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築数年なのに…マンション被害の嘆き 福岡県西方沖地震ルポ (東京新聞)
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投稿者 愚民党 日時 2005 年 4 月 05 日 00:57:12: ogcGl0q1DMbpk

築数年なのに…マンション被害の嘆き
福岡県西方沖地震ルポ

 福岡県西方沖地震で、震度6弱を記録した福岡市中心部では、断層付近の多数のビルが被害を受けた。なかでも中央区今泉の隣接する四棟のマンションは、壁や廊下に亀裂が走り、玄関ドアが開閉不能となるなど被害は深刻だ。補修するにも、地震保険が下りる可能性は低いという。「新耐震基準」を満たしているはずの建物被害に、住民らからは疑問の声が上がっている。 (藤原正樹)

 「地震で玄関ドアが開かなくなった。外壁はぼろぼろ。ローンが三千万円以上ある。修繕費も借金になって生きていけるかどうか」

 福岡市中央区今泉二丁目の築四年のAマンションの女性住民(42)は、外壁にできた複数の「×」形の亀裂を見上げながら嘆いた。

 損傷が大きいマンション四棟は道路沿いに南北に並ぶ。いずれも地上十階以上の中層で、完工後四−七年の比較的新しい建物ばかりだ。都心部の被害は、今泉や大名、天神地区など警固断層の東側に集中する。

 Bマンション管理組合の白石信吾理事長は「半数以上の戸の玄関ドアが開かなくなった。壁が崩れ隣の部屋が見えた個所もある」と話した。十四階建ての同マンションの中層階以下のほとんどの玄関ドアは変形し閉まらない状態。外廊下の外壁は崩れたままだ。

 「実家に避難していて、荷物を取りに来たんだけど出入りは窓から。被災時も玄関ドアが開かず、ベランダの避難はしごで逃げた。渡り廊下にも十センチ以上のすき間ができていて危ない」とDマンションの女性住民。静岡県から駆けつけた女性は「Cマンションに姉夫婦がいて、Bマンションには母親が住む。どちらも悲惨な状態」と話す。

■共用部分に損害中層階以下集中

 各棟とも、専有部分の被害は軽微で、廊下の壁など共用部分の被害が大きい。中層階以下に破損が集中しているのも共通点だ。一九七八年の宮城県沖地震を機に、コンクリート強度などを厳しくした「新耐震基準」(八一年の改正建築基準法で導入)を満たしている建物の被害で、疑問の声が上がる。前出のAマンションの女性は「耐震構造なのに、なんでこんなに壊れるんですか」と憤る。

 しかし、新耐震基準は、壁面の破損などを織り込んだものだ。阪神大震災で被災マンションの修復に尽力した京都大学の西沢英和講師(建築構造学)は「多くのマンションの構造は柱や梁(はり)を頑丈に造ってあるが、壁は鉄筋が少ない非構造壁で、ある程度以上の地震に対して衝撃を吸収して壊れるように設計されている。車でいえばバンパーの役割」と解説。「壁面の破損で損害は出ても、柱と梁が破損しないことで人命を守る設計。今回の地震でも、その目的は達したといえる」

 だが、白石氏は「ドアが開かず閉じこめられた人も大勢いる。火災が起きていれば、死者が出た可能性もある。人命を守る基準といえるのか」と憤る。NPO法人「福岡マンション管理組合連合会」の杉本典夫理事長は「地盤が弱い地域で、新耐震基準を満たしていても、地震の負荷に耐えられない壁が多かったのではないか」と分析する。

 一方、修復のための資金確保も難しい。杉本氏は「地震被害を想定していなかった福岡県内のマンションの八割は、管理組合が地震保険に入っていない。今回被害が大きかった共用部分の修復には、個人の地震保険では無意味で、マンション全体の加入が必要だった」と嘆く。

 さらに、地震保険は新耐震基準に準拠した形で「柱と梁、その接合部」の主要構造部に被害が出なければ保険金は下りない。「保険金が払われるマンションがあるか疑問」と杉本氏。実際、前出のDマンションの女性は「管理組合で四億八千万円の地震保険に入っていたが、保険金は下りないと聞いた」と話した。

■修繕金も足りずダブルローンに

 築十年以内のマンションばかりで、修復には修繕積立金も足りない。白石氏は「住宅金融公庫の災害復興住宅融資を借りるしかない」と話す。同融資では一戸当たり百五十万円で戸数分が出るが、各戸の負債増になる。「今後三十年の長期間、ダブルローンになる人も多い」(杉本氏)。白石氏は「不足分は銀行から借りる。管理費などに上乗せして、返済してもらうしかない。一瞬で一戸あたり一千万円の被害を受けた」と悲壮感を漂わせる。

 住民の財産的被害は大きかったが、「今回のような被害を防ぐ耐震技術は戦前すでに完成していた」(西沢氏)という。

 「一九二三年の関東大震災(M7・9)後の研究で、日本独自で世界最高水準の鉄筋コンクリート(RC)造の耐震技術ができあがった。現に阪神大震災(M7・3)でも、戦前に建てられた小学校や神戸教会などRC建造物は被害を受けていない。戦前の基準では、柱や梁、壁、床を『箱』として一体に造り、今の二倍の耐震強度があった」

 新耐震基準以降、被害は大幅に軽減されているが、西沢氏は「戦前に完成された技術の小出しにすぎない」と批判する。「新耐震基準でも柱と壁が一体化していないから、まだまだ地震に弱い」と指摘。戦前の技術を生かさない背景を「建設業界と一部の学者が一緒になって、壊れやすい建物を造り被災後の再建築で金もうけしようという考えがある」とも話し、もし事実なら大きな問題だ。

 戦前に完成していた基準が大幅に変わったのは、戦中からだ。戦時規格で鋼材やセメントの節約のため、安全基準が緩められた。「その考えが戦後に引き継がれた。戦災を受けた家屋六百万棟再建のためには仕方がない。その後、柱と梁だけのガラス張りの開放的な建築がモダニズムとしてもてはやされ、耐震性が大幅に低下した」(西沢氏)。

 今回の被害について、九州産業大学の落合太郎教授(都市計画)は「デザイン優先のため、建物全体のバランスに無理があった可能性もある」と言う。実際、被災したマンションはしゃれた造りだ。一方「隣接の武骨な造りの築三十年の社宅は被害を受けていない」(杉本氏)。

 また「バブル後にコスト削減が進み、締め付けられた現場の士気低下も一因」(西沢氏)と粗悪工事の懸念も指摘。今回被災したマンションもバブル後に完成している。

■壁も大事な資産壊れては困る

 杉本氏は基準の見直しを求める。「今回の被害は、新耐震基準が非構造壁は壊れてもやむを得ないと考えている点に原因がある。多額の借金をしてマンションを買った者にとって、非構造壁も壊れては困る」

 西沢氏は、被災住民に「耐震性能をアップさせる修繕の機会」と提案する。

 「日本の建設費は、人件費が高く材料費は安い。下層を中心に耐震壁を若干増設し、壁中の鉄筋を倍増させれば、将来の被災を防げる。従来の建設費などより5%程度の負担増で、戦前の強度を実現できる。大変だろうが、ご近所の底力でがんばってもらいたい」


http://www.tokyo-np.co.jp/00/tokuho/20050404/mng_____tokuho__000.shtml

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