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堀江社長支持 団塊世代の思い
くじけた反骨 託す感傷？
ライブドアの堀江貴文社長の支持者は、若い世代ではと思いきや、そうでもないらしい。団塊の世代が彼の“活躍”に、熱い視線を注いでいるのだ。ニッポン放送株をめぐり大企業・フジテレビとがっぷりの“四つ相撲”を演じる姿に、何を投影しているのか。サラリーマンなら定年間近のこの世代が、「ホリエモン」を支持する訳とは−。
■『どこまで ぶっ壊すか』
「あそこまで傲岸不遜（ごうがんふそん）だと逆に大物じゃないかという気がしてくるから不思議。どこまでぶっ壊すか見てみたいから、もう少し頑張ってほしいね」
五十代後半の団塊の世代を中心に、年配の声を聞こうと、いつもサラリーマンでごったがえす東京都港区のＪＲ新橋駅前・ＳＬ広場へ。十八日午後、広場の片隅にある喫煙所で、昼の一服をしていた団体職員の男性（５７）は、堀江氏支持理由をこう話す。
「ここは昔は広場のイスに座って堂々と吸うことができたけど、これも時代だから仕方がない。古いものは隅に追いやられるんですよ。フジテレビの日枝会長と一緒」と自ちょう交じりに語る。一人息子はまだ大学生だ。「堀江氏が息子だったら？ 稼いで親孝行してほしいけど、あの態度じゃとても付き合えないね」
友人と待ち合わせしていた飲食店経営の女性（５２）は「株のことは全く分かりません。今はフジテレビの方が危ないの？ でもホリエモンがすごい賭けをやっているのは面白く見物させてもらってます。巨人に入ったときの江川（卓投手）みたいな感じでしょ」と話す。野球協約上の「空白の一日」を利用し、違法ではないと言い張った巨人と江川投手。東証の時間外取引を利用した堀江社長も似たようなものだと言う。「堀江さんがどこまで突っ張れるか」と興味津々だ。
もちろん、不支持もいる。「ネクタイもしないし背広も着ない。私たちへの挑発なわけでしょ。なんでそれを唯々諾々と受け入れなきゃいけないんですかね。世の中そんなに甘かないっていうのを見せるのがわれわれの世代の役割では」と淡々と語るのは建設会社役員（６０）。堀江氏の今回の買収劇については「不支持だし、もっというと不愉快。支持はマナー違反を奨励すること」と手厳しい。
部品会社部長（５６）は「要は、彼がやってるのはかつての横井英樹氏みたいな乗っ取り屋稼業。何でそれが受け入れられているのか、まったく分からない」とばっさり。
■「ホリエモンはどんどん踊れ」
だが一方で「どうせそのうちつぶれると思うけど、一つよかったことは、株式市場にはこんな若造に乗っ取られる恐ろしさがあるということを、みんなが思い知ったこと。そういう意味ではどんどん踊ればいいんです、ホリエモンは」と皮肉を込めた支持を表明する。
フジテレビを含めたマスコミの自業自得を説く人もいた。「マスコミが今のようなカネ中心の世の中をつくることに加担した部分もあるんじゃないか。特にテレビは。視聴率優先のふざけた番組ばっかりつくって。まじめに額に汗して働くなんてバカバカしいと思う風潮をつくったし、政治や社会への無関心を呼んだ。その申し子が堀江氏だ。だからそれを産んだテレビが今さら放送の公共性とかいっても、支持できない」と語るのは、地方公務員の男性（５４）だ。
五十代の堀江氏支持は意外といる。不支持でも彼の行動で株式市場やメディアの問題点が明らかになった点は評価している。
テレビ朝日の「報道ステーション」（先月二十八日放送）による調査（千人が対象。有効回答率５３・４％）では、「ライブドアの行動を支持するか」との問いに、支持は二十代４９％、三十代５２％、四十代４６％に比べ、五十代が６３％と群を抜いた。週刊朝日（三月十八日号）の団塊の世代を対象とした調査（回答者五百十八人）でも、同様の問いに「支持」が６４・１％、「支持しない」の１８・９％と「分からない」１７・０％を上回るなど、この世代の堀江氏支持は高いようだ。
■ベトナム戦争、受験、全共闘…
団塊の世代は戦後直後の一九四七年から四九年に生まれた世代を指す。この世代の人口は約七百万人にもなる。団塊の世代を象徴する代表的なキーワードは「グループサウンズ」「受験戦争」「ベトナム戦争」「全共闘」などだ。
当時流行したグループサウンズの音楽を聴きながら、受験戦争をくぐり抜けてきた。その一方で、ベトナム戦争に疑問を感じ、全共闘運動にものめり込んでいく。そんな反骨精神にあふれた彼らも就職し、高度経済成長を支えた。その世代がなぜ堀江氏支持なのか。
「団塊の世代は企業の中にあって、企業を変えようとしてできないまま妥協しながら生きてきた。それだけに、定年を控えた今、自分たちができなかったことを抵抗にあいながらもやろうとしている堀江氏に支持を送っているのではないか」と分析するのは東京工業大学の橋爪大三郎教授（５６）＝社会学＝だ。
■『企業の抑圧…変革に共感』
さらに橋爪氏は言う。「これまで日本型資本主義では、企業の権力が株主にあるのか、経営者にあるのかあいまいなまま従業員は抑圧されてきた。堀江氏が支持されるのは、そのあいまいさを変え、『企業は株主のもの』とはっきりさせようとしているからだ」
小説家の三田誠広氏（５６）は「昨年、プロ野球の参入には失敗したが、社会的に認知され、支援者を増やしている。われわれの若いころは戦略なき反抗だったが、堀江氏は『負けても次がある』という長期的な戦略を立てている。なかなかやるじゃないかという印象をもっている」と評価する。
「団塊老人」という著書がある三田氏は、この世代の老後の生き方に関心を寄せる。「企業のお情けで定年を延長するのではなく、自分らしい生き方を模索している団塊世代の人は、堀江氏の挑戦する姿勢を参考にしている」という。
■敗北引きずり…『改革者と持ち上げ無責任』
だが「この世代は堀江氏を支持しているんじゃない」と話すのは、野球評論家の江本孟紀氏（５７）だ。「若いころ既成秩序を壊そうと挑戦したのに失敗した。その怨念（おんねん）を堀江氏が晴らしてくれると幻想をもっているだけだ」と指摘する。江本氏は二十年以上、ニッポン放送でナイター解説者を務めているが、「堀江氏が同放送の経営権を握ったら野球解説をやめる」と宣言、堀江氏にも批判的だ。
プロ野球界には年齢ごとにチーム横断的な親睦（しんぼく）会があるというが「ボクが生まれた（昭和）二十二年会も、二十三年会もない。バラバラなんですよ。激しい競争を勝ち抜こうとして他人を信用しない。それでいてひがみっぽい」と話した上で、同世代に向けて厳しい言葉を投げつける。
「団塊の世代は既成秩序を解体しようとして全共闘活動に励んだが、結局失敗した。自分の誤りを認めようともせず、敗北のひがみを引きずってきた。そして堀江氏のような人が出てくると、若い改革者だといって持ち上げる。無責任極まりない」
http://www.tokyo-np.co.jp/00/tokuho/20050319/mng_____tokuho__000.shtml
題名には必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。