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社説:戦後60年で考える「米国とイスラム」 (毎日新聞)
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投稿者 彗星 日時 2005 年 1 月 08 日 10:00:19:HZN1pv7x5vK0M
 

社説:
戦後60年で考える「米国とイスラム」

 泥沼というより凍土が広がっているようだ。平和の芽は地面の下で死に絶えたのか。芽はあっても、やせた土には育てる力が残っているのか−−。騒乱が続くイラクとパレスチナを眺め、米国に視線を移す時、そんな不安に襲われる。

 時計を戻してみよう。91年の湾岸戦争が終わった時、アラブ諸国は競って米国との関係強化へ動いた。イラク軍が撤退したクウェートでは星条旗があちこちに揺れ、白いガラベーヤ(アラブ風の寛衣)を着た男性とカウボーイ(米国)が手をつないで踊る絵も目に付いた。アラブと米国が何の違和感もなく協調していた。

 戦争の大義もはっきりしていた。クウェートを解放し、イラク領への侵攻は最小限にして撤収した米軍には、本懐を果たして吉良邸を後にする赤穂浪士のような潔さがあった。浪士たちと違うのは、当局(国連安保理)から軍事行動のお墨付きを得ていた点である。少なからぬアラブ諸国が米軍と一緒に戦ったことは、今日の冷え切った米・アラブ関係から見れば、夢のような出来事だった。

 <変わった米国の態度>

 湾岸戦争からイラク戦争に至る12年で、イスラムに対する米国の態度は明らかに変わった。湾岸戦争時、聖地を擁するサウジアラビアを拠点とした米国はイスラム世界の感情に細心の注意を払った。今のイラク駐留米軍は、作戦遂行に際してイスラムの施設や行事に特に気を配っているようには見えない。イスラム寺院への攻撃は日常化し、米兵によるイラク人虐待などの不祥事も目立つ。

 特に、イラクの刑務所で米兵がイラク人男性の首にひもを巻き、犬のように扱っている写真などは全世界に大きな衝撃を与えた。基本的な礼節の欠如、モラルの荒廃であり「文明の衝突」というにはお粗末だが、過激派が「イスラムへの冒とく」などとして報復の根拠にするのは自明である。「テロとの戦争」を推進する米国自身がテロを呼び込むのは、絶対に避けなければならない。

 同じことは、もう少し大きなスケールでも言える。国際テロの黒幕、ウサマ・ビンラディン容疑者は昨年11月の米大統領選の直前に声明を出し、イスラエルのレバノン侵攻(82年)が米同時テロを企てる動機の一つになったことを明かした。この侵攻で2万人近い人々が死亡し、多数のパレスチナ難民がキリスト教右派民兵に虐殺される事件も起きた。虐殺の責任を取る形でイスラエルのシャロン国防相(現首相)が辞任している。

 侵攻を受けて安保理がイスラエル非難決議案を審議したのは当然である。だが、米国は決議案を拒否権で葬り、同盟国のイスラエルを擁護する。ビンラディン容疑者の言葉を信じれば、こうした米国の対応が約20年後に同時テロを招いたことになる。

 どう解説しようと無差別テロは許されないが、テロリストに口実を与えない社会にする努力も必要である。「テロ反対」と叫ぶだけでは社会的不合理は解消しない。イラクの次はイラン、その次はシリアなどと、米国が意に染まぬ政権を次々に倒してもテロの土壌はなくならない。「イラクを手始めに中東を民主化する」という壮大な構想を描くのもいいが、米国としてはイスラエルへの「無条件の支持」を見直す方がテロ抑止のうえではるかに効果的だろう。

 アラブの政権はイスラム的な雰囲気をまとっていても、実際は世俗的な政体がイスラム勢力の批判や破壊工作を抑え込んでいる構図が一般的である。反政府勢力が欧米的な意味での民主化勢力とは限らない。例えばイスラム原理主義組織ハマスの幹部は、アラブ諸国は植民地の恣意(しい)的な線引きによって生まれ、各国の統治者は「移植された指導者」に過ぎないと主張する。ハマスの究極の目標は、アラブを一体化してイスラムに基づく統治を行うことだという。

 <二つのベクトルの行方>

 こうした勢力の広がりを思えば、中東での独裁政治の崩壊は、その国を一気に復古的な体制に導く可能性がある。また、原理主義の父とも呼ばれるエジプト人のサイド・クトゥブ(1906〜66)が説いたように、イスラム世界には反イスラム的な社会を「現代のジャーヒリーヤ(無明時代)」とみなし、これと戦うことこそ信者の義務とする考え方が根強い。イスラムというベクトルを力で抑え込もうとするのは賢明ではない。

 一方の米国には、自国を特別な存在とする「例外主義」のベクトルがある。自らを「山の上にある町」(新約聖書マタイ伝)になぞらえ他国の模範になろうとする限りでは美徳である。だが、自国の価値観を普遍的なものとし、他の国々に「米国のようになれ」と勧めて回るのは、米国の「抜きがたい悪癖」だと司馬遼太郎氏は指摘している(「アメリカ素描」)。

 米国の単独行動主義は、ブッシュ政権になって突然生まれたものではないが、キリスト教右派やネオコン(新保守主義者)との密接な関係が政権の宗教的な側面を強調し、イスラム世界の警戒と反発を増幅したことは否めない。

 今こそ対話が必要である。4年前の就任式典でブッシュ大統領は、「ごう慢さ」を排して世界に関与する決意を示した。2期目はアラブ・イスラム世界との率直な対話に努めてはどうか。米国とイスラム世界のベクトルは衝突必至に思えるが、価値観の違いが新たな価値を生むこともある。

 戦後60年。文字通り激動を続けた中東は、1月のパレスチナ自治政府議長選、イラク移行国民議会選を通じて新たな節目に直面する。凍った大地に春風を送るような対話が必要だ。

毎日新聞 2005年1月8日 0時20分

http://www.mainichi-msn.co.jp/kokusai/mideast/news/20050108k0000m070138000c.html

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