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1998.3.5「日本経済の現状」 宮澤喜一 【日本列島に日銀ウィルス紙幣をばらまけ!戦略】
http://www.asyura2.com/0502/hasan39/msg/401.html
投稿者 愚民党 日時 2005 年 3 月 08 日 14:23:17: ogcGl0q1DMbpk

(回答先: マネーサプライ増える状況をつくる必要=竹中担当相 (ロイター) 投稿者 愚民党 日時 2005 年 3 月 08 日 11:04:25)

1998.3.5

「日本経済の現状」

衆議院議員
宮澤喜一

http://www.21ppi.org/japanese/activity/19980305/miyazawa.html

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 今、日本の国民は国の経済の成り行きを、自分自身の生活の危機だというふうにとらえています。このようなことは1970年代の二度の石油危機以来初めてです。自分の銀行預金は国が全額保障してくれるというのを知っているにもかかわらず、預金を引き出して自分の家の金庫に移したりする、そういう現象は過去の危機のときにもありませんでした。昨年の11月以降大型の金融機関の倒産が続いて、国民が非常に不安を感じた。また金融機関同士もお互いの間を疑うようになった。その結果、日本の金融機関は国際的に金を借りるときに高い金利を払わされる−ジャパン・プレミアム−というものも発生しました。

  また政府は金融機関のリストラを実施するため、早期是正措置を昨年の夏頃から、今年の3月をメドに実施していますが、これによって銀行は政府の定める資本比率に適合するように昨年の夏頃から資本比率の向上を目指して努力をしていますが、その結果は資産である貸し出しの回収を非常に強くやるようになっておまけに資本の一部を形成する株式の価格が下がっていますから、なおさらその埋め合わせに貸し出しの回収をする、新規貸し出しはしない、ということで中小企業のみならず大企業も非常なクレジットクランチになっている。そして更にその結果また株価が下がっている。こういうことの循環になっています。

  こういう異常な事態に対処するため政府は、今年異例のことですが国会を1月早々に開きました。そしてこの現状を打開するために、3月末を一応のターゲットデートとしていろんな必要な法律、補正予算を成立させました。その詳細は後で説明しますが、これらの施策の中には市場経済の原則から申せば決してほめられない、これからリストラをやってビックバンに臨もうというときに、それに矛盾をするものがあります。従って、目的を達しましたらこれらの施策はできる限り早く止めるべきものであります。それにもかかわらずこういう措置を取ることが止むを得なかった日本の現状を、先進各国にもまた国際機関にも理解をしてほしいと考えています。

  他方で、昨年7月のはじめからアジア諸国の為替不安が始まりましてわが国にとってもう一つ頭の痛いシリアスな問題になっています。わが国はIMFや米国といっしょに救済に当っております。幸い外貨が十分ありますからわが国として期待された役割を果たしつつあるし、先日のG7の決定の報告にそって具体的な協力を致します。しかしこれらの国が通貨を切り下げて輸出に努力する結果、全体的にアジア経済がデフレションになることは避けがたいことと思われます。これらの国々の中には比較的早く通貨あるいは株式市場が安定しそうな国と、政治問題が絡んでいるためにそれがなかなか簡単でないと思われる国と色々あるように思われます。

 今の段階で申し上げますと、今日まで香港は対ドルのペッグを維持しています。そのために金利が非常に高くなり、株式市場や不動産市場には相当の影響が出ておりますが、今のところこのペッグを堅持するといっている。また中国についてはこのたびの通貨危機は1994年に中国が3分の1ユワンを切り下げた、それが遠因になっているといわれています。各国の輸出価格が下がってきますから中国は輸出競争に苦労をすることになりましょうが、切り下げないで頑張ると中国当局は何度も言明しています。中国は香港市場で国営企業の民営化の株式発行をしようとしていましたから、それに影響が出ると思われます。 いずれにしても東南アジアの国々が通貨を切り下げてきました上に、わが国自身の経済がこのように不況ですから、日本がこれらの国々の輸出を吸収することは容易ではありません。その上に、わが国自身が不況の結果すでに対外輸出が、ことに対米輸出が増えていますから、アメリカの立場からするとそれらを全部アメリカの市場が吸収しなければならないということになりかねません。それはアメリカの貿易赤字の一層の増大につながります。日本も一生懸命、内需の振興あるいは、東南アジアからの輸入の拡大をやりますけれどもそれには限度があります。従ってアメリカの政府当局、金融当局者から日本に対して、内需を拡大して対応してくれとしばしば要請があることは十分理解できます。わが国としても3月までの当面の危機を乗り切ってなおそのあと、経済の回復が非常に遅いあるいは停滞的であるという場合には、なにかの財政金融措置を更に講じなければならないかもしれない。今来年度の予算を国会で審議している途中ですからそれを今言うことは適当な時期ではない。しかしそういうことが先々あればあえてそれを辞すべきものではないと私は思っています。このことは橋本総理が今まで進めている財政再建路線 と矛盾をする、それは政治的な問題になる、という指摘がありますけれども、私は入用なことはもし必要であればしなければならないと思います。そのことから首相が非難されたりして困難な政治問題が発生するとは思いません。

  なお、3月から積極的に推進すべきこととして、セキュリタイゼーションがあります。銀行の持っている貸し付け債権あるいは不動産等々を証券化するということはわが国ではあまり行なわれていません。アメリカより十数年遅れていると言われていますが、このセキュリタイゼーションの道をなんとか開いていきたい、それによって投資家にとっては適当な金融商品が生まれます、金融機関にとっては自分の持っている債権や不動産をセキュリタイズして公開することができます。アメリカで十何年行なわれているそういう方法を日本としても開発をしたい。そういうことを3月以降の課題として検討をしております。日本には個人の金融資産が1200兆円ありますので、このように国内の法律や税制の条件整備や、また4月から外国為替管理が自由化されることもあって、米国の投資銀行を中心にこの分野の専門家や資金が東京市場に集まりつつあります。

 ここで日本の金融システム全体を改革するため、今日本が取り組んでいる政府の果たすべき役割の見直し及び金融システムの強化についての施策についてお話したいと思います。

 まず第一は、行政当局と金融機関の癒着や行政による過剰介入が、これまでの不適切な問題先送り、意思決定システムの不透明性などを招いたという反省から、次のような改革を行ないます。まず、今年6月、内閣に金融監督庁を設立し、大蔵省から独立して金融機関の検査監督を行ないます。検査監督に当っては早期是正措置や米国SEC並みのディスクロージャー基準の導入により透明性、公正性を高めます。

 第二に、日本経済の重い足かせになっている金融機関の不良債権問題を抜本的に処理し、金融システムの強化を図ります。ここでは、大恐慌時代を含めた米国のこれまでの経験から得られる知恵を、最大限有効に活用するつもりです。

 まず従来の政策を改め、痛みが伴おうとも市場で通用しなくなった金融機関を「護送船団」の中で守ることはこれからは行ないません。現実に、北海道拓殖銀行、山一証券などの破綻はやむを得なかったものと考え放置しました。その結果、預金者保護は一層大事な課題となりますので、今回の預金保険機構に用意した公的資金30兆円スキームの中で、ペイオフが開始される2001年4月に至るまでは総ての預貯金を100%保護することとし、破綻処理の際の預金者保護に備えて17兆円の公的資金を用意しました。

 また、同時期に限り、優先株や劣後債の引き受けを通じて金融機関の資本を増強するために13兆円を確保し、この資金を必要な場合に限り短期間だけ投入することによって、日本の金融システムに対する失われた「信頼と確信(trust and confidence)」を回復することとしました。

 もちろん最も大切なことは、あくまでも自助努力による企業のリストラや業界再編を通じた金融機関の競争力強化であって、今回の資本投入措置は決して個別金融機関の救済やいわゆる「護送船団方式」を目的としたものではありません。この点は昨年12月の原案作成段階でも自民党議員間で最も議論が白熱したところでしたが、わが国のすべての銀行が海外でジャパン・プレミアムを要求されている現状は「日本の金融システム」全体の危機であるという認識に立って、投入対象ケースは(ア)わが国金融システムへの信認の著しい低下を回避する(イ)金融機関の連鎖倒産による地域経済の崩壊を回避する、という二点に目的を限定した上で、政府と独立の権限を持つ審査委員会にその基準決定を委ねました。 「不良債権処理促進」並びに「ビックバンを控えた金融再編等」に対する個別金融機関の取組を政府としてもバックアップすることを目的として、資本投入に関する審査基準がこの程策定されました。

 資本投入は銀行の申請によりこの審査基準に基づき第1回分は3月末までに審査決定されますが、当面の決定はマネーセンターバンクが中心になるものと思われます。米国にくらべ日本では企業の資本調達に占める銀行借入のウエイトが格段に高いため、自己資本規制及び金融機関破綻を契機とするいわゆる貸し渋りが甚だしくなっている現在、この資本注入はそれをある程度緩和する作用を及ぼすことを期待しています。

 わが国は3月末が政府及び多くの会社の決算期ですし、4月1日から為替が事実上完全に自由化されます。そういう理由で政府としてはこの3月いっぱいまでの時期が一番注意をしなければいけないときだと思っております。4月になれば大丈夫だと申すわけにはいかないのですが、そこまで行けば−ブリージングスペル−、一息つけるということです。

 1998年の日本経済全体を通じて予測を致しますと、1%の成長があればよしとしなければならないと思います。基本的な原因はもちろん金融不安がありますが、それは別にしまして全体として日本経済はインベントリーが過大であります。消費者にとっては信用状態が不安であるということの他に自分の持っている土地、株が非常に下がっていますから資産デフレが消費者の消費行動を制約し、弱気になっています。企業の設備投資も住宅投資も不振である。もっとも企業の利益は底固いものがありますが、新しい設備投資をするにいたらない。今年のわが国の経済はなかなか容易なことではないというのが本当のところであります。

 以上、日本が今容易ならざる状態にあるということを率直に申し上げましたが、私はこの事態は21世紀を迎える日本がどうしても乗り越えなければいけない試練であると思っております。敗戦からここまで国を造った我々がこの事態を乗り切れられないはずはない、それについては私は決して悲観をしていません。そしてこういう苦しみの中から日本国民は幾つかのことを学びつつあります。その一つはこういう苦労の中から日本国民がだんだん消費者としての自覚を強めつつある。経済はもちろん政治も、実は消費者のためにある、そういう主張が国民の間に強くなっています。金融関係のビックバンというのは何も証券会社や銀行のためにやるわけではない、消費者が貯蓄や投資に関してそれだけのたくさんの選択を持つ、そういうことがビックバンの狙いであって、従って、その選択が日本の金融機関によって与えられようと、外国の金融機関によって与えられようと日本の消費者がそれによって利益を得ればそれでいいんだと、だんだん国民が考えるようになってきましたし、政府自身もそう考えざるをえなくなってきている。今までの統制がディレギュレイトされなければならないと言うのは消費者の利益のためである。今まで役人がやってきた富国強兵というような考えはもう過去のものになりつつある。もちろん消費者もそれだけ賢くならなければならないわけですが、そういう時代が21世紀だということを日本の消費者はかなりはっきり自覚しつつあります。今日本のキャッチワードは「ディスクロージャー」「トランスバランシー」というようなことです。それは消費者にとっては終局的には利益になる制度ですけれども他方でこの「透明性」というのは日本人にとってはかなり厳しい、残酷なことでもある。日本はかつて「官民一体になって」というようなことを普通に言っていた国ですけれども、そうではない、はっきり物をディスクローズして、その上で国民一人一人が判断をしなさい、ということは国民一人一人にかなり重い負担を掛けることでもある。しかしそれが民主主義としての一つの進歩だ。官の保護に頼ってはならない、頼れば必ず官のレギュレイトがある。というふうに日本人は考えることがだんだんできるようになっている。

 ところで、日本は21世紀にも軍事大国にならずに世界に貢献したいと思っていますけれども、そのためにやはり基本になっているのは1996年に橋本総理大臣とクリントン大統領の間で出された「日米安保宣言」でありますし、それに基づいて行なわれております「日米防衛協力のための指針」はこれによって、私どもはただ日米だけでなくこのアジア太平洋地域における平和と安全を21世紀に向かって確保していくための、日米間の極めて明確な合意であります。またその上に立って昨年橋本総理大臣は、シベリアのクラスノヤルスクという町でエリツィン大統領といわば上着を脱いだアットホームな会合を致しました。そのときにAPECにエリツィン大統領が入りたいと言った、橋本総理は努力をしましょうと約束をして、現実に11月の末にヴァンクーバーでの首脳会議でそれが実現したのですが、そういうこともあり今年はエリツィン大統領がこれもインフォーマルな会談を日本のどこかのリゾートで橋本総理としたい、4月にはたぶん行なわれると思いますが、そういう中で日露の関係は、21世紀に向かってのシベリア開発ということも話し合われています。それと同時に昨年の秋には江沢民中国国家首席がアメリカを訪問した 。エリツィン大統領自身は橋本総理とのクラスノヤルスクでの会談の後すぐに北京にいっている。同じ頃にはわが国に中国の李鵬首相が来ています。今年か来年のはじめにクリントン大統領が北京を訪問することになるのでしょう。そのような意味で多角的な外交がここにきて活発に行なわれるようになって、わが国としても21世紀に向かって外交のいろいろな可能性を持つ、選択を持つという極めて大事な局面が展開しつつあります。もとより日米の安保体制があってのことでありますけれども、そういう意味で日本は平和と繁栄をもとめて21世紀に向かって希望をもって入っていけると思っています。

 日本の今の経済困難は大変に厳しいものですけれども、日本が沈没するわけではありません。20世紀に成功したようにまた、ここでもう一つ苦しい経験の中から世界の中で、世界平和と繁栄のために重要な貢献のできる日本を21世紀に向かって築くことに私は決して悲観的ではないことを申し上げます。

以上

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TOP 21世紀政策研究所

http://www.21ppi.org/

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