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と学と擬似科学
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投稿者 イヌリン 日時 2005 年 8 月 30 日 12:22:47: ZZuWDDWxfeBqs

と学と擬似科学

  

私は個人的に「と学会」を応援しています。

と学会 : 「トンデモない」本を研究する学会
「トンデモ本」 : 著者が意図したものとは異なる視点から読んで楽しめるもの。大ボケや妄想などで常識とかけ離れた内容になってしまったもの。最初から笑わせることを目的としたらトンデモ本ではないらしい。

 

このページでは、「と学会」で扱うようなとんでもない本のうち、疑似科学の方をどうにかしてみようかなぁと思っています。と学会の本を読んで笑えない方のための参考書だと思っていただければ幸いです。また近年世の中で溢れているような「どう考えてもおかしい いい加減な科学論」を取り上げ、どこがおかしいのかを考えたいなぁと思います。
#逆にどこがおかしいかわからなくなったら私も理系失格

 

疑似科学の修正

相対論批判

 

トンデモ本の中には相当 相対論批判というのが多いみたいです。実際に私も某番組のBBSでこの手の話をよく聞きます。

得てして批判者の理論は次の通り。

 
光速を超える物体の証明
光が光速で動かないことの証明
 

ここで重要なのは、皆さん光速というものを崩したがる点です。きっとこの原因は相対論の中心教義である「光速の絶対性」というものを崩せば全部崩れると思っているからでしょう。しかしこれを崩すことはできません。

その答えは簡単で、相対論の絶対基準が「光速の絶対性」であるからです。つまり、「光が常にこの速度で動いたとしたら、周りはどうなるかな?」という点からスタートしているのです。「光速の絶対性」の元に公理体系が築かれているわけですから、これを否定したらそもそも公理体系自体を論じることはできません。例えば、現在通常に使われている数学はユークリッド空間上で構築されていますが、ここで「任意のコーシー点列が収束しない」とか「平行線公理は大嘘」という条件を持ってきて、ユークリッド空間は間違っているというのは大バカです。両方がそろった状態で初めてユークリッド空間が定義できるのですから、これを否定した時点でユークリッド空間というもの自体がこの世に存在することを忘れなければいけません。

同じことをニュートン力学上で言うとしましょう。例えばリンゴが落ちる瞬間、とてもゆっくり落ちていったように見えたとします。このことを元に「リンゴが落ちるまで10秒以上かかったように感じられたが、ニュートン力学上の方程式で解いたら8秒だった。だからニュートン力学は間違えている!」と言っているようなものです。ニュートン力学では時間が絶対軸ですから、これを崩してはなりません。勝手に自分の時間軸を作ってはならないのです。

本当に相対論を崩したいのであれば、例えばローレンツ短縮は起こらないとか、重力レンズは存在しないとか、そういう相対論の中の話を崩さなければなりません。とはいえこれらはちゃんと実験や観察などで確認されていますので、相当苦労するとは思いますが...。あっ、それと証明するときには他の公理系を持ってこないようにお願いしたいものです。あくまでも相対論の中で、ね。間違ってもニュートン力学上で相対論を否定しないように気をつけていただきたいと思います。

 

太陽は熱くない

 

「山に登ると温度が低くなる。太陽に近づいたはずなのに下がると言うことは、太陽は冷たいと言うことだ」

この問題は熱伝播を知らなさすぎではないかと思います。一般に熱が伝わる方法として次の3つがあります。

伝導 : 物体の接触によって2物体間の間で熱が伝わる
対流 : 物体の体積は熱に比例することから密度変化が起こり、これによって物体が空間内を移動することで熱が移動する
輻射 : 赤外線などによるエネルギー波が物体を励起させることで熱を発生させる
この中で、地球と太陽は接触していないし この間に熱を伝播する物体は存在しないことから、輻射以外の方法で熱を伝えることはできません。基本的に空気は赤外線によってそれほど強く励起されるわけではないですから、気温は太陽光で励起された地面の温度によって決まります。つまり、空気による損失はそれほど大きくはなく、たかが高さが数キロ変わったからと言って地面が受けるエネルギー量はさほど変化しないと考えるのが妥当です。

そして、熱力学の世界では「圧力と体積をかけて温度で割ると定数になる」というのがあります。当然海抜高度が上がれば気圧は下がります。体積は気体であればモルあたりの体積は22.4l(多少は変化するかもしれないが ほぼ定数とみなせる)ですから、先ほどの条件を満たすためには温度が低くなるしかありません。そのために海抜高度が上がれば温度が低くなるのです。

また熱が宇宙に逃げるというのはウソで、真空中は先ほど述べた通り輻射以外の熱伝播は起りません (そんなことがあるなら魔法瓶はよく冷えるはず)。"宇宙"自体は基本的に熱を受け取ることはありません。

 

タイムマシン

 

日曜にやってるトンデモ番組のBBSでよく出るのがタイムマシンに関するネタです。タイムマシンで過去を変えることはできるかという話ですが、結論としては多分できないと思うんですよね。そこで私がよく書く説明をここに載せておきます。

基本的にタイムマシンができたとしても、過去の世界を変えることはできないと考えています (個人的には過去に戻ること自体できないと考えています)。

仮にこの世の全ての現象が決定論的に(因果関係のようなもので)説明できたとします。すると過去の出来事から次に何が起るかが全て予想可能になります。逆を言えば次を知るためには過去の全てを知る必要があります。

ここでタイムマシンができて未来と過去がつながったとします。すると今の次の世界を知るためには過去を知らなくてはいけないのですが、過去と未来がつながっているので今の未来も知らないと次の世界はわかりません。しかし未来の一つである"今の次"がわからないので、結果として"今"自体がわからないという結果になり、論理的整合性を欠いてしまいます。

また"今"という時間が決定しているという事実を元にすると、過去もこれから起る未来も全て決定されたものという結論になり、過去に戻って何かをしてもその人の人生に変化は無いという結果になります。タイムマシンで戻って過去を変える方の人生はタイムマシンを使って過去に戻ったからこそそうなったのであり、またタイムマシンを使うこと自体も仕組まれたことになり戻るのをやめることはできません。

この問題を具体的にしましょう。例えば子供のころから何気に持っている宝物があるとしましょう。この宝物、実は未来の自分がタイムマシンで過去に戻り、子供の自分にプレゼントしたものだとします。さっきの結果から、この子が成長して大きくなってもタイムマシンでその宝物を過去の自分に渡しに行こうとします。渡された自分もまた過去の自分に渡しに行きます。ここで問題です。その宝物はどこから湧いたのでしょうか?

よくこの手の話には並行世界の話を出す方がおられますが、結局並行世界があったとしても自分が過去に戻って影響を受けるのは並行世界の自分であって、今この場にいる自分ではないことに注意しなければなりません。並行世界の自分は言うなれば他人ですから、並行世界の過去の自分に接触したことで自分の過去が変わるわけではないのです。

とはいえ私にもやり直したいことは腐るほどありますのでタイムマシンができたら真っ先に使ってみたいですね。技術の進歩に期待する次第です。

 

テレパシー

 

「21世紀になればテレパシーで意思疎通が可能」

相変わらずですが、あの番組は新年早々飛ばしているようです。主な内容としては、自分が考えたイメージを直接相手の頭に伝送するという脅威の技術が登場するとかしないとか。毎回毎回、科学的な検証をそこそこに、仮定や条件抜きで科学的に証明されたと言ってしまう辺りが如何にもトンデモなのですが、今回はこの辺の科学的な話をしたいと思います。

「テレパシー」というものを、「自分の頭の中で思ったことを、機械的なものの仲介を許した上で、相手に伝送すること」と定義した場合、これは可能です。現在、陽電子放射断像撮影(Positron Emission Tomography)などにより、人間の脳の活動電位というのを外部から観察する手段がありますので、これを観測して電子化し、無線でも使って伝送すれば、十分実現可能です。しかし、「テレパシー」の定義を「自分の頭の仲で思ったこと "そのもの" を、機械的なものの仲介を許した上で、相手に伝送すること」と定義した場合、これは不可能とはいいませんが、非常に実現は難しいでしょう。

その理由は脳の構造にあります。人間の脳は「コラム」という単位で情報処理を行っています。コラムとは、ある処理を目的として構成された神経細胞の集まりを指し、視覚に関して言えば「赤に反応するコラム」「丸いものに反応するコラム」などがあります。しかしこのコラムは、一部のものは生得的に構成されることがありますが、経験などに大きく左右されるイメージなどに関する部分に関しては、全ての人間で同じ場所にあるとは限りません。例えば「赤いボール」を相手に伝えようとした場合、私たちは言葉を使います。この場合、両者で「赤い」「ボール」という概念が共通であるため、互いにそれをイメージすることが可能です。しかし、イメージを直接相手の頭の中に送り込んだ場合、自分が「赤い」という概念を保持している部位が、相手も「赤い」を保持している部位であるとは限らないため、相手はそれをイメージできるとは限らないのです。

きっとこのサイトに来るような方はコンピュータに通じているでしょうから、コンピュータで一例を。インタフェースが統一された2つのプログラムがあるとき、このプログラムが共通のプロトコルを用いて通信している間は、互いに正しい通信が行えます。しかしこれが自分のメモリブロックを直接相手のメモリブロックに書き込みにいったらどうなるでしょうか。同じ空間に同じデータが割り当てられていなければ、当然相手のプロブラムは送られたデータを理解することはできません。

ただし、人間は学習系をもっていますから、幼い頃からある特定の部位にこの装置をつけて通信し合えば、その部位はまるで第2の言語野(メタ言語野)として機能することでしょう。しかしそれはイメージ自体を送るのではなく、あくまでも共通の言葉を用いて行うのです。ですから、冗長な言葉を用いないテレパシーは、この問題を解決する必要があるのです。

というわけで、ちょっとしたミスの修正でした。

 

教科書

 

[本] トンデモ本の世界 : 宝島社(ISBN4-7966-1467-2)
全てはここから始まりました。本を貸してくれた本研究室デバイスグループの本田君、ありがとうございます。

[本] HAL (はいぱぁ あかでみっく らぼ) : ワニブックス(ISBN-4-8470-3374-4)
あさりよしとお氏著の漫画本ですが、大変面白い本です (皮肉じゃなくて)。 名前のとおり科学的な本ですが、科学的検証はバッチリな上、かなり高度なギャグ漫画です (理系専用?)。 作者曰く「この漫画には、一部真実が含まれている場合があります」とのこと。 「シュレディンガーの猫」や、このサイトでも紹介した「チェレンコフ光」を基盤に、楽しく話を展開させていきます。 この作品自体は「本人が意図して笑いをとっている」ので、正確にはトンデモではありません。ですが、他に適所がないのでここにおきました。

[TV] 特命リサーチ200X
たまに疑似科学入ってるにもかかわらず堂々放送するイカした番組です。間違い探しに近い感覚で見ると面白いという点では、「トンデモ番組」です。

 

http://www.ertl.jp/~takayuki/junk/tondemo/

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