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社説:イラク選挙 国家再建へ一致協力を (毎日新聞)
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投稿者 彗星 日時 2005 年 2 月 01 日 07:45:29: HZN1pv7x5vK0M

社説:
イラク選挙 国家再建へ一致協力を

 イラクの大都市で、小さな村で、人々は身の危険を覚えつつ投票所へ足を運んだ。反米武装組織からは、「投票したら殺す」といった脅しを受けての選挙である。それでも人々は全国5500余りの投票所の前に列をつくった。「汝(なんじ)ら、信徒の者、正々堂々とアッラーの前に立ち、正義の証人たれ。(中略)正義の道を踏みはずしてはならぬ。常に公正であれ」(井筒俊彦訳「コーラン」、岩波書店刊)という言葉を思い出させるような光景だった。

 登録有権者数は約1300万人。推計投票率が60%近くに上ったことで、1月30日に投票されたイラク移行国民議会選挙は、一定の正当性を保ったといえるだろう。米政府も国連も選挙の実施に満足する声明を発表した。歴史的な選挙にあたり、テロの脅迫に負けずに一票を投じた有権者の勇気をまずたたえたい。

 その半面、イラク各地でテロが起き、30人以上が犠牲になったのは痛ましい限りである。破壊工作に関与するイスラム教徒にとって、選挙妨害こそコーランの言う「正義」であり「公正」なのだろうか。なるほど米軍駐留下の、しかも事実上の戒厳令下での投票は理想の選挙とはほど遠い。だが、イラクの人々は、ほぼ四半世紀に及ぶフセイン独裁に耐え、イラク戦争後は米軍占領下で苦しい生活を続けてきた。市民には言いたいことが山ほどあるだろう。罪もない人々を殺し、投票所を破壊したところで、この国により良い未来が開けるはずはないのである。

懸念される宗教対立 無論、今回の選挙はイラクの復興と民主化の一里塚に過ぎず、前途には難問が山積している。当面懸念されるのは、選挙という民主化プロセスを通じて、逆に国内の分裂が進むことだ。今回の選挙では、憲法草案の起草を主な任務とする移行国民議会の議員275人が比例代表制で選出される。イラクではシーア派イスラム教徒が6割以上を占めており、フセイン政権下で優遇されてきたスンニ派に代わってシーア派が主導権を握るのは確実な情勢だ。

 その結果、シーア派とスンニ派の対立が激化し、ついには内戦に発展するというシナリオを描く人も少なくない。シーア派の連合会派「統一イラク同盟」には、イラン革命を成功させた故ホメイニ師と因縁浅からぬイラク・イスラム革命最高評議会(SCIRI)やアッダワ党などが含まれる。これらの組織がホメイニ路線をそのまま継承するとも思えないが、文字通り「イラク・イスラム革命」をめざしてきた組織に対して、イラクのスンニ派や近隣諸国が警戒感を募らせても不思議ではない。

 「不安定のシナリオ」はイラク国内だけにとどまらない。現在、ペルシャ湾岸でシーア派が政権を握る国はイランしかないが、サウジアラビアやバーレーンなどにもシーア派教徒は少なくない。イラクがシーア派主導国家になった場合、イランとの関係緊密化が進むとともに、ペルシャ湾岸のシーア派の結束によって域内が不安定化すると読む人もいる。アラブ諸国にすれば、革命輸出をめざしたホメイニ師の「おん念」を感じるような状況が、イラクの選挙を機に生じているのだ。

 情勢は不透明である。だが、70年代のホメイニ理論が、今なお強い求心力を持ちうるかどうか。米国を「大悪魔」、ソ連を「悪魔」と呼んだホメイニ師は急激なイスラム至上主義を唱え、祭政一致の統治理論を打ち出した。これに脅威を覚えた王制・首長制の湾岸諸国は、フセイン政権を押し立ててイラン・イラク戦争(80〜88年)を戦うのだが、いまや当のイランもホメイニ路線からの脱却を模索しているのが実情だろう。

 どんな憲法をつくり、どんな政治体制を取るかは、ひとえにイラク国民の選択であり、他者が介入することではない。だが、あえて要望すれば、イラク国内にはシーア派、スンニ派のほかキリスト教徒やクルド人なども多数住んでいる。多様な宗教・宗派と民族が共存できる国をめざしてほしい。シーア、スンニ、クルドという3大勢力が仲良く住める国家体制にしない限り、イラクに安定が訪れることはないだろう。

外国軍撤退の環境づくり かつて中東地域を水平線のかなたに望む「オーバー・ザ・ホライゾン」政策を取っていた米国は、イ・イ戦争時のタンカー護衛作戦などを通じてペルシャ湾での存在感を強め、91年の湾岸戦争で中東への圧倒的な影響力を築いた。だが、イラク戦争に対してアラブ・イスラム圏の反米感情は確実に強まり、イラクへの長期駐留が「テロとの戦争」に関して逆効果となる可能性も大きい。巨額の戦費負担もあって、米国自身がイラク撤退のタイミングを真剣に検討しているのが実情だろう。

 今回の選挙を機に、イラク再建・民主化のプロセスが軌道に乗れば、米軍の早期撤退も現実味を帯びてくる。イラクの再建と民主化の主人公はイラク人であり、軍駐留は早く終えるに越したことはない。米軍の撤退時期は明示されていないが、治安確保にめどをつけたうえで、なるべく早い時期の撤退を心がけるべきだろう。サマワで活動する自衛隊も撤収のタイミングを考える必要がある。ブッシュ大統領が2期目の就任演説で強調した「自由」は、イラク国民にすれば、外国軍隊の撤退なしには実現しないのである。

 今回の選挙でイラク国民は一つの山を越し、再建への手ごたえを感じているかもしれない。アラウィ首相は、選挙実施によってテロリストに勝ったと宣言したが、イラク情勢はなお予断を許さず、テロも続発するだろう。何より大事なのはイラク国民の結束である。真の自立を目指して国民各層が協調することを望みたい。

毎日新聞 2005年2月1日 0時31分
http://www.mainichi-msn.co.jp/shakai/wadai/news/20050201k0000m070159000c.html

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