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政治的な知恵は、イラク内の抵抗を克服できるだろうか? [ML アラブの声]
http://www.asyura2.com/0502/war67/msg/847.html
投稿者 white 日時 2005 年 2 月 27 日 18:12:11: QYBiAyr6jr5Ac

□政治的な知恵は、イラク内の抵抗を克服できるだろうか? [ML アラブの声]

 http://groups.yahoo.co.jp/group/voiceofarab/message/426

政治的な知恵は、イラク内の抵抗を克服できるだろうか?
パトリック・シール アル-ハヤト記事 2005/02/18

イラクは現在その現代史において、最も有望な瞬間の一つを迎えているが、それは最も危険な瞬間の一
つでもある。様々な共同体が、皆で一つにまとまる必要性を認識するならば、この国は国家再生の軌道
に乗れるだろう。だが前途には、継続する抵抗とアメリカの軍事的存在という未解決の問題をはじめと
して、様々な障害が山積している。

一月三十日の選挙の最も重要な結果は、イラクが、今や政治過程に対して「自分のもの」という感覚を
持ったということだ。数十年間で始めて、限定されてはいるにせよ、自分が自身の運命の主人であると
感じているのだ。

イラクの新たな政治リーダー達が直面している歴史的な課題は - イギリスがこの国を第一次大戦後に作
って以来のパターンである少数派のスンニ派による支配から、民主的な選挙を経て権力を握る直前の状
態にあるが、政権を握るためには他の政治勢力の同意も求めなければならない、多数派のシーア派によ
る支配への、平和裡における移行をこなすことである。

シーア派は疑いもなく、選挙における大勝者である。今こそ、彼等が長らく待望していた勝利の瞬間な
のだ。大アヤトラのアリ・シスタニの推すイラク同盟は、投票の48.1%を獲得し、ダーワ党のイブラヒム
・アル-ジャファリを首相候補として指名している。イヤド・アラウィの、より世俗的なイラク・リスト
は13.8%を獲得した。この二つのシーア派は、政治における宗教の役割、及びアメリカ及びイランとの関
係等、多くの点で異なっている。しかしながら、両派を合わせると、投票のほぼ62%を獲得している。

シーア派が権力を独占するのか、或いは他者と分け合うのか、が重要な問題だ。彼等は、スンニ派を政
治過程に引き入れるのだろうか、それとも締め出すのだろうか? その答えは、イラクが現在の暴力の悪
循環から抜け出せるかどうかを大きく規定することになるだろう。

クルド人の野望

ジャラル・タラバニのクルド愛国同盟とマスード・バルザニのクルド民主党で構成されるクルド同盟は
投票の25.7%を獲得した。これはイラクという将棋盤上で、無視することのできない大勢力の一つだ。問
題は、クルド人の、 国家というものに対する願望は、イラク人のそれと共通ではないことだ。クルド人
は、国というものに対するクルド人独自の願望にそった形でイラクを作りこむ為、選挙に参加したのだ

選挙時に行われた非公式な世論調査では、イラクのクルド人の98%がバクダッドからの独立を望んでいる
ことが明らかになっている。クルドのリーダー達は、その支持者達ほど極端ではないにせよ、少なくと
もイラクのクルディスタン地帯が1991年の第一次湾岸戦争以来享受してきた自治を強化したいと願って
おり、しかもその自治区域内にキルクークと近隣の油田を取り込みたがっている。これはキルクークに
多数在住するアラブ人とトルクメン人、更にトルコそのものの強烈な反対を引き起こすだろう。

トルコは、クルド人によるキルクークを併合しようとするいかなる動きにも、
独立宣言に対しても、そ
れが自国内の大きなクルド人人口の中での分離派の野望をかき立てるであろうことを恐れ、断固として
反対することを宣言している。けれどもトルコがクルド人に対して軍事的に介入する能力は、アメリカ
ととEU双方の反対によって抑圧されている。EUメンバーへの加入が、現時点ではトルコの第一国家プロ
ジェクトなのだ。その方が、イラクに対する危険な干渉より、ずっと重要なのだ。


クルド人をイラクという一家に引き戻す一つの方法は、クルド愛国同盟の指導者ジャラル・タラバニを
、イラク共和国大統領に指名することだろう。これは現在前向きに検討されている。これによってクル
ド人のアラブ人に対する認識は和らげられようが、クルド人とアラブ人の間の信頼感を取り戻すには、
それ以上のことが必要だろう。

クルド人には、サダム・フセインの手による1988年の大量虐殺という苦い記憶がある。彼等は、防衛と
いうより実際彼らの生存の主たるよすがであり、今日イラクにおける最強の地域戦闘部隊であるペシメ
ルガ民兵隊の解散は拒否するだろう。

従って実際の独立とまではゆかないにせよ、かなりの程度のクルド人自治は不可避である。この考えは
、中央集権的なものではなく、バグダッドに強力な権力のない連邦的なイラク国家につながる。

外部からの干渉

いくつかの外部からの干渉が、イラクの安定化進展の妨害となりうる。アメリカの核問題を巡るイラン
との対立は、イスラム共和国をイラクにおけるアメリカの利権を損なうことを目指す方向に駆り立てか
ねない。シリアも、レバノンの前首相ラフィク・ハリリの暗殺の結果、可能性が高まっているアメリカ
の懲罰的行動に直面すればイラクに干渉しかねない。クルド人のペシメルガとスンニ派アラブ人の抵抗
派は、北部の都市モスールにおいて激しく反目し合っている。こうした進展のどれもが、国内に激しい
緊張をもたらし、現在、慎重な共存の上に成立しているシーア派のリーダーシップとアメリカとの相反
的な関係を乱すことになろう。

イラクにおけるアメリカの狙いは何だろう? ジョージ・W・ブッシュ大統領は、イラクの泥沼状態から面
子を立てた撤退の機会をもとめているのだろうか、或いは大統領とアドバイザー達は依然として、石油
、再建と軍事基地をアメリカの手中に握ったまま、イラクを「民主的で」、アメリカに友好的な国家に
改造できると信じているのだろうか? この問題を巡る議論は、ワシントンや他の首都でもちきりだ。

ブッシュ政権が、イラクをアメリカの属国にして、枢要な湾岸地域におけるアメリカ覇権に対するバグ
ダッドからのいかなる挑戦をも排除する、という戦争当初の狙いを決して放棄していないということは
、明らかなようだ。

一月三十日の選挙は、イラクの情況はまだなんとかなると主張しているワシントンの連中を元気にさせ
た。ともあれ、人的及び資金的コストはすでにしてあまりにも法外で、もはやアメリカは、何らかの獲
物なしに立ち去ることは困難になっている。

イラクにおけるドラマ展開上のイスラエルの役割も、考慮する必要がある。イスラエルは常にイラクを
弱体化させることを狙ってきており、この目的実現の為、過去何十年間にわたり、クルド人のバグダッ
ドに対する反抗を再三支援してきた。イスラエルの恒久的な関心は、イラクとシリアによって作られる
危険なアラブ人「東部戦線」の出現を防ぐことであった。

1990年代中期以来、アメリカ内のイスラエルの友人ネオコン達がサダム・フセイン転覆をあおりはじめ
ていたが、この目標推進をアメリカの目標の最上位に押し上げる好機をもたらしたのは2000年9/11のテ
ロリスト攻撃だった。諜報情報は操作され、戦争の大義を生み出すべく捏造された。

イスラエルのスポークスマン達は、アメリカによるイラク破壊のおかげで、イスラエルの戦略的環境が
大いに好転したことを、おおっぴらに認めている。

イスラエルの主たる戦争の目的は、従って、実現されたことになる。イラクは粉砕され、分断されたか
らだ。アラブの大国としての役割を回復することが万一可能だとしても、実現までには何年もかかろう
。一方で、イラクをアメリカの属国にするというアメリカの狙いは、まだ実現には遠く、実現はありえ
ないかも知れない。アメリカは、駐留によってイラクを痛めつけすぎたし、その支配的な影響力さえ、
イラクで長期的に受け入れられることは難しい。

アメリカ軍が近い将来イラクから撤退するようなことがあれば、イラクは内戦状態に陥るだろうとよく
言われている。イヤド・アラウィのような傀儡政権は、アメリカが撤退したら存続できなかったろうと
いうことは確実だ。だが今や、最近の選挙のおかげで、より正統な政府が出現しそうな情勢にあり、内
戦の危機はさほど深刻なものではなさそうだ。逆に、アメリカの存在こそが、続く反乱の主要原因と見
なされよう。

早急なアメリカの撤退は、アメリカのこの地域における威信に対する致命傷となり、あらゆる地域のテ
ロリスト達を元気づけてしまうとは折々言われることだ。だが、アメリカが反乱を抑制しょうと苦闘し
、失敗する姿の方が、早期の名誉ある撤退より、はるかに体面を損なうものではあるまいか? アメリカ
が立ち去るまで、イラクには本当の和平がありえないことは、あまりに明白なことと思われる。
****
上記の翻訳は世話人の依頼に応えて、お馴染み goose さんが貴重な時間を割いて提供されたものである。お陰さまで本MLも充実しつつあり、感謝に耐えない。 

【訳出依頼】 英国の中東専門家パトリック・シール(ハーフィズ・アサド前シリア大統領の伝記の著者)
Can Political Wisdom Triumph Over the Insurgency in Iraq?
http://english.daralhayat.com/opinion/commentators/02-2005/Article-20050218-2688cfdf-c0a8-10ed-001asyuracom-22ffed6bb1d7/story.html

アラブの声ML 齊藤力二朗
http://groups.yahoo.co.jp/group/voiceofarab/

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