2004年 10月 21日
また人道支援関係者の誘拐

「またかよ」と思わず舌打ちする。19日朝、国際的な人道・開発支援ＮＧＯのケア・インターナショナルのイラク支部代表のマーガレット・ハッサンさんがバグダッドで誘拐された。

　アルジャジーラによると職場に向かうハッサンさんを乗せた車は、2台の車に挟まれ、犯行グループはマーガレットさんを拉致していったそうだ。マーガレットさんは、イギリス出身だが、イラクに30年住んでおり、現地で結婚してイラク国籍も持っているとのこと。アルジャジーラのインタビューにはマーガレットさんの夫が答えていた。誘拐されたマーガレットさんの姿を映したビデオが、アルジャジーラに送り付けられたが、声明や要求はなかったという。

　ケア・インターナショナルは、ベルギーに本拠地を置き、アジア、アフリカ、中南米、東欧、中近東など、70カ国以上の開発途上国や紛争地域で活動しているＮＧＯで、日本にも支部がある。日本支部（財団法人ケア ジャパン）のサイトによれば、現在、世界各地に約500人の国際専門スタッフと約12000人の現地スタッフを抱え年間800億円にのぼる支援を手がけているそうだ。

　しかし、高遠さん達の時といい、イタリアのＮＧＯの時といい、今回といい、何でイラクのために頑張っている善人ばかり誘拐するかね、武装勢力は。誘拐する前に少しは調べろよ、全く。勿論、誘拐自体が批難されるべきことなのだが。

　もっとも、イラク支援関係筋の話として、「ケア〜はイラク戦争前から活動している筋金の入ったＮＧＯなので、反米勢力の誘拐というよりも、もっと複雑な利権が絡んでいるんじゃないか」という見方もある。ケア〜は、病院支援などの他、浄水施設補修などの支援を行っていた。

　身代金目的の誘拐の可能性もある。以前から、イラクでは誘拐ビジネスが横行していた。外国人を誘拐すれば、反米勢力に売りつけられるだろうと考える輩もいるかもしれない。誘拐ビジネスは特にサダム政権崩壊直後の混乱時に深刻だったが、昨年9月にイラク警察が組織されてから、治安は一定程度回復した。が、米軍が十分な証拠もなく「テロリスト容疑」で無数のイラク人を拘束していく中、イラク警察もこうした作戦に協力したため、反米勢力の怒りを買ったと思われる。イラク警察への攻撃が相次ぐようになり、辞職する警察官も増えた。そのためイラク警察の人員も不足気味だ。また、私の印象では、イラク警察は主にテロ警戒の警備に人員が割かれており、一般の犯罪の捜査にまでなかなか手が回らない様子だった。こうして、ふたたび犯罪が横行するようになってしまったようである。

　いずれにしても、犯行グループは一刻も早くマーガレットさんを解放すべきだろう。人道支援関係の民間人を誘拐したり危害を加えたりすることは、イラクの人々にとっても百害あって一利もない。

　画像は、マーガレットさん誘拐を伝えるＢＢＣ放送。
http://reishiva.exblog.jp/

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