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ドルの自滅[田中宇の国際ニュース解説 2004年11月26日] ←差し迫る経済ハルマゲドン、もう消費できないアメリカ
http://www.asyura2.com/0411/hasan37/msg/822.html
投稿者 傍らで観る者 日時 2004 年 11 月 27 日 19:41:04:ayjHlPlEsGXTU
 

参照:http://tanakanews.com/e1126dollar.htm

 以前から予測されていたドルの下落が、現実のものになり始めている。ブッ
シュ政権は2001年の就任直後から、財政支出の増加と、最裕福層に対する
減税とを同時に行って故意に財政赤字を拡大させることで経済を活性化できる
と主張する「レーガノミックス」の政策を開始した。911後には、これに軍
事費の急増も加わり、クリントン時代の8年間で黒字に転換したアメリカ財政
は、ブッシュの4年間で財政赤字が危険水域とされるGDPの5%を超えるま
でに悪化した。
http://tanakanews.com/d1227voodoo.htm

 その一方で、アメリカ国民の消費意欲は衰えず、輸出が振るわない中で輸入
が伸び続けた結果、経常赤字(貿易赤字)も増え続けている。今年1−9月の
赤字額(年率換算値)は5920億ドルで、昨年の4960億ドルからさらに
増加した。
http://news.scotsman.com/latest.cfm?id=3759014

 財政赤字と経常赤字という「双子の赤字」は、かつてレーガン政権時代にア
メリカ経済を悪化させた元凶で、レーガノミックスは大失敗だったと総括され
ているが「新レーガン主義」を自称するブッシュはレーガン時代の過ちを繰り
返した結果、アメリカは再び双子の赤字を抱えるに至った。

 11月17日、アメリカのジョン・スノー財務長官が「(当局の介入など)
市場原理以外の作用で為替を動かそうとする努力は、歴史的にみてうまくいか
ないことが分かっている」と述べ、ドル安になっても市場介入はしない姿勢を
表明した。これを受けてドル安が加速した。
http://quote.bloomberg.com/apps/news?pid=10000006&sid=aS4PP_tdICyQ

 11月19日には、FRB(アメリカの中央銀行)のグリーンスパン議長は
「経常赤字が増えすぎると、ある時点で外国投資家が突然ドル建ての資産を買
いたがらなくなり、ドルの急落や金利の急騰が起きる」という意味の発言を行
った。これは市場関係者に「ドル安容認」のサインと受け取られ、ドル急落に
拍車がかかった。その後、米当局がドル安傾向に歯止めをかけようとする努力
がほとんど行わなかったため、ドル安傾向が定着した。
http://www.forbes.com/infoimaging/feeds/ap/2004/11/19/ap1666399.html

 11月25日には、ドルがユーロに対し、これまでの史上最安値である1ユ
ーロ=1・3178ドルを割り込み、最安値を更新して下落した。
http://www.reuters.com/printerFriendlyPopup.jhtml?type=businessNews&storyID=6911640

▼差し迫る経済ハルマゲドン

 米大手投資銀行のモルガン・スタンレーのチーフ・エコノミストであるステ
ファン・ローチは先週、機関投資家を集めた私的な会合の席上で「アメリカが
経済的な大破綻(ハルマゲドン)を回避できる可能性は10%しかない」と語
り、参加者を驚かせた。ローチは、アメリカの経常赤字がドルを下落させ続け、
FRBは国債発行を消化するため金利を上昇させる結果、米経済の減速は間違
いないという。アメリカが間もなく不況に陥る可能性が30%、しばらくは延
命策で何とか乗り切るがいずれ破綻する可能性が60%、破綻しない可能性は
10%と予測している。
http://business.bostonherald.com/businessNews/view.bg?articleid=55356

 こうした大破綻の予想は、以前から散見されていた。UPI通信の経済担当
主任記者だったイアン・キャンベルは昨年、何回か破綻を予測する記事を書い
ている。昨年12月の記事では「ブッシュ政権は米経済が崩壊し始めたときに
政権に就き、崩壊を食い止めるために減税と戦争をやって経済を再活性化しよ
うとしたが、2005年にブッシュがおそらく再選されるころには、もはや打
つ手がなくなっているだろう」と書いている。
http://www.upi.com/view.cfm?StoryID=20031226-013348-6711r

 またアジア・タイムスのぺぺ・エスコバルは、昨年5月に書いたビルダーバ
ーグ会議に関する記事の中で「欧州の有力なユダヤ系銀行家によると、西欧は
大規模な金融破綻に瀕しており、それを回避するために中東など世界規模で戦
争が行われているのだという」と書いた。
http://www.atimes.com/atimes/Middle_East/EE22Ak03.html

「世界システム論」の学者イマニュエル・ウォーラーステインは、以前の著書
で「アメリカは1980年代から衰退期に入っており、レーガン以降の歴代政
権は、アメリカを延命させるための政策をあれこれ打ってきた」といった意味
のことを書いている。パパブッシュは湾岸戦争で、クリントンは経済グローバ
リゼーションで、今のブッシュはテロ戦争とイラク戦争で自国の延命を図ろう
とした。しかし、延命策は尽きつつあるように見える。

「双子の赤字」を減らせないアメリカはいずれ破綻するという予測は、昨年末
あたりから、あちこちの記事で見かけるようになっており、その「いずれ」が
いつなのか、という時間の問題になっている感がある。

▼どんどん増えるイラク戦費

 ドル安を止めるためには、アメリカの財政赤字と経常赤字を減らすことが必
要だ。しかし、財政赤字は減らすことがほとんど不可能だ。

 その理由の一つは、イラクで必要な戦費がどんどん増えているためである。
イラク侵攻直前の2003年初めには、米政府は毎月の戦費を22億ドルと概
算していた。しかし、ゲリラ戦の泥沼が少しずつ明確になってきた同年7月に
は、国防総省は毎月39億ドルを使っていた。そして、イラク人を組織してイ
ラク軍やイラク警察を作る米軍の試みが、敵前逃亡などによって何度も失敗し、
完全にゲリラ戦の泥沼にはまっている現在は、毎月58億ドルが消費されている。
http://www.counton2.com/servlet/Satellite?pagename=WCBD/MGArticle/CBD_BasicArticle&c=MGArticle&cid=1031779280062&path=!news!localnews

 最近、米議会で審議された来年9月までの財政年度の支出予算案(3884
億ドル)は、増加幅が前年比1%の伸びに抑えられるなど、財政緊縮の努力は
行われている。だがその一方で11月18日には、財政赤字額の上限が8千億
ドル引き上げられて8兆1800億ドルに改定されている。財政赤字(米国債)
が法律で定められた上限まで発行されてしまい、もっと国債が発行できるよう
法律改定しないと政府が日々のお金に困る事態になり、上限を引き上げざるを
得なくなったためである。
http://www.washingtonpost.com/ac2/wp-dyn/A60963-2004Nov18?language=printer

 財政赤字の上限は、2002年に4500億ドル、昨年にも9840億ドル
と毎年引き上げられており、クリントン時代には黒字だった財政は、ブッシュ
政権になってからものすごい勢いで金を使いまくり、急速に赤字体質に陥った
ことが分かる。米政界では、1年以内に再び赤字上限の引き上げを行う必要が
あると予測されている。こんな状態なので、従来は想像もできなかった米国債
のデフォルト(不履行)が、世界の投資家の懸念として立ち上がってきても不
思議はない。
http://www.antiwar.com/paul/?articleid=4015

▼もう消費できないアメリカ

 もう一つの経常赤字の方は、ドル安が続いてアメリカ人が買う輸入品の価格
が上がれば、消費が減退して輸入が減り、赤字の拡大は止まる。しかし、それ
は米国民の生活水準が落ちていくことを意味している。ドルはこれまで世界の
基軸通貨(備蓄通貨)だったため、アメリカでは政府が財政赤字を増やしても
強いドルを維持でき、アメリカの人々は世界から安く輸入された商品を買って
豊かな生活を謳歌することができた。しかし、ドルが下落して基軸通貨でなく
なると、そうした特権は失われる。

 アメリカではすでに、最裕福層は減税でさらに豊かになる一方で、中産階級
が貧困層に転落していく二極分化の傾向が拡大している。多くの企業は、従業
員を入れ替えるたびに給料を下げている。給料の伸びは、インフレ率を下回り、
多くの人が収入減となっている。各地の地方自治体も財政難で、学校の閉鎖や
行政サービスの低下を引き起こしている。
http://www.csmonitor.com/2004/0908/p03s01-usec.html

 消費ブームの結果、アメリカにおける個人消費の額は1995年以来毎年4%
ずつ伸び続けており、これは世界の伸び(2・2%)の2倍である。ところが
その一方で、人々は金を使い果たし、貯蓄率は先進国では最低水準の0・8%
である(欧州やアジアは8%前後)。クレジットカードの債務不履行率も史上
最高の4%になっている。アメリカではここ数年、政府も個人も金を借りて
使いまくり、今になってそのつけが回ってきている。
http://www.atimes.com/atimes/Global_Economy/FK25Dj02.html

 今後は、企業年金の支払い停止の危機も指摘されている。アメリカの企業年
金の破綻から救う役割を果たしている政府系の「年金給付保証公庫」によると、
今後、団塊の世代(ベビー・ブーマー)が大挙して定年退職する時期が来ると、
公庫として620億ドル必要になりそうだが、公庫には390億ドルしか資産
がなく、差額分に入ってしまった人々は、年金を受け取れなくなるという。米
議会とブッシュ政権は、この問題を解決する必要に迫られているが、政府自身
が財政赤字で首が回らない中、人々の年金が救われる可能性は低い。
http://www.nytimes.com/2004/11/15/national/15cnd-pens.html?pagewanted=print

▼ドルを救おうとしない米当局

 こうしてみていくと、ドル安はアメリカにとって危険なことであり、為替は
何としても安定させる必要がありそうだが、実際のところ、米当局者は自らド
ル安を煽っている感がある。スノー財務長官は今回ドル下落が加速しそうなタ
イミングを狙って「市場介入はしない」という趣旨の発言を行い、ドル安を煽
った。日本や欧州の当局者たちから「ドル安を容認しないでくれ」と頼まれる
と「アメリカはドル高を希望している」と発言したが、多くの市場関係者は、
スノーの本心はドル高ではなくドル安だと考えている。

 米当局がドル安を望むのは、ドルの価値が下がるとその分だけ実質的な赤字
の規模を減らすことができるからであるとか、輸出産業振興のためであるとか、
ドル安ユーロ高によってヨーロッパの輸出産業に打撃を与え、イラク侵攻以来
の欧州の反米姿勢を制裁するものであるとかいう説明もある。ユーロ高を演出
することで、ヨーロッパから中国に対して人民元切り上げの圧力をかけさせる
ことが目的だ、という見方もある(人民元の相場はドルに対して固定されてお
り、ドルが下がるほど中国の輸出力が上がる)。
http://www.guardian.co.uk/usa/story/0,12271,1356743,00.html

 しかし、自国が海外からの借金を膨大に抱え、今後さらに海外から金を借り
ないとやっていけないときに、何が理由であれ、自国の通貨を意図的に下落さ
せる米当局の行為は、価値が下がりそうな通貨に投資する人などいないことを
考えると、どう見ても自殺的である。

 ドルの下落傾向が長期的に続くと、1997年のアジア通貨危機以来、ドル
建て資産の備蓄を増やし、自国通貨を支える外貨準備にしてきたアジア諸国が、
制度の見直しを検討し、アジア通貨の持ち合いなど、ドル以外の備蓄方法に切
り替える傾向が増す。実際、中国政府は今回のドル安を受けて、ドルを売って
アジア諸国の通貨を買う動きを強めたと報じられている。
http://news.ft.com/cms/s/257979a6-30f4-11d9-a595-00000e2511c8.html

 現在、新規の米国債の大半はアジア諸国の政府が備蓄用に買っているものだ
が、アジア諸国が外貨備蓄のやり方を変えると、米国債の需要は急減し、ドル
暴落と金利高に拍車がかかる。米当局はむしろ、全力を尽くしてドル安を防止
しないとまずい状況にあるのだが、現実に行われていることは逆である。

▼アメリカを陥れる「双子の自滅」

 米当局は、財政赤字を故意に増やし、その結果起きたドルの下落を止めよう
とするどころか煽るという自滅行為を行っているが、同様に自滅的なのがイラ
ク戦争である。アメリカはフセイン政権が大量破壊兵器を持っているというウ
ソをついてイラクに侵攻する必要などなかったし、ましてやヨーロッパとの関
係を悪化させてイラク侵攻を挙行したのは大愚策で、これは「失策」の域を超
えている。イラク侵攻後も、イラク人をわざと怒らせ、反米のナショナリズム
を煽る作戦が続けられている。
http://tanakanews.com/d1125iraq.htm
http://tanakanews.com/d0811iraq.htm

 このように考えると「ドル下落」と「イラク戦争」という「双子の自滅」が、
アメリカを危機に瀕する状態にさせていることが分かる。アメリカはこれまで
「強いドル」と「強い米軍」を持つことによって、世界の中心である超大国の
地位を維持し続け、その地位がドルの強さを維持し、ドルの強さが米軍の強さ
を維持するという循環的な状態にあった。ところが、ドルとイラクという双子
の自滅は、この状態を破壊し、アメリカを世界の中心から追い落としてしまう。

「双子の自滅」が奇妙なのは、これらが「自滅」つまり故意に行われているよ
うに見える点である。イラク侵攻の開始前からすでに2年間、私は「アメリカ
の中枢には自国を自滅させたがっている勢力がある」と感じている。多くの人
が「故意であるはずがない」「アメリカのエリートは愚かな過ちを繰り返す性
格があるのだよ」「君の理論は面白いが、その点だけは賛同できない」と私に
言い、私自身もこの2年間、自問自答を続けているが、日々アメリカが行って
いることを仔細にウォッチしていると、双子の自滅はどう見ても故意の自滅で
あり、愚かな過ちの積み重ねの結果ではないと思う状態は変わっていない。

 故意に「双子の自滅」が演出されているのだとすれば、その理由は何なのか。
アメリカを潰して世界を「アメリカによる一極支配」から「多極型」に変質さ
せることで、経済的なメリットを得ようとしている勢力がいるのでないかと拙
著「非米同盟」(文春新書)のエピローグに書いた。それを塗り替える新しい
仮説はまだ見つかっていない。

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