp/news/news/culture/story/20040728206.html

市民の力を結集する政治活動サイト『ムーブオン』(上)

Kim Zetter

2004年7月26日 9:00am PT

 すでに政治の世界では伝説化されているエピソードを紹介しよう。1998年、クリントン元大統領の不倫疑惑の中、『ギャップ』のドレスに付着したタンパク質のシミについて、米国議会が国民の税金を使って延々と話し合いを続けていることに腹を立てたジョーン・ブレイズ氏とウェス・ボイド氏(写真)は、早く大統領への非難を終えて議事を先に進める(move on)よう、議会にメッセージを送りたいと考えた。

 両氏は、ほかにも同じように感じている人がいるかもしれないと考え、ウェブサイト『ムーブオン』(MoveOn)を立ち上げて、100人ほどの友人に電子メールを送り、議会に提出するオンライン請願書に署名を求めた。すると1週間で10万人の署名が集まった。最終的な署名数は50万人に達した。

 このようにして、全米規模の運動が生まれた。

 このサイトの成功に刺激されてオンライン選挙運動を展開したハワード・ディーン元大統領候補のキャンペーン責任者を務めたジョー・トリッピ氏は、次のように述べている。「これは2人にとって大事件だった。しかし2人はそれ以来、数々の大事件を体験することになった」

 ムーブオンは、6年前の請願署名集め以来、強力な草の根団体に成長し、米国内の政治活動に活気を与えるとともに、首都周辺部だけでなく全国の民衆の声に耳を傾けるよう議員に働きかける役割を果たしてきた。

 ムーブオンには現在でも、ウェブサイトと、各地に散らばったスタッフ十数人のほかにはオフィスも正式の組織もない。しかし、メンバーは200万人を超え、さまざまな政治的活動のために数千万ドルの寄付を集めた実績を誇っている。

 ムーブオンは、ディーン候補が一般大衆重視のキャンペーンを展開するきっかけとなっただけでなく、メンバーたちと価値観をともにし、議会での法案通過に寄与する能力を備えた議員の当選に手を貸してきた。より多数の候補者を支援するため、今期は5000万ドルの寄付を集める目標を掲げている。そしてこれは、活動の第一歩でしかない。

 ムーブオンは先ごろ、「公正で偏りのない」(fair and balanced)という『フォックス・ニュース』の宣伝文句は虚偽だとして、米連邦取引委員会(FTC)に対応を求める請願書を提出した(日本語版記事)。ムーブオンはまた、ドナルド・ラムズフェルド国防長官を更迭しようというTVコマーシャルのスポンサーにもなった。現在は、電子投票をテーマに取り上げ、デジタル投票装置の利用にあたっては、投票者が後から検証可能な文書記録を残すことを義務づけるよう、政府に要請している。

 しかしブレイズ氏とボイド氏は、政治に関与したり、フォックス・ニュースのビル・オライリー氏やジョージ・ブッシュ大統領に挑むつもりで、ムーブオンを設立したわけではない。

 メディエーターで弁護士のブレイズ氏と、コンピューター・プログラマーのボイド氏は、20年以上前にサッカーを通じて知り合い、結婚した。2人はその後、米バークレー・システムズ社の創立者としてスクリーンセーバーの『アフターダーク』の開発に関わったことで有名になった。アフターダークのスクリーンセーバーのなかの1つ、マグリットの絵のような翼のついたトースターは、1990年代初め、世界中のコンピューター画面を飛び回っていた。

 2人は1997年にバークレー・システムズ社を1380万ドルで売却し、1年ほど教育ソフトウェアの設計と芸術プロジェクトに取り組んでいたが、ちょうどそのとき、クリントン大統領(当時)と実習生とのスキャンダルで議会が混乱に陥った。これが、2人にとっての第二幕の始まりだった。

 ブレイズ氏は最初の請願について次のように振り返っている。「こんなおおごとにするつもりはなかったし、そうなるとも思っていなかった。1週間で10万人の署名が集まったときには、本当に驚いた。(そのころは)インターネットが今ほど普及していなかったのだから」

 あの請願活動は、議会の審議を先に進めようという世論を形成する力になったと、ブレイズ氏は語る。

 「議会が半年も1つのスキャンダルでもめたせいで、国内の緊急案件がなおざりになっていると認めた人のなかには、共和党員も民主党員も、緑の党や自由党の党員もいた」

 この活動は、請願を出して終わりになるはずだった。しかし、議会がクリントン大統領の弾劾を決めたとき、ブレーズ氏とボイド氏は、弾劾に反対する候補者を立てるための資金集めを目的とした『私たちは忘れない』(We Will Remember)キャンペーンを開始した。そして次の日には、500万ドルを超える寄付の確約を得た。

 以来、わずかな日数で非常に大きな金額を集めてしまうこの能力は、ムーブオンのトレードマークになっている。

 当初、ムーブオンは寄付を直接受け取ったわけではなく、メンバーが好きな立候補者への寄付を確約するという方法をとっていた。その後、1999年には、政治活動への寄付金徴収を担当する政治行動委員会(PAC)が内部に設立された。

 PACは2000年中、オンラインで約240万ドルを集め、上院と下院の候補者、30名の選挙活動に寄付した。メンバーからの寄付の平均金額は35ドルというわずかなものだった。

 ブレイズ氏は、先月開かれた市民的自由連盟(ACLU)の会議で講演し、「われわれはこのとき初めて、それぞれの金額は小さくてもオンラインならかなりのお金が集められること、それによって平均的な市民が現実に何かを変えられる可能性があることを知った」と語った。

 その後も、ムーブオンはメンバーから寄付を募るたび、かなりの金額を集めている。

 2003年には、『ニューヨーク・タイムズ』紙に反戦広告を出す費用として総額3万5000ドルの寄付を募ったところ、40万ドルが集まった。国際的なNGOの米国支部『オックスファム・アメリカ』のためにイラクへの救援金を募ったときは、およそ50万ドルの寄付を集めた。

 2003年10月に開始した、反ブッシュの広告ビデオを作成し激戦区のオハイオ州やフロリダ州で放映するというプロジェクトでは、ムーブオンの『ボーター・ファンド』(投票者基金)に少額の寄付が数多く寄せられ、計1000万ドルが集まった。大富豪の金融家ジョージ・ソロス氏と慈善家のピーター・ルイス氏は、それに匹敵する500万ドルもの提供を申し出た。ドキュメンタリー映画『フォッグ・オブ・ウォー マクナマラ元米国防長官の告白』(The Fog of War)のエロール・モリス監督は、一部の広告ビデオの監督を担当する契約にサインした。その広告は、米国人が、演技ではなく、台本なしで自分にとって重要な問題について語るものになるという。

 「人々が手を結べば、大きな力を発揮できる」とブレイズ氏は述べる。


http://hotwired.goo.ne.jp/news/news/culture/story/20040729207.html


市民の力を結集する政治活動サイト『ムーブオン』(下)

Kim Zetter


2004年7月26日 9:00am PT  (7/28から続く)

 メンバーは現金を寄付するだけではない。他の組織と協力して100万人以上の有権者に投票者登録をさせるという活動を行ない、地元で連邦議員と面談し、『ホワイトハウスを焼き直せ』と名付けたパンやクッキーの販売イベントを開いて75万ドルを売り上げた。またムーブオンは他の組織とともに反戦「バーチャル・デモ行進」を開始し、上院とホワイトハウスに100万通以上の電話、ファックス、電子メールでメッセージを送りつけている。

 ムーブオンが昨年、『30秒でわかるブッシュ』ビデオ・コンテストの開催を発表し、自作ビデオを送るようメンバーに呼びかけた(日本語版記事)ところ、1500本の応募があった。そのなかからメンバーの投票によって26本が選ばれ、モービー(ミュージシャン)、ジャック・ブラック(作家、俳優)、ジャニーヌ・ギャロファロ(俳優、コメディアン)といった有名人の審査員が最優秀作品を選んだ。

 最優秀となった作品『チャイルズ・ペイ』(ツケは子どもに)は、メンバーから集められた160万ドルを使い、今年の『スーパーボウル』で放映されるはずだった。しかしCBSテレビは政治的理由でスーパーボウルでの放映を拒否した。その代わりに、この作品は大統領の一般教書演説の前後5日間にわたって放映された。店や工場で働く子どもの姿を描き、「ジョージ・ブッシュが作った1兆ドルの赤字を払うのは誰?」と問いかけるこの広告ビデオの作者は、コロラド州の広告会社幹部で、1992年までは共和党員だったという。

 2003年6月、大統領候補の指名獲得をめぐって党内部で巨額の金が動くあり方が改まらないことに業をにやしたムーブオンは、メンバーが9人の候補者のなかから指名候補を選ぶオンライン予備選挙を実施し、50%以上の支持を得た候補者を推薦すると宣言した。約30万人が投票したが、得票率が50%を超えた候補者はいなかった。ディーン候補がこれに近い44%、ジョン・ケリー候補はわずか15%だった。

 そこでムーブオンは9人の候補に、オンラインでのキャンペーン支援を提案した。しかし、申し出を受け入れたのはディーン候補の選挙陣営だけだった。

 ディーン候補のキャンペーン責任者だったトリッピ氏はこう説明する。「ほかの候補たちは、インターネットなどただのお遊びだと考えたようだ。ケリー陣営は、われわれ(ディーン陣営)がインターネットで組織する地域集会を、『スター・ウォーズ』のバーのシーンみたいだ、とあざ笑っていたようだ。ほかの陣営がムーブオンの力を理解していたかどうかはわからない。ほかの陣営が、ムーブオンの力はあなどれないと気づく前に、(われわれの選挙キャンペーンを)軌道に乗せてしまう必要があった」

 トリッピ氏はそれまでもずっとムーブオンに興味を持っていたが、世界中の6000ヵ所以上で平和を祈って夜空に灯をともす2003年3月のイベント『グローバル・キャンドルライト・ビジル・フォー・ピース』を組織する作業にムーブオンが参加したとき、本格的に関心を持つようになったと語っている。

 「そのときの最大の疑問は、『インターネットを使って、インターネットへのアクセスを持たない人とつながることは可能だろうか?』ということだった。コンピューターの前に座ってメッセージを送ることによって、組織を作れることは知っていた。しかし、誰かに、各自のコミュニティー内でインターネットを使わず何かしてくれるよう頼むことは可能だろうか? 彼らは、それをやってのけたのだ」

 ブレイズ氏によると、ムーブオンの成功の秘訣は、メンバーがほんとうに望んでいることに耳を傾けた点だという。十数人ほどのスタッフは、カリフォルニア州バークレー、メイン州、それに日本などに散らばっており、打ち合わせはインスタント・メッセージと週に1度の電話で行なわれる。

 スタッフは、サイトのアクション・フォーラムでメンバー調査を実施し、投稿を読んで、メンバーが何に興味を持っているかを把握し、ムーブオンがとるべき行動についてメンバーに投票してもらう。スタッフたちは、メンバーが単純明快に、そして手軽に参加できるよう細心の注意を払っている。たとえばメンバーへの電子メールでは用件を1件に絞り、直接的で迅速な行動を起こしてもらえるよう配慮している。

 「ムーブオンのスタッフは状況への対応が非常に速く、メンバーの興味関心を尊重してくれていると思う。成功の可能性があって結果を出せるテーマを取り上げることで、実際に何かを変えることができたという達成感をメンバーに与えてくれる」と、『30秒でわかるブッシュ』広告ビデオコンテストの応募者で、今は電子投票システムに関するムーブオンのキャンペーンで顧問を務めるリッチ・ガレラさんは述べた。

 ムーブオンの常務理事、ピーター・シュアマン氏は、ムーブオンがメンバーの共感を得ているのはたしかだが、草の根レベルの政治参加を広げている進歩的な組織は、ムーブオンだけではないと述べている。

 「政府が進もうとしている方向と、人々が進みたい方向との間にこれほど大きな断絶があるということは、草の根運動への参加が爆発的に増えるチャンスを意味する。インターネットがその実現に一役買っている。この流れを作る要因の1つになれたのは幸運だが、流れを作ったのがわれわれだと言うつもりはない」

 進歩的な議員のなかには、自分たちのやりたかったことに正当な裏付けを与えてくれるという理由で、ムーブオン・メンバーからの圧力を喜んでいる人が多い、とブレイズ氏は語る。

 「良い仕事をしたいと思っているのに、それを実行するために必要な政治資金を持っていない、優れた政治家はたくさんいる。議会内のこのような仲間たちが、われわれの助けを待ちわびている」

 今年の大統領選は非常に重要だが、それでも今は大統領選の終わる11月3日が待ちきれないとブレイズ氏は言う。投票日の翌日の「11月3日からは、長期的な問題への取り組みと、良い仕事をしたいと思っている政治家たちへの支援を開始できるからだ」


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