★阿修羅♪ 現在地 HOME > Ψ空耳の丘Ψ39 > 187.html
 ★阿修羅♪
次へ 前へ
 昆虫の個体維持機構の解明とその開発  柳沼 利信 
http://www.asyura2.com/0502/bd39/msg/187.html
投稿者 愚民党 日時 2005 年 3 月 11 日 20:00:09: ogcGl0q1DMbpk

(回答先: W 意識現象の唯物論的定義  柳橋大輔     投稿者 愚民党 日時 2005 年 3 月 11 日 13:22:55)

昆虫の個体維持機構の解明とその開発

http://www.jsps.go.jp/j-rftf/inkai/miraikaitaku3.html

Molecular mechanisms of individual preservation in insects
プロジェクトリーダー 柳沼 利信
名古屋大学大学院生命農学研究科助教授

--------------------------------------------------------------------------------

1. 研究の目的

休眠は、単なる活動の停滞と見なされがちですが、生活史の設計プログラムに組み込まれた計画的な発育阻止です。昆虫は、固有の代謝系・制御系を発動することによって休眠という省エネルギー体制の生活型を確立し、個体維持期間の拡張を図っています。この休眠状態を確立・維持するために昆虫は環境の情報をモニターし、休眠開始と休眠覚醒の時期を設定し、個体維持期間つまり寿命の調節を行っています。

 ここでは特に、休眠の誘導・開始・維持・覚醒という休眠プログラムを発動するために、昆虫がどのように外部環境の情報を受容し、統御するのか、どのように休眠の実質化を保障するのかという分子機構を解析します。

 さらに、より高活性な休眠・個体維持制御分子を創製し、希少遺伝資源及び有用機能を有する昆虫体の安定な長期保存法の開発、また、人為的に休眠を打破し、産業昆虫を終始提供する方法の開発を目指します。


2. 研究の内容

(1)環境温度を初期情報として、休眠が実質化されるまでの情報伝達系のネットワークの解析

 カイコでは、卵期に経験した温度情報が幼虫・蛹の脳・神経系に伝達蓄積され、蛹期の食道下神経節での休眠ホルモン(24個のアミノ酸から構成)の合成分泌能を調節します。25℃を経験した場合には、休眠ホルモンの分泌が活発となり休眠性卵を、15℃の場合には、逆に非休眠性卵を準備します(図1)。産下された休眠性卵は、嚢胚後期で細胞分裂を停止し、休眠に入ります。25℃保護卵では休眠は継続しますが、5℃に2?3ヶ月間冷蔵することで休眠は覚醒します。非休眠性卵の場合には約10日後に幼虫が孵化します。

 ここでは、特に、母親の卵期の温度情報はどのように受容され、脳・神経系に伝達・統御されるのか、蛹期の食道下神経節での休眠ホルモンの合成分泌能はどのように調節されるのか、休眠ホルモンはどのように卵母細胞に作用し、休眠性を確立するのか、休眠開始はどのように嚢胚期で生じるのか等についての分子機構を明らかにします。このため、各フェーズで特異的に発現する遺伝子の探索を行い、いくつかの候補遺伝子を単離しています(図1)。同時に、休眠ホルモン遺伝子が食道下神経節で特異的に発現するcisエレメントの解析を進めています。

 一方、昆虫の休眠がカイコとは異なる発育時期に生じる例も数多く知られています。例えば、ヤママユは幼虫孵化直前の時期で、コガタルリハムシは成虫の時期に休眠します。これらの休眠誘導には、カイコとは異なる因子・ホルモンが係わるものと考えられます。事実、ヤママユの前幼虫休眠は、腸管から分泌される新規のペプチドRFとMFの作用によって誘導されます。これらの構造決定を進めるとともに、制御機構を明らかにしています(図1)。

(2)休眠固有の代謝系を発動し、省エネルギー体制を可能にする実体系、並びに低温による休眠覚醒機構の解析

 休眠の維持は、休眠固有の代謝系及び省エネルギー体制によって支えられています。カイコ休眠卵では、グリコーゲンを素にして約150 mM のソルビトールやグリセロールが蓄積され、低温安定性を保障しています。また、酸素消費量は6?l/時間/グラムという低いレベルを保っています。ここでは、固有な代謝系及び省エネルギー体制を制御する分子機構、細胞分裂及び発育停止をもたらす休眠維持機構を明らかにします。休眠開始期に発現するヒト酸化抵抗性タンパク質相同体遺伝子Bm05が単離されましたが、機能は未だ不明です。細胞分裂停止に係わる調節系の解析の一つとして、カイコnanosやpumilio遺伝子の機能解析を進めています(図2)。

 また、5℃低温を約2ヶ月間経験することによって、休眠卵は再び細胞分裂能力及び発育能力を回復します。ここでは低温処理からソルビトール脱水素酵素遺伝子の発現、グリセロールキナーゼ酵素活性の発現までを結ぶ分子機構、新規低温誘導性遺伝子(Samui)発現調節機構を中心に解析しています(図2)。SamuiはBAG-domainを持ち、Hsp70と結合することから、BAG-protein family の一員で細胞内の情報伝達系、特に低温情報の伝達に係わる可能性が示唆されています。

 カイコと異なる休眠の場合でも、休眠維持の実体系、休眠固有の代謝系の発動・省エネルギー系の確立・細胞分裂停止等には共通した因子が係わるものと考えられます。コガタルリハムシの場合には、成虫休眠期に特異的に発現するペプチドdiapausinを単離しています(図2)。貝毒ペプチドに類似した構造を持つことから、休眠維持との関係について機能解析されつつあります。

(3)高活性な新規個体維持制御物質の創製

上述のような種特異的な、又は普遍的な休眠制御因子に基づき、より高活性な休眠・個体維持制御物質を創製し、休眠期間を拡大させ、または本来休眠しない昆虫を休眠化させ、希少遺伝資源の長期保存・維持方法、有用機能を有する昆虫体の長期保存法の開発を図ります。
まず、休眠ホルモンの改変を行い、活性に重要な最小単位はPRL-aであることを明らかにし、蛹経皮から効果を発揮するホルモン剤の開発を進めています。また、協力剤としての脂溶性ペプチドを発見しています(図3)。


3. 研究の体制

期間:1999年8月?2004年3月
構成:プロジェクトリーダー1名
プロジェクトメンバー3名(他ポストドク3名)
実施場所:名古屋大学大学院生命農学研究科生物機構・機能科学専攻
                        (資源昆虫学研究室)

岩手大学農学部農業生命学科(応用昆虫学研究室)
三重大学生物資源学部生物圏生命科学科(生物機能化学研究室)
--------------------------------------------------------------------------------
TOP
日本学術振興会
http://www.jsps.go.jp/

 次へ  前へ

▲このページのTOPへ      HOME > Ψ空耳の丘Ψ39掲示板



フォローアップ:


 

 

 

 

  拍手はせず、拍手一覧を見る


★登録無しでコメント可能。今すぐ反映 通常 |動画・ツイッター等 |htmltag可(熟練者向)
タグCheck |タグに'だけを使っている場合のcheck |checkしない)(各説明

←ペンネーム新規登録ならチェック)
↓ペンネーム(2023/11/26から必須)

↓パスワード(ペンネームに必須)

(ペンネームとパスワードは初回使用で記録、次回以降にチェック。パスワードはメモすべし。)
↓画像認証
( 上画像文字を入力)
ルール確認&失敗対策
画像の URL (任意):
投稿コメント全ログ  コメント即時配信  スレ建て依頼  削除コメント確認方法
★阿修羅♪ http://www.asyura2.com/  since 1995
 題名には必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。
掲示板,MLを含むこのサイトすべての
一切の引用、転載、リンクを許可いたします。確認メールは不要です。
引用元リンクを表示してください。