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ガリバーたちが唱える「創造なき破壊」
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投稿者 接続中 日時 2004 年 10 月 09 日 11:46:21:LZLXOvm1qmTy2
 

ガリバーたちが唱える「創造なき破壊」2
http://www.chibalab.com/news_otoshiana/documents/20041009.htm

■かけがえのない地球をギャングの棲み処に変えた『市場原理主義』

いま、世界の全貿易の取引の内訳はこんな感じである。3分の1は同一企業内でおこなわれている。つまり多国籍企業であるナイキとナイキ、マイクロソフトとマイクロソフト、デルとデル、ウォルマートとウォルマート、シェルとシェルといった取引である。もう3分の1は多国籍企業間の取引である。ようするに、 IBM と GE などの多国籍企業同士の取引である。ということは、残りの3分の1だけが本当の意味での国家間の貿易ということになる。ところがこの本当の国家間の貿易の割合のほうは、限りなく減り続けているのである。

多国籍企業は、成長と効率を最優先し、それ以外の価値をすべて排除する力学で動いている。市場経済の目的は、あくまで利潤と富の蓄積であり、それが効率性の証明となる。そして利潤は金融市場を通して素早く投資され、その素早い投資がまた新たな利潤を生むサイクルを再創造することになる。この市場経済の生産性向上の報酬として、社員が受け取ったものはなんと「解雇」だったのである。あらゆる国や地域を移動する多国籍企業の生産性が効率を増す一方で、その社員である労働者は、その忠誠と努力に対して「減収」や「リストラ」をもって報いられるのである。世界的なグローバリズムによってホッブスの言う「万人の万人に対する戦い」が、市場経済という世界的な「目に見えない戦場」で勃発しているのである。

多国籍企業はひとつの国に定住する気はなく、労働組合が弱い国や地域、あるいは限りなく安い賃金で最高の効率性を達成できる「場所」を求めて地球上を移動していく。フランスのトムソンがマレーシアの工場をたたんでベトナムに移転したときには、2600人の現地労働者が見捨てられた。またナイキも利潤追求のために、下請工場を韓国、インドネシア、ベトナムへと次々と移転し、限りない欲望を満足させるために世界の草原をさまよい続けている。インターネット革命と国際間を移動するマネーのおかげで、グローバル化と市場の統合はもはや避けて通れない現実となる。

ようするに、グローバル化した『市場原理主義』が、私たち個人の社会に於ける関係を決定してしまう。それぞれの国や地域が、私たちに対してできることが少なくなり、たとえできたとしても、それは「大きな政府の時代」のやり方であって、いまや時代にそぐわない価値観として退けられてしまう流れとなる。民主主義はほとんど無意味なものとなり、「選挙」や「市民参加」などは、あくまで私たち国民という「負け組」に取り入るためのパフォーマンスとなり、私たち中小企業の自営業者やサラリーマンは管理下におかれ、しだいに弱体化され奴隷化されてゆく。

■WTO(世界貿易機関)は「奴隷制」を世界中に伝播する

地球のガリバー(世界的な多国籍企業を、私が独断でガリバー旅行記に出てくる主人公ガリバーに譬えたもの)である多国籍企業は、一切の制限をつけない自由な貿易と投資を建前としているから、その自由を保障するために、 WTO (世界貿易機関)のような強力な国際的な枠組みがどうしても必要となる。こうした世界秩序は、彼らにとってきわめて効果的なプロパガンダとして機能して、これらに異を唱えることは、まるで神や宇宙律のマトリックス(母胎)に文句をつけるような雰囲気すら醸しだしてしまっている。

ところがこの WTO (世界貿易機関)の枠組みは、さまざまな国の異なる政治、あるいは社会的システムのルールがまともにぶつかり合って、非情な競争を強いられている。 WTO は、刑務所内で生産された製品については規制の対象外としているが、団結権や児童労働についてはまったく言及していない。国際繊維衣料皮革労働者連盟( ITGLWF )の資料によると、全世界で約2億5000万人の児童が労働しており、そのほとんどが劣悪な労働条件下で働いている。もちろんその地域や伝統やアジア的価値観等はなんの関係もない。そこにあるのは大人ひとりの賃金で、何も知らない無防備な子ども3人を雇おうという効率主義だけである。

しかも児童労働は成人労働者の賃金低下を招くと同時に、大人を労働市場から締め出しているようである。インドでは働いている児童の数と失業している大人の数がほぼ同数になっている。つまり、児童労働は貧困を再生産しているのだ。今日の就労児童は未来の成人失業者となり、さらには自分の子どもたちを、同じような最悪の労働条件下に送り出す悪循環になっている。その背後には多くの多国籍企業が、子どもを働かせている下請企業と「外部委託」契約を結んでいるのだ。

世界の国々の労働条件は、『市場原理主義』によって競争すると、「最低をめざすレース」になってしまう。いちばん最低の共通項が基準となり、労働者は常に第3世界並みの労働条件に甘んじるか、或いは失業かという選択を容赦なく突きつけられることになる。

国際取引においては、もし何処かの国が政治的な圧力をかけ、虐げられた労働者たちの存在や、環境破壊にも見て見ぬふりをして安い商品を売ったとしても、市場原理主義者や WTO にとってはお構いなしなのだ。反グローバリゼーションの国際NGO組織「ATTAC」の副代表であるスーザン・ジョージは、その著作「 WTO 徹底批判!」のなかで、 WTO の構想は次のような批判をもたらすにちがいないと述べている。

》公共サービスを弱体化させるか、もしくは破壊する。

》小規模農業の従事者を破滅に追い込む。

》社会的既得権をおびやかす。

》すでに定着している国際法を破る。

》すでに不利な状態におかれている国々を、よりいっそう不利な状態におくことになる。

》文化を同質化する。

》環境を荒廃させる。

》実質賃金や労働基準を低下させる。

》市民を保護する政府の能力や、政府に保証を求める市民の能力を格段に低下させる。

ようするにWTO(世界貿易機関)は、あらゆる人間的な価値観を犠牲にして、効率を求めて世界の草原をさまよう弱肉強食の「多国籍企業獣たち」の利益擁護者と化しているのだ。彼らは世界の貧富拡大に喜んで手を差し伸べ、地球規模の環境破壊の切り込み隊長役を買ってでているのだ。WTOという組織にとっては、私たちひとりひとりの人間は、単なる消費者、単なる商品に過ぎないのである。

市場に任せさえすれば、すべてがうまくいくという『市場原理主義』のプロパガンダを唱えるWTOに対して、あるいはその御用メディアに対して、経済の主人公は人間であって、その逆ではないと主張するヴィヴィアンヌ・フォレステルは、「人間はもはや搾取の対象でさえなくなった。いまや人間は排除の対象になった」と、その著書『経済の独裁』のなかで憤怒の思いで述べている。

そうやって世界中から効率よく生み出されたガリバーたちの巨額なお金は、年金基金や保険会社や金融機関(証券ビジネスやヘッジファンドも含まれる)の手の中にしっかりと握られている。その資産は約30兆ドルであり、そのお金を元手に世界を徘徊している貪欲なお金が300兆ドルもあり、常に市場の動向をうかがい、動くときには素早く群れをなして動く。その一方で地球上に存在する国々の実際のGDPの合計は30兆ドルに過ぎず、現実の世界貿易の決済に必要なドルはさらに少ない8兆ドル程度である。

このとてつもない資金を動かすファンドマネージャたちには、利益をうまく稼いだもの、もっとも成功した者のあとを追いかける群集心理の力学で動いている。彼らのポートフォリオ1%は、アジア新興工業の株式市場の4分の1、ラテンアメリカの株式市場の3分の2に相当し、たった1%動くだけでその影響力は相当のものがあるのだ。ということは、何かの突発的なパニックが起きたとき、これらの金融資本は投機目的で相当のレバレッジがおこなわれているために、いっせいに出口に向かおうとすれば、常に壊滅的なドミノ現象を起す危険をはらんでいる。

このジャック・アタリが「エリート遊牧民」と呼ぶ資本家たちは、どこにでも好きな場所に素早く行き、絶えず移動している。彼らの支配下には膨大な私たち定住型の「労働者」がいる。嫌なことに私たち労働者の最大の特徴は、簡単に移動できないばかりか、他人でも代用がきくことである。彼らエリート遊牧民であるガリバーたちは、新たなるオアシスからオアシスへと移動しつつも、自分たちに隷属する「従順なラクダの群れ」を増やしつつ、ドル帝国主義という砂漠の生態系を維持するために、先住民や原住民たちを詐欺と暴力で巧みに操る。そして宝物であるカーペット(ハイテク製品と武器)とナツメヤシ(石油)を管理或いは略奪し、それでも私たち原住民が騒ぎ出して抵抗することのないよう、占領を企んでいるのである。 

千葉邦雄のニュースの落とし穴
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