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(ネオコン帝国宇宙軍)  米国の宇宙軍事利用  【 大 串 康 夫 】 DRC年鑑
http://www.asyura2.com/0502/nihon16/msg/969.html
投稿者 愚民党 日時 2005 年 6 月 15 日 06:54:49: ogcGl0q1DMbpk

(回答先: 多重の安全策、空回り 管制官、把握できず 全日空機ミス 【朝日新聞】 投稿者 愚民党 日時 2005 年 6 月 15 日 06:43:09)

ABM条約廃棄と米国の宇宙軍事利用

(財)DRC研究委員

                                大 串 康 夫


http://www.drc-jpn.org/AR-6J/ookushi-j02.htm

はじめに

 米国ブッシュ大統領は昨年12月、一方的にABM条約(弾道弾迎撃ミサイル制限条約)からの離脱をロシアに通告し、ABM条約は2002年6月13日に効力を失った。米国はABM条約廃棄に踏み切った理由として、近年の国際的な大量破壊兵器の拡散と弾道ミサイルの脅威に対するBMD(弾道ミサイル防衛)システムの構築上、陳腐化した冷戦時代の米ソ核抑止理論によるABM条約が障壁となっているためとしている。第一義的には危険な国家等からの弾道ミサイルに対する防衛システムの構築であるが、その延長線上には宇宙への軍事力配備と宇宙に於ける、宇宙からの軍事行動へのステップアップが控えている。

1.ABM条約廃棄とミサイル防衛

(1)ABM条約の意義

ABM条約は、1972年、米ソ間の核抑止理論、即ち、お互いの報復攻撃の恐怖によって相手の核先制攻撃を未然に抑止するMAD(Mutual Assured Destruction;相互確証破壊)戦略を背景に米ソ両国のみで締結された。ABMの配備を双方とも首都周辺とICBM基地一ヶ所と厳しく規制し、双方のミサイル防衛態勢を敢えて脆弱に保ち核攻撃を相互に抑止しようとするものであった。同時に地上、洋上、空中の移動型防衛システムの配備とともに宇宙空間への防衛システムの配備も禁止された。

冷戦終焉により東西対決型の大規模戦争と核戦争の危険性は遠のいた。米ロ間の戦略兵器削減交渉も大きく進展し核兵器削減は着実に進んでいるが、米ロ関係が如何に改善され良好な協調関係にあるとは言え、米ロが未だに相手国を何度も破壊し得る大量の核兵器を保有している限り、MAD戦略理論は今も有効に作用するものであり、ABM条約の意義を失うものではないと言える。

これに対して米国の問題意識は米ロの核軍縮に反し中国が核・ミサイル戦力の開発を強化しており既にICBMを保有配備していること、近い将来に北朝鮮、インド、イラン等が核弾頭ICBMを開発保有するに至ると予測されること、更にはイラク、シリア、パキスタン等に拡散すると危惧される点にある。これらの国々は大量破壊兵器及び弾道ミサイの拡散防止国際レジームを無視して開発保有を進める疑惑国であり、一部はテロ支援の「ならず者国家」である。これらの弾道ミサイル脅威に対処するのに米ロ両国のみ厳しく規制するのみのABM条約は、今や存在意義を失ったとし、新たな枠組みを構築しようとするものである。

(2) ABM条約廃棄への経緯

   米国は、1960年代からソ連のICBMを迎撃するABMシステムを開発中であったがABM条約により、ABMシステムは首都周辺とアラスカ一箇所を除いて米本土一帯に配備することも艦艇、航空機、車両搭載型の移動体を保有配備することも全て禁止され、また、新たなるABMシステムの開発、試験、配備も厳しく制限された。

   しかしながら、米国は、1983年にレーガン大統領がSDI (Strategic Defense Initiative : 戦略防衛構想)を打出し弾道ミサイルからの防衛構想の開発に着手した。最先端技術の粋を集めて、宇宙空間に多種多様なセンサーやレーザー、ビーム兵器等を配備して弾道ミサイルを発射直後から宇宙空間飛翔、再突入に至る全ての段階において迎撃撃破しようとするもので「スターウオーズ計画」とも呼ばれ空想科学的ではあるが将来を見据えた画期的なものであった。 SDIは開発配備を前提にしたものではなく構想研究に留まるものでありABM条約には抵触しないとの解釈で進められたが冷戦の崩壊による脅威の低減化と軍事費削減の時代背景もあって打ち切られた。

   冷戦終焉後、懸念されていた大量破壊兵器とその運搬手段でもある弾道ミサイルの拡散が現実の脅威として顕在化し、1990年の湾岸戦争ではイラクのスカッドミサイル攻撃に対して緊急対応的にペトリオットで迎撃するに至った。元来、ABM条約は射程5,500km以上の核弾頭ICBMを撃ち落そうとする迎撃ミサイルシステムの開発、試験、配備を制限するものであるが、中、短距離のTBM(Theater Ballistic Missile ; 戦域弾道ミサイル)の開発、試験、配備を制限するものではなかった。このため米国は1993年5月にミサイル防衛法を制定しより高度なTMD(Theater Missile Defense:戦域ミサイル防衛)システムの開発を本格的に開始した。また、1997年9月には米露間でTMDの開発配備に関し米露間での合意が得られた。

  一方、中国のICBM化の開発、配備が着実に進むとともに北朝鮮が「テポドン」ミサイルを開発、日本列島を飛び越えての発射実験を強行し、更には米国にミサイルを打ち込むと挑戦的な宣伝ビラが出回る等米本土に対するICBM脅威が強く懸念されるところとなった。このため、米本土をこれらのICBMから防衛するNMD (National Missile Defense:国家ミサイル防衛)システムの開発が焦眉の急であると認識され進められることになったが、NMDを推進しようとすればロシアとの間のABM条約の改正もしくは破棄が必要となる。ブッシュ大統領はプーチン大統領へミサイル防衛の必要性とABM条約の廃棄について粘り強く説得工作したが、同意を得られないまま2000年12月一方的なABM条約からの脱退通告に至った。

(3)弾道ミサイル防衛 

   ABM条約廃棄の狙いは第一義的には冷戦時代の遺物と化したMAD相互確定破壊戦略から脱却し、世界の安全確保のために米露は攻撃能力よりも防御能力を高めるべきであり、より一層の戦略兵器削減を進めると共にミサイル防衛能力を高めようとするものである。2002年5月米ロはモスクワ首脳会談で両国の戦略核弾頭を2012年末までにそれぞれ約3分の1の1,700-2,200発に削減する『戦略攻撃戦力削減条約』に調印した。同時に『新たな戦略関係』と題した共同宣言の中でミサイル防衛分野での協力の可能性を追求する旨を明記し、米ロ間のミサイル防衛に関する対話の開始とロシアが米国の計画推進を黙認する姿勢が示された。

TMDとNMDのシステムは射程と飛翔高度が大きく異なるTBM(戦域弾道ミサイル)とICBM(大陸間弾道ミサイル)に対処するものとして区分されてきた。両方ともブーストフェーズ → ミッドコースフェーズ → ターミナルフェーズの各段階において弾道ミサイルを発見、識別、追跡、迎撃、撃破するためのセンサー、情報通信、BMC4I,迎撃ウエポンを必要とするがその研究開発技術、装備システム、運用システムは大半が共通、重複し、境目が不明瞭である。このためブッシュ大統領はより効果的な開発を追求するとしてTMDとNMDの区分を取り払い、統合した概念のBMD ( Ballistic Missile Defense:弾道ミサイル防衛)に名称を変更したと言われるが、“National”を外したことには、“International”のミサイル防衛網を念頭に置いていることが窺える。世界各地に潜在する複数の危険国家による弾道ミサイルから米国と同盟国を守るにはグローバルなミサイル防衛網の構築を必要とし同盟国の理解と協力支援なくしては構成し得ない。米国のみでなく世界のためのミサイル防衛のニュアンスを追求した結果とも言える。

ABM条約の制約がなくなった今、米国はBMDシステムに関わる大規模な実験、研究開発を活発化しつつありアラスカには迎撃ミサイル用の新しい実験基地6個サイトの建設に着手した。また他国との対話と協力を積極的に求め、特にNATOや日本には共同開発、技術協力等の支援を要請しているが各国は技術的困難性、実効性、財政上の問題および米の技術流出阻止に関わる諸制約等の理由から極めて用心深く慎重な反応を示している。当面、TMDとして共同開発中の独伊とのMEADS(Medium Extended Air Defense System), イスラエルとのArrowミサイル、日本とのスタンダードミサイルVそしてロシアとの共同監視衛星のRAMOSの各プログラムを推進しつつ実質的な進展を模索すると思われる。

(4)宇宙利用とミサイル防衛

   ミサイル防衛のための各種センサー、レーダー、迎撃ウエポン等は地上、洋上、空中のみならず宇宙空間のあらゆる可能性を追求している。現時点における宇宙利用は早期警戒衛星のIRセンサーによりミサイル発射を感知、トラッキングし弾着点・時刻を予測し警戒情報を迎撃システムに伝達するに留まっている。DSP衛星によるミサイルウオーニングは湾岸戦争時には分単位のウオーニング、数10kmの弾着誤差であったが、現在は秒単位、数km誤差へ精度が向上したと言われ、2006年配備予定のSBIRS衛星になればリアルタイムのウオーニングが可能になると言われている。  将来構想としてSBR(Satellite Based Radar:衛星搭載レーダー)配備によりトラッキング精度を高めると共にSBL(Satellite Based Laser;衛星搭載レーザー)ビーム兵器や運動エネルギー兵器搭載のASAT(Anti Satellite:攻撃衛星)の宇宙配備によりブーストフェーズ → ミッドコースフェーズ → ターミナルフェーズの弾道ミサイル全航程に対する多層的な迎撃・攻撃能力を高めようとしている。敵弾道ミサイル側は、ミサイル防衛への対抗・回避処置として軌道変換や多弾頭化を追求しているが宇宙配備のこれらの迎撃兵器により彼らの最も脆弱なブーストフェーズやミッドコースでの撃破を可能にし対抗・回避行動を封じられるとしている。

2.宇宙政策とラムズフェルト報告 

米国は、2001年1月の『米国安全保障に寄与する宇宙に関わる組織、運用評価委員会報告(通称:ラムズフェルト報告)』を基礎に宇宙政策及び宇宙軍事戦略の見直し、改革施策を着実、かつ、強力に押し進めている。宇宙が国家の安全と繁栄に極めて重大な地位を占めるとの認識の下、米国が率先して新たなる宇宙秩序を創造する決意をもって臨んでいる。弾道ミサイル防衛への並々ならぬ決意とABM条約からの脱退はその現れであり、米国は今、宇宙軍事戦略において一大転機に差し掛かっており、フロンテイアとして新しい概念を大きく打ち出そうとしているかに見える。

(1)宇宙への認識

  米国の宇宙への依存度は極めて高く、年々益々増大しつつある。軍事的のみならず政治・外交・経済的にも極めて重要な課題であり、宇宙政策の見直し、改善は国家安全保障の最優先事項である。米国と同盟国との宇宙力如何が世界の平和、安全、繁栄を左右する。しかしながら宇宙システムは脆弱無防備であり脅威に曝されているにも拘らず宇宙脅威に対する情報活動は低レベルに留まっており、「宇宙に於ける真珠湾攻撃:Space Pearl Harbor」の表現を用いて格好の目標となっていると警告している。既に兆候はあり、通告を受けているのに気付いていない。奇襲攻撃を受けて慌てふためくのでは遅い。宇宙システム攻撃を抑止し、防備・排除するための新たな軍事態勢、軍事力の構築が必要である。

  歴史的に人間社会の行動は陸、海、空へと拡がり、そして競合、戦争が生起した。宇宙へと行動が拡大すれば宇宙空間において不法行動、戦争が生起する事は当然の理屈である。宇宙システムへの敵対行為に対する抑止・排除手段、及び宇宙における優位性を未だ確保されていない。宇宙ニーズに見合う組織、指揮関係、C4Iネットワーク、兵器システム等の態勢整備が急務であるとしている。

(2)提言内容

  上記の基本認識のもと米国の宇宙政策の現状と将来を展望して、委員会は下記の10項目に亘る提言を行った。

@ 宇宙活動力は米国の国益であり、国家としての指導体制を強化する。

A 国家レベルの政策指針を徹底するための各省庁へのプロセスを確立する。

B 宇宙に関わる国際法、国内ルール策定のため行政府の政策策定能力を強化する。

C 宇宙に関わる敵対勢力への抑止と抑止が破れた場合の国益防護を可能にする兵器システムの開発配備を促進する。

D 宇宙空間からの情報収集への革新的技術を開発する。

E DOD(国防省)とCIA(中央情報局)との宇宙計画の優先順位、予算配分、管理運用等の競合問題を解決する。

F 商業・民間部門の国家安全保障と経済に果す役割の急速な進展に鑑み宇宙に関わる商業・民間部門を適切に育成する。

G DOD, CIA, 政府、民間の全てに亘り宇宙分野の専門家を体系的に育成する。

H 危機、脅威及び好機の到来に即応対処できる組織的指揮管理体系を構築する。

I 宇宙に関わる国際交渉に臨みDOD及びCIAの意見を反映させる。

以上の提言内容から宇宙開発・利用の最先端を独走するが如き米国と雖も決して安閑としておられる状態にはなく、これまで放置されてきた国家としての指導体制や政府内組織の連携、協力の諸問題を垣間見る事が出来る。眼前に迫ってくる宇宙時代の拡がりと増大する国益と潜在脅威に対して、鋭い時代認識と先見性をもって勧告している点が注目される。米国の宇宙における優位性を維持し続け、主導的な地位を確保するために何を為すべきか?これからの米国の宇宙政策の確立、推進にあたっては大統領による強力なリーダーシップの発揮により現体制の不備欠陥を早急に正すと共に将来構想に向けて官、軍、民の国を挙げての取り組みが不可欠であると強調している。

  ラムズフェルト委員長は議会報告直前に国防長官に就任し、行政府の重要な閣僚に位置したこともあり、提言指摘事項は早速検討され具現化が着実、かつ、強力に推進されている。議会報告から1年半を経て報告書の提言に基づき宇宙に関わる政府内組織の強化、ドクトリン、政策の見直し、宇宙システムの研究開発及び装備の推進等、枚挙に暇がなく米国の真剣な意気込みと実行力の凄みを感じざるを得ない。

  また、識見豊かな人材不在のまま宇宙政策の策定、宇宙システムの構築を進めてきた弊害を是正するため「宇宙に長けた者(識見・能力・経験)が宇宙を論じ、かつ、運用すべきである」として宇宙に関わる人材育成体制の強化を図っている。

3.宇宙脅威と将来戦

(1)宇宙システムへの脅威  

衛星自体はもとより、地上施設を含み、打ち上げ過程から周回軌道航行に至る宇宙システムは極めて無防備脆弱であり、常に潜在脅威に曝されている。敵にとってこれほど好都合な攻撃目標はない。危険な国やテロ組織は既に存在する。世界諸国の宇宙への参入と宇宙資産の増大、宇宙産業の成長と宇宙システムの先進高度化、そして先進国の繁栄享受と後発国とのアンバランスの拡大は宇宙をめぐる競合と葛藤を益々激しくするだろう。宇宙システムの脆弱性が攻撃される危険性を高め、その一方で潜在脅威自身の宇宙力と汎用化した宇宙システムの活用力は増進する。我の宇宙システムの機能低下・中断は社会混乱を惹起し、軍事作戦的にも戦闘能力、作戦遂行力を大きく低下させる。将来戦の帰趨は宇宙システムへの攻防如何に懸かっていると言っても過言ではない。

潜在する敵は侵攻に先立ち、或いは同時に宇宙空間のロケット・衛星、地球上の運用施設、通信・データリンクを攻撃の対象とし、次の5Dに象徴されるDisrupt(妨害)、Deception(欺瞞)、Denial(使用不能化)、Degradation(機能低下)Destroy(破壊)行動により攻撃して来るであろう。その結果、衛星通信、データリンク、各種センサー機能の喪失もしくは低下により情報、偵察、戦場認識能力、指揮統制、通信能力が大きく低下すると共にミサイル早期警戒、防衛機能が激減する。また、GPS機能の喪失もしくは低下により戦場管理、ターゲッテイング能力が低下し、精密誘導武器の性能発揮が困難になる。このため、作戦中の陸海空戦闘力の低下と混乱を来たし、作戦速度の遅滞、戦闘被害の増大を強いられ作戦遂行を困難にする。

(2)「シュリーバー2001」

2001年1月に米宇宙空軍(宇宙戦開発教導部隊)が「シュリーバー2001」と題した宇宙脅威による将来戦を想定して、統合規模のウオーゲームを実施した。2017年に、大規模な通常戦力と戦略核戦力を有する赤国が宇宙システムへの攻撃を伴う侵攻事態を想定したものであったが、宇宙を巡る将来戦闘様相の重大性に米宇宙軍は現態勢整備計画の不備を認識すると共に将来戦の宇宙に関わるドクトリン、戦略、作戦構想の早期確立の必要性を再認識したと言われる。今回の成果と教訓は、早速2001年のQDRに反映され、今後の宇宙軍事戦略の策定と将来宇宙システムの構築に反映されると聞くが、新たなるドクトリンと将来態勢を検証するために2004年には更に大規模な演習が計画されている。

(3) 脅威の攻撃態様 

 米宇宙軍は地上施設をも含めて宇宙システムに対する主なる脅威として次の攻撃態様を警戒している。

a. D&D(Deception & Denial:欺瞞&無効化)

偵察、警戒監視、指揮通信情報システムを主対象とし、間接的手段により作戦発起前、或いは平時から指向される可能性大。

b. GSAS (Ground Station Attack/Sabotage:地上インフラ攻撃)

地上インフラ施設に対する物理的な攻撃であり、特殊戦部隊、ゲリラ・コマンドウ等の通常兵器による破壊工作を警戒。代替性に欠ける施設には致命的であり作戦発起前、或いは平時に指向される可能性大。

c. EA (Electronic Attack :通信電子妨害)

衛星システム、通信・データリンク、地上施設に対する通信電子妨害であり、ダウンリンクに対しては微弱なパワーで、かつ、低コストでの妨害が可能と言われる。軍事通信衛星よりも官民の通信衛星(軍も多用)は更に無防備であり脆弱である。ロシア製のGPSジャマーが出回っており、出力は微弱ながら半径約100NMに亘りGPS使用を不能にし、作戦上の影響大であるが電波放出のビーコンであるため感知、発見が容易であり、制圧可能としている。アップリンクに対する通信妨害は極めて困難、かつ、高価である。全ての衛星システムが対象となるが影響の持続性はなく対処容易としている。

d. ASAT (Anti Satellite :衛星攻撃兵器)

ASATには多種多様な攻撃手段、方法が研究開発されており、インターセプト攻撃とエネルギー兵器攻撃に大別される。インターセプト攻撃には運動エネルギーをもって敵衛星等を直撃し、破壊するもの、マイクロ衛星・ナノ衛星群を敵衛星に近接させ送受信妨害遮断等により無力化させるものがある。エネルギー兵器攻撃には地上、航空機、宇宙船からのレーザー光線を敵衛星等に照射し破壊もしくは機能低下させるレーザー兵器や宇宙空間における核爆発攻撃がある。見通し線上の衛星等は核汚染により衛星寿命を数百分の一にしてしまう。

ASAT攻撃を行うには敵の衛星等を精密に識別しトラッキングできる技術が不可欠である。現在、ASAT攻撃の潜在脅威になり得る国は限られているが、多くの国がASAT兵器独特の有用性を認識しており技術拡散は進んでいる。ASAT攻撃は戦略的敷居が高いが侵攻開始直前直後の攻撃を警戒する必要がある。

e. Cyber Threat(サイバー攻撃)

軍事作戦指揮中枢のC4ISRシステムは地球上の施設器材を含み宇宙システムへの依存度が極めて高い。C4ISRの中核をなすコンピューターシステム、ネットワークにハッカーを侵入させ情報操作、情報利用、機能破壊等により敵の作戦、戦闘能力の低減、喪失を狙いとする。平戦時を通じて最も生起公算の高い脅威として認識されている。

4.宇宙の軍事利用の経緯と方向性                            

(1)宇宙軍事利用の経緯

宇宙開発は軍事技術開発の一環として進捗し、元来、宇宙と軍事は密接不可分の関係にある。東西冷戦下において、米ソ両国は軍事目的の達成、軍事技術開発の一環として国威をかけた宇宙開発競争を展開し、核運搬ミサイル技術とロケットビークル、軍事情報通信技術と衛星通信システム、軍事偵察と地球観測、リモートセンシング技術等、宇宙開発は軍事と密接に関連しながら進展した。

湾岸戦争以降の現代戦において、宇宙軍事利用技術はIT技術と相俟ってRMA(軍事技術革命)の中核を成し、作戦の様相を一変させる極めて重大な要件となった。各種センサーを張り巡らした偵察衛星と早期警戒監視衛星による情報とGPS衛星による戦場認識とターゲッテイングの確度を高め、通信衛星によるセンサーからシューターへの至短時間の情報伝達、指揮統制通信ネットワーク、そして精密導武器による全天候攻撃等、作戦遂行に画期的な革命効果をもたらした。勿論、AWACSやJSTARS或いはUAV等、他の空中、地上の装備器材とのインテグレーションによる相乗効果であるが、宇宙システムの軍事利用は陸・海・空軍の戦力近代、作戦能力の強化に不可欠の重要要素となった。

湾岸戦争を人類初の宇宙戦争と呼ぶ向きもあるが、宇宙からの攻撃、宇宙への攻撃はもとより地上の宇宙支援システムに対する妨害/攻撃もなく宇宙戦争と呼ぶには値しない。宇宙システム自体が未だ地球周回軌道上にしか存在せず軍事利用技術そのものも未熟な発展段階にある。事実、湾岸戦争からコソボ戦争までは8年しかないがミサイルウオーニングの精度は分単位から秒単位へ、弾着予測は数10kmから数kmへと飛躍的に向上した。この10年間に宇宙軍事利用技術は精度、速度、容量、活動域等の能力拡充、新技術の開発が大きく進展している。また、宇宙システムの軍用技術の民間へのリリーズと民需拡大とが相俟って民間・商業用宇宙システムの発展が著しく多様化、汎用化が進み、逆に軍による民間・商用宇宙システムの活用・依存現象が見られる。将来の発展性から見れば宇宙の軍事利用は始まったばかりの初期段階とも言えよう。

(2)宇宙軍事利用の方向性

 軍事と宇宙利用、宇宙活動との関係を次の3段階に区分出来、米国は今や第3段階の宇宙への戦力配備、行動へ踏み切る一大転機を迎えようとしている。

[第1段階]狭義の宇宙平和利用原則の下での宇宙システムの構築、宇宙利用活動を推進して、宇宙に軍事を持ち込ませず聖域化して宇宙利用の自由を確保しようとする宇宙開発初期の観念的概念。日本の宇宙平和利用国会決議は、その際たるものであるが宇宙後発国の中には戦略的建前で同立場を表明する国も多い。

     軍は、主としてロケットの打ち上げ及び宇宙システムの運用支援(Space Support)を実施。

[第2段階]軍事目的の宇宙システムを開発配備して地球上での陸海空軍の戦力及び作戦遂行能力の強化(Force Enhancement)増大を図るとともに宇宙空間の全ての人工物を監視、識別し管理統制(Space Control)するものの宇宙空間における軍事活動は自制し、地球上の軍事活動の範囲で宇宙利用の自由を確保しようとする概念。現在はこの段階に留まっている。

[第3段階]将来、宇宙に関わる脅威が顕在化すると予期し、陸上、海上、航空と同様に宇宙空間に軍事力を配備して軍事活動(Force Application)を通じて宇宙利用の自由を確保しようとする概念。敵の攻撃から未然に我が宇宙システムを防護し、同時に敵対勢力の宇宙利用を拒否し得る宇宙への、宇宙における、宇宙からの戦力発揮、戦力投入を可能にしようとする概念で国際的には未だ認められていない。

米国は、宇宙空間における軍事活動の開始は人類の歴史的宿命であり、避けて通れない問題であり、現在はその過渡期にあると認識すると共に、将来の宇宙優勢(Space Superiority)の基盤確保を念頭に国際社会の合意を得るべく、先駆者としての役割を果して行くものと思われる。

(3)新たな宇宙秩序の創造

米国は、宇宙利用の無限の発展性と地位、重要性の高まりに鑑み、近い将来に宇宙利用をめぐる国際的な競合と葛藤、挑発と紛争が生じるのは自明の理であるため、国際社会として宇宙利用に関わる新たな法の枠組みとルール作りが不可欠と考えている。

宇宙に関わる国際法、国際条約、国内法がこれまで果してきた宇宙利用の秩序維持への貢献を評価するものの、宇宙システムの発達と宇宙利用の拡大を伴う新時代に適応した法体系と環境の整備が必要と提唱しており、特に、宇宙への軍事力配備と宇宙空間における軍事行動に関わる国際的な法体系の整備について米国のイニシアチブの下で同盟国の同意を求めて来ると予測される。

「宇宙の平和利用」理念に反するとの非難に対しては、@1958年及び1963年の国連決議1348号及び1884号では宇宙利用の自由、宇宙空間は国家領域の対象外として宇宙利用の自由を謳うとともに、宇宙は平和的目的のために利用されるべきとしているが宇宙平和利用の理念として平和的とは非侵略的であって非軍事的とは解釈されない。また、A1967年の宇宙条約では地球周回軌道及び宇宙空間への核兵器・WMDの配備を禁止するとともに月及びその他の天体への軍事施設の設置及び兵器の実験を禁止しているが、宇宙空間への兵力配備、軍事行動を否定するものではない。「平和を守る軍隊の宇宙利用は宇宙の平和利用に他ならない」と反論している。

何処の国も宇宙における、宇宙からの利益、国益を守る権利を有しており、国際慣習法においても大気圏外空間も公海、国際空域と同様に軍事力の恒常活動を認めており宇宙における軍事力の存在、活動を禁止する条項は何処にもない。宇宙空間への軍事力配備と宇宙から地球への、宇宙における、宇宙を通しての軍事行動が将来に亘り禁止、もしくは制限されることの無いよう警戒している。

終わりに

ブッシュ大統領によるABM条約の廃棄は、宇宙への軍事力配備と軍事行動を可能にする新たなる宇宙秩序を米国が率先して創造しようとする米宇宙軍事戦略の一大転換に基づくものと考察される。国際世論の逆風を受けながら矢面に立っても新たな時代への先駆者としてのパイオニア精神の根底にあるのは新たな宇宙時代への先見性と国益確保、国益防護意識であり、宇宙大国としての自負心と主導性確保意識に他ならない。

宇宙の軍事利用は未だ始まったばかりの初期段階にあるが、これからの軍事作戦においてはSpace Superiority(宇宙利用、宇宙空間における自由確保と敵の自由拒否)の確保が作戦の最優先事項となる。世界は「宇宙を制するものが世界を制する」時代へと進んでいる。我が国も如何に対応して行くべきか真剣に検討すべき時期に来ている。

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