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『ブッシュの戦争』ウルグァイの作家エドゥアルド・ガレアーノの言葉 -2003.04.15.S.Shimizu訳
http://www.asyura2.com/0411/war65/msg/846.html
投稿者 乃依 日時 2005 年 1 月 11 日 16:44:09:YTmYN2QYOSlOI
 

http://www.shgshmz.gn.to/shgmax/public_html/review/20030415_nowar.html


 絶対的正義など、もうこの世界のどこにもないと、19世紀の古風な哲学に反対する別の哲学精神が語りだし、その眼差しが身体に迫っていったのは、もうだいぶ昔のことですが、今、政治に必要とされているのは、舞台裏の情報捏造とか愚民策動、あるいは勢力争いの投票作戦といった、出来の悪い虚構の演出じゃないくて、何かもっとましな、しかし、もうすでに賞味期限がとうに過ぎてしまった古風な精神なのかも知れません。《理》よりも《義》が人間の自己保存を助けてきた…、それはそうだが、肝心の《義》がどこからもたらされる《義》なのか、それが問題なのです。
 動物界にも政治をする動物がいるけど、人間という動物の政治の方法は、人類の歴史がはじまってからずっと、正義をいかにして押し通すかの問題だったのであり、それは人間の強欲の進化の姿を代弁してきたのかも知れません。
 なにしろ、民主主義の学校では、政党の正義も宗教の正義も教えないというルールがあるのですから、始末が悪いのです。始末が悪いというのは、つまり、それに代わる教育的正義もまた教えなくていいと、取り違えられやすいケースが多いからです。
 政治を批判することは民主主義の唯一のよりどころであり、誰にも許されていることですが、批判する精神よりも、批判を具体的に示す対案を理解する肝心の精神の公平さや慎みといった、なんでもない躾みたいなことが、民主主義には一番つくりにくい弱い側面なのかも知れませんね?まずは、つぎの文章を読んで、あなたの言葉を発してみて下さい…、もし声が出るなら…。


しげさん

『ブッシュの戦争』
ウルグァイの作家エドゥアルド・ガレアーノの言葉
  昨年、この戦争を煽る際、ジョージ・W・ブッシュは「われわれは地球のいかなる暗い片隅でも攻撃する準備ができていなければならない」と叫んだ。それで、イラクは地球の暗い片隅なのだ。文明はテキサスで生れ、自分の仲間達が文字を発明したとでも、ブッシュは思っているのだろうか…。ニネヴェの図書館、バベルの塔、バビロンの空中庭園のことを知らないのだろうか…。バグダッドの千夜一夜物語を読んだことがないのだろうか…。

  彼を地球の大統領に選んだのは誰なのだ…。わたしは個人的には、そんな選挙の投票結果を聞いたことがない。あなたは、いかがですか?われわれは耳の聞こえない大統領を選んだのだろうか?自分の声のこだましか耳に入らない人間を選んだのだろうか?全世界の血管の中で何百万もの叫びが轟いてやまないのが聞こえないのだろうか?

  彼は、ギュンター・グラスの熱烈な忠告に耳を傾けることすらできなかった。自分の父親がとても大切なことだと考えたいくつかのことを証明するためにブッシュは行動している…、ということを知っているこのドイツの作家は、イラクを爆撃するよりも精神科医の診察を受けたほうがよいと、彼に忠告したのだ。1898年、大統領ウイリアム・マッキンレーは、フィリッピン諸島の住民を文明化しキリスト教化するために、フィリッピン諸島から手を引かないよう、神が命じたのだと公言した。マッキンレーは夜、ホワイトハウスの廊下で神と話をしたと付け加えている。1世紀の後、ブッシュ大統領は、イラクの征服については神が自分に味方している、と明言した。何時、どこで彼は神の声を聞いたのか?どうして神は、ブッシュとローマ教皇に正反対の命令を与えることができたのだろう?

  戦争は国際社会の名において宣言され、国際社会は戦争だらけだ。そして常に、戦争は平和の名において宣言される。何も石油のためじゃない。もし、イラクが石油ではなくラディッシュを生産する国だったら、誰がこの国を侵略しようなどと考えただろうか?ブッシュやディック・チェイニーやとても優しいコンドレエッツアは、石油産業に対する彼等の思い責任を潔く手放しただろうか?なぜトニー・ブレアは、イラクの独裁者にあれほどの熱意を示すのだろうか?30年前、イギリス肝いりのイラク石油会社を国有化したのはサダム・フセインではなかったのか?アズナールは分け前の配分でどれだけの油田をもらいたいのだろうか?

  消費社会は石油に酔い、石油を絶たれる悪夢でパニックになっている。イラクでは黒い長寿薬な有り余っているからほとんど値打ちがない。ニューヨークでの平和運動では、プラカードにこう書いてあった。「なぜわれわれの石油は彼等の砂漠にあるのか?」と。合衆国は勝利の後、ながく軍事的占領を保持する。その将軍たちはイラクに民主主義を樹立する任務を持つ。この種の民主主義はハイチで、ドミニカ共和国で、ニカラグアで与えられた民主主義と同じではないか。彼等は配置を19年間占領し、その間、フランソワ・デュヴァリエの独裁を許した軍事力を磨き上げた。彼等はサントドミンゴを9年間占領し、その間、ついにラファエル・レスニダス・トルヒロの独裁政権ができた。彼等はニカラグアを占領し、その数年間に、ソモザ一族を権力の座につけた。

  ひとつの王朝が海軍の介入によって権力の座につき、そして1979年、民衆の怒りによって追い払われた。その時、ロナルド・レーガンは馬にまたがり、自分の国をサンディニスタ革命運動の大きな脅威から解放するために襲い掛かった。ニカラグアは貧しい国の中の貧しい国であり、国中でエレベーターが5基とエスカレーターが1基しかないが、それも壊れている。この点を明記すべきだが、この国は明らかに危機に陥っている。レーガンが長広舌を振るっている時、テレビは合衆国の地図を映し、赤い画面反転して、侵攻間近のサインを写す。ブッシュ大統領はパニックを植え付けるこうした言説に感化されたのだろうか?ブッシュはイラクが危ないと言い、レーガンはニカラグアが危ないと言う。

  侵攻の数日前、雑誌の見出しに「合衆国はあらゆる攻撃に耐える準備が整っている」というのがあった。防護プラスチックやマスク、放射線よけの薬の記録的な売れ行き…。なぜ死刑執行人が受刑者よりパニックになるのか?集団的ヒステリーの風土のせいか?こうした行為の結果を恐れてか?あるいは、もしイラクの石油が地球から燃え尽きるかも知れないと思ってか?この戦争は国際テロリズムを活気づける恐れはないのか?

  サダムがアルカイダの狂信者たちと通じているということが言われる。サダムは自分の目をえぐりかねない烏どもを自分の懐で育てるような危ないことをするだろうか?イスラム原理主義者たちはサダムを嫌悪しているのだ。ハリウッド映画の中ではこの国は悪魔の国になっているが…、多くの学校で英語が教えられ、イスラム教国の大部分は、キリスト教信者が首に十字架のペンダントを下げて歩き回ることを禁じていない。町では、パンタロン姿とか、胸・背を大きく露出した女性に会うこともまれではない。ツインタワーへ自爆したようなテロ攻撃には、イラクの臭いすらない。大部分は合衆国の世界で一番の顧客であるサウジの人々だった。ビンラディンもサウジの人だ。世界中が彼を追跡しているというのに、彼は馬で砂漠に逃れ、手におえない知にたけた大悪人であると、ブッシュが叫ぶたびに返事をかえしてくる。

  ドワイト・D・アイゼンハワー大統領が1953年、《予防戦争》はアドルフ・ヒトラーの発明だと言ったことをご存知だろうか。アイゼンハワーは特にこう言っている。「あれと同じようなことを私に提案するような人の言葉は、わたしは信じないだろう」と。合衆国は地球上で最も大きな兵器製造・販売国である。この国だけが民間人に核爆弾を投下した国なのだ。そして、この国は常に伝統的にどこかと戦争している国なのだ。[ゴチック 清水]

  世界の平和を脅かしているのは誰か?イラク…?イラクは国連の決定に従ってこなかった?ブッシュはもっと国連にしたがっているのか?彼は国際的法秩序を無視したばかりではないのか?この点ではスペシャリストであるイスラエルはどうだろう。イラクは17年間、イスラエルは64年間、従わなかった。ブッシュは、その最良の同盟国を爆撃するだろうか?イラクは1991年に、先代のブッシュが引き起こした戦争で破壊され、その後の湾岸封鎖のために飢えている。国の大部分が破壊された国が、どんな大量破壊兵器を隠し持つことができるのだろう…?
  イスラエルは1967年以来、パレスチナ人の土地を占領し、名実ともに核爆弾を保有しながら何も言われない。もう一つの同盟国であるパキスタンは、テロリストの大きな供給源であり、自らの核弾頭を見せびらかしている。これでもイラクが敵とされるのは、こうした兵器を「持っているかもしれない」からである。もしそうだったら、大声を上げてそれを宣言している北朝鮮を、どうして攻撃しないのか?

  生物・化学兵器について言えば、クルド人に対して使用された猛毒ガスを生産する材料は、誰がサダム・フセインに売ったのか?それをばら撒くヘリコプターは誰が売ったのか?どうしてブッシュはその取引書類を隠すのか?
  イラン・イラク戦争の際、クルド族との戦争の際、サダムは今日のような独裁者ではなかった。ドナルド・ラムズフェルドはサダムを友好訪問さえしている。なぜクルド人は昔ではなく今、われわれの心を乱すのか?またなぜ、特にイラクのクルド人だけがそうなのか?トルコのクルド人はどうなのか?
  国防長官ラムズフェルドによれば、自分の国は致死量のガスを使わないのだという。それはもしかして、プーチンがモスクワ劇場の人質たちの救援に使用し、多くの犠牲者を出したものと同じような致死量ではないということなのか?国連の廊下にあるピカソのゲルニカの複製には、数日間、カバー布がかけられた。おそらく、こうした不愉快な大型の絵が、コーリン・バウエルの演説を乱しかねないとでも思ってのことだろう。
  ペンタゴンで戦争関係報道陣に渡される数字によれば、イラクの屠刹場の大きさを隠すカバー布はどれほど長さになるのだろう?イラク人犠牲者の魂はどこえ行くのだろう?ブッシュの宗教顧問であり神の世界を知り尽くすビリー・グラハム牧師によれば、天国にはほんの少しの場所しか…、何千ヘクタール程度しかないという。選ばれるもの絶ちは多くはない。

  なぞなぞ:天国の入場券を買い占める国はどの国ですか?

  おわりに、ジョン・ルカレの言葉を借りて結びとする。

  「ねぇパパ、人がたくさん殺されているよ」
  「お前の知っている人は誰もいないだろ…。ほら、みんな外国の人ばかりなんだよ」

2003.04.15.S.Shimizu訳

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