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三原則が言う『武器』とは? (東京新聞)
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投稿者 彗星 日時 2004 年 12 月 16 日 00:51:31:HZN1pv7x5vK0M
 

特報
2004.12.15

三原則が言う『武器』とは?
『防衛庁が開発費なら該当』

 政府は新「防衛計画の大綱」と「次期中期防衛力整備計画」にあわせ、「武器輸出三原則」の緩和を打ち出した。三原則はさまざまな矛盾を抱えており、輸出管理の難しさに直面していることは周知の事実。「死の商人」にならないとの決意と激しく動く国際環境とのはざまで、三原則の形がい化が進むだけなのか。そもそも「武器」とは何か。

 「このクラスの飛行艇としては世界で唯一です」

 新明和工業(本社・兵庫県宝塚市)の社長室担当者は、自社の飛行艇「US1A」について胸を張る。

 同社は太平洋戦争中に傑作海軍機「二式大艇」を開発したメーカー。一九六〇年代までは、世界的に対潜水艦攻撃に飛行艇が有効とされていたため、海上自衛隊は独自の飛行艇開発を決め、US1Aの母体機である対潜哨戒機PS1製造を同社が受注した。

 その後、レーダー能力の向上などで、対潜作戦機は飛行艇から通常の航空機に主流が移り、救難捜索目的のUS1Aを開発した。七四年から海自が導入、現在は七機が山口県の岩国基地や神奈川県の厚木基地に展開する。

 特徴は、三メートルの波の高さでも着水できること、短距離離着陸能力が高いことなど。滑走路がなく、ヘリコプターでは航続距離が短すぎて行けない離島からの救急搬送や、外洋での遭難事故に威力を発揮し、これまでに約六百七十回の救難実績がある。US1A改はこれらの特徴を受け継ぎつつ、高々度飛行能力や機内の与圧化による快適性が向上したという。

■日の丸飛行艇積極売り込み

 同社は「US1Aを海自に納入して以降、何度か外国から輸出の引き合いがあった。今回はUS1A改となり、さらに性能アップしたことを踏まえ、海外へ輸出を目指そうということになった」と話す。

 七月には、イギリスで開かれた国際的な航空機ショー「ファンボロー・エアショー」で初めて積極的PRを実施。さっそくフランスから照会があったという。

 世界には本格的な飛行艇は数少ない。海や湖面に着水して水を吸入し、森林火災現場で大量に水をまく消防用飛行艇としての用途が主で、新明和工業もこの分野で売り込みを図る。

 だが、航空評論家の青木謙知氏は「ビジネスとして航空機を売っていくのは大変なことだ」と指摘する。

 一機が約八十億円と値段が高く、価格競争力で厳しい。また、航空機は万全のアフターサービス体制を整える必要があるが、輸出実績のない日本の航空機メーカーに世界各国でのサービス網は全くない。

 「新明和が一からサービス網をつくるのは大変。地理的に近くサービス対応可能なアジア限定で販売するなど知恵を出すべきだ」

 とはいえ、輸出の最大の足かせは、やはり武器輸出三原則だ。政府は一九七五年、国会答弁でUS1について「兵器を装備しておらず直接戦闘の用に供するものではない」と輸出可能との判断を示したが、同社は「最終的には関係省庁と詰めていくことになる」と慎重な姿勢を保っている。

 青木氏は「武器輸出規制をかけるのは経済産業省だが、同省OBは『禁輸にあたるか否かは、人を殺すか殺さないかではなく、どこが金を出したかが問題。US1A改の開発費はほとんど防衛庁が出した。となるとこれは武器だろう』と話していた。この考えは同省では主流だ」とし、輸出にはこうした考えを変更する高度な政治判断が必要になるとの見通しを語る。

 「武器」「非武器」の線引きをどこに置くかには、常にある種の悩ましさがつきまとう。政府は九七年十二月、対人地雷探知機、除去機については三原則の対象外とすることを官房長官談話として発表した。

■現場の実感と距離ある議論

 地雷処理が専門の防衛庁OBは「対人地雷だけに限定するのはあれっと思う」と疑問を投げ掛ける。活用できる範囲がきわめて限定されるからだ。

 「対人地雷関連は非武器、対戦車地雷関連は武器ということだが、通常、地雷原には対戦車地雷と対人地雷が混合してまかれている。対戦車地雷をまいて戦車の突進を防ぎ、その地雷を掘り起こされないように周辺に対人地雷を埋めてある。対人地雷だけを選んで除去するということになると、除去機が対戦車地雷を踏んでしまったとき、安全性、防護性は大丈夫か。メーカーに聞いてみても、三原則のからみで触れてはいけないことのようで、明確な答えが返ってこない」

 三原則の対象外を「対人地雷」に限定した理由を経産省に聞くと「恐らく対人地雷全面禁止条約に署名したとき、同時になされた決定だからだろう」と言う。

 前出の防衛庁OBは「対人地雷だけが埋まっているところもあるだろうが、そういうところの多くは車は入れない場所で、除去機も入れないのではないか」とし、現場の実感とはかけ離れた議論だと指摘した。

 軍事評論家の江畑謙介氏は「武器」「非武器」だけでなく、「軍」「民」の線引き自体が困難と話す。

 「一見、軍事兵器とされるものはすべて輸出がだめだと規制されてきた。しかし民生品でも軍事的な価値を持つ。一見平和的に見えるものが軍事目的で使われているのが現実だ」

 日本製の船舶用ナビゲーションは高品質で世界中に輸出されているが、ナビゲーションに軍事用も民生品も区別はない。トヨタのピックアップトラックは中東の武装勢力なども使っている。ハイビジョンの技術も精密誘導装置に使われる可能性はある。

 「本当に制限というのなら、そういう現実を野放しにしていいのかとなる。頭だけ土に突っ込んで『私は何も知りません』と言っているようなものだ」

 江畑氏はまた、輸出を計画している救難飛行艇US1Aについて「国内では一年に一機とか二年に一機という調達なので、えらく高くなっている。輸出すれば単価が下がり、防衛費も圧縮できる」と言う。

■個別に判断も基準は不明確

 三原則の緩和で今後、米国と共同開発・生産を行うミサイル防衛(MD)以外の武器輸出の範囲は、個別事例に応じて判断されることとなる。すでに、インドネシアなどは海賊対策として海自の退役艦の提供を求めているが、それを判断する基準は明確ではない。

 独協大学の竹田いさみ教授(国際政治学)は「(原油タンカーなどの主要航路である)マラッカ海峡の海賊対策について言えば、警察権行使のための巡視船などの援助はあってもいい。ただし、あくまで警察力に限定して、軍事目的に利用されないよう監視システムや人材育成システムが併せて必要だ」との立場だ。

 そのうえで、こうくぎを刺した。「何でも『ノー』だと、かえってなし崩しになり、いろんなことが可能になってしまう。原則を決める議論をしていくべきだ」

 ◆メモ 武器輸出三原則

 佐藤栄作首相が1967年4月の衆院決算委で(1)共産圏諸国(2)国連決議で武器等の輸出が禁止されている国(3)国際紛争の当事国、その恐れのある国−への武器輸出を認めない原則を表明。76年2月、三木武夫首相が対象国以外にも「武器輸出を慎む」、武器製造関連設備の輸出は武器に準じるとの政府統一見解を示した。

 中曽根康弘政権の83年1月、米国への武器技術供与の道が開かれ、98年12月には米国とミサイル防衛(MD)の共同技術研究着手を決定。2004年12月、MD用新世代迎撃ミサイル開発・生産で部品の対米輸出を認め、(1)米国とMD以外の共同開発と生産(2)テロや海賊対策支援−について「個別案件ごとに検討」と緩和を決めた。


http://www.tokyo-np.co.jp/00/tokuho/20041215/mng_____tokuho__000.shtml

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