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非競争政府契約における利益容認政策について   【稲 垣  連 也】 DRC
http://www.asyura2.com/0502/senkyo9/msg/1074.html
投稿者 愚民党 日時 2005 年 6 月 16 日 14:42:00: ogcGl0q1DMbpk

(回答先: 政府広報契約「竹中氏秘書官関与の疑い」…民主が指摘   【読売新聞】 infoseek 投稿者 愚民党 日時 2005 年 6 月 16 日 14:37:33)

非競争政府契約における利益容認政策について


http://www.drc-jpn.org/AR-8/jnagaki-04j.htm


(財)DRC研究委員                            

 稲 垣  連 也

はじめに

 技術的能力または製造設備の関係から、あるいは妥当なる製造原価設定能力の関係から、防衛装備品等の製造においては特定の1社と政府が契約をせざるをえない場合がしばしば生じてくる。この場合需要と供給の競争原理は働かない(現実にはわが国の防衛中央調達額の80%以上がそうなっている)。しかし政府からみればそのような場合、市場価格があれば問題は比較的簡単であるが、市場価格のない特別注文生産においては、納税者をも納得させうる妥当なる価格とは何かがきわめて重要である。政府(防衛)予算抑制傾向の中、政府側からみた判断のポイントは、業者の原価見積をいかに査定するか、及び業者への容認利益はいくらが妥当かに大別される。前者については原価計算基準の統一化または統一的解釈、並びに原価監査実績の集積等による査定能力の向上、後者については防衛調達における第3者を納得させうる利益政策の確立が政府発注側にとっての大きな課題であろう。

 本稿では非競争政府契約における妥当な利益率とは何かに焦点を絞り、昨年末から本年初めにかけて米英仏独4国の防衛契約における利益政策の調査を行った結果を考慮しつつ、検討すべき項目を列挙し、解決策への提案を試みるものである。

1.非競争契約における利益率を決めるための要素

政府契約における利益(利子を除く)とは、一般的にいって契約給付達成のための報酬及び危険負担に対する補償であるとされる。政府からみれば、業界に対し政府契約の魅力を提示することで将来的な競争参入を促し、結果的に原価低減と応札価格の低下を図ることが望ましく、そのために利益率設定政策は重要な意味を持つ。この容認利益率決定にあたり考慮すべき主要な要素としては下記の事項が考えられ、それらが政府からみてどういう意味を持つか、業者として参入へのインセンティブとなるかを比較検討するのが本稿検討の趣旨である。(利子等の要素については、関連はあるがここでは別扱いとする)

 ・契約のリスクの度合いによる利益率の設定

 ・企業の(長期)設備投資の見返りとしての利益率問題

 ・大規模契約におけるプライム企業の外注分に関する利益率設定問題

実際の利益率の基本となる値は、製造業全体からみた平均値等を参考に、防衛産業育成政策等行政的/政治的判断により決定されよう。ここでは、まず容認利益率のあり方を論じ、ついで基本利益率を元に契約の内容によってどのように差別化していくのが妥当なのか、を検討するものである。

2.契約のリスク度合いによる利益率の設定

利益を契約給付達成のための危険負担に対する補償と見なせば、そのリスクの度合いは契約方式及び契約内容(性能performance)の2つの要素から決まってくる。

前者の代表はコスト補償(cost reimbursement)契約を採用するかである。今回米英独仏を調査した結果では、各国とも(その比率は少なくしたいと願っているものの)高度な開発契約を中心にコスト補償契約を実施しており、その場合の利益率は通常に比べて低く設定している。その他米国ではインセンティブを絡めた多くの契約形態があり、それぞれに異なった利益率の設定が行われている(1)。契約内容が複雑化し、仕様書内容を契約当初に確定することが困難になりつつある現在、わが国防衛契約においても、契約遂行リスク度合いの高い場合、概算契約またはコスト補償契約の導入が望ましいと思われる。会計法対応や予算対応については、契約のやり方により解決方法があり、なによりもよいものを適切な価格で調達する基本原則をどう実現するか工夫するときではあるまいか。

後者については開発物等が代表的な性能高リスク案件であるが、技術的なリスク、プロジェクト管理的なリスク等が勘案されることとなる。この契約内容性能による利益率差別化には、大別して開発・製造・修理等役務といった契約業務種別による差別化と、それら業務種別に共通して、初回ものである等実際の業務の内容によるリスク差別化とが考えられる。前者については独国で実施されている例が代表的なもので、その利益率差別化の値は1.1:1.05:0.7である(2)。米国は開発物に対して利益率を優遇し、技術要素・管理要素等契約担当官の裁量で細部が決められるが、量産契約に比し約50%増の利益率を容認している(1)。後者の業務内容によるリスク差別化については、英国の2003利益政策General Review(3)に提示されている方法が代表的なもので、開発・製造・修理/役務いずれにおいても、初回ものかどうか等の業務内容により3区分化されている(ただし区分分けの対象は高額契約に限定されている)。その比率は1.1:1.0:0.9であり、コスト補償契約の場合は区別なく0.75とされている。

リスクを容認することは、本来裁量の是認を意味する。すなわち、この契約内容性能による差別化としてのガイドライン作成後のその具体的数値の決定は、受託業者との内容調整はあっても最終的には契約担当官の判断・裁量となる。しかし裁量決定根拠文書化をあわせ実行することで、説明責任を果たすことができるのであり、裁量を忌諱する理由はないであろう。その意味では契約業務種別内容による差別化より、契約業務の内容の困難さによる差別化の方が、裁量の度合いは強くなるものの、発注者及び受注者双方にとって納得しやすいのではあるまいか。

3.企業の設備投資の見返りとしての利益率問題

大型防衛契約においては、特にプラットフォーム製造契約の場合、製造のために受注企業は汎用の設備投資(特定プロジェクト専用の設備は別という意味で)を行い、長期にわたる製造受注を通じて投資回収を行う(ビジネスモデル)することが多い。この投資回収にあたり、利息をどう見るかとともに利益率への反映の問題が生じてくる。政府側が設備投資回収を考慮せずとすると、かっての米国における場合のごとく企業の設備投資意欲を減退させ、かえって高価な買い物をせざるを得ない可能性をはらむ。しかし設備投資は防衛生産と民需生産とに兼用されることが多く、あるいはハイテク技術採用の現在設備投資の定義も複雑化してきているなどの背景から、各国の対応状況は様々である。中でも米国は原則として企業の支払利子は容認しないという方針を持ちつつも、最も精緻で手厚い企業の設備投資への見返り(利益率加算を含む)を与えている(1)。独国では固定資産集約率を導入して利益のかさ上げをはかる方式をとっている(Bonnの公式(2))が、最近のハイテク動向につき必ずしも整合しなくなってきているともいわれる。一方本年3月までのわが国及び英国方式では、企業の設備投資への配慮として、個別企業の経営資本回転率で標準利益率を割り返すことによる補正が行われてきた。しかしこれは企業の経営改善目標である総資本回転率の改善を否定する方向(総資本回転率を良くすれば防衛契約における期待利益率は逆に下がる)であり、一般的な企業努力と矛盾してしまう。従って新しい方針が求められる。英国の今回の新しい方針(Review Board)では、固定資産資本及び運転資本使用の見返りとしての利益分を容認し、この問題を解決しようとしている(3)。

この企業の設備投資の見返り問題は、わが国においても、支払利子率容認問題並びにかねて問題とされている開発割りがけ費問題等とあわせて、早急に総合的に検討すべき課題であろう。この場合に、米国流の精緻なモデルと新しい英国方式とが参考になると考えられる。

4.大規模契約における外注分に対する利益率問題とシステム統合責任問題

現代の製造請負契約においてはプライム受注者ですべてを製造することはまれであり、かなりの部分が外注され、プライム社ではその部分にはシステム統合という付加価値がプラスされるだけということが多い。現行では外注比率にかかわらずプライム社にすべて同一の利益率を与えているので、プライム社内製分と比較して外注分についてはプライム社とベンダー社の利益率がある意味で2重に加算される。外注分のうち部品・素材あるいはカタログ品等については従来からプライム社の付加価値扱いで算入され、製造業者の平均利益率もそれを前提として算出されてきた。また製造等の下請けについてもプライム社での内作原価より安く購入できれば問題とされない。しかしほぼ同一原価構造の下請け会社への外注分(防衛庁用語でいえば本来下請負申請をすべきもの)については、特にその比率が増大しつつある昨今において、プライム社に内製品(部品素材を含む)と同じ利益率享受を容認してよいのかが論点となる。(ここで一般管理費については一見2重に加算される構造であるが、プライム社の防衛受注全体からみれば多年度にわたり相殺されて問題とならない。)部品素材等の比率が低下傾向であるのに、機能単位の製造をそのまま依頼する外注が専門化傾向及びシステムの複雑化傾向により急激に増大しつつあり、極端な例ではプライム会社はとりまとめ設計とシステム統合責任のみ(付加価値比率10%以下)の場合が考えられるため、問題が提起される。

現在、大規模プロジェクト主体のプライム社の外注依存度は60~80%以上と推定されるが、外注の定義問題もあり、はっきりしたデータはない。公表例では、公正取引委員会による サービス(IT)システム開発の請負外注に関する調査で、「請負構造の何段目かを問わず平均して受託システム開発事業の60.9%が他業者に再委託されている」(4)とし、多段階委託問題に警鐘を発している。一方で公益法人が国からの委託受託事業者になる場合、原則として外注費及び再委託費が事業費の5割を越えないことと(平成14年3月29日閣議決定)という規定がある(4)。これらはある割合以上の下請け外注問題の参考となろう。

先進4カ国のこの問題に対する対処の姿勢はまちまちである。独国及び仏国は、付加価値部分に対してのみ満額の利益率を容認し、外注部分に対してはプライム社のその部分に相当する利益率を減じている。独国は最も極端で、部品を含む外注部分に対してはわずか1%しかプライム社に対して利益を容認しない。仏国も%値は異なるものの外注部分に対しては利益率をリスク負担分のみに抑制し、契約給付達成の報酬分と思われる利益分は容認していない。米国は原則として外注部分に対しても内製分と同じ利益率を容認しているが、大規模外注比率に対する利益2重取り問題の指摘に対しては、(国防省内局担当部門の説明によれば)契約担当官の利益率裁量のところで(減額)調整をするとのことであった。

英国のReview Boardは、2003 General Review原案作成時に、基本利益率に対してプライム社の内製分に対する利益率を125%、外注分に対する利益率を50%にするという提案を行った。しかしこの案は英国防衛業界及び英国防省双方の了解が得られず(主たる原因は外注の定義が不明確のためとされる)、暫定案として高額案件は外注比率が高いと想定し利益率を0.3%減ずることとし、今後検討継続することとなった(3)。

現代のようなシステム統合業務の重み増大傾向においては、プライム社の外注部分に関する利益の見直しが望まれるが、一方において官給システム品(既設システムを含む)のプライム社による統合業務に関しては、それによる危険負担に関する補償としての付加利益が与えられるべきと考えられる。極端な場合、プライム社の下請け社発注にあたる部分をすべて政府側で別調達し、プライム社にシステム統合の責任を押しつけて全体のコスト低減を行う、という構図も考えられるからである。実際これに類することがITシステムでは行われており、賃貸借契約と製造請負契約は費目が異なるということで政府側で別調達したIT機器やソフトウエアにつき、プライム会社にシステム統合責任を負わせている実態がある。危険負担に対する補償の観点からみれば、賃貸借を含めプライム会社に総括依存(発注)するか、またはシステム統合付加価値分の利益率を増やすべきであろう。

 

5.大規模契約における外注分に対するプライム社の利益率設定への提案

大規模契約を中心とした外注分に対するプライム社への利益率設定について、これまでの海外調査をも勘案し、本節で一つの提案を行う。今後の検討の資となれば幸いである。

○外注品部分へのプライム社享受利益率の減額

利益を契約給付達成のための報酬及び危険負担に対する補償の2項目から構成し、プライム社からの外注部分に対し、プライム社は危険負担補償は受けるが、契約給付達成報酬分に対しては、利益率の減額がなされるものとする。

○プライム社の利益率減額対象外注部分の定義

ある機能を有する部分の(請負)製造契約部分を対象とする。

部品素材については、利益率減額対象としての外注品からはずす。製造業では材料と工賃とをあわせて原価とし、そのやり方で製造業利益平均値等が算出されているためである。

カタログ品については受託システムの中で占める位置づけによって変わる。リスクの少ない単品付属品等は、本来かって防衛庁のいう外出し品としての扱いもありうる。一方でシステム統合への影響度の強いものや、部品扱いが必要な手間のかかるものがある。前者の例としてはコンピュータプラットフォーム(OS込み)やエンジン等があげられ、後者の例としてはパッケージソフトウエアがあげられよう。前者は外注部分の定義に含むものとし(請負製造に準ずる)、後者は部品扱いで減額扱い外注部分とはしない。

○外注品部分へのプライム社享受利益率減額算定方式

下記方法のいずれかあるいは混合方式等が考えられる。

 ・内製換算原価より高い外注部分に対し一律に報酬分利益率を何割かカットする方法

 ・ある割合(例えば50%)を越える外注分に対し報酬分利益率を容認しない方法

  契約給付達成のための報酬と危険負担に対する補償の比率の設定は、一定(例えば等比)とするやり方及び契約の種類により変動させる方法とが考えられる。

○官給品のシステム統合危険負担補償

官給品のシステム組み込み・統合にリスクがあると判定されたとき、システム統合担当のプライム社に危険負担補償を行う。プライム社の付加価値原価、及び官給システム価格のうち、低い値の何%かを危険負担分利益としてプライム社利益に上乗せする。なお繰り返し生産においては危険負担が減少しているため何らかの補正を行う。

おわりに

 非競争政府契約における利益容認政策の具体的あり方として、契約のリスクの度合いによる利益率の設定、企業の設備投資の見返りとしての利益率問題、及び大規模契約におけるプライム企業の外注分に関する利益率設定問題を、諸外国の例を参考にしつつ検討した。その基本には契約にはリスクが存在し、そのリスクは政府側と業者側で共同に負うことを前提としている。利益を契約給付の報酬と危険負担の補償の両面からとらえ、リスクの大きい契約には概算契約またはコスト補償契約の導入が望まれること、利益率設定にあたっては基本的ガイドラインがあっても契約担当官の裁量の余地を残すことが不可欠で、裁量は説明責任と相まって決して忌諱すべきことではなく、適切な利益率設定には必要であることを示した。防衛装備品の複雑化、システム化が進む現在、利益率設定において設備投資奨励とその補償についての問題、並びに大規模契約でのプライム社の外注分の扱いについては、難しい問題があるが早急に解決する必要がある。

参考文献

1.DFARS Subpart 215-4, Contract Pricing 1998 Edition, Revised April 26, 2002

2.Dr. Ebisch und Dr. Gottschalk, Preise und preisprüfungen bei Öffentolichen aufträgen 第6版 Verlag Franz Vahlen München

3.Review Board for Government Contractors, Report on the 2003 General Review of the Profit Formula for Non-Competitive Government Contracts March 2004, London TSO

4.IT関連委託事業の執行のあり方調査検討委員会 IT関連委託事業の執行のあり方について(16,50ページ) 平成16年7月16日 経済産業省News Release

附録として2003年度においてDRCにて米英独仏4国における政府の交渉契約における利益政策調査を行った結果の概要を添付する。

「附録:交渉契約における容認利益の4カ国比較概要」

○英国国防省容認利益(2003 General Reviewによる)

P = (Baseline profit) x (Risk/award matrix factor) + (FCSA7.3%とWCSA5.67%の重み付け加算)x (固定資産+運転資本)/総生産コストCP/CE

CP/CE: Cost of production/Capital employed

    FCSA: Fixed Capital Servicing Allowance 平均15年の投資コスト

    WCSA: Working Capital Servicing Allowance

  Baseline profitは1095社の3年平均で5.67%、Risk factorは1±0.1

CP/CEは例として1.5~6がありそれにより第2項は4.33%~1.08%と変化

支払い利息は利益に含まれる

○米国防省容認利益(DFARS Subpart 215-4 Contracting Pricing 2002改版版)

P = (サブトータル原価+G&A)x(S利益率要素)+(使用設備資本) x0.175+FCCOM利息

FCCOM: Facilities Capital Cost of Money

利益率要素: Performance Risk (3〜7% for production, 7〜11% for R&D etc.)

Contract Type Risk (4〜6% for FFP, 0.5% for CPFF)

Cost Efficiency Factor (0〜4%)

   出来高払いが採用され、支払い利息は原則として容認しない

○独国国防省容認利益(利息は別立て)

G = 0.05 x (Q + 1.5 x BNAV/BNV) x E + 0.01 F (Bonn Formula)

Q: Qualification factor (0.7: 修理とオーバーホール, 1.05:製造, 1.1:開発)

BNAV: 固定資産, BNV: 総資産

E: Internal activity, F: External Service(外注)

○仏国防衛装備庁容認利益

P = 付加価値サブトータル原価 x (1 + G&A ) x(PA+PB + PC)

+ 購入品またはサービス x (PB + PC)

PA : Profit factor for added value (2〜6%)

PB : Profit factor for the contract type risk (0〜5%)

PC : Profit factor for contractor reliability/reputation (0〜2%)


http://www.drc-jpn.org/AR-8/jnagaki-04j.htm



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