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【英国の対イラク開戦の根拠を揺るがす衝撃記事】英司法長官の判断は誰が書いたのか?【ファルージャBlog/ガーディアン】
http://www.asyura2.com/0502/war67/msg/833.html
投稿者 傍観者A 日時 2005 年 2 月 27 日 05:55:59: 9eOOEDmWHxEqI

http://teanotwar.blogtribe.org/entry-7864618e3f94a43936d6e65cb9665bfc.html
英司法長官の判断は誰が書いたのか?(ガーディアン,2月23日)

これは相当のニュースだと思う。英国でも米国と同様に「情報の誤り」ゆえにイラクに大量破壊兵器があると断定して開戦に至った,ということで2004年1月から7月にかけて公的な調査結果がまとめられたが,問題はほかにあったのではないかというガーディアンのスクープ報道,2月23日。

このガーディアンの報道は,司法長官の公式な意見(opinion)についてのもの。

2003年3月の開戦直前,ゴールドスミス司法長官(the attorney general, Lord Goldsmith)が,英国会でイラクに対する武力行使の法的正当性を説明した。

ゴールドスミス司法長官の国会での答弁は,英国下院で行なわれた開戦決議で開戦に賛成票を投じた国会議員たちの判断の根拠となるものだった。

その司法長官答弁の内容が,「Wind Report」さんの2003年5月25日に箇条書きでまとめられているのを検索で見つけたので,引用させていただく。


ゴールドスミス卿の英国国会答弁(いわゆる復活理論)
1990年の安保理決議678は,イラクに決議660(クウェートからの撤退命令)を遵守させるため,武力行使を含むあらゆる手段 (to use all necessary means) をとること容認している。⇒湾岸戦争の勃発
湾岸戦争後,安保理決議687は,イラクの武装解除を条件として,停戦=決議678の効力を停止させた。
しかし2003年の安保理決議1441は,イラクが決議687に対する重大な違反 (material breach) を犯していることを示している。これは決議687の前提を失わせるものである。
したがって,決議678の効力が復活 (revival) し,米英はイラクに武力攻撃を行う権限を得る。


参照⇒ ATTORNEY GENERAL CLARIFIES LEGAL BASIS FOR USE OF FORCE AGAINST IRAQ


この,「決議1441(2003年)ゆえに決議687(1991年)が前提を失うので決議678(1990年)が有効となる」という,あんたはタイムトラベラーですか的強引な理屈付けは,2003年2月に英米が国連安保理でその時点でのイラクへの武力行使を認める新決議を求めたが,仏露中の反対(拒否権行使の名言または行使の示唆)で実現しなかったために出てきたものである。つまり,いわば苦し紛れの,何とかして「これを違法ではないものにする」ために,無理やりこじつけた解釈だった。

この解釈の背景が,2年近く経って明らかになりつつある,というのがガーディアン記事の大枠。ガーディアン記事はちょっとわかりづらいのだが,要は,ゴールドスミス司法長官には「戦争は違法なものになるかもしれない」との認識があった,というのが1点。そして「決議678が有効となる」というゴールドスミス司法長官の国会答弁は,司法長官自身が国会で述べたものではなく文書で提出されたものだったのだが,その文書は司法長官が書いたものではなかった(長官は口頭で述べただけ)というのが1点――これは英国の正式な手続きに反することである。さらに,その司法長官の見解というのは,司法長官自身のものではなく,長官が面会したブレアの側近中の側近2人によって固められたものであったと,長官自身が昨年明らかにしているというのが1点。さらに,長官が訪米(というか「呼び出された」に近い)していたということが1点。

なお,下記ガーディアン記事中では「3月17日の国会答弁」となっているものは,英外務省のATTORNEY GENERAL CLARIFIES LEGAL BASIS FOR USE OF FORCE AGAINST IRAQの日付はTUESDAY 18 MARCH 2003だが,18日というのは文書がサイトにアップロードされた日のことで,このページの末尾には17 March 2003との日付がある。質問者はBaroness Ramsay of Cartvaleで,労働党の上院議員(Labour peer)。

以下,人の肩書きなどは厳密な訳にしていません。肩書きとかがなくてもけっこうややこしい記事で,日本語にすることでよけいにややこしくなっているかもしれないので,わかりづらいという場合は原文をご参照ください。というか,原文のほうがすっきりしているかもしれません。また,opinion, advice, viewの重み付けをすることに失敗している訳文なので,正確なところは,必ず原文をご参照ください。

Revealed: the rush to war
Richard Norton-Taylor
Wednesday February 23, 2005
http://politics.guardian.co.uk/iraq/story/0,12956,1423304,00.html

司法長官のゴールドスミス卿は,イラク侵略まで2週間足らずとなっていたときに,軍事行動は違法と判断されうると警告していた。

英国政府は起訴されるかもしれないとの大きな懸念を抱いており,そのために国際法廷での法的行動に備えるために法律家のチームを編成していた。

そして,戦争の数日前にゴールドスミス卿の名前で――ただし実際にはゴールドスミス卿ではなくministers【←英国の場合「大臣」ではない場合があるので原語のままにします】が卿の公式の意見として下院での決定的な採決の前に提示したものであるが――出された国会答弁は,司法長官の執務室ではなく,ダウニング・ストリート【=首相官邸】でまとめられていた。

戦争についての法的正当性を政府がいかに作り上げたか(manipulated)および,政府の最上層部の法律家【=司法長官のこと】にかけられていた政治的圧力についての全体像が,今日,本紙報道で明らかにされる。

当時のchief of defence staff(参謀総長)ボイス卿(Lord Boyce)によって求められたような,イラク侵略が合法であるとの明白に公的な法的意見を,ゴールドスミス卿が書いたこともないようである。

また,戦争に抗議して辞任したエリザベス・ウィルムハースト(Elizabeth Wilmshurst)外務省法務副顧問(deputy legal adviser at the Foreign Office)が,辞任に際して書いた書状で,計画されていたイラク侵略は「侵略の罪(crime of aggression)」であると述べていることも新たにわかった。

ウィルムハースト元副顧問は,「国際秩序と法の統治に多大な害をなす」状況での軍事行動には賛成することができないと述べている。

彼女の断固たるコメント,および,戦争準備段階でのministersとゴールドスミス卿との関係についての詳細は,シェリー・ブース(Cherie Booth:Tony Blair夫人)のMatrix chambers所属の王室顧問弁護士(QC)で,ロンドンのユニヴァシティ・コレッジの国際法教授であるフィリップ・サンズ(Philippe Sands)の著書に書かれている。

サンズ氏の著書『法なき世界(Lawless World)』からの抜粋が,本日の本紙に特別に掲載される。【→ガーディアンに掲載された抜粋|">これも抜粋@ガーディアン|版元Penguin社の書籍紹介ページ】

ゴールドスミス卿は,2003年3月7日の文書でトニー・ブレア首相に対し,イラクに対する武力行使は違法となる可能性がある(could be illegal)と警告していた。軍事行動を認める2つ目の国連決議を得たほうが安全であろう,と。

サンズ氏は「政府はそのようなことになる可能性についておおいに懸念を抱いており,そのために,将来あるかもしれない国際訴訟に備えて法律家のチームを結成する処置をとった」と書いている。

政府は3月7日の文書を公表することを拒否した。その文書はごく少数の政府高官(senior ministers)の間だけに回された。ゴールドスミス卿が内閣に与えたのは,3月17日に卿の名前で出された国会答弁の口頭での発表だけだった。【国会答弁は書面で卿から内閣に渡されたわけではなかった。】

これはofficial ministerial code【←正式な行政上の手続き,ということですが,定訳不明なので原語のまま】に沿っていない。official ministerial codeでは,政府のlaw officersによる意見は全文を書面にしたものが閣僚全員に示されなければならないとしている。

サンズ氏によれば,2003年3月13日,ゴールドスミス卿は,内務省ministerのファルコナー卿(Lord Falconer)と,ブレア首相付きdirector of political and government relationsのバロネス・モーガン(Baroness Morgan:註=「バロネス」は名前ではなく称号)に対し,結局のところ侵略は新たな国連安保理決議がなくても合法となるであろうと考えると述べた,という。

3月17日,労働党の上院議員であるバロネス・ラムゼー(Baroness Ramsay)の質問に答えて,ゴールドスミス卿は,イラクが国連決議1441に実質的に違反し続けていることは「明白」であると述べている。

「誰にとって明白であると?」とサンズ氏は問うている。ゴールドスミス卿の答えは「ゴールドスミス司法長官が以前に示したアドバイスのsummaryでも precisでもない」ことは明らかだ,と彼は言う。【←訳がへたくそですみませんが,「ゴールドスミス卿はイラクが1441に違反し続けているということを以前は一度も言っていない」という内容。】

さらにサンズ氏は付け加える。「3月17日の声明は,通常の意味での正式で完全な法的意見またアドバイスを伴ったものとは見えない。司法長官によって書かれていたものであるにせよ,長官の下にいるバリスターによって独自に書かれたものであるにせよ。」

これとは別に,本紙の取材で,ゴールドスミス卿が,戦争に至る段階での情報の使用についての特別調査委員会【→「バトラー・インクワイアリ」のこと】に対して,ファルコナー卿とバロネス・モーガンとの面会は非公式のものだったと述べていることがわかった。その面会が公式に記録されているかどうかはわからなかったという。

ゴールドスミス卿はまた,3月17日の国会答弁書を書いたのは自分ではないとはっきりさせている。彼はバトラー・インクワイアリ【←2004年7月に最終報告書が出された】で,ファルコナー卿とバロネス・モーガンを指して,彼らが「私の見解(view)を定めた(set out)」と述べている。

しかし(国会答弁が行なわれた)翌3月18日には下院の議事日程表において,その答弁は司法長官の「意見(opinion)」であると述べられた。(18日の)討議においては,労働党の有力な一般議員と保守党の役職付き議員が,(採決に際して)戦争に賛成する票を投じる決意をしたことについて,それ(=17日の答弁)が重要な要素であると述べた。

元外相(97年〜01年,第一次ブレア内閣)で下院議長(03年に開戦に抗議して辞任)を務めたロビン・クック氏は,昨日,本紙の今回の報道について,驚くべきことである(alarming)と述べた。「この戦争についての法的な意見がどの程度まで政治的プロセスの産物であったのかを,これは劇的に暴いている」とクック氏は述べた。

The case for seeing the attorney general's original advice was now overwhelming, Mr Cook added.「国会で司法長官の見解として役目を果たしていたものが,実は,首相の側近中の側近2人の見解であったということがわかったのだから」とクック氏は述べた。

LibDem【=自由民主党】の外交スポークスマンであるサー・メンジース・キャンベル(Sir Menzies Campbell)は,政府の立場は非常に悪くなったと述べた。「司法長官のアドバイスの内容と,それが部分的に公開されたプロセスは,精査に耐えるものではない」とサー・メンジースは述べた。

さらにまた,サー・メンジースは「イラクに対する軍事行動を認める2003年3月18日に下院を通過した政府提出の動議は,そのアドバイスに基づいていたことは明らかで,それだけにいっそう事態は深刻である」と付け加えた。

さらにサー・メンジースは「政府は公共の利益ゆえに司法長官のアドバイスの全文を公開しないことが正当だとしているが,こうなると完全な公開をしなければ公共の利益には益さない」と続けた。

侵略に先立つ数週間の間に,ゴールドスミス卿は2度見解を変更した。2003年3月14日のブレア首相宛書面では,ゴールドスミス卿は,イラクがまだ大量破壊兵器を生産しているという「強い証拠」が存在していることが「欠かせない」と書いている。

その翌日,首相は次のように返信した。「イラクがさらに深くその義務に反しているということは,総理大臣の明白な見解であるということを確実にしておくためにこの書面を書きます。」

そしてその日に,ボイス卿は司法長官のオフィスからの2行のメモを受け取った。そこに書かれていた明白なアドバイスはボイス卿の求めていたものだったとボイス卿は述べている。軍幹部の懸念がどの程度のものであったかについては,ロンドンのクイーン・メアリ・コレッジの現代史教授,ピーター・ヘネシー(Peter Hennessy)が引用した,陸軍トップのサー・マイク・ジャクソン将軍(Gen Sir Mike Jackson)の言葉に反映されている。「最近私はバルカン半島でかなりの時間をかけてミロシェヴィッチは獄中にあるのだということを確かめた」とサー・マイクは述べた。「私はハーグでミロシェヴィッチの隣の独房に収監されるつもりはない。」

(『法なき世界』の著者)サンズ氏は,ゴールドスミス卿が2003年2月にワシントンを訪問し,ホワイトハウスの国家安全保障委員会の法務顧問,ジョン・ベリンジャー(John Bellinger)氏と会ったことを記録している。後にある高官がサンズ氏に「あなたの(国の司法)長官とはトラブルがあったので,結局はこちらに来ていただくことになった」と語っている。

ゴールドスミス卿のスポークスウーマンは昨日「長官は何度も,プロセスの件に関しては話をするつもりはないと申し上げております」と言った。3月17日の国会答弁は「長官ご自身の答弁」であると彼女は言い,その文書がいかにまとめられたかというプロセスについては長官は話をしないと結んだ。

The Department for Constitutional Affairsでは,答弁をまとめるに際してファルコナー卿が役割を果たしたかどうかについては言うことができないとしている。

最後に出てくるThe Department for Constitutional Affairsは,the Lord Chancellor's Department(大法官省)がリネームされたものです(参考)が,「法務省」にあたるところと考えていいのではないかと思います。そしてファルコナー卿はそのトップです。ブレア首相との付き合いは,パブリックスクール時代にさかのぼり,ブレアが付き合っていた女の子はファルコナー卿の意中の人であり,その彼女がブレアと別れたあとに付き合ったのがファルコナー卿だとか,それぞれ別の大学(オクスフォードとケンブリッジ)に進んで卒業してバリスター(法廷弁護士)として働いていたときに偶然再会し,以降親交を深め,イズリントンのフラットで隣同士になって……というようなことがBBC NEWS記事に書かれています。


このガーディアン記事は,当然のことながら反響をよび,2003年5月に辞任したクレア・ショート元開発相(労働党議員)は「ゴールドスミス司法長官のアドバイスについての国会(上院=貴族院)での調査を求める」と言っているのですが(記事)……クレア・ショートは問題の時期は閣僚だったので――それも「国連決議がなければ辞任する」とずっと公言していたのですが――実際にどういうものが閣僚に示されたかは知っているわけです。

一方ゴールドスミス卿はガーディアンの報道に示唆されている「決定的だった法的アドバイスはブレア側近(Downing Street insiders)が書いたものではないか」ということを「ナンセンス」と一蹴。

あといくつか,ガーディアン掲載のフォロアップ記事をリンクしておきます。

No 10 talks: what Goldsmith told Iraq inquiry
Richard Norton-Taylor
Thursday February 24, 2005
http://politics.guardian.co.uk/iraq/story/0,12956,1424035,00.html

No 10 did not summarise Iraq advice, says Goldsmith
Sarah Left, Matthew Tempest and agencies
Friday February 25, 2005
http://politics.guardian.co.uk/iraq/story/0,12956,1425647,00.html

Blair rejects calls to publish war advice
Matthew Tempest and agencies
Friday February 25, 2005
http://politics.guardian.co.uk/iraq/story/0,12956,1425381,00.html

Pressure grows on No 10 to publish full legal advice on war
Richard Norton-Taylor, David Hencke and Clare Dyer
Friday February 25, 2005
http://politics.guardian.co.uk/iraq/story/0,12956,1425047,00.html

全体としては,ガーディアンはゴールドスミス卿の国会答弁を書いたのはブレア側近2人ではないかと指摘し,ゴールドスミス卿はそれを全面否定し自分で書いたと述べ,ブレア首相は文書の開示を拒否,これに対して「ゴールドスミス卿が書いた文書を開示すべき」との声が野党(保守党とLibDem)とクレア・ショートから上がっている,ということです。ジョン・メイジャー前首相(保守党・政界は引退)は「今それをしない(開示しない)ことに正当な理由はない "no justification for not doing so now"」とコメントしています。

ちなみに,英国は総選挙を5月に控えています。

なお,記事中で紹介されている書籍,Lawless Worldの著者,Philippe Sandsのプロフィールは:


http://www.penguin.co.uk/にある著者プロフィール

Phillipe Sands QC is a practising barrister in the Matrix Chambers and a professor of international law at University College, London. He appears regularly on news and current affairs programmes in the UK and abroad, reviews and writes for the British broadsheets and has been involved in many of the recent high profile cases at the World Court.

フィリップ・サンズ王室顧問弁護士は,マトリクス・チャンバーズに所属する法廷弁護士で,ロンドンのユニヴァーシティ・コレッジの国際法教授。英国内外のニュース・時事問題番組に多く出演し,英国の(タブロイドではない)新聞に書いているほか,国際司法裁判所での注目度の高い裁判にも多く関わっている。


また,検索をしてみたところ,2003年3月にガーディアンに掲載された国際法を教える立場にある者による声明にも名を連ねています。声明の最後の部分を引いておくと:

A decision to undertake military action in Iraq without proper security council authorisation will seriously undermine the international rule of law. Of course, even with that authorisation, serious questions would remain. A lawful war is not necessarily a just, prudent or humanitarian war.


また,ゴールドスミス卿が開戦に先立っていかなる役割を果たしたかについては,昨年2月(ほぼちょうど1年前ですね)にあったGCHQのキャサリン・ガンさんの一件もご参照のほど。


投稿者:いけだ

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