憲法９条と日本国憲法前文が描くファンタジー・ワールド

こういった私たち日本人の価値観の流れの中のひとつに、憲法９条と日本国憲法の前文がかなり影響していると思われる。「平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼」という文言自体があまりにも抽象的過ぎて、現実とかけ離れてしまっている。現実としての世界状況の激しく利害の絡む中で、「公正と正義」を実行している国なんて、世界中くまなく探したってありはしない。そんなことがもし有り得るとしたら、それはあくまでファンタジーの世界だけである。

ほんの一握りの国際金融勢力たちのアングロサクソン的思考には、弱肉強食のエゴイズムがその根底にあり、自分たちは特別である、とはっきりと思い込んでいる。いまブッシュ政権を動かしているネオコンは、その生きた良いお手本である。彼らはＰＮＡＣ（アメリカ新世紀プロジェクト）のメンバーであるパールやウォルフォヴィッツやビル・クリストルやラムズフェルド等は、自分たちの縁故企業である石油や軍需や復興や傭兵産業の利益というエゴイズムのためなら、合法的な装いのもとに、どんな犯罪にだって手を染めるにちがいない。パックス・アメリカーナという巨大なエゴイズムのためなら、第三次世界大戦を起すことも辞さない連中なのだ。

彼らにとっては、「平和」も「民主化」も「人道支援」も「石油食料交換プログラム」等も、一見対極である「戦争」や「危機」や「脅し」や「虐待」等と同じように、単なる手段に過ぎないのである。日本人は、「平和」というとすぐに究極の目標であるかのように勘違いしてしまうが、彼らにとっては、あくまで合理的な“手段”としての「アメ」と「ムチ」に過ぎないのである。

「平和」や「民主化」や「規制緩和」や「人道支援」等は、あくまで「アメ」として詐欺的手法であり、結局のところ、北朝鮮の「喜び組」のようにお色気で好きなように丸め込んでしまう戦略と同じやり方である。そしてそれでも思うようにならない場合は、「戦争」や「脅し」や「虐待」等の今度は「ムチ」という手段を選択するわけである。物質資本主義の生き馬の目を抜くような略奪戦で生き残るには、当然の戦略なのである。ようするに「詐欺」でやるか「暴力」でやるかだけの違いであり、もちろん「戦争」や「平和」も彼らにとっては同じ意味である。このあまりに常識的な世界観が、すでに「日本人の感性」にはもう理解できない部分が存在しているように思う。

たとえば７月１日にバグダッドの元サダム宮殿に、外交官の数だけで３０００人を超えるといわれる世界最大のアメリカ大使館が開設されることになっているが、何のために、そんな強大なものを建設するのかである。おそらくタイピストから運転手までも含めると、一万人をはるか越えるスタッフになると思われる。その答えは、あの悪名高いエシュロンと呼ばれる盗聴システムを構築するためなのである。エシュロンとはフランス語から派生した言葉らしく、軍事用語でいう「梯形編成」を意味する。

この盗聴システムは、ＮＳＡ（国家安全保障局）が管理している全地球的な通信情報傍受システムであり、電話、ファックス、電子メール、衛星通信等を、１日あたり３０億以上の通話を自動的に解析できるわけだから、たとえイラクに主権を譲った形をとろうとも、日本の占領と同じように、今後も永遠にイラクに残って石油の利権をコントロールし続けるつもりである。ちなみに日本の場合は、三沢基地にエシュロンが設置されているのはもはや有名である。故にアメリカにとって、フセイン拘束はいとも簡単なことであり、その時期やタイミングは政治的なパフォーマンスとして演出されていた可能性が高いことになるわけである。　やれやれ

まあ、そういうわけで、「詐欺」と「略奪」と「暴力」に渦巻くヴァイオレンス・ワールドこそが現実であるために、日本国権憲法の前文や憲法９条が描いている世界は、今となってはほとんど「神話」の世界といえる。この抽象的な世界を信じるように私たち日本人は教育され、そのファンタジー・ワールドを、ゲームの世界ではなく、現実として信じて生きてきたのである。だから私たちは、いまさらアングロサクソンのエゴイズム剥きだしの略奪思考に、いきなりスイッチを切り替えろ、といわれてもほとんど不可能に近いのだ。

・関連
失われたマトリックスを求めて(No.37【2004年6月5日】の要約) [韋駄天-37496]
http://www.asyura2.com/0403/bd35/msg/868.html

失われたマトリックスを求めて No.37【2004年6月5日】(千葉邦雄氏オリジナルの見出し）
http://www.asyura2.com/0403/bd35/msg/869.html

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