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【イラク邦人襲撃】産経新聞の社説について
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投稿者 ゴリラーマン 日時 2004 年 5 月 30 日 19:55:51:Gqiv4SS6STvcM
 

【イラク邦人襲撃】産経新聞の社説について

今回のイラク2邦人襲撃事件に関して、産経新聞は非常に的外れな社説を掲載している。二人のフリージャーナリスト、橋田信介さん(六一)と甥(おい)の小川功太郎さん(三三)が車で走行中、何者かに銃撃された事件である。

http://www.sankei.co.jp/news/040529/morning/editoria.htm

産経新聞記事『【主張】イラク2邦人襲撃 心が痛む戦場記者の受難

 イラクの首都バグダッド南方約三十キロのマフムーディーヤ付近で、二人の日本人フリージャーナリスト、橋田信介さん(六一)と甥(おい)の小川功太郎さん(三三)が車で走行中、何者かに銃撃された。イラクで日本人が襲撃されるのは、昨年十一月の奥克彦大使、井ノ上正盛一等書記官以来二度目である。また、イラク戦争以来、イラクで邦人ジャーナリストが襲われるのはこれが初めてだ。二人の「戦場記者」たちの受難に心が痛む。

 二人の行動に対して、一部には「無謀だった」「自己責任だ」などの批判も聞かれるが、ジャーナリストはときに危険を冒してでも現場にいかなくてはならない職業である。二人は今回、覚悟のうえ、可能なかぎりの用心をして現地に入った。今回の事件で責められるべきは、犯人の方であって本人たちではない。二人の仕事は、むしろ評価に値する。

 国際新聞編集者協会(IPI、本部・ウィーン)の集計によると、イラクで取材中に殺害されたジャーナリストは昨年十九人(全世界では六十四人)、今年は五月上旬までで十二人(全世界では三十一人)に上っている。紛争地での取材がいかに危険と隣り合わせかを物語るものだ。

 四月の邦人人質事件の際、自己責任が問題とされたが、それは一部の人たちが自己責任には目をつぶり、責任は自衛隊を派遣した政府にある、として即時撤退を求めるなど、事件を政治的に利用しようとした結果であった。

 今回の二人は主義、主張は当然持っていても、現場の事実を伝えようというジャーナリストとしての基本を踏み外さずに行動した。二人、とりわけ橋田氏はベトナム戦争以来のベテラン戦場記者だ。危険や自己責任をわきまえた上での行動だったことも、近著『イラクの中心で、バカとさけぶ』(アスコム)からうかがえる。

 橋田氏は同書の中で「絶叫して正義を訴えるみたいなことはしない」「戦場記者は戦争を語ってはならない」とも書いている。「戦争はすぐれて政治の世界であり、戦場からは見えないからだ」という。今回の事件をきっかけに、一部の勢力から再び自衛隊撤退論が叫ばれることも予想されるが、橋田氏流にいえば、戦場と戦争を混同した議論といわねばなるまい。』


まず産経新聞は、どこも大手メディアは早々にイラクから退き、戦場取材はフリージャーナリストに任せきりになっているという現在の日本メディアが抱える問題については全く触れずに
『ジャーナリストはときに危険を冒してでも現場にいかなくてはならない職業である‥二人の仕事は、むしろ評価に値する。』などと他人事な見解を示している。
これはジャーナリズムとして、あまりに無責任過ぎる発言ではなかろうか?

次に何を言い出すかと思えば
『四月の邦人人質事件の際、自己責任が問題とされたが‥事件を政治的に利用しようとした結果であった。』と、前回の人質事件に関する自らの主張・政府の姿勢を肯定化することに話が変わってしまった。

そして最後の件にはもっと驚かされる。
『橋田氏は同書の中で「絶叫して正義を訴えるみたいなことはしない」「戦場記者は戦争を語ってはならない」とも書いている‥今回の事件をきっかけに、一部の勢力から再び自衛隊撤退論が叫ばれることも予想されるが、橋田氏流にいえば、戦場と戦争を混同した議論といわねばなるまい。』と結んでいるのだ。
ここまで来ると呆れてしまう。
亡くなった橋田さんの言葉の一部を切り取り、都合の良いように捻じ曲げて解釈し、自らの政治的意志を主張するために完全に利用しているではないか。

橋田さんのスタンスはこうだったはずだ。戦場カメラマンは、何かの主張が先にあってそれを伝えるのが仕事ではない、戦場で起こっている‘ありのまま’を伝えるだけ、それが仕事だと。
彼の言葉である「戦場記者は戦争を語ってはならない」とは、そういう意味である。
産経新聞は、ジャーナリストの立場と一般市民の立場を巧妙に混同し自らの主張に帰結させたが、これこそ橋田さんが否定していた‘主張を組み込むジャーナリズム’の典型ではないのか?

今回のことに関して言えば、私たちから見た‘戦場のありのまま’とは橋田さんの死をも含めてのものになってしまった。橋田さんが取材していたのが戦場ならば、橋田さんの命が奪われたのも同じ戦場なのだから。私たちは、橋田さんの取材・姿を通して、戦場、そして戦争について議論しなければならない。自明だが、戦場と戦争は繋がっている。

産経新聞と似たようなことを政府もしていた。
あるTV番組での橋田さんの話の中から「イラクで自衛隊が汗水流して働いている姿を見て感動した」という部分だけを抜き取り、自衛隊の宣伝に利用したのだ。
そもそも政府の退避勧告を無視してイラク入りしているジャーナリストの言葉を、彼らに対して批判的なはずの政府が利用すること自体が可笑しな話ではあるのだが、それは置いておいても都合の良い部分だけを抜き出し強調するというパフォーマンスの卑劣さは受け入れ難い。

その発言をしたとき、橋田さんは番組内で戦場記者のあり方について長く語っていた。彼は明確に「自分は自衛隊派遣に反対である」と言っている。
しかし同時に、彼は何かを探しに戦場へ行っているわけではない、‘ありのまま’を伝えるために戦場に行っているのだ、という。一市民としての政治的な意志と、戦場記者としての取材姿勢は全くの別物だということを説明していた。
だから彼は派遣に反対である自衛隊を取材し、「彼らは一生懸命に働いていた」「感動した」という事実を伝えたのだ。

イラクに派遣されている日本の自衛隊について、イラクの一般市民について、イラクでアメリカ軍が行った虐待行為について、イラク国内で活動する国外のテロリストについて‥つまり、イラクという戦場の‘ありのまま’を伝えようとするジャーナリストが、橋田さん亡き今のイラクに、いったい何人残っているのだろうか。私は今それが心配でならない。私たちは、非常に優秀で勇敢で貴重な人物を失ってしまった気がする。

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