現在地 HOME > 掲示板
> 戦争58 > 1142.html
★阿修羅♪
|
現在地 HOME > 掲示板
> 戦争58 > 1142.html
★阿修羅♪
|
|
| Tweet |
(回答先: イランの暗号が破られた １ (日経ＢＰ) 投稿者 愚民党 日時 2004 年 8 月 26 日 11:45:06)
当時の英国首相であるWinston Churchill氏とドイツ軍による工業都市コベントリ爆撃に関し，こんな話がある。「Churchill氏は爆撃計画を知っていたのに，市民に警告しなかったらしい」というのだ。これは多分事実ではないが，国家が「敵の秘密を暴ける」という秘密を守るためならば手段を選ばないことを示す，分かりやすいたとえ話といえる。
一方，うっかり「秘密を暴ける秘密」を漏らしてしまった――という話もいろいろある。例えば，1986年にドイツのベルリンで起こったディスコ爆破事件の後，米国大統領のReagan氏は「リビアのQadaffi大佐が関与した確かな証拠を持っている」と発言してしまった。リビアの諜報機関は外交用暗号が破られたことに気づき，暗号方式を変更した。たった1回口を滑らしたために，米国の諜報活動が大きく後退したのだ。
おそらくイランの諜報機関は，自国の兵器貯蔵に関するメッセージを送ることで，Chalabi氏の主張の真偽を確かめようとしたはずだ。仮に米国がこの情報にしたがって行動を起こしたのなら，暗号が破られたことが分かる。だが，米国は行動を起こさなかった。この件に関しては，米国はとてもうまく立ち回った。米国は，イランが疑っていることを知っていたか，あるいは，兵器貯蔵を知った別の理由をでっち上げられるまで待っていたのだろう。
今やNSAの秘密はばれてしまった。イランは間違いなく暗号化装置を変更したはずだ。その結果，NSAはイランの秘密を得るための情報源を失った。しかし，それ以外のことはほとんど明らかになっていない。誰がChalabi氏に教えたのか？ この重要な米国の秘密（イランの秘密を暴けるという秘密）を知っていたのは，ほんの一握りの人間だ。密告すれば間違いなく反逆罪で有罪となる。多分Chalabi氏は秘密を知らなかっただろうし，イランに漏らしてもいない。イラン政府は何かほかの方法で事実をつかんだが，その情報源を隠すためにChalabi氏から教えられた“ふり”をしているのだろう。
1950年代に，米国は通信ケーブルを盗聴する目的で，東ベルリンの地下にトンネルを掘った。東ドイツ政府がこのトンネルを発見するまで，米国はあらゆる機密情報を入手していた。しかし，ソ連は英国の諜報機関にいるスパイを通じ，この盗聴計画を最初から把握していた。ところがソ連はトンネル掘りを阻止するわけにいかなかった。ソ連のスパイであるGeorge Blakeの存在がばれてしまうからだ。
もしイランが米国に暗号が破られたことを知っていたら，なぜ知らないふりをして偽情報を米国に流さなかったのだろう？ もしかしたら，イランは何年も偽情報を流し続けており，米国は今になってイランに知られていたことに気づいたのかもしれない。米国はイランに知られていたことを悟ったので，Chalabi氏の信用を失墜させるために，今回のことを利用している可能性もある。
この話のなかで特に不可解で混乱しているところは，米国のこうした行動についてイランが非難したことだ。1992年にイランは，Crypto AG社のHans Buehler氏を逮捕した。同社がNSAの要求に応じて，イラン向け暗号化装置にバック・ドアを仕掛けというのだ。Buehler氏は繰り返し行われた取り調べで一貫して無罪を主張。同社は1993年に同氏の解放を求めて100万ドルをイランに支払い，その後9カ月たって同氏は自由の身となった。ただし同社は同氏を直ちに解雇し，肩代わりした100万ドルを請求した。これ以降Buehler氏は，同社とNSAとの間柄について，関係者に都合の悪い疑問を投げかけるようになった。
したがって，Chalabi氏の情報は1992年以降のもので，イラン政府は暗号装置を10年前に変えたのだろう。
あるいは，NSAはイラン政府の機密暗号を解読しておらず，この件はただの“はったり”なのかもしれない。
追いつ追われつのこの闇の世界では，何かについて確証を得ることはとても難しい。
Hans Buehler氏の一件の概要：
＜http://www.aci.net/kalliste/speccoll.htm＞
Copyright (c) 2004 by Bruce Schneier.
http://itpro.nikkeibp.co.jp/free/ITPro/Security/20040625/146381/index2.shtml
題名には必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。