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テレビ業界がライブドアに拒否反応を示す理由とは (佐々木俊尚) 一理あるような…
http://www.asyura2.com/0502/senkyo8/msg/1177.html
投稿者 外野 日時 2005 年 3 月 28 日 22:33:14: XZP4hFjFHTtWY

テレビ業界で言う「顧客」というのは視聴者ではないからだ。放送局の顧客は今のところ、どこまで言ってもスポンサーである大企業でなのである。視聴者は視聴率で表されている単なる数字でしかなく、放送局には視聴者ひとりひとりと向き合って何かをしようという考え方はまったくない。彼らには視聴者とのインタラクティブなどたいして興味のある対象ではなく、知りたいことは「この番組がどの程度の視聴率を取れるのか」ということだけなのだ。

 極論すれば、日本の民放局というビジネスはB2Cではなく、B2Bなのである。
(外野 注:
B2C 【B to C】(IT用語辞典 e-Word)
http://e-words.jp/w/B2C.html
 電子商取引(EC)の形態の一つ。企業と一般消費者の取り引きのこと。企業間の取り引きはB to B、一般消費者同士の取り引きをC to Cという。インターネット上に商店を構えて消費者に商品を販売するオンラインショップ(電子商店)が最も一般的な形態だが、ソフトウェアや画像、音楽などのコンテンツを販売するビジネスや、オンラインゲームやオンライントレードのようにサービスを提供する事業者も登場している。)

 この放送局の考え方がいまだもって揺るがないのは、数字で裏打ちされているからだ。前回も書いたが、放送業界の広告市場は2兆円強。インターネットの広告市場は増えたとはいえ、わずか1800億円。もっと具体的に見てみれば、フジテレビの年間売上高は4550億円もあり、このうちの放送収入は3000億円にも上る。一方のライブドア。昨年9月期の決算を見れば、年間売上高は300億円あまり。さらにポータルサイトの売上だけに絞れば、わずか30億円強しかない。フジテレビの100分の1である。(「テレビ業界がライブドアに拒否反応を示す理由とは」より)

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佐々木俊尚の「ITジャーナル」

テレビ業界がライブドアに拒否反応を示す理由とは
http://blog.goo.ne.jp/hwj-sasaki/e/1e4723c5c4c0295cb5ac3c6d259e5dd5

 「テレビとインターネットは全然別のものですからね。そう簡単に融合というわけにはいきませんよ」「テレビは独自の世界で、オープンじゃないですからからね」――。

 三年ほど前、テレビ業界に集中的な取材を行ったことがある。取材テーマは、「テレビはインターネットとどう融合するのか」。IT業界の側ではさかんに「将来はネットがテレビを呑み込む」「インターネットとテレビは融合していく」と語られているが、放送業界の側ではそれらの意見をどう受け止めているのかを聞いてみようと思ったのだ。

 テレビ局幹部には、上に紹介したようなことを言う人が多かった。遠い将来にはネットと融合するのかも知れないが、今のところそれはあくまで遠い未来であり、現状を見ればネットの世界とテレビの世界にはあまりにも隔たりが大きすぎる――というのが、テレビ業界の一致した見方のようだった。

 これは三年ほど前の取材で、ブロードバンドがちょうど爆発的に普及し始めていたころの話である。あれからブロードバンドはすっかり日用品となり、ネットは生活のすみずみにまで浸透した。だからいまの段階で取材をし直せば、また違った意見がテレビ業界からは得られるのかもしれない。

 だがそれにしても、相変わらずテレビ業界とネット業界の隔たりはきわめて大きいように思う。フジサンケイグループがライブドアに対してあれほどまでの拒否反応を示すのは、堀江貴文社長というキャラクターを気にくわないという単純な理由からだけではないだろう。

 堀江社長はネットで配信している所信表明ビデオやメディア各社からのインタビューで、テレビ・ラジオとの提携によるシナジー効果についてさまざまに語っている。

 その論を簡単に説明すれば、インターネットにはこれまでのテレビやラジオが持ち得なかった特質を持っている。それはオンデマンドとニッチ、インタラクティブという3つの要素で、マスコミはこれらの特徴を採り入れることで、これまでの欠点をカバーできるのではないかということだ。

 オンデマンドは、テレビ番組を視聴者の側が好きな時間に見られる仕組みであり、たしかに現在のテレビ業界は一部の短いニュースをのぞいて実現できていない。またマスを相手にするテレビ局はどうしても最大公約数的な番組作りを行わざるを得ず、ここまで消費者のニーズが細分化された時代に、それらのニッチなニーズに対応できるすべを待ったくっ持っていない。そして当然のようにテレビは片方向的で、BSデジタルなどではわずかに行われてはいるものの、視聴者との間の双方向性をきちんとは実現できていない。

 そしてこれらのマスメディアの欠点は、たしかにインターネットではすべて実現できる。その意味で堀江社長の主張はきわめてわかりやすく、ネット業界で一般的に言われているメディアの将来像に沿ったものでもある。ただこうした将来像が本当に正しくビジネスとして成立するかどうかは、まだだれも実現できてない以上、現状では単なる予測でしかない。

 さらに、これらの論理はあくまでネット業界のロジックである。このロジックが果たしてテレビ業界に理解されているかといえば、かなり疑問といわざるを得ない。

 たとえば堀江社長はライブドア公式サイトで配信している所信表明ビデオで、こんなふうに語っている。

 「放送局側がこれまで持っていたジレンマは、インタラクティブ性がないために視聴者にダイレクトにつながっていなかったことです。顧客は番組をただ観るだけで、放送局は顧客のデータベースも持っていないし、実際のところ顧客がどんなふうに思っているのか、どのようにテレビを見ているのかということを調べ切れていない。だが顧客のアカウント(註:ポータルサイトで発行するIDのこと)を発行して放送局がそのデータベースを持つことで、いろんなビジネスが生まれてくるし、このビジネスは顧客の側にも役立つんです」

 ポータルサイトのあるべき姿を論じた主張としては明快きわまりなく、曇りもないが、しかしテレビ業界にはこの論理は伝わらないだろう。なぜならテレビ業界で言う「顧客」というのは視聴者ではないからだ。放送局の顧客は今のところ、どこまで言ってもスポンサーである大企業でなのである。視聴者は視聴率で表されている単なる数字でしかなく、放送局には視聴者ひとりひとりと向き合って何かをしようという考え方はまったくない。彼らには視聴者とのインタラクティブなどたいして興味のある対象ではなく、知りたいことは「この番組がどの程度の視聴率を取れるのか」ということだけなのだ。

 極論すれば、日本の民放局というビジネスはB2Cではなく、B2Bなのである。

 この放送局の考え方がいまだもって揺るがないのは、数字で裏打ちされているからだ。前回も書いたが、放送業界の広告市場は2兆円強。インターネットの広告市場は増えたとはいえ、わずか1800億円。もっと具体的に見てみれば、フジテレビの年間売上高は4550億円もあり、このうちの放送収入は3000億円にも上る。一方のライブドア。昨年9月期の決算を見れば、年間売上高は300億円あまり。さらにポータルサイトの売上だけに絞れば、わずか30億円強しかない。フジテレビの100分の1である。

 フジテレビから見れば、ライブドアがいくら「ネットとのシナジー効果がある」と力説していても、「なんだわずか30億円増えるだけなの?」ということになってしまうだろう。これではフジテレビ側が提携に対して食指を動かすとは思えない。

 著作権の問題もある。堀江社長は「韓国では放送局がネット企業になりつつある。番組の放映直後にオンデマンドで同じ番組がネットで見られるようになっている。スポンサーの問題さえクリアすれば本当はいいわけです」と話しているが、日本ではスポンサーの問題以外に、著作権ホルダーの権利をどう処理するかという難題が立ちはだかっていて、番組をネットで二次利用する枠組みがいまだに確立していない。

 一年半ほど前に、テレビ番組の著作権処理に取り組んでいるある政府系の外郭団体を取材したことがある。この団体の幹部は、次のように話していた。

 「放送局自体は巨大組織だが、実際に番組制作に携わっている人々は多くは零細企業の社員で、中には個人事業主の人もいる。経理・総務担当の女性がひとりいるだけ、というケースも少なくない。テレビ局や番組制作会社との契約も、多くが『電話一本による口約束』という商慣行になっている。インターネットでの二次使用どころか、最初の契約書さえ交わしていないのが大半だ」

 まったくIT化されていないのである。原因はさまざまにあり、過去の経緯も引きずっているのだろうが、ひとことで言えば、放送業界が免許事業として政府から保護され、護送船団の中で既得権益を享受してきた業界であるということがすべてを阻害している。わざわざITなどという怪しげなところに足を踏み入れ、ネットでの二次利用のことなどを考えても、限られた枠を皆で分け合っていけば十分に食べていくことができるからだ。

 いずれはそうした保護行政は消滅し、著作権の処理も行わなければならない状況が生まれてくると思う。いずれは堀江社長の言う将来像のとおりになっていく可能性はあるだろう。だが現状のところ、放送業界の側は、現状に甘んじていて、堀江社長の言い分など聞く気は毛頭ない。

 それはたとえて言えば、恐竜と小型ほ乳類みたいなものである。恐竜はいずれ滅びることを運命づけられているとはいえ、いまだに栄光の大恐竜時代の最後の残滓を謳歌している。いつ滅びの日が来るのかは、誰にも分からない。明日かも知れない。でも恐竜には、それがいつやってくるのかは分からないのである。

 それに対してネズミやリスのような小型ほ乳類が「おまえらはもうすぐ滅びるんだぞ!」「いずれは俺たちの天下になるんだぞ」とかみついたとしても、恐竜の方は何の痛痒も感じていない。「うるせえなあ」と小型ほ乳類を後ろ足で引っかけ、遠くに投げ飛ばしてしまうだけなのである。

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佐々木俊尚 Profile:
ジャーナリスト。1961年生まれ。大手新聞社で警視庁捜査一課、遊軍などを担当し、殺人事件や海外テロ、コンピュータ犯罪などを取材する。その後、1999年10月、アスキーに移籍。月刊アスキー編集部などを経て2003年2月に退社。現在フリージャーナリストとして、週刊誌や月刊誌などで活動中。
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