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新聞のライバルとしてのBBC (小林恭子の英国メディア・ウオッチ)
http://www.asyura2.com/0502/social1/msg/485.html
投稿者 外野 日時 2005 年 6 月 26 日 01:29:18: XZP4hFjFHTtWY


小林恭子の英国メディア・ウオッチ
http://ukmedia.exblog.jp/

英エコノミスト誌のBBC分析

新聞のライバルとしてのBBC

 BBCのことを手放しに誉める気は全くないが、文句なく便利で、「すごい」としかいいようがないのが、BBCオンライン(ウエブサイト)だ。一口でBBCオンラインがどのようなサービスを提供しているのか、どれほど役立つのかを、言うのが難しい。

 例えば、文字情報だけでなく、静止画、動画、音声、などが無料でふんだんに提供されている。即時のニュース報道、過去記事〔文字情報だけでない〕蓄積などがあるため、一種の巨大なライブラリー、知的情報の宝庫ともなる。

 公共放送として、公正な報道をすることになっているので、基本的にバランスの取れた視点からの情報が掲載されている。これが安心感、信頼感を生む。

 文章自体が、シンプルで分かりやすい。さらさらっと読みやすい。

 議論が沸騰するような問題が起きたとき、読者からの意見を募るので、大きな意見集約のフォーラムともなる。

 ・・・ということで、情報集めに最適だ。新鮮な情報が即時にとれる。辞書代わりにも使えるのに、情報使用量がただなので、思う存分、好きなだけ調べられる。

 しかし、同業他社から見たら、BBCほどいやな存在もないかもしれない。国民からとる受信料で収入をまかなっているので、資金源を苦労して捻出しなくてもよいBBC。大きな受信料収入を好きなように使えるBBC。BBCに勝つには相当の資金と人手がいる。

 英エコノミスト誌が6月18日―24日号で、BBCが新聞業界のライバルとなっている、という記事を掲載している。

 以下は、大体の全訳。私見も最後に付け加えてみた。


「古いニュースと新しいライバル」

 BBCのすばらしいウエブサイトのおかげで、英新聞業界はますます生き残りが困難になっている。

 イギリス最大の公共放送BBCは、長い間、テレビ、ラジオ界、教育関係の出版社、雑誌社など競争相手の不満の種になっていた。一方新聞は、BBCとの競争を免れてきた。紙媒体の新聞は放送メディアのBBCとの闘いから免れてきた。

 しかし、インターネットのおかげでBBCと新聞業界が直接対決することになった。そして、BBCが闘いに勝ちそうだ。

 BBCオンラインの成功は、かつてのBBCの会長ジョン・バート氏の功績によるところが大きい。他の誰よりも先に、インターネットに力を入れることを決断したからだ。BBCがオンラインのサービスを始めたのは1998年だったが、このときバート氏は、BBCは、様々なオンラインサービスをどうやって使ったらいいか分からない人々にとって、信頼に足るガイドとなる、と考えた。

 BBCは現在55のサイトを持っている。ニュース報道のサイトには年間1500万ポンド(約29億円)を使い、この他に5100万ポンド(約100億円)を社会、娯楽、文化、科学、自然などのサイト用に使っている。ウエブサイトを支えるのは、巨大なニュース編集部門で、5000名のジャーナリストをかかえており、資金源は年間28億ポンド(約5500億円)の受信料収入だ。

 例えば例年開かれているチェルシー・フラワー・ショーの場合、BBCは専用のウエブサイトを立ち上げた。コンテストに参加しているそれぞれの庭の様子はカメラをズーム・インさせるような形で、細かい部分を見ることができるようにした。庭のデザイナーのインタビューを見たり、それぞれの植物の説明を読んだりすることもできた。

 今年5月の総選挙時には、専門のサイトを立ち上げ、使いやすい形でそれぞれの選挙区の統計データや、投票パターンなどを載せた。

 今週はBBCが持っている5つのオーケストラのいずれかが演奏したベートーベンの交響曲を無料でダウンロードできるようにした。このダウンロード・サービスは、時々無料で音楽ダウンロードを提供する新聞社側からすると、特に頭にくるものだった。新聞社の場合、演奏者にお金を払わなければならないのだ。

 新聞社側が最も困惑しているのは、BBCオンラインのニュース報道だ。BBCのニュースサイトの利用者は、2000年で週に160万人だったが、2005年には780万人に増えた。コンテンツの幅や深さも新聞社が同様のものを提供するにはかなり苦労する。

 新聞社側がオンラインに力を入れようとしているのは、オフラインでのビジネスがうまくいっていないからだ。1990年当時と現在とを比較すると、新聞購読者の数は30%減少した。読者の年齢は上がっており、これは若者が他の情報源特にインターネットを、利用しているためだ。1990年、新聞読者の38%が35歳以下だった。2002年では、31%になった。

  最近、サンデーテレグラフ紙〔デイリーテレグラフの日曜版〕の編集長ドミニク・ローソン氏が発行部数下落を止めることができなかった、という理由で解雇されている。

 オンラインで成功している新聞もある。例えばガーディアン紙だが、新聞社のオンラインサイトの中では一番成功しており、BBCの週間利用者の約半分の数の利用者がガーディアンのサイトに来る。しかし、問題は、オンラインサイトでどうやって利益を生み出すか、だ。

 新聞社のオンラインサイトの難しさは、サイトに来る読者のほとんどがほんの短時間サイトを訪れるだけ、という点だ。たいがい、ほんの2−3ページを読むだけだ。このため、良い購読モデルを構築することが難しい。特別なコンテント、例えばクロスワードパズルや、ファイナンシャル・タイムズの経済ニュースなどを除けば、新聞社のサイトは無料で読める。ネット広告は、グーグルやヤフーなど大手のサイトに流れてしまっている。

 それでも、オンライン費用をまかなえるほどのサイトもある。ガーディアンのサイトはもうすぐ利益を生み出すほどになっているし、フィナンシャル・タイムズのサイトは、2002年から利益を出している。しかし、新聞社のオンラインサイトが紙の発行部数減少のロスを挽回する役目を持つとしたら、現在よりもはるかに大きな利益を生みだす必要がある。

 新聞社のサイトの問題の1つは、紙の新聞のオンライン版という点だ。動画やグラフィックスの扱いを知らないのだ。BBCはテレビ局としての知識があるので、ネットでどんな表現ができるかを心得ている。

 そして、これも重要な点だが、BBCのオンラインサイトは新聞社に比べてはるかに多くのジャーナリストをかかえている。

 サン紙のオンライン版で働くスタッフの中で、アメリカで起きたマイケル・ジャクソンの子供の虐待の裁判結果を報道したのは、夜勤チームの4人だった。BBCが豊富な人材を使って報道する様子を目の当りにしたサンのオンライン版エディターのピーター・ピクトン氏は、負けた、と思ったという。「BBCでは、独自のサイトを立ちあげ、ジャーナリストたちが様々な視点から裁判を取り上げ、自分たちで撮ったビデオを使っていた。これほどの素材には勝てない」。

 BBCオンラインのおかげで新聞社のサイトを訪れる人が減る、といった現象がおきていると見られる上に、ネット広告にも影響があると言われている。

 新聞社のサイトのニュース報道を読む人が減少するということは、広告主が重要視する金融やクラシファイド広告などのコーナーに来る人が減少することも意味する、と指摘するのはガーディアン紙のデジタル出版部門のサイモン・ウオルドマン氏だ。

 BBCニュース・インタラクティブを統括するリチャード・デベレル氏は、新聞業界は多くの問題をかかえており、BBCの存在はそれほど重要ではない、と述べる。また、BBCオンラインは、最近になって他のニュースサイトのリンクを載せており、1人勝ちではない、とした。

 他サイトのリンクが載るようになったのは、トリニティー・ミラーという新聞社のトップだったフィリップ・グラフ氏が、政府の任を受けて調査していたBBCのオンラインサービスに関する報告書の結果を反映したものだ。グラフ氏は、BBCのオンラインサービスがコントロールができないほどに拡大した、と結論付けた。

 BBCのオンラインサービスが他のメディアに損害を与えている、という点を証明することはできなかったものの、「潤沢な資金を持つBBCが新聞社のオンラインサイトにとって、非常に強力なライバルとなっていることは確かだ」と述べている。
(貼り付け終わり。)

 最後まで読んで、感想が少なくとも二つある。

 1つは、新聞社にとっては脅威となっているBBCのオンラインサイトかもしれないが、英国民〔及びサイトに来る世界中のユーザーたち〕にとっては、非常に役立つサイトであること。公共放送として存在するので、「公共の利にかなう」という目的を達していることにもなる。新聞も、広い意味では「公共のために、読者のために」「社会全体の知的レベルの維持・向上」、さらには国民が十分な情報を持って一票を投じることができるようにするために存在しているとすれば、これはこれでいいのではないか、とも思う。

 しかし、問題もある。BBCが強すぎて、新聞など他のメディアが弱体化すれば、「様々な意見・考えが提供されている」状態が、崩れていく可能性もある。これはやはりつまらない世の中になっていくことを意味するだろう。

 ネットではなくて、テレビ番組の製作現場に目をやると、BBCに多くの人材が集中しており、全てが自社制作になって寡占化が置きやすい状況があることを加味して、全番組の少なくとも25%はBBC内部でなく外部の独立制作会社が行うように定められている。

 日本より1年遅いことになるが、2012年には、イギリスのすべての放送がデジタル放送になる。多チャンネル化がさらに進むだろうし、そうなると、テレビ界でBBCが占める割合が低くなってゆく、と予想されている。視聴者の側も、他にたくさん見れるチャンネルがあるなら、BBCはいらない、となる可能性は高い。BBCを見なくてもテレビを見る人は必ず払わなければならないテレビ・ライセンス料〔受信料〕は一戸で年間約2万4千円だ。これを払いたくない、という人は出てくるだろうし、そうなると受信料制度、つまりBBCの資金源が危なくなる。

 将来の資金源が危ないという状況に近い将来直面するBBC。一方ではネット上では圧倒的に使い勝手がよく、便利で楽しいオンラインサービスを提供し、新聞社サイトの強力なライバルとなっているBBC。ひょっとしたら、将来は、ネットだけ・ネットが主になっているかもしれないとも思ったりする。

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